カザフスタン映画 1929~2010!

 7月16日~17日に「フォーカス オン カザフスタン 2000-2010」(@アテネフランセ文化センター)というカザフスタン映画の特集上映が開催されるのに合わせて、カザフスタン映画について調べてみました。

 カザフスタン映画の特集上映は、単体としての上映は、日本で初めてで、1994年に開催された「中央アジア映画祭」から数えると、16年ぶりの特集上映ということになります。

 この上映会は、映画美学校の第5回映画上映専門家養成講座 シネマ・マネジメント・ワークショップ2009修了上映会として企画・開催されるもので、2005年に開催された「アルメニア・フィルム・セクション」(http://umikarahajimaru.at.webry.info/200608/article_3.html)に続く上映会ということになります。(第4回は、2008年に開催された「光石研映画祭/30周年 俳優・光石研~祝宴7デイズ~」でした。)

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 1991年まで~旧ソ連時代の作品

 ・『トゥルクシブ』(1929/ソ連(ヴォストークキノ))[ドキュメンタリー] 監督:ヴィクトル・トゥリン
 1930年劇場公開

 ・『イワン雷帝 第1部』(1944/ソ連(アルマアタ撮影所)) 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
 1948年劇場公開

 ・『イワン雷帝 第2部』(1946/ソ連(アルマアタ撮影所)) 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
 1964年劇場公開

 ・『灰色の狼』“The Fierce One / Lyutyy”(1973/ソ連(カザフフィルム) 監督:トロムシ・オケーエフ(Tolomush Okeyev)
 第12回ソビエト映画祭(1974)、ソビエト・シネマ・フェスティバル 民族共和国からの映像(1983)

 ・『ジョズス』(1984/ソ連(カザフスタン(カザフフィルム)・タジキスタン)) 監督:バコ・サディコフ(Bako Sadykov)
 東京国際映画祭1992 アジア秀作映画週間

 ・『白い鳩』“Wild Pigeon / Chuzhaya belaya i ryaboy”(1985/ソ連(カザフフィルム)) 監督:セルゲイ・ソロヴィヨフ(Sergei Solovyov)
 ベネチア国際映画祭1986 審査員特別賞受賞。
 第19回ソビエト映画祭(1987)

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 ・『僕の無事を祈ってくれ』“Igla”(1988/ソ連(カザフフィルム)) 監督:ラシド・ヌグマノフ(Rashid Nugmanov)
 第22回ソビエト映画祭(1990)、1991年劇場公開、フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

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 ・『少年と狼』“Volchonok sredi lyudey”(1989/ソ連(カザフフィルム)) 監督:タルガット・テメノフ(Talgat Temenov)
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭1992、PFF1992

 ・『復讐』(1989/ソ連(カザフフィルム)) 監督:エルメク・シナルバーエフ(Ermek Shinarbayev)
 第10回日ソ映画シンポジウム(1990)

 ・『アラル海は泣いている』“Zhoktau-A Chronicle of the Dead Sea”(1989/ソ連(カザフフィルム)) 監督:セルゲイ・アジモフ(Sergei Azimov)
 中央アジア映画祭(1994)

 ・“The Last Stop / Konechnaya ostanovka”(1989 /ソ連(カザフフィルム)) 監督:セリック・アプリモフ(Serik Aprimov)
 ロカルノ国際映画祭1990 コンペティション部門出品。

 ・『ポリゴン』“Poligon”(1990/ソ連) [ドキュメンタリー] 監督:オラス・リムジャーノフ、ウラジミール・レリフ
 1991年劇場公開

 ・『パンの列車が来る』“Zhana-Arka”(1991/ソ連(カザフフィルム))[短編] 監督:エルサイン・アブドラマノフ(Ersain Sbdrakhmanov)
 中央アジア映画祭(1994)

 ・“Gibel Otrara”(1991/ソ連・カザフスタン) 監督:アルダク・アミルクロフ(Ardak Amirkulov)
 モントリオール世界映画祭1991 国際批評家連盟賞受賞。

 1991-2000年~カザフ・ニューウェーブの時代

 ・『最後の冬の日々』“The Last Cold Days”(1993/カザフスタン) 監督:ボラト・カリムベトフ(Bolat Kalymbetov)、ブラト・イスカコフ(Bulat Iskakov)
 東京国際映画祭1994 京都大会 アジア秀作映画週間、中央アジア映画祭(1994)

