米国アカデミー賞2016 短編ドキュメンタリー賞ショートリスト10作品発表!

 第88回米国アカデミー賞の短編ドキュメンタリー賞ショートリスト10作品が発表されました。(10月26日)

 今年は、74作品の有資格作品のエントリーがあり、その中から10作品がショートリストに絞り込まれました。(前回は8作品でした)

 ノミネーションの発表は1月14日で、5作品がノミネートに進みます。(前回までは3~5作品だったのが、本年度から5作品に変更になっています)

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 ・“Starting Point(Punkt wyjścia)”(ポーランド/27分) 監督:Michał Szcześniak
 Anetaは、反抗的な少女で、19歳で殺人を犯して、刑務所に入れられる。9年後、彼女は、刑務所を出て、療養所で働くことになる。Helenaは、リウマチのためにそこで療養生活を送っていて、他者の助けがなければ生きていけない。過酷な運命と戦っているHelenaとの出会いの中で、Anetaは、自分が他者に与えられる非常に多くのものを持っているということを学ぶ。
 クラクフ映画祭2014 ポーランド・パノラマ部門出品。
 Camerimage2014 短編ドキュメンタリー・コンペティション部門 金の蛙賞受賞。
 サンダンス映画祭2015出品。
 ドキュメンタマドリッド2015 スペシャル・メンション受賞。
 シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭2015 最優秀短編ドキュメンタリー賞受賞。

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 ・“50 Feet from Syria”(トルコ・米・シリア/39分) 監督:Skye Fitzgerald
 Hisham Bismarは、シリア系アメリカ人の外科医で、トルコ‐シリア国境地帯を旅しては、ボランティアで、シリア内戦の犠牲者の手術をしている。

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 ・“A Girl in the River: The Price of Forgiveness”(パキスタン/40分) 監督:シャーミーン・オベイド=チノイ(Sharmeen Obaid-Chinoy)
 パキスタンでは、毎年1000人以上の女性が、「名誉」のために殺されている。本作では、それを生き延びた数少ない女性の物語を紹介する。
 シャーミーン・オベイド=チノイは、『セイビング・フェイス 魂の救済』で米国アカデミー賞2012短編ドキュメンタリー賞を受賞し、初めて米国アカデミー賞を受賞したパキスタン人になった。

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 ・“Chau, beyond the Lines(War Within the Walls)”(米・ベトナム/34分) 監督:Courtney Marsh
 Chauは、16歳で、枯葉剤のために障害を負った子供たちのためのベトナム人ピース・キャンプで暮らしている。彼は、いつかプロの服飾デザイナーになるという夢を叶えるために、現実と闘っている。
 USA映画祭2015 審査員特別賞受賞。

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 ・“Claude Lanzmann: Spectres of the Shoah”(カナダ・米・英/40分) 監督:Adam Benzine
 クロード・ランズマンの『SHOAH ショア』制作にまつわるドキュメンタリー。
 1973年、クロード・ランズマンは、ホロコーストをユダヤ人の側から描く『SHOAH ショア』の制作に着手する。完成は容易ではなく、その間、経済的な問題を抱え、死の恐怖を味わい、元ナチによる厳しい攻撃を受け、あらゆる面から極度の緊張を強いられた。自殺をも考えることすらあった。映画は、12年後、1985年に完成し、10時間近い作品になったが、ホロコーストに関して語った最も重要な作品の1本となった。と同時に、この作品を作ることで、ランズマンの人生もまた永遠に変わった。
 HotDocs カナディアン・ドキュメンタリー映画祭2015 中編ドキュメンタリー部門出品。オナラブル・メンション受賞。

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 ・“My Enemy, My Brother”(カナダ/18分) 監督:Ann Shin
 Zahed Haftlangは、イラン人で、家出して、軍隊に入る。Najah Aboudは、19歳のイラク人で、戦争のために、家に妻子を残して徴兵される。2人は、イラン・イラク戦争で、敵味方に分かれて戦う。Zahedは、ケガをして掩蔽壕にいるNajahを見つけ、命がけで彼を救う。Zahedは、数日間Najahを生き延びさせ、最終的にNajahはイランの捕虜になった。その後、お互いのことを知ることもなく、20年が過ぎるが、ある日、偶然のいたずらで、2人はバンクーバーで再会する。
 トライベッカ映画祭2015短編ドキュメンタリー&学生ヴィジョナリー部門出品。
 トラヴァース市映画祭2015出品。Founders Prize受賞。
 オタワ国際映画祭2015出品。
 *本編動画:http://www.nytimes.com/video/opinion/100000003680088/my-enemy-my-brother.html

