怪鳥の涙 BLU “fino”

 BLUが生み出した「空想上の生き物」シリーズの1つ。前回紹介した“ffwd”もそうでしたが、繰り返し見ると、どこかしら「悲しみ」を感じさせます。



 【物語】
 突起がニュッと伸びて、3枚の羽根が開いて飛んでいく。
 花型の花びらが開いて、中から、“棒に段違いに2枚のプロペラがついたもの”が飛び出し、回転しながら宙を舞う。
 たくさんの羽根/プロペラが宙を行き違う。
 それが連結して、円錐形の歯車を持つ粉挽き機のようなマシンができあがる。
 その機械では、取り込まれた赤い粒が内部で細かく挽かれて、上部で糸になって紡がれていく。
 糸は4つのマニュピレーターで繭を紡ぎ上げる。
 できあがった繭からは、突起が出て、3枚の羽根が開く。
 繭は回転してほぐれ、中から、多足の鳥が現われる。
 「鳥」は、たくさんの花の上を飛ぶ。
 「鳥」がその中の1つに止まると、花びらが閉じてしまう。
 一瞬の間があって、「鳥」は花から飛び出す。
 飛び続ける「鳥」は赤い涙を流す。
 「鳥」は蜘蛛の巣に引っかかり、ぐるぐる巻きにされてしまう。
 できあがった繭は、地平線にはじけて消える。

画像

 【コメント】
 「鳥」が流す涙は、この世に生み落とされながら、自分が求める相手からは望むような対応を得られない運命(宿命性)を悲しむ涙なのでしょうか。最初に紡がれる糸の材料が元々そうした涙なのかもしれません。

 最初に“MUTO”について調べた時、「BLUはヤン・シュヴァンクマイエルに似てる」と書かれたものを見つけましたが、①内臓露出の描写、②機械(自動機械)への関心、③空想上の生物の創出、などの点では、確かにシュヴァンクマイエルに似てると言っていいのかもしれません。これらのことは空想好きの少年なら誰でも考えそうな事柄ではあるんですが、鑑賞に耐えるクオリティーの高い作品として出すことができて、BLUレベル、さらに、それを体系化し、自覚化し、理屈をつけるという域まで行って、ようやくシュヴァンクマイエル・レベルになる、ということができるかもしれません。
 今後の方向性は、自作のクリーチャーだけで、世界観を作り上げ、もっと長さのある作品に練り上げること、でしょうか。グラフィティ・アニメーションにも限界がありますし。

 タイトルの“fino”というのは、「糸巻き」か何かのことかと思ったのですが、調べてみても、“fino”という単語は、英語でもイタリア語でも存在しないようでした。イタリア語で“filo”が「糸」なので、ひょっとすると、あの「鳥」のことを“filo”をもじって、“fino”と名づけたのかもしれません。

 BGMは、Andrea Martignoniという音楽家のもので、“MUTO”のBGMも彼の作品です。

 ◆作品データ
 2006年/伊/2分30秒
 台詞なし/日本語字幕なし
 アニメーション

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 ◆アーティストについて
 BLU
 イタリアのボローニャを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、画家、壁画作家(muralist)、アニメーション作家。

 1990年代半ば、15歳からグラフィティ・アートを描き始める。当時、イタリアではグラフィティ・アートのブームがあり、雑誌も出版されていて、大いに刺激を受ける。

 元々は無許可で、ストリートや廃屋などに夜中に描くことが多かった。初期に描いたものはほとんど残っておらず、「ストリートなどに描いたものは消されて当然だし、描いた壁や建物が取り壊されてしまうことは決して苦痛ではない」、と語っている。
 古い建物、古い壁に触発(「古い壁が語りかけてくる」)されて描くことも多い、という。

 最近では依頼を受けて、プロジェクトとしてビルの外壁などに絵を描くことが
多い。

 2006年に映像作家ロレンツォ・フォンダLorenzo Fonda(http://www.lorenzofonda.com/index.html?id=hom)からBLUのドキュメンタリー“Megnica”を撮らせてほしいという申し出があり、彼と一緒にメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、アルゼンチンを旅する(http://www.megunica.org/news.php)。 “Megnica”は2008年国際アムステルダム映画祭(http://www.dnerve.com/IAFF_2008/films/competition.html)で上映されて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。BLU自身、この旅はとてもインスパイアされるものが多かったと語り、最新ウォール・アニメーション“Muto”もブエノスアイレスで制作している。

 2008年6月 第一画集“BLU-2004 2007”を出版。

 画家Ericailcane(http://www.ericailcane.org/)とともに(壁画の)仕事をすることが多い。

 壁画作品は、公式サイトの「WALL S」(http://blublu.org/sito/walls/walls.htm)で見ることができる。

 動画作品は、vimeo(http://www.vimeo.com/blu/videos)やYou Tube(http://jp.youtube.com/user/notblu)に自ら投稿している。

 公式には、プロフィール、作品年譜などは発表していない(生年すら明らかになっていませんが、1980年前後の生まれで、現在30歳くらいのようです)。

 【フィルモグラフィー】
 ・2005年 “Child
 ・2006年 “ffwd”
 ・2006年 “fino”
 ・2006年 “Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)[ミュージック・ビデオ]
 ・2007年 “LETTER A” [グラフィティ・アニメーション]
 ・2007年 “WALKING” [グラフィティ・アニメーション]
 ・2008年5月 “MUTO” [グラフィティ・アニメーション]
 ・2009年9月 “COMBO” [David Ellisとの共作]
 ・2010年7月 “BIG BANG BIG BOOM” [グラフィティ・アニメーション]

 2008年以前の作品(制作年不詳)
 ・No.1(手回しカメラ)
 ・No.3(ネクタイ)
 ・No.4(腸があふれ出てきて困る)
 ・No.7(輪切り)
 ・No.8(ゲップ)
 ・No.10(脳の入れ替え)
 ・No.12(こんな車いらない)
 ・No.13(食事)
 ・No.15(目を押すと)
 ・No.16(耳から口へ抜ける)

 ・No.18(loop)
 ・No.20(ふたりにクギづけ)
 ・No.22(死の影)
 ・No.23(のどにしずく)
 ・No.24(頭がかゆくて)
 ・No.26(トランスフォーマー)
 ・No.27(目からヒョロヒョロ)
 ・No.29(換気扇)
 ・No.33(8本手男)
 ・“Connections”

 ・“fino”
 ・“loop #1” [グラフィティ・アニメーション]

 ※参考サイト
 ・公式サイト(英語):http://blublu.org/
 WALL S(2000年からの年別グラフィティ・アート)、Drawings(スケッチ集)、News、リンク集、Video、Shopなどで構成。
 ・公式ブログ(英語):http://www.blublu.org/blog/
 2008年3月スタートのBLUのブログ。BLUとしては3つ目のブログだとか。
 ・notblu(BLU video channel):http://jp.youtube.com/user/notblu
 ・Megunica(インタビュー/英語/PDF):http://www.megunica.org/download/swindle.pdf
 ・NAMES FEST@プラハ(インタビュー/英語):http://namesfest.net/news.php?extend.19
 NAMES FESは、さまざまなグラフィティ・アーティストのフェス。
 ・STUDIOCROMIE:http://www.studiocromie.org/gallery.php?id_art=56
 ・POW(Pictures on Wall):http://www.picturesonwalls.com/
 ・GIZMODO Japan:http://www.gizmodo.jp/2008/07/post_3935.html
 2008年7月にBLUを紹介している。

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