ロサンゼルス映画祭2012 受賞結果!

 ロサンゼルス映画祭2012(6月14日-24日)の受賞結果です。

 【ロサンゼルス映画祭】

 ロサンゼルス映画祭は、前身がロサンゼルス・インディペンデント映画祭(1995年スタート)で、2001年よりロサンゼルスを拠点とするFilm Independent(前身はIFP)に吸収されて、ロサンゼルス映画祭となり、インディペンデント映画、ドキュメンタリー映画、短編映画、ミュージック・ビデオに特化した映画祭となっています。

 米国内で開催される映画祭規模としては、中規模で、約40カ国から、100本の長編、100本の短編、50本のミュージック・ビデオが上映され、約8万人の観客が来場する、という風に説明されています。(東京国際映画祭で総来場者数は公称約30万人です。)

 基本的には、無名の監督の知られざる作品ばかりですが、その中から新たな才能を見出すところに、この映画祭の醍醐味があるのだろうと思います。(といっても、先行する映画祭で上映されて、話題になった作品がいくつも含まれていますが。)

 過去の受賞作品の中には、米国アカデミー賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた『フロム・イーブル~バチカンを震撼させた悪魔の神父~』“Deliver Us from Evil”や『ヤング@ハート』、『ソウル・パワー』、短編では、米国アカデミー賞2010短編映画賞にもノミネートされた『アブラカタブラ』“Instead of Abracadabra”などがあります。
 このクラスの作品が含まれているとするなら、今年の受賞作もそこそこ期待していいのではないでしょうか。

 今年の受賞結果は、以下の通りです。

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 【ナラティヴ・コンペティション部門】

 ・“All is Well(Por Aqui Tudo Bem)”(ポルトガル) 監督:Pocas Pascoal [北米プレミア]
 ・“A Night Too Young(Prílis Mladá Noc)”(チェコ・スロヴァキア) 監督:Olmo Omerzu [北米プレミア]
 ・“Breakfast with Curtis”(米) 監督:Laura Colella [ワールド・プレミア]
 ・“Crazy & Thief”(米) 監督:Cory McAbee [北米プレミア]
 ・“Dead Man's Burden”(米) 監督:Jared Moshé [ワールド・プレミア]
 ・“Four”(米) 監督:Joshua Sanchez [ワールド・プレミア]
 ・“Pincus”(米) 監督:David Fenster [ワールド・プレミア]
 ・“Red Flag”(米) 監督:Alex Karpovsky [ワールド・プレミア]
 ・“The Compass is Carried by the Dead Man(La Brújula la lleva el Muerto)”(メキシコ) 監督:Arturo Pons [北米プレミア]
 ・“Thursday till Sunday(De Jueves a Domingo)”(チリ・オランダ) 監督:Dominga Sotomayor [北米プレミア]

 ◆最優秀長編ナラティヴ賞(Narrative Award (for Best Narrative Feature))
 ◎“All is Well(Por Aqui Tudo Bem)”(ポルトガル) 監督:Pocas Pascoal [北米プレミア]
 出演:Ciomara Morais、Cheila Lima、William Brandao、Vera Cruz
 物語:アンゴラの内戦を逃れた美しい姉妹がリスボンにやってくる。見知らぬ土地で、彼らは母との合流を待つ。うち棄てられた建物に住み、社会の底辺で生き抜こうとする。お金が底を尽き、まわりの人間に怯える。手を貸してくれたのは難民仲間だったが、彼らが助けたのには彼らなりのわけがあった……。
 監督自身の経験に基づく物語。

