注目作アリ! ロサンゼルス映画祭2010 受賞結果発表!

 ロサンゼルス映画祭の各賞の結果が発表になりました。(開催期間は6月17日~27日)

 ロサンゼルス映画祭は、前身がロサンゼルス・インディペンデント映画祭(1995年スタート)で、2001年よりロサンゼルスを拠点とするFilm Independent(前身はIFP)に吸収されて、ロサンゼルス映画祭となり、インディペンデント映画、ドキュメンタリー映画、短編映画、ミュージック・ビデオに特化した映画祭となっています。

 米国内で開催される映画祭規模としては、中規模で、約40カ国から、100本の長編、100本の短編、50本のミュージック・ビデオが上映され、約8万人の観客が来場する、という風に説明されています。(東京国際映画祭で総来場者数は公称約30万人です。)

 基本的には、無名の監督の知られざる作品ばかりですが、その中から新たな才能を見出すところに、この映画祭の醍醐味があるのだろうと思います。(といっても、先行する映画祭で上映されて、話題になった作品がいくつも含まれていますが。)

 昨年の受賞作品の中には、米国アカデミー賞2010短編映画賞にもノミネートされた“Instead of Abracadabra”(短編映画部門観客賞)や、日本でも公開中の『ソウル・パワー』(ドキュメンタリー部門観客賞)、“The Stoning of Soraya M.”(ナラティヴ部門観客賞)などがあります。『ソウル・パワー』も“The Stoning of Soraya M.”も2008年のトロント国際映画祭のワールド・プレミア作品ですが、米国内での上映としてはわりとプレミア度の高い上映機会となっています。

 もう少し遡ると、受賞作品には、米国アカデミー賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた“Deliver Us from Evil”や『ヤング@ハート』といった作品もありますから、このクラスの作品が含まれているとするなら、今年の受賞作もそこそこ期待していいのではないでしょうか。

 今年の受賞結果は、以下の通りです。

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 ◆ナラティヴ・コンペティション部門 最優秀作品
 ◎“A Family(En Familie)”(デンマーク) 監督:Pernille Fischer Christensen
 出演:イェスパー・クリステンセン(Jesper Christensen)、Lene Maria Christensen、Pilou Asbæk 、アンヌ・ルイーセ・ハシング(Anne Louise Hassing)
 物語:ディッテは、画廊経営で成功して、夢のニューヨーク進出がもうすぐ目の前に迫り、恋人のペーターとニューヨークでの新生活のプランを練っていた。しかし、彼女の最愛の父が重病に倒れ、彼女は父につきっきりで介護することになる。父の願いは、彼が王室御用達にまで成長させたパン工房を娘に継いでもらうことだったが、それはディッテがずっと抱いてきた夢を諦めることであった……。
 ベルリン国際映画祭2010 コンペティション部門出品、国際批評家連盟賞受賞。

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 ◆アンサンブル賞
 ◎Sabrina Lloyd、James Urbaniak、Lynn Cohen、Harry Chase、Nate Smith、Kamel Boutros “Hello Lonesome”(米) 監督:Adam Reid
 物語:性格に問題のあるナレーターは、妻に出て行かれ、娘にも相手にされず、顔なじみの配達員との友情を育む。年輩の未亡人は運転免許が切れて、若い隣人に昔ながらの近所づきあいと親切を期待する。若いスポーツ愛好家は、ネットで知り合った女性と思いがけず恋に落ちるが、交際はさらに思いがけないものだった……。