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 ・“Last Day of Freedom”(米/32分) 監督:Dee Hibbert-Jones、Nomi Talisman
 Bill Babbittは、ベトナム戦争の退役軍人である弟Mannyが犯罪に関与していることを知り、警察に通報する決心をする。本作では、戦争や犯罪、極刑に直面した弟を支え、助けるために、1つの決断をしたBillの物語を、アニメーションを使って描く。約32分の作品のために32000枚ものドローイングが用意された。
 フル・フレーム・ドキュメンタリー映画祭2015出品。審査員賞、CDS Filmmaker Award受賞。
 ハンプトンズ国際映画祭2015出品。最優秀短編ドキュメンタリー賞受賞。
 *(ほぼ?)本編動画:https://www.youtube.com/watch?v=5diBuNHV75U

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 ・“The Testimony”(米/ ) 監督:Vanessa Block
 コンゴ内戦は、第二次世界大戦以上の大きな犠牲者を出した。本作では、コンゴ史上最大のレイプ裁判をドキュメントし、関わった女性たちの人生や彼女たちの驚くべきヒューマン・スピリットの強さを示す。

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 ・“Minerita”(西・ボリビア/23分) 監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ(Raúl de la Fuente)
 ボリビアのCerro Ricoは、大きな渓谷にある。ここは、地元の法によって支配されている。生活は厳しく、女子供も炭鉱で働く。人間の醜い本能は夜にむき出しになる。女性が、レイプや暴力に抵抗する手段はダイナマイトしかない。
 逃れようのない場所で暮らす女たちのショッキングな証言。
 監督のラウル・デ・ラ・フエンテは、『アンナプルナ南壁 7,400mの男たち』(2012)では撮影監督を務めている。
 サンセバスチャン国際映画祭2013 Zinemira Kimuak部門出品。
 ゴヤ賞2014 短編ドキュメンタリー賞受賞。
 クラクフ映画祭2014短編部門 インターナショナル・コンペティション出品。スペシャル・メンション受賞。

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 ・“Body Team 12”(リベリア/13分) 監督:David Darg
 世界でも最も危険で陰惨な仕事、すなわち、エボラの犠牲になった人々の遺体を回収するチームに関するドキュメンタリー。本作では、緊張感あふれる現場の様子を映し出すとともに、彼らの哲学や力強さをも紹介する。
 トライベッカ映画祭2015短編ドキュメンタリー&学生ヴィジョナリー部門出品。最優秀ドキュメンタリー・ショート受賞。

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 本年度は、学生アカデミー賞受賞作品からも、ヨーロッパ映画賞短編映画賞ノミネート作品からも、1本も選ばれませんでした。

 ショートリストが10作品で、ノミネートが5作品ですから、ノミネート作品に選ばれる確率は、現時点で50%になっているわけですが、このショートリストは、果たして何とか10作品に絞り込んだのか、それともかろうじて10作品ピックアップして体裁を整えたのか、どちらなんでしょうか。有望な作品があるなら15作品くらいショートリストに選んでもよかったんじゃないかと思ったりもしますね。

 さて、過去の受賞作を調べてみると、アメリカ作品であれ、外国作品であれ、アメリカの観客が自分たちの物語として共感できるか、あるいは、ストレートに感動を呼んだか、どちらかのタイプの作品が受賞に輝いているように思えます。

 まあ、何が選ばれてもよさそうではありますが、あえてこの段階で、5作品に絞り込んでみるなら―

 ・“Starting Point(Punkt wyjścia)”
 ・“50 Feet from Syria”
 ・“A Girl in the River: The Price of Forgiveness”
 ・“Last Day of Freedom”
 ・“Body Team 12”

 といったところでしょうか。

 受賞歴では、“Starting Point(Punkt wyjścia)”が一歩リードしていますが、一度ノミネートされたり受賞したりすると次から選ばれやすくなるという米国アカデミー賞の傾向性からすると“A Girl in the River: The Price of Forgiveness”も有望です。
 あと、アニメーションで描くドキュメンタリーというのは、これまでいくつも例がありますが、米国アカデミー賞の会員からしてみれば新鮮な驚きがあるかもしれません。(かつて『ペルセポリス』が長編アニメーション賞にノミネートされたことがあり、『戦場でワルツを』が外国語映画賞にノミネートされたことがありますが、果たしてドキュメンタリーとして認識されていたかどうか……)

 30分以上の作品が多いこと(全部観ようとすればかなりの気合が必要)、
 ネットで観られる作品が現時点で2作品あり、今後もっと増えるかもしれず、これらも作品のチョイスに重要な要素になってくるかもしれません。

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 *当ブログ記事

 ・学生アカデミー賞2015 受賞結果: http://umikarahajimaru.at.webry.info/201510/article_16.html

 ・米国アカデミー賞2015 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201410/article_15.html

 ・米国アカデミー賞2014 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_23.html

 ・米国アカデミー賞2013 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201210/article_18.html

 ・米国アカデミー賞2012 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201111/article_11.html

 ・米国アカデミー賞2011 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201010/article_25.html

 ・米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_8.html

 ・ヨーロッパ映画賞2015 短編映画賞ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201510/article_25.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2015年9月~2016年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201509/article_2.html

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