注目すべし! ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 受賞結果発表!

 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010の各賞が発表になりました。(6月5日)

 今回は、日本から多数の作品がエントリーされたこともあり、また、何人もの参加者がTwitterをしていたこともあって、現地の雰囲気やいろんな情報がストレートに伝わってきて、日本にいながらにして、映画祭を楽しむことができました。(これは、そのまま、引き続いて開催されるアヌシー国際アニメーションフェスティバルでも行なわれるはずです。)

 日本では、短編アニメーションの作り手とその周辺以外では、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルに関心を向けられることはなく、マスコミでもほとんど取り上げられたりはしませんが、今年は東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の一期生から3人もエントリーされ、東京藝術大学も最優秀学校賞を受賞するなどして、大いに盛り上がりを見せていました。

 東京藝術大学大学院映像研究科からは、指導教授を務める山村浩二監督と研究科長藤幡正樹氏が出席したんですが、会期半ばで参加監督たちで組まれたピクニックでは、会期中に誕生日を迎えた山村浩二監督を世界の名だたる監督たちが祝うというサプライズもあったようです。

 エントリーされた3人の藝大卒業生の中からは、田中美妃監督が学生部門スペシャル・メンションを受賞し、藝大関係者および日本からの参加者へのいい手土産になりました。(受賞作品は、すでにDVDに収録されて販売されているほか、6月19日からユーロスペースで開催されるGEIDAI-CINEMA #4でも上映されます。)

 下記写真の前列右から2番目が田中監督、その後ろが山村監督、その右が藤幡氏です。

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 ◆グランプリ
 ◎『雨の中の潜水夫(雨の中のダイバー)』“Tuukrid vihmas(Divers in the Rain)”(エストニア) 監督:オルガ・パルン、プリート・パルン
 物語:沈みゆく船を目の前にして、ずっと雨の中で待たされ続けるダイバーと、歯科医をしている彼の妻の物語。
 審査員評:「日常生活における無関心な局面に優れて詩的な観点を与えている。この物語は、素晴らしいグラフィック・アートあるいはアニメーションを通して、同時代のステレオタイプのヒーロー像についての考察を行なっていて、驚きを禁じえない」
 この作品は、『雨の中の潜水夫』という邦題でイメージフォーラム・フェスティバル2010で、『雨の中のダイバー』という邦題でラピュタ・アニメーション・フェスティバル2010で、上映されています。

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 ◆ゴールデン・ザグレブ(準グランプリ)
 ◎“Please Say Something”(独・アイルランド) 監督:デイヴィッド・オライリー
 遠い未来におけるネコとネズミの物語。
 審査員評:「傑出したアート・ディレクション、革新的で想像力に富んだ台詞がオリジナル作品に大いに寄与している。」

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 スペシャル・メンション
 ◎“Love & Theft”(独) 監督:Andreas Hykade
 「ぼくは君がくれたものを今でも大事にしている。それは今ではぼくの体の一部になっている。ぼくはそれを育み、そして守ってきた。墓場まで、永遠に一緒だ」ボブ・ディランの同名の曲より
 審査員評:「魅力的な音楽とヴィジュアルがあり、アニメーション史へと誘い出してくれる。」

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 ◎『あなたは私の誇りよ』“I am so proud of you”(米) 監督:ドン・ハーツフェルト
 物語:家族の秘密がビルの回復に暗い影を落とす。
 ドン・ハーツフェルトの『何もかもうまくいく』“Everything will Be OK”(2006)の続編に当たる作品。
 この作品は、イメージフォーラム・フェスティバル2010で上映されました。
 審査員評:「独創的で、素晴らしい映像技術があり、ユーモアを交えて、勘どころをうまく強調することで、観客の注意を誘導して、複雑な物語を理解させることに成功している。」

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 ◎“Logorama”(仏) 監督:François Alaux、Ludovic Houplain、Hervé De Crécy
 米国アカデミー賞2010短編アニメーション賞受賞作品。
 *当ブログ記事:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201003/article_19.html
 審査員評:「全くオリジナルなコンセプトで、演出も素晴らしい。」

