ここでもタイ映画がグランプリ! トランシルヴァニア国際映画祭2010

 第9回トランシルヴァニア国際映画祭の受賞結果が発表になりました。(6月6日)

 トランシルヴァニア国際映画祭は、2010年前半に各国の映画祭で上映されて高い評価を得た作品ばかりを集めて、その中でさらに一等賞を選ぼう、というような国際映画祭なので、受賞作には粒よりの作品が多く、今年後半の映画賞レースを席捲するだろうというような作品を多数見出すことができます。

 といっても、なかなか日本に紹介されないようなクラスの作品ばかりなのですが、例えば、昨年の受賞作には、ノルウェー映画“Nord”、ルーマニア映画“Police,Adjective”、フランス・アフガニスタン共同製作作品“Kubuli Kid”、メキシコ・チリ共同製作作品“The Maid”、スリランカ映画『マチャン/大脱走』などがある、といえば、多少はこの映画祭の重要性はわかってもらえるでしょうか。

 今年の受賞作は、以下の通りです。

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 ◆グランプリ
 ◎“Mundane History”(2009/タイ) 監督:Anocha Suwichakornpong
 物語:役立たずの息子と、つかみどころのない父親と、車椅子の患者の面倒を看る看護士という3人の家族が織り成す物語。
 Anocha Suwichakornpongは、短編時代の作品“Graceland”(2006)は、カンヌ国際映画祭に公式出品された初めてのタイの短編映画となっていて、本作で長編監督デビューしています。
 釜山国際映画祭2009 ニュー・カレント部門上映作品。
 ロッテルダム国際映画祭2010タイガー・アワード受賞。

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 ◆監督賞
 ◎Calin Peter Netzer “Medal of Honor(Medalia de onoare)”(2009/ルーマニア・独) 
 物語:イオンは、75歳の年金受給者であるが、今になって第二次世界大戦時の英雄行為に対して勲章を授けると連絡を受ける。彼は、この勲章が何に対してもらえるのか思い出そうとするが、全く心当たりがない。国防省は書面での申請を求めてくるが、頼りの在郷軍人会はこの件に係わり合いになろうとはない。そんな彼に対し、周囲の人間は、自分のやったことも思い出せないのかと、冷ややかな目で見るが、これがお役所仕事による手違いだとわかり、被害者であるはずの彼は、もらえるはずのない勲章をもらおうとした、とさらなる嘲笑を受けてしまう。
 トリノ映画祭2009 Invitation to the Scuola Holden Award/脚本賞、観客賞
 テッサロニキ映画祭2009 審査員特別賞(Silver Alexander)、脚本賞(Tudor Voican)、男優賞(Victor Rebengiuc)、国際批評家連盟賞第50回大会記念賞、技術賞(The ETEKT Technical Excellence award)
 マイアミ国際映画祭2010 CINEUROPAスペシャル・メンション受賞。

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 ◆最優秀パフォーマンス賞
 ◎Victor Rebengiuc “Medal of Honor(Medalia de onoare)”(2009/ルーマニア・独) 監督:Calin Peter Netzer

 ◎Ozana Oancea “First of All, Felicia(Felicia înainte de toate)”(2009/ルーマニア) 監督:Razvan Radulescu、Melissa de Raaf
 物語:フェリシアは、年に一度の両親宅への訪問を済ませて帰ろうとしているが、元気な父はこれが見納めかもしれないという思いもあり、なかなか荷造りが進まない。空港まで送ってくれるはずの妹は都合が悪くなって来られず、代わりにタクシーを利用するが、渋滞にはまって、予定の飛行機には間に合わなくなる。仕方がないので、チケットの再発行をしていると、バッタリ、別れた夫の家族と出くわしてしまう。2つの家族が対面したことで、彼女は、両親の家を出てからの歳月、心に痛みを伴う19年間のことを振り返ることになる。

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 ◆最優秀撮影賞
 ◎Magnus Nordenhof Jonck “R”(2009/デンマーク) 監督:Tobias Lindholm、Michael Noer
 厳格が階層社会を形成し、裏の約束事がある刑務所という場所に放り込まれた青年ルネのサバイバルを描く。
 ロッテルダム国際映画祭2009コンペティション部門上映作品。
 ヨーテボリ映画祭2010 ノルディック・コンペティション部門グランプリ。

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 ◆審査員特別賞
 ◎“Last Conversation”(2009/オランダ) 監督:Noud Heerkens
 物語:40代半ばの弁護士アン。彼女は、車の運転中に電話をもらう。それは、長らく秘密の関係を続けていて、つい最近、別れたばかりの恋人からだった。その電話のせいで、彼女はまだ自分が彼に囚われていることに気づいて動揺し、運転にも集中できなくなってしまう……。
 モスクワ国際映画祭2009 パースペクティヴズ・コンペティション部門(新人監督部門)出品。