 ・『ワイルド・イースト』“Dikiy vostok / The Wild East”(1993/カザフスタン) 監督:ラシド・ヌグマノフ(Rashid Nugmanov)
 東京国際映画祭1994 京都大会 アジア秀作映画週間、中央アジア映画祭(1994)、1995年劇場公開

 ・『イン・スペ/希望』“IN SPE”(1993/カザフスタン) 監督:マラト・サルル(Marat Sarulu)
 中央アジア映画祭(1994)

 ・“Stranger”(1993/カザフスタン) 監督:Timur Sulejmenov
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭1999出品。

 ・『鳩の乙女』“Golubinyj zvonar /The Dove's Bell-Ringer”(1994/カザフスタン) 監督:アミール・カラクーロフ(Amir Karakulov)
 中央アジア映画祭(1994)、福岡アジア映画祭1995

 ・『龍の島』“The Dragon’s Island”(1994/カザフスタン)[アニメーション] 監督:ジャケン・ドネン(Jaken Donen)、ガニ・キスタウ(Gani Kystau)
 中央アジア映画祭(1994)

 ・『小さなアコーディオン弾き』“The Biography of the Young Accordionist”(1994/カザフスタン) 監督:サトルバルディ・ナリムベトフ(Satybaldy Narymbetov)
 中央アジア映画祭(1994)

 ・『カルディオグラム』“Kardiogramma”(1995/カザフスタン) 監督:ダレジャン・オミルバエフ(Darezhan Omirbayev)
 ベネチア国際映画祭1995 コンペティション部門出品。シンガポール国際映画祭1997 シルバー・スクリーン・アワード 最優秀アジア長編作品賞受賞。
 東京国際映画祭1995 アジア秀作映画週間

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 ・“Amerikanskaya doch”(1995/カザフスタン・ロシア) 監督:カレン・シャフナザーロフ
 上海国際映画祭1995 審査員特別賞受賞。

 ・『十字架を背負って』“Experiment of the Cross”(1995/カザフスタン)[ドキュメンタリー] 監督:タラス・ポポフ(Taras Popov)、ウラジミール・チュリキン(Vladimir Tyulkin)
 マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭1995 Interfilm Award受賞。
 山形国際ドキュメンタリー映画祭1997

 ・『ラスト・ホリデイ』“Last Holiday”(1996/カザフスタン) 監督:アミール・カラクーロフ(Amir Karakulov)
 東京国際映画祭1996 ヤングシネマ・コンペティション、PFF1997、福岡アジア映画祭1997、1998年劇場公開

 ・『コーカサスの虜』“Prisoner of the Mountains”(1996/カザフスタン) 監督:セルゲイ・ボドロフ(Sergey Bodrov)
 1997年劇場公開

 ・“Paradise(Schastye)”(1996/カザフスタン)[短編ドキュメンタリー] 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ(Sergei Dvortsevoy)
 クラクフ映画祭1996 ゴールデン・ドラゴン&国際批評家連盟賞スペシャル・メンション受賞

 ・『殺し屋』“Tueur à gages”(1998/カザフスタン) 監督:ダレジャン・オミルバエフ(Darezhan Omirbayev)
 カンヌ国際映画祭1998 ある視点部門グランプリ受賞。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭1998 ドン・キホーテ賞スペシャル・メンション受賞。
 東京国際映画祭1998 シネマプリズム

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 ・『アスクアット』“Aksuat”(1998/カザフスタン・日)  監督:セリック・アプリモフ(Serik Aprimov)
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2001

 ・『ハイウェイ』“Highway”(1999/カザフスタン)[中編ドキュメンタリー] 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ(Sergei Dvortsevoy)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・“Fara”(1999/ロシア・カザフスタン) 監督:Abai Karpykov
 モスクワ国際映画祭1999 コンペティション出品、男優賞受賞。

 ・『3人兄弟』“Three Brothers”(2000/カザフスタン) 監督:セリック・アプリモフ(Serik Aprimov)
 東京国際映画祭2000 シネマプリズム アジア映画賞受賞。

 2001年以降~カザフ・ニューウェーブ以降の時代

 ・『ザ・ロード』“The Road”(2001/カザフスタン・日・仏) 監督:ダレジャン・オミルバエフ(Darezhan Omirbayev)
 NHKアジア・フィルム・フェスティバル2001

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 ・“Molitva Leyly”(2002/カザフスタン) 監督:Satybaldy Narymbetov