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 ◆オナラブル・メンション 長編ナラティヴ部門 (Honorable Mention (for Best Narrative Feature))
 ◎“Thursday till Sunday(De Jueves a Domingo)”(チリ・オランダ) 監督:Dominga Sotomayor [北米プレミア]
 出演:Santi Ahumada、Emiliano Freifeld、Francisco Pérez-Bannen、Paola Giannini
 物語:チリ人家族を主人公とするロード・ムービー。一家は、休日旅行をするために車に乗っている。家族は崩壊の危機にあるが、誰もそのことは口にしない。子供たちはビーチに行きたいと考え、父親は家族から離れてアパートで暮らすことを考えている。母親はもう既に存在しない場所にいまだに固執している。みんな、これが最後の家族旅行になるだろうということは薄々気がついている。
 ほとんどのシーンは車の中で撮影されている。
 監督のDominga Sotomayor Castilloは、1985年チリ生まれ。いくつかの短編を発表し、本作で長編監督デビュー。2010年にはカンヌ国際映画祭のシネフォンダシオン部門に“Thursday Till Sunday”のプロジェクトをエントリーし、助成を得ている(2012年完成予定)。第2監督長編“Late to Die Young”は、エルサレム・インターナショナル・フィルム・ラボとバインガー・フィルムラボのプロジェクトにより製作中。
 撮影監督は、フアン・パブロ・レベージャ& パブロ・ストール監督の『ウィスキー』(2004)、ルクレシア・マルテル監督の『頭のない女』(2008)、ナタリア・スミルノフ監督の『幸せパズル』(2010)を手がけるバルバラ・アレバレス。
 ロッテルダム国際映画祭2012 タイガーアワード受賞。
 トランシルヴァニア国際映画祭2012 コンペティション部門出品。撮影賞受賞。

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 ◆最優秀パフォーマンス賞 長編ナラティヴ部門(Best Performance in the Narrative Competition)
 ◎ウェンデル・ピアース(Wendell Pierce)、Emory Cohen、E・J・ボニーリャ(E.J. Bonilla)、アヤ・ナオミ・キング(Aja Naomi King) “Four”(米) 監督:Joshua Sanchez

 “Four”(米) 監督:Joshua Sanchez [ワールド・プレミア]
 出演:ウェンデル・ピアース(Wendell Pierce)、Emory Cohen、E・J・ボニーリャ(E.J. Bonilla)、アヤ・ナオミ・キング(Aja Naomi King)
 物語:7月4日の蒸し暑い夜。孤独な魂が他者とのつながりを求めている。ジョーは、40代の既婚の黒人で、妻は病に臥している。彼は、妻の世話を娘アビゲイルに命じて外出するが、彼が、家族には内緒で会いに行った相手は、同性愛者の集まるサイトで知り合った少年ジューンだった。ジューンは、娘と同じくらいの年齢の少年で、ジョーは、上から目線で、ジューンに個人的な質問を浴びせ、彼の好みにはお構いなしで、自分のやり方で話を進めていく。ジューンは、じっとそれに耐えるが、いまはまだこの関係を壊したくなかった。一方、母の世話を押し付けられたアビゲイルは、ずっと家にいることに耐えられず、スクールメイトの白人の少年デクスターに声をかけて、デートする。デクスターは、白人なのに、ステレオタイプの黒人を演じようとしていて、アビゲイルは、彼のそうしたポーズを取り払って、もっと深い関係になりたいと思っていたのだ……。
 クリストファー・シン(Christopher Shinn)によるピュリッツァー賞ファイナリスト、オビー賞受賞の同名戯曲の映画化作品。

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 【ドキュメンタリー・コンペティション部門】

 ・“A Band Called Death”(米) 監督:Jeff Howlett、Mark Covino [ワールド・プレミア]
 ・“Birth Story: Ina May Gaskin and The Farm Midwives”(米) 監督:Sara Lamm、 Mary Wigmore [ワールド・プレミア]
 ・“Call Me Kuchu”(米) 監督:Katherine Fairfax Wright、Malika Zouhali-Worrall [USプレミア]
 ・“Sun Kissed”(米) 監督:Maya Stark、Adi Lavy [ワールド・プレミア]
 ・“Vampira and Me”(米) 監督:R. H. Greene [ワールド・プレミア]
 ・“Drought”(メキシコ) 監督:Everardo González [USプレミア]
 ・“The Iran Job(Germany, Iran, USA”(独・イラン・米) 監督:Till Schauder [ワールド・プレミア]
 ・“Words of Witness”(エジプト・米) 監督:Mai Iskander [北米プレミア]