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 ◆ルーマニア・デー 最優秀長編賞
 ◎“If I want To whistle, I whistle(Eu când vreau să fluier, fluier)”(2010/ルーマニア・スウェーデン) 監督:Florin Şerban
 出演:George Piştereanu、Ada Condeescu、Clara Vodă、Mihai Constantin
 物語:シルビウは、あと5日で少年院から釈放されることになっていた。そこに、長年、音信不通だった母親が突然現れて、これからは次男は自分が育てると宣言する。次男のことは、これまで自分の息子のように面倒を見てきていたので、シルビウは、突然現れた母親に彼を連れ去られてしまうことが我慢ならず、何もできない5日間が苦痛で耐えられないほどになる。一方で、シルビウは、少年院にインターンとしてやってきていたソーシャルワーカーのアナに恋してもいて、この機会に、アナをさらって、少年院を脱走してしまおうと考える。
 ベルリン国際映画祭2010 コンペティション部門出品。銀熊賞(審査員グランプリ)&アルフレッド・バウアー賞受賞。

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 ◆ルーマニア・デー 最優秀短編賞
 ◎“The Cage(Colivia)”(2010/ルーマニア) 監督:Adrian Sitaru
 物語:息子が傷ついたハトを拾ってきて、家で飼いたいと言う。「ダメだ。そんなものを飼うための費用は誰が出すんだ?」と父は反対するが、息子は、鳥籠を買って、飼うと言って聞かない……。
 ベルリン国際映画祭2010 短編コンペティション部門The Daad Scholarship受賞。

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 ◆ルーマニア・デー 最優秀デビュー作品賞(Romanian Days Award for Best Debut)
 ◎Ozana Oancea “First of All, Felicia(Felicia înainte de toate)”(2009/ルーマニア) 監督:Razvan Radulescu、Melissa de Raaf

 ◆国際批評家連盟賞
 ◎“Christmas(Navidad)”(2009/チリ・仏) 監督:Sebastian Lelio
 物語:チリのサンチャゴのクリスマス・イブ。アレハンドロは17歳で、1歳年上のオーロラとつきあっている。彼女は、若くして父親を亡くしていたが、父の家が売れる前に、父との思い出の品を探そうと父の家に向かう。しかし、そこに16歳の少女アリスが隠れ住んでいるのを見つける……。

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 ◆Excellency Award
 ◎Liviu Ciulei(男優)
 Liviu Ciuleiは、50年代から70年代にかけて活躍した男優で、監督作品もあります。

 ◆生涯功労賞
 ◎Victor Rebengiuc(男優)
 Victor Rebengiucは、50年代から活躍している男優。

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 ◆生涯功労賞
 ◎ドリナ・レイザー(Dorina Lazar)
 ルーマニア映画への貢献に対して(for an outstanding personality of Romanian cinema)
 ドリナ・レイザーは、70年代から活躍している女優で、日本で上映されている作品には、コスタ=ガブラスの『アーメン』(2002)やフランシス・コッポラの『コッポラの胡蝶の夢』(2007)などがあります。

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 ◆生涯功労賞
 ◎ヴィム・ヴェンダース
 ヨーロッパ映画への貢献に対して(to an outstanding personality of European cinema.)

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 トランシルヴァニア国際映画祭2010ラインナップの記事は、当ブログでは、映画祭が始まる2週間前に書き、そこで「特別招待作品部門であるSupernova部門は廃止されたらしい」「昨年“Herb & Dorothy”を上映したドキュメンタリー部門もなくなってしまったらしい」と書いていますが、Supernova部門もドキュメンタリー部門もラインナップ発表が遅れただけで、なくなったりはしていませんでした。

 不景気で、映画祭の規模が縮小してしまったのかと思っていたら、そんなことはなかったんですね。なあ~だ、そうだったのか、という感じですが、カンヌやトロントとは違って、まめにHPをチェックしているわけではないので、うっかり見落としてしまいました。
 ま、だからといって、ここであえて、書き漏らしたラインナップを書き出すことはしませんが、気になる方は公式HP()英語またはルーマニア語をご覧ください。一応、念のため。

 *当ブログ記事
 ・トランシルヴァニア国際映画祭2010 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_15.html
 ・トランシルヴァニア国際映画祭2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_15.html
 ・トランシルヴァニア国際映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_10.html
 ・第6回ブカレスト国際映画祭 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_3.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

この記事へのコメント

白田麻子
2010年06月08日 19:23
ご無沙汰しています。ブログにコメント、ありがとうございます。ちゃんと、チェックさせていただいてますよ!しばらくブログ書けなさそうですが、ご容赦を。
umikarahajimaru
2010年06月08日 20:14
白田さま
恐れ入ります。
私のブログをどうこうということではなくて、タイ映画の専門家のコメントを読みたかっただけなんですけどね。
お忙しそうでなにより(?)ですが、時々はブログも更新してくださいね。楽しみにしております。

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