モンペリエ地中海映画祭2009 受賞結果!

 モンペリエ地中海映画祭(Montpellier Mediterranean Film Festival)は、地中海周諸国の作品に限った映画祭で、日本ではそんなに知られてはいないと思いますが、今年で31回を迎えます。(似たような趣向を持った映画祭には、今年から始まったルーマニア国際映画祭(黒海映画部門)、アジア太平洋映画祭(今年で54回)、ハワイ映画祭(今年で29回)があります。)

 地中海をはさんで、国どうしが向かい合っているとはいえ、この30年間、国家間レベルではいろいろあったはずで、そうでありながらも、この映画祭が現在まで続いているというのは、たぶん、政治や信条、国境を超えて、個人レベルではわりと簡単に交流ができ、実際にいろんな形で近隣諸国の人々とつきあいがあるからであり、また、開催地が移民を受け入れるのにわりと積極的な(という風に見える)フランスだからこうした催しがやりやすい、ということもあるのでしょうか。

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 第31回大会(10月23日~11月1日)の受賞結果は以下の通りです。

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 ◆長編部門

 ・『イースタン・プレイ』“Eastern Plays”(ブルガリア) 監督:カレン・カレフ
 ・“In the Land of Wonders/U zemlji cudesa”(クロアチア) 監督:Dejan Sorak
 ・“One-Zero/ Wahed-Sefr”(エジプト) 監督:Kamela Abu Zekri
 ・“Retorno a Hansala/Return to Hansala”(西) 監督:Chus Gutiérrez
 ・“A Woman's Way/Strella”(ギリシャ) 監督:Panos H. Koutras
 ・“Dogtooth/ Kynodontas”(ギリシャ) 監督:Yorgos Lanthimos
 ・“Ajami”(イスラエル・独) 監督:Scandar Copti、Yaron Shani
 ・“The White Space/ Lo spazio bianco”(伊) 監督:フランチェスカ・コメンチーニ
 ・“Honeymoons”(セルビア・アルバニア) 監督:ゴラン・パスカリェーヴィチ
 ・“9:06”(スロヴェニア・独) 監督:Igor Sterk
 ・“The Long Night/ Al lail al taweel”(シリア) 監督:Hatem Ali
 ・“Men on the Bridge/ Köprüdekiler”(トルコ・独・オランダ) 監督:Asli Özge

 ◎グランプリ/ Golden Antigone (City and District of Montpellier):“Ajami”(イスラエル・独) 監督:Scandar Copti、Yaron Shani

 物語:ヤッファのAjamiは、人種のるつぼで、ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒が入り乱れて暮らしていた。13歳のナスリとその兄オマールは、叔父が名門の一員を痛めつけたのを見た後、びくびくして暮らしていた。パレスチナ難民であるマレクは母の手術代を稼ぐために違法労働をしていた。パレスチナ人のビンジはユダヤ人のガールフレンドと明るい未来を夢見ていた。ユダヤ人の警察官ダンドは、兵士になった後、行方不明になった弟を捜していた……。
 2009年イスラエル・アカデミー賞9部門ノミネート。
 カンヌ国際映画祭2009 監督週間上映作品。カメラドール・スペシャル メンション。
 エルサレム映画祭2009 Wolgin Award長編部門 作品賞受賞。
 トロント国際映画祭2009 上映作品。
 ロンドン映画祭2009 第1回監督賞。
 米国アカデミー賞2010外国語映画賞イスラエル代表。
 ヨーロッパ映画賞2009 ディスカバリー賞ノミネート。

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 ◎批評家賞/Critics' Award (Crédit Coopératif):“Retorno a Hansala/Return to Hansala”(西) 監督:Chus Gutiérrez

