完全版! ベネチア国際映画祭2013 受賞結果!

 第70回ベネチア国際映画祭の受賞結果が発表されました。

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 【コンペティション部門】

 ・『あなたを抱きしめる日まで』“Philomena”(英) 監督:スティーヴン・フリアーズ
 脚本賞/オゼッラ賞(スティーヴ・クーガン、ジェフ・ポープ)、SIGNIS賞、オンライン批評家賞 最優秀作品賞(Mouse d'Oro)、ユニセフ賞(Cinema for Unicef Award)、クィア獅子賞、ヤング審査員賞(Vittorio Veneto Film Festival Youth Jury Award)、Brian Award 、ユニセフ賞(Cinema for Unicef Award)、INTERFILM 賞、Padre Nazareno Taddei Award

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 ・“Tracks”(英・オーストラリア) 監督:ジョン・カラン(John Curran)

 ・“The Zero Theorem”(英・米) 監督:テリー・ギリアム
  FEDIC賞スペシャル・メンション、Future Digital 賞スペシャル・メンション

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 ・“Under The Skin”(英・米) 監督:ジョナサン・グレイザー(Jonathan Glazer)

 ・“La Jalousie”(仏) 監督:フィリップ・ガレル

 ・“L'intrepido”(伊) 監督:ジャンニ・アメリオ
  Francesco Pasinetti Award 俳優賞(アントニオ・アルバネーゼ)、Fondazione Rotella Award(ジャンニ・アメリオ) 、Lanterna Magica賞

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 ・“Sacro Gra”(伊) 監督:Gianfranco Rosi
  金獅子賞、Leoncino d'Oro Agiscuola Award

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 ・“Via Castellana Bandiera”(伊・スイス・仏) 監督:Emma Dante
 女優賞(Elena Cotta)、Francesco Pasinetti Award 俳優賞(Elena Cotta、アルバ・ロルヴァケル)、Lina Mangiacapre 賞、ヤング審査員賞(Vittorio Veneto Film Festival Youth Jury Award)スペシャル・メンション、Soundtrack Stars Award Best Sound

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 ・“Die Frau Des Polizisten(The Police Officer’s Wife)”(独) 監督:Philip Gröning
 審査員特別賞

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 ・“Miss Violence”(ギリシャ) 監督:Alexandros Avranas
 監督賞(銀獅子賞)、男優賞(Themis Panou)、FEDEORA 賞 Best Euro-Mediterranean Film、ArcaCinemaGiovani Award最優秀作品賞

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 ・“Ana Arabia”(イスラエル・仏) 監督:アモス・ギタイ
 SIGNIS賞スペシャル・メンション、Green Drop Award

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 ・“Jiaoyou (Stray Dogs/ A Diary of A Young Boy/郊遊)”(台湾・仏) 監督:ツァイ・ミンリャン
 審査員グランプリ、オンライン批評家賞 スペシャル・メンション

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 ・『風立ちぬ』“Kaze Tachinu”(日) 監督:宮崎駿

 ・“Tom À La Ferme(Tom at the Farm)”(カナダ・仏) 監督:グザヴィエ・ドラン
 国際批評家連盟賞

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 ・“Child Of God”(米) 監督:ジェームズ・フランコ

 ・“Joe”(米) 監督:デイヴィッド・ゴードン・グリーン
 マルチェロ・マストロヤンニ賞/新人賞(タイ・シェリダン)、 CICT-UNESCO Enrico Fulchignoni Award、Christopher D. Smithers Foundation Award

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 ・“Parkland”(米) 監督:Peter Landesman

 ・“The Unknown Known: The Life And Times Of Donald Rumsfeld”(米) 監督:エロール・モリス

 ・“Night Moves”(米) 監督:ケリー・ライヒャルト(Kelly Reichardt)

 ・“Es-Stouh(The Rooftops)”(アルジェリア・仏) 監督:メルザック・アルアッシュ(Merzak Allouache)

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 【アウト・オブ・コンペティション部門】

 ◆オンライン批評家賞 最優秀作品賞(Mouse d'Argento)
 ◎“At Berkeley”(米) 監督:フレデリック・ワイズマン

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 ◆オンライン批評家賞 スペシャル・メンション
 ◎“Home From Home Chronicle of a Vision(Die andere Heimat - Chronik einer Sehnsucht)”(独・仏) 監督:Edgar Reitz

 ◆Francesco Pasinetti Award 俳優賞スペシャル・メンション
 ◎マリア・ロザリオ・オマジオ(Maria Rosaria Omaggio) “Walesa. Man of Hope”(ポーランド)(監督:アンジェイ・ワイダ)