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 ◎“Luis”(チリ) 監督:Niles Atallah、Cristobal Leon、Joaquin Cociña
 物語:ルイスは、森の中でルシアを待っている。彼は、ガラクタがつまった部屋の壁の上の木炭に現れ、そして消える。
 審査員評:「ストップ・モーション・アニメーションとカトゥーン・アニメーションの力強いコンビネーションにより、雰囲気と空間に大きなパワーがもたらされている。」

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 ◎『リトル・パペット・ボーイのお話』“Saga nom lille Dockpojken(The Tale of Little puppetboy)”(スウェーデン) 監督:ヨハネス・ナイホルム(Johannes Nyholm)
 物語:パペットボーイはガールフレンドを家に迎えるのに懸命で、滝のような粘土の汗を流している。彼女がやってくれば、やってきたで、彼はさらにパニックに陥る。
 この作品は、イメージフォーラム・フェスティバル2010で上映されました。
 審査員評:「これは最も笑わせてくれた作品だ。単純化されたキャラクターとシーンは新鮮で、展開も予想がつかなかった。」

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 ◆Dusan Vukotic賞(学生作品部門グランプリ)
 ◎“Lebensader”(独) 監督:Angela Steffen
 物語:少女が1枚の葉の中に「世界」を見出す。
 審査員評:「独創的な内容とエモーショナルなデザインに対して。」

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 ◆学生部門スペシャル・メンション
 ◎第1位:『つままれるコマ』“Tsumamareru Koma(Bring me up)”(日) 監督:田中美妃
 「人生を親につままれて成長してゆく僕。親の行動に左右された受動的な僕の生き方。
お父さんがサイコロを動かし、お母さんが僕をつまみ上げ、僕は進んでゆく。
その家族の仕組みはいつまで続けられる事ができるのか。僕はついに切り離す事を決断する、、、。」(「GEIDAI ANIMATION 01+」より)
 田中美妃監督は、東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻一期生。
 『つままれるコマ』は、DVD『東京藝術大学アニメーション専攻一期生卒業制作作品集』に収録されています。
 審査員評:「トピックに対する独創的なアプローチに対して。」

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 ◎第2位:“Parade”(仏) 監督:Pierre-Emmanuel Lyet
 物語:主人公は、夢に出てくる女に打ち勝つために、自らの貧しい想像力を解き放とうとする。
 審査員評:「クリエイティブ・アートに対して。」
 この作品は、横浜フランスアニメーション映画祭2010で上映されています。

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 ◎第3位:“Flowerpots”(スイス・英) 監督:Rafael Sommerhalder
 物語:植木鉢から生えている男が、もう十分に育って、鉢がひび割れてきたので、自ら植え替えをしようとする。自ら、はしごを使って階上に上っていき、穴を掘って、そこに収まり、雨を待つ。そして、大雨がきて、彼はさらに大きく育つ……。
 審査員評:「知的な物語をミニマルなスタイルで語っている。」

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 ◆商業作品コンペティション部門 最優秀作品賞
 ◎“Only Human”(独) 監督:Benjamin Swiczinsky
 物語:ある男が目覚めると、そこは人間だけの世界だった。通りもなければ、ビルや車もない。まさに人間だけの世界だった。
 審査員評:「強い力で、容易に、果てなき自由な旅へと連れ出してくれる。」

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 ◆児童映画コンペティション部門 最優秀作品賞
 ◎『まいごのペンギン』“Lost and Found”(英) 監督:Philip Hunt
 物語:ある日、少年が戸口にペンギンがいるのを発見する。少年は、ペンギンがどこから来たのか、調べ、やがて、ペンギンを助けるために、南極へと旅立つ……。
 オリヴァー・ジェファーズの『まいごのペンギン』の映画化。
 この作品は、キンダー・フィルム・フェスティバル2010で上映予定になっています。
 審査員評:「今年のこの部門には優れた作品が多くて、選考は容易ではなかった。しかし、我々は、子供のために最も優れたアニメーションと思える作品を探すことに努め、ついに見つけ出した。アニメーションと音響が素晴らしく、物語も面白くて、教訓があり、心と友情の大切さを描いている。だから、我々は、この賞を“Lost and Found”とその作者Philip Huntに贈ることに決めた。」