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 ◆ナラティヴ・コンペティション部門 観客賞
 ◎“Four Lions”(英) 監督:Christopher Morris
 出演:Riz Ahmed、Arsher Ali、Nigel Lindsay、Kayvan Novak、Adeel Akhtarn
 物語: 主人公は、シェフィールドに住むムスリムの男たち。彼らは、世の中でのムスリムの扱いに憤慨して、自爆テロに身を投じることに決める。メンバーのうち、オマールとワジは、パキスタンのテロリスト訓練キャンプに参加。残りのメンバーのうち、バリーは改宗者で、ファイサルは、カラスを使って、爆弾を爆発させる訓練をし、オマールとワジの不在中に、5人目のメンバーとしてハッサンが加わる。ファイサルが訓練中に事故死してしまった後、4人はテロのターゲットをロンドン・マラソンに定める……。
 サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品。
 監督のChristopher Morrisは、ラジオDJからキャリアをスタートさせた風刺作家で、その後、テレビにも進出し、イギリスでは知らぬ者がいないほどの人気者となる。本作は、彼にとっての長編監督デビュー作。
 シノプシスからはシリアスな作品のように感じられますが、「テロリストを題材にしたコメディー」という風に紹介されています。まあ、一口にコメディーと言っても、いろんなタイプの作品があるわけですが。

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 ※審査員:director Charles Burnett(監督)、Larry Karaszewski(脚本家/プロデューサー)、Ella Taylor(映画批評家(LAウィークリー))

 ◆ドキュメンタリー・コンペティション部門 最優秀作品
 ◎“Make Believe”(米・日・南ア) 監督:J. Clay Tweel [ワールド・プレミア]
 毎年、ラスベガスでは10代のマジシャンのチャンピオン大会(Teen World Champion at the World Magic Seminar)が開催されるが、本作ではそこに参加する6人の若者を追う。シカゴの若者は几帳面に自分の小道具を整え、コロラドの風変わりな少年はトランプのトリックを練習する。アクロバティックな手品を得意とする南アフリカの2人組は、コミカルさに磨きをかけ、マリブの女性マジシャンは輪を使ったマジックの完成度を高め、日本の少年(原大樹)は、マジックの殿堂(ハリウッドにある世界的に有名なマジック専用会員制クラブ「マジックキャッスル(MAGIC CASTLE)」)でパフォーマンスすることを夢見る……。


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 ◆ドキュメンタリー・コンペティション部門 観客賞
 ◎“Thunder Soul”(米) 監督:Mark Landsman
 1970年代にセンセーションを巻き起こした高校生バンドKashmere Stage Bandについてのドキュメンタリー。ヒューストンの黒人高校の音楽教師コンラッド・O・ジョンソンは、高校生バンドにコンテンポラリー・ジャズやファンク、オリジナル曲などを教えて、彼らを一級のバンドに育て上げる。バンドのメンバーには、プロになった者もいれば、ならなかった者もいるが、このバンドの特異なところは、卒業してもなおバンドにとどまって、レッスンを続けたことだと言う。卒業生の1人は話す、「先生の教えてくれたのは、単に音楽ではなく、人間(Men)になる方法だった」と。

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 ※審査員:Karen Moncrief(監督/女優)、Arthur Dong(監督)、Robert Abele(映画批評家/ジャーナリスト)

 ◆最優秀ナラティヴ短編賞
 ◎“My Invisible Friend”(西) 監督:Pablo Larcuen
 物語:誰しも想像上の友人を持っているものだ。だが、トマスのそれは最良の友人だった。

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 ◆最優秀短編ドキュメンタリー賞
 ◎“The Lucky Ones(Szczesciarze)”(ポーランド) 監督:Tomasz Wolski
 ポーランド政府の登記事務所(Polish government registry office)の窓口を通して、人生のマイルストーンを映し出す。
 監督のTomasz Wolskiは、クラクフ映画祭の常連です。

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 ◆最優秀短編アニメーション賞
 ◎“Wonder Hospital”(韓・米) 監督:Beomsik Shimbe Shim
 3DとCGとパペット・アニメーションを使って、ややこしい「美の幻想」について描く。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 コンペティション部門出品。

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 ◆短編部門 観客賞
 ◎“Dock Ellis & LSD No-No”(米) 監督:James Blagden
 LSD中毒者の幻覚的日常を描いた作品。
 サンダンス映画祭2010短編 栄誉賞(Honorable Mentions in Short Filmmaking)受賞。
 Webby Awards 2010 オンライン映画&ビデオ・カテゴリー アニメーション部門ノミネート。

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 ※審査員:Sandra Tsing Loh(作家/パフォーマー)、Andrew Garfield(俳優)、Tommy O’Haver(監督)

