パームスプリングス国際映画祭2010 受賞結果発表、または、『ハンナのかばんの内側』

 『ハンナのかばんの内側』“Inside Hana's Suitcase”。

 日本や日本人がからんでいても、日本で劇場公開が決まったり、海外で大きな賞でも獲らない限り、そうした映画があっても、日本のマスコミではなかなか報じられることはありません。

 海外の映画祭や映画賞について調べていて興味深いことの1つは、いち早くそういう映画の存在を知ったりできることで、『ハンナのかばんの内側』(原題)もそうした課程で調べていてみつけた映画の1つということになります。

 「ハンナのかばん」自体については知ってる人は知ってる有名な話らしいのですが、私は知りませんでした。そういう有名な話があって、日本人がキーパソンとしてからんでいたんですね~。

 映画『ハンナのかばんの内側』に関しては、この記事の最後の方で紹介することにしますが、この『ハンナのかばんの内側』が賞を受賞したのが、1月5日から開催されていたパームスプリングス国際映画祭です。(各賞の発表は1月17日、閉幕は1月18日)

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 パームスプリングス国際映画祭は、日本ではさほど知られていないと思いますが、アメリカ国内で開催される映画祭としては、トップ・クラスの重要な映画祭の1つで、昨年はここで『おくりびと』が観客賞を受賞してもいて、それがアカデミー賞受賞へのはずみにもなったとも考えられます。

 この映画祭の面白いところは、新作映画(といっても昨年の国際映画祭サーキットをまわって受賞歴を重ねてきた話題作が多い)を上映して優秀作品を表彰するいわゆる普通の映画祭の部分と、全米映画賞レースの真っ只中に開催される映画賞として、昨年活躍した映画人を表彰する「映画賞」という部分を持っていること、つまり、映画祭と映画賞の2つの側面を持っている映画祭だということです。(香港国際映画祭の構成にもちょっと似ています)

 この「映画賞」の部分が、Black Tie Awards Galaと呼ばれ、受賞内容は事前に発表されていて、映画祭の初日に授賞式が行なわれています。

 今年の受賞者は以下の通りです。

 ◎ブレイクスルー女優賞(Breakthrough Performance Award,Actress):マライア・キャリー

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 ◎ブレイクスルー男優賞(Breakthrough Performance Award,Actor):ジェレミー・レナー

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 ◎生涯貢献賞男優賞(Career Achievement Award, Actor):モーガン・フリーマン

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 ◎生涯貢献賞女優賞(Career Achievement Award, Actress):ヘレン・ミレン

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 ◎デザート・パームビーチ貢献賞男優賞(Desert Palm Achievement Award, Actor):ジェフ・ブリッジス

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 ◎デザート・パームビーチ貢献賞女優賞(Desert Palm Achievement Award, Actress):マリオン・コーティヤール

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 ◎ディレクター・オブ・ザ・イヤー(Director of the Year Award):ジェイソン・ライトマン

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 ◎フレデリック・ロー賞作曲賞(Frederick Loewe Award for Film Composing):T・ボーン・バーネット

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 ◎ライジング・スター賞(Rising Star Award):アナ・ケンドリック

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 ◎ソニー・ボノ ヴィジョナリー賞(Sonny Bono Visionary Award):クエンティン・タランティーノ
 ※ソニー・ボノはパームスプリングス国際映画祭の設立者の名前。

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 まさに、今、全米の映画賞レースで賞を争っている各部門の代表が顔を揃えています。

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 さて、『ハンナのかばんの内側』も賞を受賞した映画祭のメイン・プログラムの各賞の結果は、以下の通りです。


 ◎観客賞作品賞(Mercedes-Benz Audience Award for Best Narrative Feature):『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』“The Girl with the Dragon Tattoo”(スウェーデン) 監督:ニールス・アルデン・オブレウ

 ◎観客賞作品賞 次点:“The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner(Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade)”(ブルガリア・独・スロヴェニア・ハンガリー) 監督:Stephan Komandarev

 ◎観客賞ドキュメンタリー賞(Audience Award for Best Documentary Feature):“The Most Dangerous Man in America: Daniel Ellsberg and the Pentagon Papers”(米) 監督:Judith Ehrlich、Rick Goldsmith