 ・『歌って』“Don’t Cry”(2003/カザフスタン・日) 監督:アミール・カラクーロフ(Amir Karakulov)
 ハワイ国際映画祭2003出品。
 アジアフォーカス・福岡映画祭2003

 ・“Malenkie lyudi”(2003/カザフスタン・仏) 監督:Nariman Turebayev
 ロカルノ国際映画祭2003 コンペティション出品。テッサロニキ国際映画祭2003 コンペティション出品。

 ・『ハンター』“The Hunter”(2003/カザフスタン・日)  監督:セリック・アプリモフ(Serik Aprimov)
 ロカルノ国際映画祭2004 コンペティション部門出品、ネットパック賞&C.I.C.A.E.賞受賞。ゲント国際映画祭2004 コンペティション部門出品。
 NHKアジア・フィルム・フェスティバル2003

 ・『スキゾ』“Shiza/Fifty-Fifty”(2004/カザフスタン・ロシア・仏・独) 監督:グーカ・オマロヴァ(Guka Omarova)  プロデューサー:セルゲイ・アジモフ(Sergei Azimov)
 東京国際映画祭2004 コンペティション

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 ・“Hundeleben”(2004/カザフスタン・独)[短編] 監督:ファイト・ヘルマー

 ・『草原の急行列車』“Steppe Express”(2005/カザフスタン) 監督:アマンジョル・アイトゥアーロフ(Amanzhol Aituarov)
 東京国際映画祭2007 アジアの風

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 ・“Nomad”(2005/仏・カザフスタン) 監督:セルゲイ・ボドロフ、Ivan Passer
 ロカルノ国際映画祭2006出品。
 米ゴールデングローブ賞2007 オリジナル作曲賞ノミネート。

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 ・“Vokaldy paralelder”(2005/カザフスタン) 監督:Rustam Khamdamov
 ベネチア国際映画祭2005出品。

 ・“Revenge”(2006/カザフスタン) 監督:Damir Manabai
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2007出品。

 ・『盗まれた花嫁』“Boz salkyn”(2007/キルギスタン・カザフスタン) 監督:エルネスト・アブディジャパロフ(Ernest Abdyjaparov)
 アジアフォーカス・福岡映画祭2008

 ・『ヘアカット』“Strizh”(2007/カザフスタン) 監督:アバイ・クルバイ(Abai Kulbai)
 ロッテルダム国際映画祭2008 コンペティション部門出品。
 東京フィルメックス2008 コンペティション

 ・『ショーガ』“Shuga”(2007/仏・カザフスタン) 監督:ダレジャン・オミルバエフ(Darezhan Omirbayev)
 ナント三大陸映画祭2007出品。ロッテルダム国際映画祭2008出品。
 東京フィルメックス2008 コンペティション

 ・『モンゴル』“Mongol: The Rise of Genghis Khan”(2007/カザフスタン・ロシア・モンゴル・独) 監督:セルゲイ・ボドロフ
 2008年劇場公開

 ・『パッチワーク』“Kurak korpe”(2007/カザフスタン) 監督:ルステム・アブドラシェフ(Rustem Abdrashev)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・“Ulzhan”(2007/カザフスタン・独・仏) 監督:フォルカー・シュレンドルフ 共同プロデューサー:セルゲイ・アジモフ(Sergei Azimov)
 トロント国際映画祭2007 MASTERS部門出品。

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 ・“Karoy”(2007/カザフスタン) 監督:ジャナ・イサバエヴァ(Zhanna Issabayeva)
 ブラチスラバ国際映画祭2007出品。トランシルヴァニア国際映画祭2008出品。

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 ・『Bakhytzhamal』(2007/カザフスタン)[短編] 監督:アディルハン・エルジャン(Adilkhan Erzhan)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・『トルパン』“Tulpan”(2008/独・スイス・カザフスタン・ロシア・ポーランド) 監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ(Sergei Dvortsevoy)
 カンヌ国際映画祭2008 ある視点部門グランプリ。東京国際映画祭2008 サクラグランプリ&監督賞受賞。アジア太平洋映画賞2008グランプリ受賞。ヨーロッパ映画賞2008ディスカバリー賞ノミネート。アジア映画賞2009撮影賞受賞。米国アカデミー賞2009外国語映画賞カザフスタン代表。
 東京国際映画祭2008 コンペティション、フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

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 ・『さよならグルサルー』“Goodbye, Gulsary!”(2008/カザフスタン) 監督:アルダク・アミルクロフ(Ardak Amirkulov)
 モントリオール世界映画祭2008出品。
 アジアフォーカス・福岡映画祭2009