 ◆観客賞 最優秀インターナショナル長編作品部門
 ◎“Presumed Guilty(Presunto Culpable)”(メキシコ) 監督:Roberto Hernández、Geoffrey Smith
 メキシコでは、被告の93%が判事に会うこともなく裁かれ、断罪の92%は物証がないまま行なわれる。José Antonio Zuñiga Rodríguezは、2005年の12月に、メキシコシティの通りで警官に止められ、全く身に覚えのない罪を被せられる。そして、会ったこともない男に対する殺人罪で懲役20年の刑を宣告される。彼のアリバイを証明する目撃者に事情聴取を行なわれることもなかったし、起訴では彼が銃を発砲したという証明も行なわれなかった。さらに悪いことに、彼の代理人は、偽造免許で裁判に臨み、彼を見たという唯一の目撃者は警察の最初の容疑者であった。
 メキシコ人の若い弁護士Roberto HernándezとGeoffrey Smithが、映画を通して、誤って有罪判決を下されたJosé Antonio Zuñiga Rodríguezの潔白を証明しようとする。
 トロント国際映画祭2009 REAL TO REEL部門出品。
 グアダラハラ国際映画祭2010 メキシコ映画ドキュメンタリー・コンペティション グランプリ受賞。

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 ◆観客賞 最優秀ミュージック・ビデオ
 ◎OK Go:“This Too Shall Pass” 監督:James Frost、OK Go、Syyn Labs

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 けっこう面白そうな作品が揃っているのですが、一番の注目は何と言っても、“Make Believe”ですね。

 ちょっと調べればわかることなので、書いてしまいますが、“Make Believe”で取り上げられる5組6人の若手マジシャンの中で、Teen World Champion at the World Magic Seminarに優勝するのは、日本の原大樹で、その結果、彼はマジックキャッスル(MAGIC CASTLE)でパフォーマンスすることを許された最年少のマジシャンになるんだそうなのです。

 『チャレンジ・キッズ 未来に架ける子どもたち』とか、『ステップ!ステップ!ステップ!』とか、『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』とか、『ファイティング・シェフ~美食オリンピックへの道』とか、コンテストものには面白いものが多いですから、これも期待できそうです。

 調べてみると、この作品には、溝口友作さんが編集した日本版(たぶん原大樹さんをよりクローズアップした形で編集し直したもの)があるようなので、元々、日本での上映を前提に映画を作った、あるいは、取り上げる候補の1人として原大樹を選んだ時点で、映画のマーケットとして日本を考えて製作を進めた、ということなのかもしれません。
 作品に関する情報の中には、日本の配給会社は明記されていないので、劇場公開が確定しているわけではないらしいのですが(そもそもこの作品はロサンゼルス映画祭がワールド・プレミアでした)、日本でも何らかの形で上映機会を設けてもらえると期待しちゃってもいいのではないでしょうか。

 原大樹の父はアート作家の原秀雄であり、母は歌手でエッセイストの原水音であるということですから、映画の中では、彼の育ったそういう生活環境にも触れられているのかもしれません。楽しみですね。

 監督のJ. Clay Tweelは、IMDbで調べた限りでは、これが監督デビュー作らしいのですが、ドンキー・コングの記録保持者Billy Mitchellと、25年ぶりに彼の記録を破ったSteve Wiebeについてのドキュメンタリー“The King of Kong: A Fistful of Quarters”(2007)で、製作・撮影・編集を担当したりもしています。同作は、2007-2008年の映画賞レースで数々の映画賞にノミネート&受賞していますから、彼はドキュメンタリー映画製作に関して、ユニークなセンスを持っていると考えていいのではないでしょうか。