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 ◆児童映画コンペティション部門 スペシャル・メンション
 ◎“Le Noeud Cravate(The Necktie)”(カナダ) 監督:Jean-François Lévesque
 物語:ヴァランタンは、模範的な労働者であったが、終りなき労働の中で青春をすり減らしていく。自分の誕生日が虚しく過ぎていってしまおうとした時、彼は、反乱を起こそうと決心する……。
 審査員評:「この興味深くてためになる物語は、我々は、よりよい生活を送る権利があり、それは決して侵されざるものである、ということを教えてくれる。」

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 ◎“The Happy Duckling”(英) 監督:Gili Dolev
 物語:少年と、嫌がられながらもずっと彼につきまとうアヒルの物語。
 物語は、ポップ・アップ・ブックのスタイルで語られる。
 審査員評:「息もつかせぬ面白さ。」

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 ◆Zlatko Grgic賞(教育機関以外で製作された第1回監督賞)
 ◎『逆回転の恋』“Backwards”(米) 監督:Aaron Hughes
 逆回しで語られる愛の物語。
 この作品は、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2010上映作品です。
 審査員評:「素朴なヴィジュアル・スタイルを通して、革新的で、驚くべき物語が語られている。」

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 ◆Premium Catoon East
 ◎“Moj put(My Way)”(クロアチア) 監督:Veljko Popović
 靴の中に小さな小石が入ったことで痛みや不快さを感じることはよくあるが、そうした普段は気づかない存在に気づくことやそうした存在の意味について考えさせる物語。

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 ◆アニメーション&ニューメディア学生審査員賞 最優秀学生作品賞
 ◎“Viliam”(スロヴァキア) 監督:Veronika Obertová
 物語:ヴィリアムは、現実世界の中でアニメ化された生活を送って(lives his own animated life)いる。彼の子供じみた楽しみは、しばしば問題を巻き起こす。それは解決されるが、十分なものではない。
 審査員評:「まず最初に、毎年、世界中から作品を集めてきて、私たちに見せてくれる映画祭に感謝を捧げます。ある作品は、物語で感動させてくれるし、ある作品はアニメーションで、また、ある作品は革新性で感動を与えてくれます。そんな中から最優秀作品を選ぶことは簡単ではありませんでした。しかし、私たちは1つの結論に達しました。紙を再生させ、アニメーションとして、観る者にクリエイティブな楽しみを与えてくれる映画たち。私たちは、スロヴァキアの監督Veronika Obertováが作った“Viliam”を選ぶことにしました。すべての映画作家に賞賛を捧げたいと思います。」

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 ◆生涯功労賞
 ◎フレデリック・バック

 ◆アニメーション教育への貢献賞
 ◎Midhat Ajanović Ajan(サラエボの映画教育者)

 ◆最優秀学校賞(Award to an educational institution for the best choice of films submitted for pre-selection)
 ◎東京藝術大学(大学院映像研究科アニメーション専攻)

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 ノミネーションのところでも書きましたが、このように日本産の短編アニメーションが注目され、人材の育成にも公的に力が注がれ、製作と発表の場が与えられるなら、国際的にも大きな成果を上げる、具体的には、『頭山』『つみきのいえ』に続いて、日本の短編アニメーションが米国アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされることもそう遠くないと思われます。
 藝大の一期生の卒業制作ですらこうですから、本当に将来が楽しみです。
 要注目ですよ!

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 *当ブログ記事
 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_18.html
 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2009 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_9.html
 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2009ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_3.html

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 オフィシャル・セレクション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_24.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 オフィシャル・セレクション以外のプログラム その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_26.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 オフィシャル・セレクション以外のプログラム その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_27.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_15.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 ラインナップ完全版!その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_11.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 ラインナップ完全版!その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_12.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ リスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200703/article_22.html
 ・オタワ国際アニメーションフェスティバル2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_9.html
 ・オタワ国際アニメーションフェスティバル2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_5.html
 ・オーバーハウゼン国際短編映画祭2010 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_12.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

この記事へのコメント

2010年06月09日 01:42
はじめまして。ザクレブ受賞結果の記事、興味深く読ませていただきました。ここまで詳細に書かれたものは他になく、とても有り難かったです。今回は私もTwieetrで実況のようにアップされるつぶやきを大いに楽しんだくちです。この興奮がもう少し広がればいいな、と思います。
umikarahajimaru
2010年06月09日 02:19
ほろにがさま
コメントありがとうございます。
ツイートしてくれるメンバーは何人か入れ替わっているようですが、アヌシーの方も楽しみですね。

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