ゴールデン・リール賞(音響編集賞)2019 受賞結果

 第66回ゴールデン・リール賞(Golden Reel Award/MPSE:Motion Picture Sound Editors)の受賞結果が発表されました。(2月17日)

 【ゴールデン・リール賞】

 ゴールデン・リール賞と言っても、全然なじみがありませんが、音響編集部門に特化した映画賞で、スタートは1954年(1953年度)で、1964年から始まったアカデミー賞音響編集賞よりも10年も長い歴史を持っています。ひょっとすると、ゴールデン・リール賞の存在が、アカデミー賞に音響編集賞部門を設立させる契機になったのかもしれません。

 MPSEという字面自体は、映画のエンドロールなどでよく目にしますが、MPSEとは、アメリカ映画の音響編集・音楽編集のプロが所属する団体(Motion Picture Sound Editors)のことで、ゴールデン・リール賞は、そこが出している映画賞ということになります。カナダで年間に最高の興行収入を稼いだカナダ映画に贈られる賞もなぜか同じ名前なので、ちょっと混乱しますが……。

 似たような賞に、映画音響協会賞がありますが、映画音響協会(CAS:Cinema Audio Society)とは1964年創立のアメリカのミキサーの団体で、500名を超えるミキサーが所属しており、映画音響協会賞はそこが出している映画賞です。ゴールデン・リール賞が、アカデミー賞の音響編集賞に対応するのに対して、映画音響協会賞はアカデミー賞の録音賞に対応しています。

 ※今回(もまた)、カテゴリーが一部変更になっています。
 ※受賞対象者には、音響編集に関わる多くのスタッフ名(音響編集者、音響効果編者、ダイアログ編集者、Foley Editor、音楽編集者、Foley Artistなど)が明記されています。ここでは、受賞結果から、主にタイトルだけを拾っておくことにします。

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 【映画部門】

 ◆長編作品 台詞/ADR部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Feature Motion Picture – Dialogue/ADR)
 ◎『ボヘミアン・ラプソディ』
 Supervising Sound Editor: John Warthurst
 Supervising ADR / Dialogue Editor: Nina Hartston
 ADR / Dialogue Jens Petersen

 ◆長編作品 音響効果/Foley部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Feature Motion Picture – Effects/Foley)
 ◎『クワイエット・プレイス』
 Supervising Sound Editors: イーサン・ヴァン・ダー・リン(Ethan Van der Ryn), エリク・アーダール(Erik Aadahl), MPSE
 Sound Effects Editors: Brandon Jones, Justin M. Davey, MPSE
 Foley Artists: Steve Baine, Peter Persaud
 Foley Editor: Jonathan Klein

 ◆長編音楽映画部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Feature Motion Picture – Musical)
 ◎『ボヘミアン・ラプソディ』
 Supervising Music Editor: John Warhurst
 Music Editor: Neil Stemp

 ◆作曲部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Feature Motion Picture – Music Score)
 ◎『スパイダーマン:スパイダーバース』

 ◆長編ドキュメンタリー部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Feature Documentary)
 ◎“Free Solo”
 ◎“They Shall Not Grow Old”

 ◆長編アニメーション部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Feature Animation)
 ◎『スパイダーマン:スパイダーバース』

 ◆長編外国語映画部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Foreign Language Feature)
 ◎『ROMA/ローマ』
 Supervising Sound Editors: Sergio Díaz, スキップ・リーヴセイ(Skip Lievsay)
 Sound Designers: Sergio Díaz, スキップ・リーヴセイ(Skip Lievsay)
 Supervising Dialogue Editor: Carlos Honc Navarro
 Supervising ADR Editors: Carlos Honc Navarro, Ruy Garc
 Dialogue Editors: Manuel Montaño Mancilla, Caleb Townsend, Michael Feuser
 ADR Editors: Michael Feuser, Alexa Zimmerma
 Sound Effects Editors: Eric Dounce, Luis Huesca, Luis Parra, Mitch Osias, Craig Berkey, Javier Quesada
 Foley Artists: Alan Romero, Jay Peck
 Foley Editor: Jaime Sainz, Igor Nikolic

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 【テレビ部門】

 ※テレビ、ケーブル、配信、オンライン、ノン・テアトリカル作品。

 ◆35分未満の実写作品部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Live Action Under 35:00) [改称]
 ◎“Star Trek: Short Treks”(CBS All Access)-‘The Brightest Star’

 ◆ショート・フォーム 台詞/ADR部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Episodic Short Form – Dialogue/ADR)
 ※ショート・フォームは、35:01 - 49:59が対象。
 ◎『ジ・アメリカンズ』(FX Networks)-‘Harvest’