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 ◎観客賞ドキュメンタリー賞 次点:“Inside Hana's Suitcase”(ハンナのかばんの内側)(米) 監督:Larry Weinstein

 ◎国際批評家連盟賞 年間最優秀外国語映画(FIPRESCI Award for Best Foreign Language Film of the Year):“Involuntary(De ofrivilliga)”(スウェーデン) 監督:Ruben Östlund

 ◎国際批評家連盟賞 男優賞:Tedo Bekhauri “The Other Bank(Gagma napiri)”(グルジア・カザフスタン) 監督:George Ovashvili

 ◎国際批評家連盟賞 女優賞:Anne Dorval “I Killed My Mother(J'ai tué ma mère)”(カナダ) 監督:Xavier Dolan

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 ◎境界の架け橋賞(Bridging the Borders Award):“Letters to Father Jacob(Postia pappi Jaakobille)”(フィンランド) 監督:Klaus Härö

 ◎ニュー・ボイス/ニュー・ヴィジョン賞(New Voices/New Visions Award):『冬の小鳥』“A Brand New Life”(仏・韓) 監督:ウニー・ルコント
 ※東京国際映画祭2009で『旅人』というタイトルで上映された作品。岩波ホールにて2010年公開予定。

 ◎名誉賞(Honorable Mention):“Devil's Town(Djavolja varos)”(セルビア) 監督:Vladimir Paskaljevic

 ◎ジョン・シュレシンジャー賞/第1回作品賞(John Schlesinger Award for Outstanding First Feature):“Eyes Wide Open(Einaym Pkuhot)”(イスラエル・独・仏) 監督:Haim Tabakman

 ◎スペシャル・メンション:“Queen to Play(Joueuse)”(仏・独) 監督:Caroline Bottaro

 ◎スペシャル・メンション:“Samson & Delilah”(オーストラリア) 監督:Warwick Thornton

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 当ブログで何度も登場している作品ばかりですが、こうして並べられてみると、受賞作は、実にヨーロッパの“周辺国”の作品ばかりであることに気づかされます。
 国際映画祭なので、こういう作品が並ぶのが当然といえば当然なのですが、「新しい物語」はこういうところにある、という証でもあるように思います。

 上記受賞作品に、多くの米国アカデミー賞2010外国語映画賞の各国代表が顔を出していることもこの映画祭の1つの特徴で、米国アカデミー賞2010外国語映画賞 ブルガリア代表作品、スウェーデン代表作品、グルジア代表作品、カナダ代表作品、フィンランド代表作品、オーストラリア代表作品が並んでいて、まるで米国アカデミー賞2010外国語映画賞選考会の様相を呈しています。

 実は、そういう状況は毎年のことで、そういう作品ばかりを集めているのがパームスプリングス国際映画祭である、ということもできます。昨年は、その中(『戦場でワルツを』や『生きるために必要なこと』や“Revanche”など)から『おくりびと』が外国語映画賞の栄冠を勝ち取っています。

 さて、長くなってしまいましたが、以下に、受賞作に関して、簡単に紹介しておきます。

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 ・“The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner(Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade)”(ブルガリア・独・スロヴェニア・ハンガリー)
 監督:Stephan Komandarev
 物語:アレックスは、事故で、記憶障害となり、自分の名前すらも出せなくなってしまう。彼を心配した祖父は、わざわざブルガリアからドイツに出向き、アレックスをドイツからブルガリアに連れ戻す旅をすることで、彼の記憶を取り戻そうとする。ヨーロッパの半分を横断する間、2人はよくバックギャモンをしたが、だんたんとアレックスの記憶は甦り、人生とはサイコロを手にチャンスと技術を生かしながら先に進んでいくゲームのようなものであるということに気づいてくる。
 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 ブルガリア代表

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 ・“The Most Dangerous Man in America: Daniel Ellsberg and the Pentagon Papers”(米)
 監督:Judith Ehrlich、Rick Goldsmith
 ベトナム戦争に関する秘密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」と、その執筆者の1人でありながら、そのコピーをマスコミにリークしたダニエル・エルズバーグに関するドキュメンタリー。
 トロント国際映画祭2009 Real To Reel部門で上映。
 米国アカデミー賞2010ドキュメンタリー賞候補。

