ベネチア国際映画祭2019 傾向と予想

 【コンペティション部門の傾向と予想】

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 【選出された国や地域】

 ・イギリス、アイルランド、スペイン、ベルギー、スイス、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、デンマーク、ノルェー、トルコ、イスラエル、東南アジア、韓国、台湾、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、アフリカからの選出はありませんでした。

 ・フランス、イタリア、日本、オーストラリア、アメリカからは連続選出でした。

 ・前回も、コンペティション部門に選ばれているオリヴィエ・アサイヤス(受賞なし)とマリオ・マルトーネ(公式の賞の受賞はないが、外部からは多数受賞)がなぜか2年連続で選出されている。

 ・前回、受賞しているアイルランド、ドイツ、ハンガリー、メキシコからの選出はなし。

 ・前回、カンヌ国際映画祭で選出されたイギリス、スペイン(男優賞)、オーストリア(女優賞)、ルーマニア、韓国(パルムドール)、パレスチナ(国際批評家連盟賞)、ブラジル(審査員賞)からは選出なし。

 ・前回、ベルリン国際映画祭で選出されたスペイン、ドイツ(監督賞、アルフレッド・バウアー賞)、オーストリア、ポーランド、デンマーク(芸術貢献賞)、ノルウェー、トルコ、イスラエル(金熊賞)からは選出なし。

 ・スイス、ブルガリア、アイスランド、フィンランド、イラン、インド、台湾、東南アジア、ニュージーランド、アフリカからは1年以上3大映画祭のコンペティション部門に選出されていないことになります。

 ・全21本のうちフランス資本が入っている作品は6本。(前回は8本、前々回は7本)

 ・全21本のうちイタリア資本が入っている作品は7本。(前回は3本、前々回は5本)

 ・全21本のうちアメリカ資本が入っている作品は5本。(前回は9本、前々回は8本)

 ・オフィシャル・セレクションからは、2013年~2015まで3年連続で、米国アカデミー賞作品賞受賞作品をプレミア上映させ、2016年も『ラ・ラ・ランド』を、2017年も『シェイプ・オブ・ウォーター』と『スリー・ビルボード』を上映させている。2018年はアメリカ映画ではないが『女王陛下のお気に入り』『ROMA/ローマ』を上映させている。
 『ゼロ・グラビティ』:アウト・オブ・コンペティション部門
 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』:コンペティション部門
 『スポットライト 世紀のスクープ』:アウト・オブ・コンペティション部門
 『ラ・ラ・ランド』:コンペティション部門
 『シェイプ・オブ・ウォーター』:コンペティション部門
 『スリー・ビルボード』:コンペティション部門
 『女王陛下のお気に入り』:コンペティション部門
 『ROMA/ローマ』:コンペティション部門
 『アリー/スター誕生』:アウト・オブ・コンペティション部門

 【監督の受賞歴・出品歴】

 初監督作品:Shannon Murphy

 3大映画祭初参加:Tiago Guedes

 3大映画祭 コンペティション部門初参加:ピエトロ・マルチェッロ、フランコ・マレスコ、Václav Marhoul、ハイファ・アル=マンスール、トッド・フィリップス、シーロ・ゲーラ

 金獅子賞受賞:ロイ・アンダーソン

 審査員特別賞/審査員大賞:マリオ・マルトーネ

 監督賞(銀獅子賞)受賞:なし

 脚本賞:オリヴィエ・アサイヤス

 パルムドール受賞:ロマン・ポランスキー、是枝裕和、スティーヴン・ソダーバーグ

 金熊賞受賞:ロマン・ポランスキー

 金獅子賞、パルムドール、金熊賞受賞者が、のべ5組もいるというのはやや多め。(昨年は5人、一昨年はのべ3人)

 女性監督は、ハイファ・アル=マンスールとShannon Murphyの2人。

 【監督どうしのめぐり合わせ】

 2000年カンヌ:オリヴィエ・アサイヤス、ロイ・アンダーソン、ジェームズ・グレイ (審査員:マリオ・マルトーネ)

 2002年カンヌ:オリヴィエ・アサイヤス、ロベール・ゲディギャン、ロマン・ポランスー(パルムドール)