 ◆最優秀長編ドキュメンタリー賞(Documentary Award (for Best Documentary Feature))
 ◎“Drought”(メキシコ) 監督:Everardo González [USプレミア]
 メキシコの北部乾燥地帯にある畜産農家のコミュニティー。カメラは、そこで暮らす農夫やカウボーイたちの生活を映し出す。ディナーの食卓、学校へでかける子どもたち、村の祝祭、馬のレース、洗礼式……。深刻な悩みは、雨が降らないことだ。雨が降らなくては、彼らの生活は行き詰まってしまう。以前に比べても土地は乾き、家畜も弱ってきている。

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 ◆観客賞 長編ドキュメンタリー賞(Audience Award for Best Documentary Feature)
 ◎“Birth Story: Ina May Gaskin and The Farm Midwives”(米) 監督:Sara Lamm、 Mary Wigmore [ワールド・プレミア]
 1971年、Ina May Gaskinは、夫とともに、テネシー州にThe Farmというコミューンを築く。そこで、彼女は、助産婦たちと一緒に、The Farm Midwifery Centerを作るが、それは米国で作られた病院外の出産施設のパイオニアとなった。今でも彼らは、The Farm Clinicとして州内で活動を続けていて、肥大化する病院文化からの介入や帝王切開と闘い続けている。

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 【短編コンペティション部門】

 全48作品。

 ◆最優秀ナラティヴ短編賞(Best Narrative Short Film)
 ◎“The Chair”(米) 監督:Grainger David
 物語:小さな町に謎の病原菌が広まる。1人の少年が、母の死に直面する。住人はみんなマスクをして生活するようになり、祖母は古いソファに怯える。彼は、何の前触れもなく突然襲ってきて、短期間で大きな被害を与え、そして来た時と同様に忽然と消え去ったペストの原因について考える。
 SXSW映画祭2012 ナラティヴ・ショート部門 審査員賞受賞。
 カンヌ国際映画祭2012 短編コンペティション部門出品。
 エジンバラ国際映画祭2012 インターナショナル短編コンペティション部門出品。

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 ◆最優秀短編ドキュメンタリー賞(Best Documentary Short Film)
 ◎“Kudzu Vine”(米) 監督:Josh Gibson
 つるを伸ばして葉を生い茂らせ、地面や壁面を覆いつくしてしまう葛。そんな葛についての詩的なドキュメンタリー。その歴史と南部の人々との結びつきを紹介する。
 スラムダンス映画祭2012 ‘The Five Flavors of Filmmaking’ Competition部門出品。Panasonic AF100 Award 受賞。
 Black Maria Film Festival 2012 ドキュメンタリー部門グランプリ(The Juror’s Stellar Award) 受賞。

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 ◆最優秀短編アニメーション/短編実験映画(Best Animated/Experimental Short Film)
 ◎“The Pub”(英) 監督:ジョゼフ・ピアス(Joseph Pierce)
 物語:Kemiは、北ロンドンの空気のよどんだパブで生活し、働いている。そこでは酒が注がれるにつれ、バー・カウンターの内と外の区別が曖昧になってくる。
 『ファミリー・ポートレート』“Family Portrait”(2009)のジョゼフ・ピアス最新作。
 ジョゼフ・ピアスは、平成22年度海外メディア芸術クリエイター招聘事業「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京2010-2011」の3人のうちの1人に選ばれています。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 パノラマ部門出品。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2012 アウト・オブ・コンペティション 短編部門出品。

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 ◆観客賞 短編部門(Audience Award for Best Short Film)
 ◎“Asad”(南ア・米) 監督:Bryan Buckley
 物語:戦争の被害を受けたソマリアの村。1人の少年が、海賊になるか、それとも正直な漁師になるかという選択肢の間で、道徳的なジレンマに陥っている。
 トライベッカ映画祭2012 最優秀ナラティヴ・ショート。