 物語:スペインの海岸には、アフリカからボートで渡って来ようとして失敗し、死体として流れつくことが多く、人々ももう慣れっこになっている。マーティンは葬儀屋を営んでいて、そんな死体を引き受けてくれと警察に言われれば、喜んで処理していた、その中の1つに電話番号を書いた紙をくわえて死んでいる遺体があり、彼が連絡を取ると、モロッコから姉レイラが遺体を引き取りにくる。レイラは、弟を死なせてしまった罪の意識もあり、他の身元不明者の衣服を携えて、マーティンとともに弟の遺体を故郷に運ぶことに決める。
 トロント国際映画祭2008上映作品。
 サンセバスチャン国際映画祭2009上映作品。

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 ◎最優秀音楽賞/JAM award for best music (CMCAS):Tao Gutiérrez  “Retorno a Hansala/Return to Hansala”

 ◎Young People's Award (CMCAS Languedoc):“Dogtooth”(ギリシャ) 監督:Yorgos Lanthimos

 物語:郊外にフェンスで囲まれた家があって、そこに両親と3人の子どもが暮らしている。家族は外界との交流を一切遮断していて、子どもたちは飛行機を見てもおもちゃとしか思っていなかった。家族と外界をつなぐ唯一のものは、父親の仕事のセキュリティーを担当するクリスティナのみ。父親は、彼女に長男の性的衝動の処理をもさせようとする。ある日、クリスティナは長女に石のついたヘッドバンドをプレゼントする……。
 カンヌ国際映画祭2009 ある視点部門上映作品。ある視点賞受賞。
 サラエボ国際映画祭2009 審査員特別賞受賞。
 トロント国際映画祭2009出品。
 シッチェス・カタロニア国際映画祭2009 ヤング審査員賞受賞。

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 ◎Filmgoers' Award (Midi Libre):“Fortapàsc”(伊) 監督:マルコ・リージ(Marco Risi)

 1985年に26歳の若さでナポリのマフィア、コモラに殺害された記者Giancarlo Sianiの最後の4ヶ月を描いた作品。(パノラマ部門で上映)
 イタリア・ゴールデン・グローブ賞2009作品賞ノミネート。
 イタリア・ナストロ・ダルジェント賞2009監督賞ノミネート。

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 ◎テクニカル・サポート賞/Technical Support Award (Eclair Laboratories):“Alive!”(仏・アルバニア) 監督:Artan Minarolli
 (パノラマ部門で上映)

 ◆短編部門

 ◎グランプリ/Grand Prix for Short Films (City and District of Montpellier):“A Cold Day”(ポルトガル) 監督:Claudia Varejaõ

 ◎Filmgoers' Award (Midi Libre - Kodak - Titra Film):“Annie de Francia”(仏) 監督:Christophe Le Masne

 ◎ヤング観客賞/Young audience Award (Ville de Montpellier):“Oranges”(パレスチナ) 監督:Maha Assal

 ◎Beaumarchais Association Award:“Annie de Francia”(仏) 監督:Christophe Le Masne

 ◎Cine Cinecourts Award (CINECINEMA):“Diploma”(イスラエル) 監督:Yaelle Kayam

 ◎Canal+ Award Award:“He Would Never Do It”(西) 監督:Anartz Zuazua

 ◆ドキュメンタリー部門

 ・“The Damned of the Sea/ Les Damnés de la mer”(ベルギー) 監督:Jawad Rhalib
 ・“Private File/ Malaf khas”(エジプト) 監督:Saad Hendawy
 ・“Familystrip”(西) 監督:Lluís Miñarro
 ・“The Emigrants/ Les Émigrés”(仏) 監督:José Vieira
 ・“Acqua in bocca”(仏) 監督:Pascale Thirode
 ・“Kalandia - A Checkpoint Story”(イスラエル) 監督:Neta Efrony
 ・“Off Course/ Fuori rotta”(伊) 監督:Salvo Cuccia
 ・“The One Man Village/ Semaan bil day'ia”(レバノン) 監督:Simon El Habre
 ・“Constantin and Elena/ Constantin si Elena”(ルーマニア) 監督:Andrei Dascalescu
 ・“The Last Season: Shawaks/ Demsala Dawi: Sewaxan”(トルコ) 監督:Kazim Öz