 2003年ベルリン:スティーヴン・ソダーバーグ (審査員:アトム・エゴヤン)

 2003年カンヌ:ロウ・イエ (審査員賞:スティーヴン・ソダーバーグ)

 2004年カンヌ:オリヴィエ・アサイヤス(女優賞)、是枝裕和(男優賞)

 2007年カンヌある視点:オリヴィエ・アサイヤス(特別招待作品)、ロイ・アンダーソン、スティーヴン・ソダーバーグ(特別招待作品)

 2008年カンヌ:アトム・エゴヤン、ジェームズ・グレイ、スティーヴン・ソダーバーグ(男優賞)、ジェームズ・グレイ

 2009年カンヌ:ロウ・イエ (審査員:ジェームズ・グレイ)

 2010年ベルリン:ロマン・ポランスキー(監督賞)、ノア・バームバック

 2010ベネチア:マリオ・マルトーネ、パブロ・ラライン

 2011年ベネチア:ロマン・ポランスキー (審査員:マリオ・マリトーネ)

 2013年カンヌ:ロマン・ポランスキー、是枝裕和、ジェームズ・グレイ、スティーヴン・ソダーバーグ

 2013年ベネチア“Venezia 70 - Future Reloaded”: ピエトロ・マルチェッロ、フランコ・マレスコ、ヨン・ファン、パブロ・ラライン

 2014年カンヌ:オリヴィエ・アサイヤス、アトム・エゴヤン

 2017年ベネチア:ロベール・ゲディギャン、是枝裕和 (審査員:ヨン・ファン)

 2018年カンヌ:是枝裕和 (審査員:ロベール・ゲディギャン)

 2018年ベネチア:オリヴィエ・アサイヤス、マリオ・マルトーネ

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 【受賞結果の傾向性】

 審査員の顔ぶれ、審査方針、コンペティション部門のラインナップ、その年々の映画祭の雰囲気や意向などによって、受賞結果は変わってきますが、ここでは個々の作品の属性(主に監督)のみに限定して、傾向性を書き出すことにします。

 ※ベネチア国際映画祭の賞は、途中で中断がある賞が多く、ころころとコンセプトが変わってしまう賞もあって、ちょっとはっきりしないところがあります。

 【金獅子賞】

 ・90年あたりまでは完全にヨーロッパ偏重だったのが、90年代以降インターナショナルになる。

 ・2000年以降、アメリカ寄りになる。

 ・初監督作品でも受賞することがある。

 ・近年は、監督第5作までの作品が受賞する傾向がある。

 ・近年は、ベルリンやカンヌで上位の賞を受賞したことのない監督が受賞する傾向がある。

 ・近年は、監督賞や審査員特別賞などを経ずに、いきなり金獅子賞を受賞することが多い。

 ・金獅子賞を2回受賞したことのある監督は、アンドレ・カイヤット、ルイ・マル、チャン・イーモウ、アン・リーの4人。

 [過去20年の受賞履歴]
 ・2018アルフォンソ・キュアロン 第8作
 ・2017:ギレルモ・デル・トロ 第10作 ←カンヌ=メルセデス・ベンツ賞
 ・2016:ラヴ・ディアス 第17作 ←2016:ベルリン=アルフレッド・バウアー賞
 ・2015:ロレンソ・ビガス(Lorenzo Vigas) 第1作
 ・2014:ロイ・アンダーソン 第5作
 ・2013:ジャン・フランコロージ 第5作
 ・2012:キム・ギドク 第18作 ←2004:ベルリン=監督賞、2004:ベネチア=監督賞
 ・2011:アレクサンドル・ソクーロフ 長編フィクション作品で第17作、ドキュメンタリーを含めると45作以上
 ・2010:ソフィア・コッポラ 第5作
 ・2009:サミュエル・マオズ 第1作
 ・2008:ダーレン・アロノフスキー 第4作
 ・2007:アン・リー 第10作 ←1993:ベルリン=金熊賞、1996:ベルリン=金熊賞、1997:カンヌ=パルムドール、2005:ベネチア=金獅子賞
 ・2006:ジャ・ジャンクー 第10作
 ・2005:アン・リー 第9作 ←1993:ベルリン=金熊賞、1996:ベルリン=金熊賞、1997:カンヌ=パルムドール
 ・2004:マイク・リー 第9作 ←1993:カンヌ=監督賞、1996:カンヌ=パルムドール
 ・2003:アンドレイ・ズビャギンツェフ 第1作
 ・2002:ピーター・ミュラン 第5作
 ・2001:ミラ・ナーイル 第11作 ←1988:カンヌ=カメラ・ドール、1991:ベネチア=脚本賞
 ・2000:ジャファール・パナヒ 第3作 ←1995:カンヌ=カメラ・ドール
 ・1999:チャン・イーモウ 第10作 ←1987:ベルリン=金熊賞、1991:ベネチア=監督賞、1992:ベネチア=金獅子賞、1994:カンヌ=審査員グランプリ
 ・1998:ジャンニ・アメリオ 第8作 ←1994:ベネチア=監督賞
 ・1997:北野武 第7作
 ・1996:ニール・ジョーダン 第9作