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 ・“Inside Hana's Suitcase”(ハンナのかばんの内側)(米)
 監督:Larry Weinstein
 アウシュビッツ強制収容所から日本のNPO法人「ホロコースト教育資料センター」に収容所の遺品として借り出されたカバンには、ハンナ・ブレイディの名前があった。同センターの石岡史子は、そこから、13歳でアウシュビッツで処刑されたユダヤ人の少女ハンナ・ブレイディについて調べ、さらに、アウシュビッツを生き延びたハンナの兄ジョージがカナダに住んでいることを捜し出す。
 こうして明らかになってきたハンナとジョージの物語は、その後、『ハンナのかばん』という読み物になって広まり(日本版『アンネの日記』というように)、さらに、『ハンナのスーツケース』(カレン・レヴィン著)としてまとめられ、世界的に知られるようになった。
 本作は、そうした、3つの大陸にわたる「ハンナのかばん」の70年の物語をドキュメンタリー作品としてまとめたもので、ジョージや石岡史子も出演して証言しています。

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 ・“Involuntary(De ofrivilliga)”(スウェーデン)
 監督:Ruben Östlund
 物語:夏のスウェーデンで展開される5つのエピソード。バスの運転手は、洗面所のカーテンが壊されているのを見つけて、残りの停留所が少ないのにもかかわらず、やった人間が名乗り出ないならバスは発車しないと言い出す。レフェは、ホモなんじゃないかと言われかねないいたずらを男友だちにしている。2人の少女は、ちょっとエッチなポーズを取ってはデジタル・カメラで写真を撮っている。両親に誕生会を開いてもらった少年は、花火の1つが失敗したことに失望したが、それを言ってしまうと今日一日がダメになってしまうと思って言えずにいる。1人の教師は、他の教師に目の敵にされている生徒のことを心配している。
 「“スキー映画”を撮った監督の作品らしく、長回しのシーンが多い」、のだとか。
 カンヌ国際映画祭2008 ある視点部門出品。
 第23回マル・デル・プラダ国際映画祭(2008)審査員特別賞受賞。
 マイアミ国際映画祭2009 国際批評家連盟賞受賞。
 トランシルヴァニア国際映画祭2009 Supernova部門出品。
 モスクワ国際映画祭2009 81/2 Films部門出品。
 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 スウェーデン代表

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 ・“The Other Bank(Gagma napiri)”(グルジア・カザフスタン)
 監督:George Ovashvili
 物語:テドは、12歳で、7年前に、グルジア-アブハズ紛争を逃れて、故郷アブハズを離れ、今は、母とともにトビリシ近郊に住み、一緒に自動車修理工場を手伝うことでなんとか生計を立てている。しかし、ある日、母が恋人らしい男性といるのを見てショックを受け、病気のために一緒に来ることができなかった父のことを思い出し、父を探しに行こうと決める……。
 ベルリン国際映画祭2009 ジェネレーション部門で上映。
 パリ映画祭2009 審査員グランプリ
 ルーマニア国際映画祭2009 監督賞
 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 グルジア代表

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 ・“I Killed My Mother(J'ai tué ma mère)”(カナダ)
 監督:Xavier Dolan
 物語:16歳のユベールは、クールで、静かな少年だが、母親のことが大嫌いで、いつもケンカばかりしていた。彼は、母のプラスチックの家具を選ぶセンスも気に入らなかったし、日焼けサロンに通うようなライフスタイルも嫌いだった。ある日、ユベールは、学校で、母親について作文を書けと言われ、何も書くことを思いつけず、作文の中で母親が死んでいることにしてしまう。母子の諍いはエスカレートし、母は彼を寄宿学校に送ることに決める。ユベールは抵抗するが、母とは離婚していたユベールの実父も生活環境が変わるのもいいだろうと賛成する。しかし、母子の諍いはほぐれず、むしろ膠着状態に陥る……。
 若きXavier Dolanの自伝的作品で、監督自身が監督・脚本・主演の3役を務める。
 カンヌ国際映画祭2009 監督週間出品。アート・シネマ賞&若者の視点賞(Regards Jeunes Prize&SACD Prize
 レイキャビク国際映画祭2009 グランプリ(Golden Puffin)
 バンコク国際映画祭2009 スペシャル・メンション
 バンクーバー国際映画祭2009 最優秀カナダ映画賞
 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 カナダ代表