 ◆ショート・フォーム 音響効果/Foley部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Episodic Short Form – Effects/Foley)
 ◎『アトランタ:略奪の季節』“Atlanta”(FX Networks)- Teddy Perkins ‘’

 ◆ショート・フォーム 音楽部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Episodic Short Form – Music/Musical) [改称]
 ◎“American Horror Story: Apocalypse”(FX Networks)-‘The End’
 ◎“Vikings”(MGM Television / History Channel)-‘Moment of Vision’

 ◆ロング・フォーム エピソード 台詞/ADR部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Episodic Long Form – Dialogue/ADR)
 ※ロング・フォームは、50:00+が対象。
 ◎『ウエストワールド』(HBO)- ‘The Riddle of the Sphinx’’

 ◆ロング・フォーム エピソード 音響効果/Foley部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Episodic Long Form – Effects/Foley)
 ◎『オルタード・カーボン』“Altered Carbon”(Netflix)-‘Out of the Past’

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 ◆ロング・フォーム エピソード 音楽部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Episodic Long Form – Music/Musical) [改称]
 ◎『マーベラス・ミセス・メイゼル』(Amazon Studios)-‘We’re Going to the Catskills’

 ◆シングル・プレゼンテーション部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Single Presentation)
 ◎『エレクトリック・ドリームズ』“Phillip K. Dick’s Electric Dreams”(Sony Pictures Television / Amazon Studios)

 ◆TVドキュメンタリー部門(Outstanding Achievement in Sound Editing – Non-Theatrical Documentary)
 ◎“Searching for Sound Islandman and Veyasin”(Karga Seven Pictures / Red Bull TV)

 ◆TVアニメーション ロング・フォーム部門(Outstanding Achievement in Sound Editing – Non-Theatrical Animation Long Form)
 ◎『ネクスト ロボ』“NextGen”(Netflix)

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 ◆ノン・テアトリカル作品(Outstanding Achievement in Sound Editing – Non-Theatrical Feature)
 ◎“Extinction”(Good Universe / Universal Pictures)

 【その他の作品】

 ◆特別作品部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Special Venue)
 ◎“Age of Sail”(Google Spotlight Stories)

 ◆短編アニメーション部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Animation Short Form)
 ◎”Overwatch”-’Reunion’(Blizzard Entertainment)

 ◆学生作品部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Student Film)
 ◎“Facing It”(英国映画テレビ学校)

 ◆コンピューター・シネマティック部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Computer Cinematic)
 ◎“World of Warcraft: Battle for Azeroth”(Blizzard Entertainment)

 ◆コンピューター・インタラクティヴ・ゲーム部門(Outstanding Achievement in Sound Editing - Computer Interactive Game Play)
 ◎『ゴッド・オブ・ウォー』“God of War”(SIE Santa Monica Studio)

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 【特別賞・名誉賞】

 ◆2019 MPSE フィルムメイカー賞(2019 MPSE Filmmaker Award)
 ◎アントワン・フークワ

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 ◆2019 MPSE キャリア貢献賞(2019 MPSE Career Achievement Award)
 ◎Stephen H. Flick
 40年を超えるキャリアを持つサウンド・デザイナー。
 米国アカデミー賞音響編集賞に4回ノミネートされて、1995年に『スピード』で受賞。そのほか『ポルターガイスト』『ダイ・ハード』『トータル・リコール』でノミネート。1988年に『ロボコップ』で特別貢献賞受賞。

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 1990年以降の、長編映画 音響効果/効果音部門 音響編集賞(音響効果/Foley部門)とアカデミー賞音響編集賞の結果を対比させてみると以下のようになります。