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 ◆Lina Mangiacapre賞スペシャル・メンション
 ◎“Ukraina is not Brothel”(オーストラリア) 監督:Kitty Green

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 ◆Future Digital賞
 ◎『ゼロ・グラビティ』“Gravity”(米) 監督:アルフォンソ・キュアロン

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 ◆Ambiente WWF Award
 ◎“Amazonia”(仏・ブラジル) 監督:Thierry Ragobert

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 ◆Gillo Pontecorvo Arcobaleno Latino Award
 ◎“Con Il fiato sospeso”(伊) 監督:Costanza Quatriglio

 【Orizzonti部門】

 ◆最優秀作品賞
 ◎“Eastern Boys”(仏) 監督:ロバン・カンピヨ(Robin Campillo)

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 ◆監督賞
 ◎ウベルト・パゾリーニ)Uberto Pasolini) “Still Life”(英・伊)

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 ◆審査員特別賞
 ◎“Ruin”(オーストラリア) 監督:Amiel Courtin-Wilson、Micheal Cody


 ◆The Special Orizzonti Award for Innovative Content
 ◎“Fish&Cat(Mahi Va Gorbeh)”(イラン) 監督:Shahram Mokri


 ◆最優秀短編賞
 ◎“Kush”(インド) 監督:Shubhashish Bhutiani

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 ◆CICAE Award
 ◎“Still Life”(英・伊) 監督:ウベルト・パゾリーニ)Uberto Pasolini)

 ◆Francesco Pasinetti Award 最優秀作品賞
 ◎“Still Life”(英・伊) 監督:ウベルト・パゾリーニ)Uberto Pasolini)

 ◆Civitas Vitae Award
 ◎“Still Life”(英・伊) 監督:ウベルト・パゾリーニ)Uberto Pasolini)

 ◆Francesco Pasinetti Award スペシャル・メンション
 ◎“Il terzo tempo”(伊) 監督:Enrico Maria Artale


 ◆UK-Italy Creative Industries Award - Best Innovative Budget
 ◎“Il terzo tempo”(伊) 監督:Enrico Maria Artale
 ◎“Medeas”(米・伊・メキシコ) 監督:Andrea Pallaoro
 ◎“Kush”(インド) 監督:Shubhashish Bhutiani [短編]

 ◆ヨーロッパ映画賞2013 短編部門 ベネチア代表
 ◎“Hoses with Small Windows”(ベルギー) 監督:Bülent Öztürk

 【ベネチア・クラシックス部門】

 ◆最優秀ドキュメンタリー賞
 ◎“Double Play: James Benning And Richard Linklater”(仏・ポルトガル・米) 監督:Gabe Klinger


 ◆最優秀修復作品賞(Best Restored Film)
 ◎“La Proprietà Non È Più Un Furto (Property Is No Longer A Theft)”(1973/伊) 監督:エリオ・ペトリ(Elio Petri)

 【ベネチア・デイズ】

 ◆インターナショナル賞(International Award)
 ◎“Kill Your Darlings”(米) 監督:John Krokidas 


 ◆Europa Cinemas Label
 ◎“La Belle Vie(The Good Life)”(仏) 監督:Jean Denizot

 ◆Europa Cinemas Label スペシャル・メンション
 ◎“Alienation”(ブルガリア) 監督:Milko Lazarov

 ◆FEDEORA賞 最優秀作品
 ◎“Bethlehem”(イスラエル・ベルギー・独) 監督:Yuval Adler


 ◆FEDEORA賞 ヤング監督賞(Best Young Director)
 ◎Milko Lazarov “Alienation”(ブルガリア)

 ◆FEDEORA賞 ヤング監督賞 スペシャル・メンション
 ◎Jean Denizot “La Belle Vie(The Good Life)”(仏)

 ◆Lina Mangiacapre賞
 ◎“Traitors”(モロッコ・米) 監督:ショーン・ガレット(Sean Gullette)

 ◆Open Award
 ◎“Venezia Salva”(伊) 監督:Serena Nono

 ◆SIAE Creativity Award
 ◎“Secchi”(伊) 監督:Edo Natoli


 【国際批評家週間】

 ◆ルイジ・ディ・ラウエンティス賞/新人監督賞(Lion of the Future – Luigi de Laurentiis Award for Best Debut Film)
 ◎“White Shadow”(伊・独・タンザニア) 監督:Noaz Deshe