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 ・“Letters to Father Jacob(Postia pappi Jaakobille)”(フィンランド)
 監督:Klaus Härö
 出演:Hannu-Pekka Björkman、Kaarina Hazard
 物語:ライラは、終身刑を宣告されていたが、恩赦を受けて、釈放される。そして、独り暮らしの牧師のところで職を得、そこに引っ越してくることになる。彼女は、自分のことにもほとんど気にかけない性格だったので、目の見えない牧師ヤコブの面倒を見ることになかなかなじめないのだった……。
 マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭2009 グランプリ、カイロ国際映画祭 グランプリ(Golden Pyramid)&脚本賞受賞。
 米国アカデミー賞2010外国語映画賞 フィンランド代表

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 ・“Devil's Town(Djavolja varos)”(セルビア)
 監督:Vladimir Paskaljevic
 物語:ベオグラードのある1日の物語。貧しい家の少女は裕福な少女とテニスを組みたいと思っているが言い出すことができない。長年外国にいた男性が帰国するが、母国でのビジネスは難しいと思うようになる。ある青年は、ガールフレンドが別の男性と知り合って自分の元を去っていこうとしていることに耐えられない。長らく失業状態にある男性は、赤ん坊の面倒を見なければならないのに、テレビでテニスの試合に夢中になる。
 モントリオール世界映画祭2009 フォーカス・オン・ワールドシネマ部門出品。

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 ・“Eyes Wide Open(Einaym Pkuhot)”(イスラエル・独・仏)
 監督:Haim Tabakman
 物語:アーロンは、家業を継いで肉屋になり、妻と4人の子供と父とともに暮らしている。しかし、その父が死に、肉屋に手が足らなくなったので、彼は1人の学生を雇うことに決める。彼は、その学生に仕事を教え、住まいも提供し、何くれとなく世話をしていくうち、彼に夢中になって、すっかり家族を省みなくなってしまう……。
 カンヌ国際映画祭2009ある視点部門出品作品。トロント国際映画祭2009 上映作品。
 エルサレム国際映画祭2009 The Wolgin Award 長編部門 名誉賞(Honorable Mention)受賞。

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 ・“Queen to Play(Joueuse)”(仏・独)
 監督:Caroline Bottaro
 出演:サンドリーヌ・ボネール、ケヴィン・クライン
 物語:ヘレンは、コルシカ島で、ホテルの客室係を務めている。夫がいて、娘がいて、まわりからは理想の生活をしていると思われていたが、彼女自身は、変化のない日常に飽き飽きしていた。ところが、たまたま若いカップル客がテラスでチェスをしているのを見て、チェスに興味を持つ。彼女は、村に住むKröger氏の助けを借りて、チェスを学んでいくが、それは彼女と家族の関係を変え、やがて村にも変化をもたらすのだった。
 ブリュッセル国際映画祭2009 BE TV賞受賞。
 モントリオール世界映画祭2009 ワールド・グレイト部門出品。
 バンクーバー国際映画祭2009 ガラ上映。

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 ・“Samson & Delilah”(オーストラリア)
 監督:Warwick Thornton
 出演:Rowan McNamara 、Marissa Gibson 、Mitjili Gibson
 物語:オーストラリア中央の砂漠で悲劇に遭い、命がけで帰還しようとするサバイバル・ストーリー。
 カンヌ国際映画祭2009 カメラドール受賞
 オーストラリアIF賞2009 作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚本賞・音楽賞受賞
 オーストラリア映画協会賞2009 作品賞・監督賞・脚本賞・音響賞受賞
 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 オーストラリア代表

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 ◆PHOTO

 実は、米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 日本代表である『誰も守ってくれない』も出品されていて、監督の君塚良一と主演の志田未来が来場し、舞台挨拶をしています。惜しくも受賞は逃しましたが。

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 *当ブログ記事
 ・パームスプリングス国際映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200901/article_22.html

 ・2009年度映画賞レース スケジュール表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_32.html
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html
 ・2009年度映画賞の結果をまとめてみました! アメリカ編 前半戦:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_43.html

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