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 ・『ギフト・トゥ・スターリン』“The Gift to Stalin”(2008/カザフスタン・ロシア・ポーランド・イスラエル) 監督:ルステム・アブドラシェフ(Rustem Abdrashev)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

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 ・『マイ・ディア・チルドレン』“My Dear Children”(2008/カザフスタン) 監督:ジャナ・イサバエヴァ(Zhanna Issabayeva)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・“Native Dancer”(2008/ロシア・カザフスタン) 監督:グーカ・オマロヴァ(Guka Omarova) プロデューサー:セルゲイ・アジモフ(Sergei Azimov)
 トロント国際映画祭2008 CONTEMPORARY WORLD CINEMA部門出品。

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 ・“Songs from the Southern Seas”(2008/仏・独・カザフスタン・ロシア) 監督:マラト・サルル(Marat Sarulu)
 香港国際映画祭2009出品。

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 ・“The Market - A Tale of Trade”(2008/独・カザフスタン・トルコ・英)[ドキュメンタリー] 監督:Ben Hopkins
 バンクーバー国際映画祭2009出品。

 ・『Fatshedder』(2008/カザフスタン)[短編] 監督:エミール・バイガジン(Emir Baigazin)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・“Gagma napiri(The Other Bank / L'Autre rive)”(2009/グルジア・カザフスタン) 監督:Geroge Ovashvili
 ベルリン国際映画祭2009ジェネレーション部門出品。パリ映画祭2009審査員グランプリ受賞。モスクワ国際映画祭2009 Moscow Euphoria部門出品。カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009イースト・オブ・ウエスト部門出品。釜山国際映画祭2009 ワールド・シネマ部門出品。ルーマニア国際映画祭2009監督賞受賞。パームスプリングス国際映画祭2010 国際批評家連盟賞男優賞受賞。米国アカデミー賞2010 外国語映画賞グルジア代表。

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 ・“Kelin (Келін)”(2009/カザフスタン) 監督:Yermek Tursunov
 トロント国際映画祭2009 DISCOVERY部門出品。釜山国際映画祭2009 アジア映画の窓部門出品。米国アカデミー賞2010 外国語映画賞カザフスタン代表。

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 ・“Strayed”(2009/カザフスタン) 監督:Akan Satayev
 モントリオール世界映画祭2009 コンペティション部門出品。

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 ・“Letters to an Angel”(2009/カザフスタン) 監督:エルメク・シナルバーエフ(Ermek Shinarbayev)
 釜山国際映画祭2009 アジア映画の窓部門出品。

 ・“The Other Side(Obratnaya storona)”(2009/カザフスタン) 監督:Kuat Isaev

 ・“Capital”(2009/米・カザフスタン)[ドキュメンタリー] 監督:Maxim Pozdorovkin

 ・『Butter』(2009/カザフスタン)[短編] 監督:セリク・アビシェフ(Serik Abishev)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・『Muha』(2009/カザフスタン)[短編] 監督:タルガット・ベクトゥルスノフ(Talgat Bektursunov)
 フォーカス オン カザフスタン 2000-2010(2010)

 ・“Ironiya lyubvi”(2010/ロシア・カザフスタン) 監督:Aleksandr Chernyaev

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 ・カザフスタンで、どのくらい映画産業が盛んかということを調べるのに、例えば、IMDbに登録されているカザフスタン映画を数えると、2010年1月現在で、87タイトルあります。これがカザフスタン映画のすべてでないことはもちろんですが、1つの指標としては有効なはずで、同様にして、アルメニア映画は80タイトル、タジキスタン映画は37タイトル、ウズベキスタン映画は33タイトル、キルギスタン映画は23タイトルあります。

 ・IMDbに登録されているアルメニア映画には、ドキュメンタリーや短編がかなりの数として含まれていましたが、カザフスタン映画の場合は、ほとんどが劇映画で、これだけでも、中央アジアの中で、カザフスタンが最も映画産業が盛んであるということが見てとれます。人口でも国土面積でもカザフスタンが他国を大きく引き離して圧倒しているのですが。

 カザフスタン共和国 面積:272万平方キロ(日本の7倍) 人口:1560万人
 トルクメニスタン 面積:49平方キロ(日本の1.3倍) 人口:511万人
 ウズベキスタン共和国 面積:45万平方キロ(日本の1.2倍) 人口:2749万人
 キルギス共和国 面積:20万平方キロ(日本の半分) 人口:548万人
 タジキスタン共和国 面積:14万平方キロ 人口:695万人