 ◆国際批評家連盟賞
 ◎“Återträffen (The Reunion)”(スウェーデン) 監督:Anna Odell


 ◆FEDEORA賞 最優秀作品賞
 ◎“Razredni Sovražnik (Class Enemy)”(スロヴェニア) 監督:Rok Biček

 ◆FEDEORA賞 最優秀撮影賞
 ◎Inti Briones “Las Niñas Quispe (The Quispe Girls)”(チリ・仏・アルゼンチン)(監督:Sebastián Sepúlveda)

 ◆FEDEORA賞 スペシャル・メンション
 ◎ジュゼッペ・バティストン “Zoran, Il Mio Nipote Scemo (Zoran, My Nephew The Idiot)”(伊・スロヴェニア)(監督:Matteo Oleotto)

 ◆FEDEORA賞 スペシャル・メンション
 ◎Anna Odell “Återträffen (The Reunion)”(スウェーデン)

 ◆Raro Video Audience Award
 ◎“Zoran, Il Mio Nipote Scemo (Zoran, My Nephew The Idiot)”(伊・スロヴェニア)  監督:Matteo Oleotto

 ◆ArcaCinemaGiovani Award 最優秀イタリア映画賞
 ◎“L'arte Della Felicità”(伊) 監督:Alessandro Rak

 ◆FEDIC賞
 ◎“Zoran, Il Mio Nipote Scemo (Zoran, My Nephew The Idiot)”(伊・スロヴェニア)  監督:Matteo Oleotto

 ◆Schermi di qualità Award
 ◎“Zoran, Il Mio Nipote Scemo (Zoran, My Nephew The Idiot)”(伊・スロヴェニア)  監督:Matteo Oleotto

 【特別賞・名誉賞・その他の賞】

 ◆Soundtrack Stars Award Special award Best Contemporary Actor
 ◎坂本龍一

 ◆ロベール・ブレッソン賞(Fondazione Ente dello Spettacolo Robert Bresson Award)
 ◎アモス・ギタイ

 ◆Jaeger-LeCoultre Glory to the Filmmaker 2013 prize
 ◎エットーレ・スコラ


 ◆L'Oreal Paris per il Cinema Award
 ◎Eugenia Costantini


 ◆Persol Award
 ◎アンジェイ・ワイダ


 ◆Premio Bianchi
 ◎エンツォ・ダロ(Enzo d’Alò)

 ◆Premio Gillo Pontecorvo Arte e Industria
 ◎ワルテル・ヴェルトローニ(Walter Veltroni)(イタリアの政治家)

 ◆生涯金獅子賞(The Golden Lion for Lifetime Achievement)
 ◎ウィリアム・フリードキン


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 【感想】

 順当な評価と、イタリア寄りの評価と。
 今回のベネチア国際映画祭コンペティション部門の受賞結果からは、そんな印象を抱きました。

 星取表やヨーロッパのメディアの評価からすると、フリアーズの『あなたを抱きしめる日まで』とツァイ・ミンリャンの“Jiaoyou (Stray Dogs)”の2本は特に高く評価されていて、上位の賞を獲るのは、まず間違いないだろうと予想されました。

 また、星取表の評価では、今回、評価が分かれる作品が2本あり、それは、ジョナサン・グレイザーの“Under The Skin”と、ジャンニ・アメリオの“L'intrepido”でした。
 “Under The Skin”は、SF作品なので、どうしてそんなに高く評価されるのか、ちょっとその感覚がつかめないのですが、高く評価しているのはなぜかイギリスのメディアばかりであり、イギリスは、『月に囚われた男』や『モンスターズ/地球外生命体』といった低予算SFを高く評価する傾向があるので、この作品に対する高評価もそういう感覚なのかもしれません。
 審査員長がベルトルッチだし、“Under The Skin”が上位の賞を獲ることはないんじゃないかと思っていましたが、オフィシャルの賞はもちろん、外部の賞も全くかすりもしませんでした。あるいは、審査員長がテリー・ギリアムあたりだったら、ひょっとしたら上位の賞を受賞していたかもしれません。また、今後、“Under The Skin”は、イギリス国内の映画賞で受賞を重ねていくような気もしますね。

 “L'intrepido”は、概してイタリアのメディアから低い評価を受けていました。監督がジャンニ・アメリオなので、ある程度以上の感動作には仕上がっているはずですが、何が気に入らないのか、厳しい評価ばかりでしたね。