 ※本数は、数え方によって違いが出る可能性があります。

 【監督賞(銀獅子賞)】 1990年~(1983~1987年:銀獅子賞=新人監督賞)

 ※銀獅子賞は、いろいろと変遷があり、現在も曖昧なところがあって、年によって(メディアによって)銀獅子賞=監督賞となっているケースとそうでないケースがあります。

 ・当初からインターナショナル

 ・新人もベテランも関係なく与えられる。(多少、銀獅子賞=新人監督賞だった名残りが残っているようにも感じられます。)

 ・フェリーニとフィリップ・ガレルがそれぞれ2回ずつ受賞している。

 ・90年・91年はアメリカ、91年・92年はフランス、05年・06年はフランスがそれぞれ連続受賞している。

 ・1999年~2004年まで連続してアジア映画が受賞している。

 ・このところ、ベテラン監督と新人監督が交互に受賞している。(2015年はパブロ・トラペロ、2016年はベテラン監督が受賞する年まわりでアンドレイ・コンチャロフスキー、2017年はグザヴィエ・ルグラン、2018年はジャック・オディアール) 本年度は新人監督が受賞する年まわりになっています。

 ・後から振り返って、監督賞受賞作が必ずしもその監督の代表作になっていないケースが多い。銀獅子賞自体の扱いがころころ変わり、立ち位置が曖昧だったりもして、監督賞というよりは、「何か賞をあげたい作品」の落としどころになっているようにも思える。

 【審査員大賞】(Grand Jury Prize/Gran Premio della giuria) 2013年~

 金獅子賞に次ぐ賞というポジションを与えられている。

 【審査員特別賞】(Special Jury Prize/Speciale della giuria) 1951年~(1969-80年は中断)

 ・当初からインターナショナル。

 ・作家性の強い作品が選ばれる傾向がある。

 ・2014年、2015年とトルコ映画が連続受賞している。

 ・ルイ・マル、ゴダール、イオセリアーニ、スコリモフスキ、ウルリヒ・ザイドルが、それぞれ2回ずつ受賞している。

 ・50年代末~80年代にかけては、金獅子賞受賞に向けたステップというポジションの賞でもあった。
 フランチェスコ・ロージ 1958:審査員特別賞 → 1963:金獅子賞
 ルキノ・ヴィスコンティ 1960::審査員特別賞 → 1965:金獅子賞
 ルイス・ブニュエル 1965:審査員特別賞 → 1967:金獅子賞
 アレクサンダー・クルーゲ 1966:審査員特別賞 → 1968:金獅子賞
 ルイ・マル 1958、1963:審査員特別賞 → 1980、1987:金獅子賞
 ジャン=リュック・ゴダール 1962、1967:審査員特別賞 → 1983:金獅子賞
 クシシュトフ・ザヌーシ 1982:審査員特別賞 → 1984:金獅子賞