 *関連サイト
 ・“Make Believe”公式サイト(英語):http://www.makebelievefilm.com/
 ・マジシャン原大樹(ひろき)公式サイト(日本語・英語・中文):http://hara.rakurakuhp.net/
 ・マジシャン原大樹(ひろき)公式ブログ:http://ameblo.jp/magihara/
 ・原大樹に関するWikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%A4%A7%E6%A8%B9
 ・原一家(奥熊野の気を表現する、かづらアート作家・原秀雄(父)と、歌手でエッセイスト・原水音(みお)(母)、マジシャン・原大樹(ひろき))の公式サイト「気アートの世界」:http://www.ki-art.net/
 ・原秀雄(父)のブログ「熊野 Spiritual Art of Nature」:http://blog.sq-life.jp/hideo/
 ・原水音(母)のブログ「ひとつらなりの いのち」:http://blog.sq-life.jp/mio/
 ・溝口友作公式ブログ:http://ameblo.jp/yusaku-mizoguchi/

 なお、ロサンゼルス映画祭で上映された日本作品は以下の通りです。

 ・『UDON』 監督:本広克行 Our Guest Artist部門
 ・『ゴールデンスランバー』 監督:中村義洋 International Showcase部門 [北米プレミア]
 ・『パレード』 監督:行定勲 ナラティヴ・コンペティション部門 [北米プレミア]

 【日本のミュージック・ビデオ(Big In Japan: A Selection of Japanese Music Videos)】
 ・APOGEE:『1.2.3』“1, 2, 3” 監督:田中裕介(CAVIAR)
 ・オーディオ・フード:“dumdumdum” 監督:さかもと しょうた
 ・OVe-NaXx:『おぶけやしき』“Oveheyashiki” 監督:rokapenis
 ・KREVA:『瞬間speechless』“Shunkan Speechless” 監督:大喜多正毅
 ・CORNELIUS:“Fit Song” 監督:辻川幸一郎
 ・CORNELIUS:『Like A Rolling Stone』“Like A Rolling Stone” 監督:辻川幸一郎
 ・CORNELIUS:『Tone Twilight Zone』“Tone Twilight Zone” 監督:辻川幸一郎
 ・サカナクション:『ネイティブダンサー』“Native Dancer” 監督:児玉裕一(CAVIAR)
 ・SAWA:“Swimming Dancing” 監督:児玉裕一(CAVIAR)、志賀匠
 ・SOUR:『半月』“Hangetsu” 監督:川村真司、佐藤匡
 ・SOUR:『日々の音色』“Hibi No Neiro” 監督:川村真司、Hal Kirkland、ナカムラマギコ、中村将良
 ・SOUR:『面影の先』“Omokage no Saki” 監督:川村真司、Hal Kirkland
 ・椎名林檎:『旬』“Shun” 監督:木村豊
 ・椎名林檎:“Tsugou no ii Karada” 監督:児玉裕一(CAVIAR)
 ・テイ・トウワ feat. 羽鳥美保:『Mind Wall』“Mind Wall” 監督:中村剛(CAVIAR)
 ・neco眠る:『えんがわでダンスホール』“Engawa De Dancehall” 監督:さかもと しょうた
 ・ボガルタ:“Message” 監督:さかもと しょうた
 ・MONKEY MAJIK:『SAKURA』“Sakura” 監督:丹下紘希
 ・ゆず:『いちご』“Ichigo” 監督:丹下紘希
 ・RADWIMPS:『おしゃかさま』“Oshakashama” 監督:掛川康典、永戸鉄也
 ・RIP SLYME:『GALAXY』“Galaxy” 監督:辻川幸一郎

 これらのほかに、アレックス・ギブニー監督が日本の相撲力士を取材したドキュメントを含むオムニバス・ドキュメンタリー“Freakonomics”という作品も上映されています(参加監督は、他に『スーパーサイズ・ミー』のモーガン・スパーロック、“Jesus Camp”のハイディ・ユーイング(Heidi Ewing)とレイチェル・グレイディ(Rachel Grady)、『ニュートーク・ドール』プロデューサーのセス・ゴードン(Seth Gordon)、『ボクシング・ベイビー』のユージン・ジャレキ(Eugene Jarecki))。

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 *当ブログ記事
 ・ロサンゼルス映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200907/article_2.html
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

 ・ロサンゼルス映画祭2010の全ラインナップ・リスト(英語):http://livingincinema.com/2010/05/04/la-film-festival-line-up-commence-teen-girl-shrieking/
 ・同上:http://www.filmthreat.com/festivals/21925/

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