 ◎グランプリ/Ulysses Award:“Acqua in bocca”(仏) 監督:Pascale Thirode

 監督の母は、コルシカ島出身だが、母は若い頃の話はしないし、コルシカ島のことを話したりもしない。監督は、古いアルバムをめくるところから始めて、何が母の強迫観念になっているのか、探ろうとする。

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 ◆制作支援部門/Development Grants

 ◎ €7,000 grant:“Paradise”(イスラエル) 監督:Shimon Shai、共同作家:Noa Erenberg

 ◎ €7,000 grant:“Une famille libanaise”(レバノン・仏) 監督:Nadim Tabet 、プロデューサー:David Thion

 ◎ €7,000 grant:“Chroniques de la cour de récré”(モロッコ・仏)  Brahim Fritah

 ◎ €4,000 grant:“Nu allongé”(チュニジア・仏) 監督:Kaouther Ben Hania、共同作家:Eric Borg

 ◎ €3,000 grant:“Les Deux vies d’Abderrhamane”(仏) 監督:Philippe Faucon、共同作家:Yasmina Nini-Faucon

 ◎脚本研修/Writing residency:“Le Remplaçant”(レバノン) 監督:Gilles Tarazi

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 この時期はたくさんの映画祭が重なるので、コンペ部門にも似たような作品が並ぶのですが、今回の長編コンペ部門にもそうしたおなじみの作品がたくさんあります―

 ・『イースタン・プレイ』:ワルシャワ国際映画祭の1-2コンペティションで最優秀作品賞受賞、東京国際映画祭でグランプリ&監督賞受賞、シカゴ国際映画祭でニュー・ディレクターズ・コンペティション
 ・“Honeymoons”:ベネチア国際映画祭ではベネチア・デイス部門で上映、釜山国際映画祭ではワールド・シネマ部門で上映、バリャドリッド国際映画祭でグランプリ受賞
 ・“Dogtooth”:サラエボ国際映画祭では審査員特別賞受賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭ではヤング審査員賞受賞、釜山国際映画祭ではワールド・シネマ部門で上映
 ・“Ajami”:エルサレム映画祭 Wolgin Award長編部門 作品賞受賞、ロンドン映画祭第1回監督賞受賞
 などなど。

 そんな中では、今回グランプリを受賞した“Ajami”が一番評価が高いようで、実は、この後も受賞を重ねていて、米国アカデミー賞2010外国語映画賞も獲ってしまいそうな勢いがあります(少なくともノミネーション5作品には残るのではないでしょうか)。

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 コンペ部門以外では、
 ・長編パノラマ部門
 ・短編パノラマ部門
 ・実験映画・ビデオアート部門
 などの通常プログラムがあり、そのほか
 ・エマニュエル・ムレ監督 レトロスペクテイヴ(9本)
 ・トルコ映画特集(16本)
 などのプログラムが組まれました。
 さらに、各種のシンポジウムやシネ・コンサートなどさまざまな企画も実施されたようです。

 オープニング作品は、アレハンド・アメナバールの“Agora”と、4時間40分の大作“Physique de plage/ Fisico da Spaggia”(伊/監督:Edoardo De Angelis)で、クロージングはPaul Carpitaの短編“Marseille sans soleil”(仏/1960)とディノ・リージの“Le Fanfaron/ Il sorpasso”(伊/1962)でした。

 なお、作品がコンペにノミネートされているゴラン・パスカリェーヴィチは、同時期に開催中のサンパウロ国際映画祭に審査員として出席中のため、(バリャドリッド国際映画祭と同様に)モンペリエ地中海映画祭には欠席したようです。

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 *当ブログ記事
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html

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