 ・90年代以降は、パルムドールと関連性の強い賞になっている。
 ジェーン・カンピオン 1990:審査員特別賞 → 1993:パルムドール
 アッバス・キアロスタミ 1999:審査員特別賞 ← 1997:パルムドール
 ナンニ・モレッティ 1981:審査員特別賞 → 2001:パルムドール
 アブデラティフ・ケシシュ 2007:審査員特別賞 → 2013:パルムドール

 今回のエントリーでは、過去にロマン・ポランスキー、スティーヴン・ソダーバーグ、是枝裕和がパルムドールを受賞している。

 【男優賞】

 ・約50%の確率でアメリカの男優が受賞している。
 近年は、隔年でアメリカの男優が受賞していて、今年はアメリカの男優が受賞しない年まわりだが、過去2年はアメリカ人男優は受賞していない。

 ・アメリカの男優とヨーロッパの男優がほぼ独占している。

 ・アジアの男優で受賞したことがあるのは、三船敏郎(2回)、ナセールディン・シャー、シア・ユイの3人のみ。

 ・無名の男優が選ばれることはほとんどない。

 【女優賞】

 ・アメリカの女優とヨーロッパの女優がほぼ独占している。

 ・50年代末より50%以上の確率でフランスの女優が受賞している。

 ・2013年から2015年まで3年連続でイタリアの女優が受賞し、2016年はアメリカ人女優、2017年はイギリス人女優が受賞している。

 ・アジアの女優で受賞したことがあるのは、カン・スヨンとコン・リーとデニー・イップのみ。

 ・複数回受賞しているのは、シャーリー・マクレーン(1960、1988)、イザベル・ユペール(1988、1995)、ヴァレリア・ゴリーノ(1986、2015)。

 ・ジュリエット・ビノシュは、『トリコロール/青の愛』でベネチア、『イングルッシュ・ペイシェント』でベルリン、『トスカーナの贋作』でカンヌ、の女優賞をそれぞれ受賞している。

 【脚本賞】 91年、94年、96-98年、2005年~

 ・メディアによって、「オリジナル脚本賞」と記載しているものもある。

 ・過去に原作もので受賞しているのは、2013年の『あなたを抱きしめる日まで』のみ。

 ・今回のエントリー作品で、実際にあった出来事に基づく作品はいくつもあるが、原作ものは、“The Sisters Brothers(Les Frères Sisters)”と“First Man”のみ(たぶん)。リメイク作品としては“Suspiria”がある。

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 【受賞予想】

 以上を踏まえて、ざっと受賞予想をしてみたいと思います。

 ま、当たるかどうかはともかく、予想しておいた方が映画祭をより楽しむことができますからね。

 今回、ドキュメンタリーとアニメーションが1本ずつあるので、男優賞、女優賞の選択の幅が2枠、脚本賞の選択の幅が1枠狭まっています。

 審査員:ルクレシア・マルテル(審査員長)、Piers Handling(カナダの映画批評家)、メアリー・ハロン、ステイシー・マーティン、ロドリゴ・プリエト、塚本晋也、パオロ・ヴィルツィ

 作品賞
 ・“The Painted Bird”(チェコ・ウクライナ・スロヴァキア)

 審査員大賞/審査員特別賞
 ・“About Endlessness(Om det oändliga)”(スウェーデン・独・ノルウェー)

 監督賞
 ・ハイファ・アル=マンスール “The Perfect Candidate”(サウジアラビア・独)
 ・シーロ・ゲーラ “Waiting for the Barbarians”(米・伊)

 男優賞
 ・ジェラール・メイラン “Gloria Mundi”
 ・ルカ・マリネッリ “Martin Eden”

 女優賞
 ・コン・リー 『サタデー・フィクション』
 ・メリル・ストリープ “The Laundromat”

 脚本賞
 ・“The Painted Bird”
 ・“The Perfect Candidate”
 ・“J'accuse”
 ・“Ema”

 ラインナップが発表された時から、賞の大小はともかく“The Painted Bird”と“The Perfect Candidate”が有望じゃないかと思っています。それ伊がだと、シーロ・ゲーラとパブロ・ララインでしょうか。

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 *当ブログ記事

 ・ベネチア国際映画祭2019 コンペティション部門ラインナップ:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201907/article_12.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2019年4月~9月:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201904/article_12.html

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