 2018年 MPSE:『ブレードランナー 2049』 AA: 『ダンケルク』
 2017年 MPSE:『ハクソーリッジ』 AA:『メッセージ』
 2016年 MPSE:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、『レヴェナント:蘇えりし者』 AA:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
 2015年 MPSE:『アメリカン・スナイパー』 AA:『アメリカン・スナイパー』
 2014年 MPSE:『ゼロ・グラビティ』 AA:『ゼロ・グラビティ』
 2013年 MPSE:『007 スカイフォール』 AA:『007 スカイフォール』『ゼロ・ダーク・サーティ』
 2012年 MPSE:『戦火の馬』 AA:『ヒューゴの不思議な発明』
 2011年 MPSE:『インセプション』 AA:『インセプション』
 2010年 MPSE:『アバター』 AA:『ハートロッカー』
 2009年 MPSE:『ダークナイト』 AA:『ダークナイト』
 2008年 MPSE:『ボーン・アルティメイタム』 AA:『ボーン・アルティメイタム』
 2007年 MPSE:『硫黄島からの手紙』 AA:『硫黄島からの手紙』
 2006年 MPSE:『宇宙戦争』 AA:『キング・コング』
 2005年 MPSE:『アビエイター』(アニメーション部門は『Mr.インクレディブル』) AA:『Mr.インクレディブル』
 2004年 MPSE:『マスター・アンド・コマンダー』 AA:『マスター・アンド・コマンダー』
 2003年 MPSE:『ロード・トゥ・パーディション』 AA:『ロード・オブ・ザ・リング/2つの搭』
 2002年 MPSE:『ブラックホーク・ダウン』 AA:『パール・ハーバー』
 2001年 MPSE:『グラディエーター』 AA:『U-571』
 2000年 MPSE:『マトリックス』 AA:『マトリックス』
 1999年 MPSE:『プライベート・ライアン』 AA:『プライベート・ライアン』
 1998年 MPSE:『タイタニック』 AA:『タイタニック』
 1997年 MPSE:『デイライト』 AA:『ゴースト&ダークネス』
 1996年 MPSE:『ブレイブハート』 AA:『ブレイブハート』
 1995年 MPSE:『スピード』 AA:『スピード』
 1994年 MPSE:『ジュラシック・パーク』 AA:『ジュラシック・パーク』
 1993年 MPSE:『沈黙の戦艦』 AA:『ドラキュラ』
 1992年 MPSE:『バートン・フィンク』 AA:『ターミネーター2』
 1991年 MPSE:『トータル・リコール』 AA:『レッド・オクトーバーを追え』
 1990年 MPSE:『7月4日に生まれて』『アビス』 AA:『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』

 過去29年で16回一致していて、近年では2013年~2016年まで4年連続で一致していることになります。

 こうしてみると、強力な話題作(視覚的に強いインパクトがある作品)がある時は、ゴールデン・リール賞もアカデミー賞音響編集賞も同じ作品に引っ張られるようですが、そうでない場合は、それぞれ独自のチョイスをするようで、必ずしもどちらが「音響編集賞」にふさわしいとかいうことでもないようです。

 ◆米国アカデミー賞2019音響編集賞ノミネーション
 ・『ブラックパンサー』 ベン・バート(Benjamin A. Burtt)、Steve Boeddeker
 ・『ボヘミアン・ラプソディ』 John Warhurst、Nina Hartstone
 ・『ファースト・マン』 Ai-Ling Lee、Mildred Iatrou Morgan
 ・『クワイエット・プレイス』 イーサン・ヴァン・ダー・リン(Ethan Van der Ryn)、エリク・アーダール(Erik Aadahl)
 ・『ROMA/ローマ』 Sergio Diaz、スキップ・リーヴセイ(Skip Lievsay)

 ※オンライン映画批評家協会賞2019 音響デザイン賞:『クワイエット・プレイス』
 
 ※サンタバーバラ国際映画祭2019 アルチザン賞:Sergio Diaz、スキップ・リーヴセイ(Skip Lievsay)(音響編集) 『ROMA/ローマ』

 他に参考になるような受賞結果もない部門ですが、上記の結果を見ると『ボヘミアン・ラプソディ』がやや有望に見えます。

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 *当ブログ記事

 ・米・音響協会賞(CAS)2019::https://umikarahajimaru.at.webry.info/201902/article_37.html

 ・ゴールデン・リール賞2018 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201801/article_62.html
 ・ゴールデン・リール賞2018 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201802/article_44.html
 ・ゴールデン・リール賞2017 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201702/article_1.html
 ・ゴールデン・リール賞2017 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201702/article_43.html
 ・ゴールデン・リール賞2016:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201602/article_53.html
 ・ゴールデン・リール賞2015:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201502/article_22.html
 ・ゴールデン・リール賞2014 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201401/article_52.html
 ・ゴールデン・リール賞2014 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201402/article_34.html
 ・ゴールデン・リール賞2013 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201301/article_48.html
 ・ゴールデン・リール賞2013 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201302/article_32.html
 ・ゴールデン・リール賞2012 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201201/article_46.html
 ・ゴールデン・リール賞2012 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201202/article_35.html
 ・ゴールデン・リール賞2011 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201101/article_47.html
 ・ゴールデン・リール賞2011 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201102/article_40.html
 ・ゴールデン・リール賞2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_40.html

 ・全米の映画賞について調べてみました:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201001/article_45.html

 ・全米映画賞レース2018 前半戦の受賞結果をまとめてみました:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201812/article_77.html
 ・全米映画賞レース2018 後半戦の受賞結果をまとめてみました:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201812/article_78.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2019年1月~5月:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201901/article_31.html

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