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 【その他の賞】

 ◆観客賞 長編ナラティヴ部門(Audience Award for Best Narrative Feature)
 ◎“Beasts of the Southern Wild”(米) 監督:Benh Zeitlin
 出演:Quvenzhané Wallis、Dwight Henry
 物語:「不屈の心を持つ6歳の少女ハッシュパピーは、父のウィンクと共にルイジアナの臨海湿地帯バイユーに暮らしている。「バスタブ」と呼ばれるその小さなコミュニティは長い堤防で産業地帯や通常の文化生活と隔てられ、まるで世界の果てのよう。大きな嵐が来ると堤防でせき止められた水はどこにも行きようがなく、バスタブはすっかり水没してしまう。住人は水上共同避難所を作って暮らすことになるが、誰もバスタブを後にする者はいない。謎の病に冒されているウィンクの健康は日を追って悪化し、自分がいなくなった後の世界でハッシュパピーが強く生きていけるよう、父は娘を懸命に訓練する。ウィンクの心臓が痛むのと呼応するように、世界の鼓動が突然速く強く乱れる。南極では棚氷から巨大な氷塊が離れ、海上を漂い始めた。氷の中に眠っているのは前史時代の獣、オーロクたち。そんな中ハッシュパピーは、物心つく前にいなくなった母親を捜して海に泳ぎ出る。」
 南ルイジアナ沿岸が浸水危機に陥ったというエピソードにインスパイアされて作られた神話風の物語。
 短編“Glory at Sea”(2008)で数々の賞を受賞したBenh Zeitlinの初監督長編。
 NHK・サンダンス国際映像作家賞2010 アメリカ部門受賞。
 サンダンス映画祭2012 審査員グランプリ&撮影賞受賞。
 カンヌ国際映画祭2012 ある視点部門出品。カメラドール、国際批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンション、Prix Regards Jeunes受賞。

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 ◆観客賞 最優秀インターナショナル長編作品(Audience Award for Best International Feature)
 ◎“Searching for Sugar Man”(スウェーデン・英) 監督:Malik Bendjelloul
 ロドリゲスは、70年代のアメリカのロック界最大のイコンであった。彼は、同世代の偉大なるレコーディング・アートストとして歓迎され、全く異なる形でどん底から再起を果たそうとするが、忘却の彼方に消え去ってしまう。
 サンダンス映画祭2012審査員特別賞/アーティスティック・スピリット賞&観客賞受賞。
 SXSW映画祭2012 24 Beat Per Second部門出品。
 モスクワ国際映画祭2012 短編部門グランプリ受賞。

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 ◆観客賞 ミュージック・ビデオ部門(Audience Award for Best Music Video)
 ◎Man Man“Piranhas Club”(米) 監督:Lex Halaby



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 Film Independentが主催している映画祭だけあって、インディペンデント・スピリットに満ちた、フレッシュで、実力勝負な作品が揃っています。

 サンダンス映画祭に通じるセンスも感じられ、作品の完成が半年早かったら、サンダンス映画祭で上映されたかもしれない作品も多いのですが、スターを起用したり、監督自身に既にネームバリューがあったりして、最初から話題性十分な作品も多くなっているサンダンス映画祭に比べ、こちらはまだまだ作品本位で、企画やアイデアで、ストレートに勝負していると感じられます。

 “Four”は、インディペンデント系、LGBT系、黒人系といろいろな映画賞で広がりが得られそうですし、“Drought”は映画賞レースのドキュメンタリー部門で、“All is Well(Por Aqui Tudo Bem)”は国際的な映画賞や映画祭でどんどん受賞を重ねていく予感がします。

 もう既に2012年を代表するインディペンデント作品になりつつある“Beasts of the Southern Wild”や“Searching for Sugar Man”がここでも受賞を重ねていることも注目されます。

 なお、日本からの出品作は、平林勇監督の『663114』(短編コンペティション部門)と須藤元気監督のWorld Order “Machine Civilization” (ミュージック・ビデオ部門)の2作品のみでした。

 
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 *当ブログ記事
 ・ロサンゼルス映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200907/article_2.html
 ・ロサンゼルス映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201007/article_4.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2012年6月~2013年1月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_9.html

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