 ※アルメニアは、近隣諸国ではありますが、一般的に「中央アジア」という場合には含まれないようです。

 ・主だったカザフスタン映画は、上記リストの通りですが、めぼしい作品は、日本でも、映画祭等を通じて、けっこう上映されていることがわかります。

 ・1988~89年にかけて、カザフ・ニューウェーブと呼ばれるムーブメントが起こりましたが、これは、ラシド・ヌグマノフと、彼を中心にした若い映画監督たち、および彼らの作品を指すもので、特にラシド・ヌグマノフの『僕の無事を祈ってくれ』(1988)は、1000本ものプリントが作られて、ロシア国内で空前の大ヒットを巻き起こしたと言われています。

 ・『僕の無事を祈ってくれ』は、それ以前のロシア映画には描かれてこなかったような、麻薬、ロック、アクションを描いた映画として斬新さがあり、それゆえ、大きな注目と共感を集めたのですが、「カザフ・ニューウェーブ」それ自体には、共通したイデオロギーはなく、ラシド・ヌグマノフも、「カザフ・ニューウェーブでは、共通した哲学や芸術スタイルを求めていない。ただ自由と芸術を愛するという考えを共有しているのだ」と1990年に語っています。

 ・カザフ・ニューウェーブは、全ソ国立映画大学(VGIK/タルコフスキー、パラジャーノフ、ミハルコフ、イオセリアーニ、ソクーロフ、ムラートワらを生み出したソ連の名門映画大学)で、セルゲイ・ソロヴィヨフに学んだ学生たちが起こしたムーブメントで、そうした一群の若者と、ペレストロイカがもたらした旧ソ連圏での自由な空気が結びついて生まれた、という風に説明されることが多いようです。

 ・しかしながら、ソ連の崩壊により、旧ソ連圏の映画産業は危機的状況に追い込まれ、政府は映画産業を再興させるための政策を打ち出せず、スタジオは旧態依然のままで、新たな配給システムも築けず、国民は映画を楽しむ金銭的余裕を失う、という事態になり、カザフ・ニューウェーブも2000年くらいまでに終息してしまいます。

 ・カザフ・ニューウェーブの監督たちは、外国との共同製作を得て、生き延びることができた一部の恵まれた監督以外は、広告産業に関わるなどして、糊口をしのいでいる、と伝えられています。

 ・しかし、近年になって、外国との共同製作をしなくても、自国で映画製作を行ない、国際映画祭などに出品して、高い評価を受けるような作品を生み出す監督が出始めているようです。

 ・近年のカザフスタン映画の収穫としては、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイの『トルパン』がありますが、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ自身は、新しい世代の監督というよりは、年齢的にはカザフ・ニューウェーブの監督たちと近く、年下のアミール・カラクーロフと比べても国際的に認められるのが遅かったようです。
 カザフスタンの新しい世代の監督は、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ以降に出て来た監督、ジャナ・イサバエヴァやルステム・アブドラシェフらということになりますが、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ以降に出て来た監督は、VGIKではなく、地元カザフスタンで映画制作を学んでいるようです。

 セルゲイ・ソロヴィヨフ(Sergei Solovyov) 1944年生まれ(カレリア共和国) VGIK卒
 ラシド・ヌグマノフ(Rashid Nugmanov) 1954年生まれ VGIK卒
 アルダク・アミルクロフ(Ardak Amirkulov) 1955年生まれ VGIK卒
 セリック・アプリモフ(Serik Aprimov) 1960年生まれ VGIK卒
 マラト・サルル(Marat Sarulu) 1957年生まれ(キルギス共和国) VGIK卒
 ダレジャン・オミルバエフ(Darezhan Omirbayev) 1958年生まれ VGIK卒
 セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ(Sergei Dvortsevoy)  1962年生まれ
 アミール・カラクーロフ(Amir Karakulov) 1965年生まれ VGIK中退
 グーカ・オマロヴァ(Guka Omarova) 1968年生まれ 女優出身
 ジャナ・イサバエヴァ(Zhanna Issabayeva) 1968年生まれ
 ルステム・アブドラシェフ(Rustem Abdrashev) 1970年生まれ