 3本あるイタリア映画のうち、どれか1本に賞を与えるとしたら、“L'intrepido”なんじゃないかというのが、事前の予想でしたが、結果的に“L'intrepido”にはオフィシャルの賞は全く与えられず、“Sacro Gra”にまさかの金獅子賞、“Via Castellana Bandiera”に女優賞という、意外な結果に終わりました(女優賞は想定内でしたが)。
 ベテランの待望の新作や俊英の期待作が並ぶコンペティションの中に、たとえば、小川紳介の作品を1本入れておいたら、もの凄く違和感があって、なんでこれが入ってるのか疑問視されていたのに、結果的に小川紳介の作品が最高賞をさらっていったとか、そういう感覚に近いかもしれません。
 他のコンペ作品と比べて、この作品がベストだったというより、これを最高賞に選ぶことで、他の賞では得られなかった効果(注目度アップや世界的なセールス)を狙った、ということなのでしょうか。
 たぶん観れば、いい作品なのだろうとは思いますが、果たしてどれだけ化けるか。アピチャッポン・ウィーラセタクンが『ブンミおじさんの森』で一躍全世界に「発見」された時のようなことが起こるかどうか。日本でもたぶん劇場公開されることになるでしょうが、この監督の旧作まで紹介されるほどのポテンシャルを見せてくれるかどうか……。

 基本的に、今回の受賞結果は、イタリア映画を除外すれば、大体押さえるべき作品は押さえられているようですが、全体としてはベルトルッチの意向が反映されているというか、ベルトルッチに気を使ったというか、ベネチア国際映画祭70周年を祝うムードもあり、コンペティション部門もそういう方向(イタリア寄り)流れたという、そんな感じはしますね。

 ま、映画の評価なんて相対的なものだし、誰がやっても似たような結果になるなら、そんな審査員に意味はないわけで、2013年のベネチアで、ベルトルッチを審査員長とする審査員団が選んだ結果がこれなら、この結果にこそ意味があるのだろうと思います。

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 【データなど】

 今回は、英語作品が約半数を占めたのに、結果的にオフィシャルの賞を受賞したのは、『あなたを抱きしめる日まで』の脚本賞と“Joe”の新人賞だけだった。

 イタリア映画の金獅子賞は、1998年のジャンニ・アメリオ『いつか来た道』以来15年ぶり。共同製作を除けば、9本目。

 ドキュメンタリーが金獅子賞を受賞するのは、これが初めて。

 金獅子賞の受賞記録は、2作品が最高で、現在4人の監督がタイ記録となっていて、ツァイ・ミンリャンとジャンニ・アメリオのどちらかが受賞すれば、それに並ぶはずだったが、果たされなかった。

 ギリシャ映画がオフィシャルの賞を受賞したのは、1988年『霧の中の風景』の監督賞、2011年“Alps”の脚本賞に続いて、3作目。

 台湾映画がオフィシャルの賞を受賞したのは、1989年『悲情城市』の金獅子賞、1994年の『愛情萬歳』の金獅子賞、2007年の『ラスト、コーション』の金獅子賞&撮影賞に続き、4作目。

 デイヴィッド・ゴードン・グリーンは、ベルリン国際映画祭での監督賞(銀熊賞)受賞に続き、3大映画祭で連続受賞を果たした。

 今回は、3大映画祭のコンペティション部門初参加の監督が8人いたが(ジョン・カラン、Gianfranco Rosi、Emma Dante、Philip Gröning、Alexandros Avranas、グザヴィエ・ドラン、ジェームズ・フランコ、Peter Landesman)、そのうち4人にオフィシャルな賞が贈られた。そういう意味では、「若手」志向の賞分配だった。

 アモス・ギタイは、コンペティション部門に選出されることが多いが、今回も(オフィシャルの)賞は受賞できなかった。

 そのほかの部門を含め、日本映画は1つも賞を獲得できなかった。こんなにたくさんの賞があるのに。

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 コンペティション部門以外では、Orizzonti部門の“Still Life”(英・伊)と、ベネチア・デイズの“La Belle Vie(The Good Life)”(仏)、批評家週間の“Zoran, Il Mio Nipote Scemo”(伊・スロヴェニア)が複数の賞を受賞しているので、特に要注目です。

 
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 *当ブログ記事

 ・ベネチア国際映画祭2013 コンペティション部門 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201307/article_20.html
 ・ベネチア国際映画祭2013 アウト・オブ・コンペティション部門、Orizzonti部門、ベネチア・クラシックス部門 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201308/article_4.html
 ・ベネチア国際映画祭2013 ベネチア・クラシックス部門、批評家週間、ベネチア・デイズ ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201308/article_5.html
 ・ベネチア国際映画祭2013 追加上映作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201308/article_10.html
 ・ベネチア・デイズ 人気投票50作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201307/article_14.html

 ・ベネチア国際映画祭2013 コンペティション部門 星取表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201308/article_15.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2013年5月~12月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_9.html

 追記:
 ・金獅子賞を受賞したジャンフランコ・ロージ監督について調べてみました:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_17.html

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