 ・近年のカザフスタン映画には、プロデューサーとしてセルゲイ・アジモフ(Sergei Azimov)の果たしている役割が大きいようです。

 ・カザフスタン映画といえば、遊牧民の民族文化をルーツに持つ国民の、一般的な朴訥で慎ましい生活を描いた素朴な作品が多いというのが私の印象ですが、「それなら、キルギスタン映画やウズベキスタン映画とどこが違うのだ?」と訊かれると答えに窮してしまいます。明確に違いを指摘できるほど、本数を観ていないので仕方がありませんが、最終的には、個々の映画監督の個性の違いに帰することになるでしょうか。(日本人の心情に一番しっくりくるのは、キルギスタン、もしくは、アクタン・アブディカリコフかもしれません、と言ってしまうと元も子もない、でしょうか。)

 ・『トルパン』が、ヨーロッパ映画賞とアジア映画賞の双方にノミネートされたということが象徴的に表わしているのですが、カザフスタンは、ヨーロッパとアジアの中間的なポジションに位置しています(民族文化的には明らかにアジアですが、地理的には、北をロシア、東を中国、南を中央アジア諸国、西をカスピ海と接しています)。サッカーでは、2002年より、アジアサッカー連盟(AFC)から欧州サッカー連盟(UEFA)に移籍しました。

 ・映画製作が行ないやすいためか、映画の題材が豊富だからなのか、カレン・シャフナザーロフ、セルゲイ・ボドロフ、ファイト・ヘルマー、フォルカー・シュレンドルフらが、カザフスタンで映画の製作を行なっています。

 ・ロッテルダム、ロカルノ、モントリール、釜山などの国際映画祭では、カザフスタンの動きをまめにチェックしているようで、その時々に注目の監督や作品を積極的にピックアップしています。

 ・カザフスタンでの映画の製作は行なっていませんが、『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』『ウォンテッド』のティムール・ベクマンベトフ監督もカザフスタンの出身です。

 ・日本でも知られているような文学者や音楽家、詩人、哲学者等の文化人は、特に見当たらないようです。(カザフスタン映画がさらなる飛躍を望むなら、そこが弱いでしょうか。)

 *映画祭公式サイト
 ・「フォーカス オン カザフスタン 2000-2010」公式HP:http://kazakhstan.fsnp.jp/index.html
 ・「フォーカス オン カザフスタン 2000-2010」スタッフブログ:http://kazakhstan.exblog.jp/
 ・「フォーカス オン カザフスタン 2000-2010」 on Twitter:https://twitter.com/focus_on_kazakh

 *参考サイト
 ・The Courier UNESCO「Don’t blink now. It’s Kazakhstan」:http://www.unesco.org/courier/2000_10/uk/doss25.htm
 ・National Academic Library of the Republic of Kazakhstan:http://nabrk.kz/en/
 ・Asia Pacific Screen Awards「Kazakhstan Day」:http://www.asiapacificscreenawards.com/multimedia/blogs/scene_by_scene_on_the_road/kazakhstan
 ・全ソ国立映画大学(VGIK:Gerasimov Institute of Cinematography)に関するWikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Gerasimov_Institute_of_Cinematography
 ・セルゲイ・ソロヴィヨフに関するWikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Sergei_Solovyov
 ・ラシド・ヌグマノフに関するWikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Rashid_Nugmanov
 ・ダレジャン・オミルバエフに関するWikipedia(英語):http://es.wikipedia.org/wiki/Darezhan_Omirbayev
 ・セルゲイ・ドヴォルツェヴォイに関するWikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Sergey_Dvortsevoy
 ・アミール・カラクーロフに関するWikipedia(英語):http://es.wikipedia.org/wiki/Amir_Karakulov
 ・グーカ・オマロヴァに関するWikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Gulshat_Omarova
 ・ルステム・アブドラシェムに関するWikipedia(英語):http://fr.wikipedia.org/wiki/Rustem_Abdrashev
 ・アルダク・アミルクロフ-KinoKulture:http://www.kinokultura.com/CA/amirkulov.html
 ・セリック・アプリモフ-KinoKulture:http://www.kinokultura.com/CA/aprymov.html
 ・マラト・サルル-KinoKulture:http://www.kinokultura.com/CA/sarulu.html
 ・アミール・カラクーロフ-KinoKulture:http://www.kinokultura.com/CA/karakulov.html
 ・『殺し屋』-KinoKulture:http://www.kinokultura.com/CA/reviews/killer.html

 *当ブログ関連記事
 ・アルメニア映画 1974~2005:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200608/article_3.html
 ・ウズベキスタン映画 1929~2007:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200711/article_7.html

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