「微笑と笑いの違いについて」 BLU
たぶん今のところ、BLUが手がけた唯一のミュージック・ビデオ“Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)です。イタリア語の歌詞はついていますが、全く気にしないで楽しめます。
【物語】
卓球台からサーブ。
ピンポン玉は、いくつものネットを越え、対戦相手をも越えて飛んでいく。
ピンポン玉は割れて、中から玉が飛び出し、(もう1つの?)地球に落下。
玉は隕石となって、バチカンのローマ法王の口の中へ。
すると大爆発が起こって、ビルが倒れ、車もひっくり返って積み重なり、戦車も使いものにならなくなる。そして大きなクレーターができる。
クレーターは骸骨の眼窩に沈み、骸骨の倒れている家は宙に舞った後、地面に落下して、バラバラに解体する。
その砂煙は、煙突の煙につながり、煙突は倒れて、車を押しつぶす。
倒れた煙突から玉が飛び出して、階段を転がっていく。
階段の傾斜が卓球のラケットのグリップ部分に消える。そしてラケットは卓球をしようとしている男の手へ。その姿は見る見る小さくなり、点になって消える。
【コメント】
“Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)を歌っているのは、イタリアのハードコア・パンクバンド「la quiete」(静けさ/ザ・サイレンス)です。「la quiete」は、2000年に結成された5人組のバンド(http://www.laquiete.org/)で、Wikipediaでは“a popular Italian screamo band”(イタリアの人気絶叫系バンド)とも説明されています(http://en.wikipedia.org/wiki/La_Quiete)。2007年にはオーストラリアと日本をまわるツアーも行なっています。
BLUのアニメーション作家としての成長はめざましく、物語性があって、カメラ(視点)の移動や回り込み、極端な引きとアップもあり、イメージの連鎖等も使われて、商業作品としても十分に見られる作品になっています。
映像としては、この作品で行なわれていることは、破壊に次ぐ破壊、ただそれだけでしかありませんが、物語的には、「オレのサーブはこんなに凄いんだぞ」ということの比喩としても見ることができるかもしれません。ま、BLU作品に共通して見られるブラックな笑いは健在で、法王も嫌いだけど、戦車も嫌い、高いビルや煙突も目障りだ、というのが見てとれます(笑)。(澄まして立ってるビルなんかが嫌いだから落書きするのでしょうが。)
“Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)の歌詞も探してみましたが、イタリア語であれ、英語であれ、ネット上では見つけられませんでした。
本作を観て私が最初に思ったのは、「BLUは、曽我利彦の『ピンポン』を観て、本作の参考にしたんじゃないか」ということですが、果たしてどうでしょうか。アニメーションのダイナミズムが松本大洋っぽかったりもしますね。
◆作品データ
2006年/伊/1分15秒
イタリア語歌詞あり/日本語字幕なし
ミュージック・ビデオ/Flashアニメーション
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※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ
・「tantano 短編映画をたのしむ」INDEX
・「tantano 短編映画をたのしむ」 人気動画 トップ39!
◆アーティストについて
BLU
イタリアのボローニャを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、画家、壁画作家(muralist)、アニメーション作家。
1990年代半ば、15歳からグラフィティ・アートを描き始める。当時、イタリアではグラフィティ・アートのブームがあり、雑誌も出版されていて、大いに刺激を受ける。
元々は無許可で、ストリートや廃屋などに夜中に描くことが多かった。初期に描いたものはほとんど残っておらず、「ストリートなどに描いたものは消されて当然だし、描いた壁や建物が取り壊されてしまうことは決して苦痛ではない」、と語っている。
古い建物、古い壁に触発(「古い壁が語りかけてくる」)されて描くことも多い、という。
最近では依頼を受けて、プロジェクトとしてビルの外壁などに絵を描くことが
多い。
2006年に映像作家ロレンツォ・フォンダLorenzo Fonda(http://www.lorenzofonda.com/index.html?id=hom)からBLUのドキュメンタリー“Megnica”を撮らせてほしいという申し出があり、彼と一緒にメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、アルゼンチンを旅する(http://www.megunica.org/news.php)。 “Megnica”は2008年国際アムステルダム映画祭(http://www.dnerve.com/IAFF_2008/films/competition.html)で上映されて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。BLU自身、この旅はとてもインスパイアされるものが多かったと語り、最新ウォール・アニメーション“Muto”もブエノスアイレスで制作している。
2008年6月 第一画集“BLU-2004 2007”を出版。
画家Ericailcane(http://www.ericailcane.org/)とともに(壁画の)仕事をすることが多い。
壁画作品は、公式サイトの「WALL S」(http://blublu.org/sito/walls/walls.htm)で見ることができる。
動画作品は、vimeo(http://www.vimeo.com/blu/videos)やYou Tube(http://jp.youtube.com/user/notblu)に自ら投稿している。
公式には、プロフィール、作品年譜などは発表していない(生年すら明らかになっていませんが、1980年前後の生まれで、現在30歳くらいのようです)。
【フィルモグラフィー】
・2005年 “Child”
・2006年 “ffwd”
・2006年 “fino”
・2006年 “Sulla differenza fra un sorriso e una risata”[ミュージック・ビデオ]
・2007年 “LETTER A” [グラフィティ・アニメーション]
・2007年 “WALKING” [グラフィティ・アニメーション]
・2008年5月 “MUTO” [グラフィティ・アニメーション]
・2009年9月 “COMBO” [David Ellisとの共作]
・2010年7月 “BIG BANG BIG BOOM” [グラフィティ・アニメーション]
2008年以前の作品(制作年不詳)
・No.1(手回しカメラ)
・No.3(ネクタイ)
・No.4(腸があふれ出てきて困る)
・No.7(輪切り)
・No.8(ゲップ)
・No.10(脳の入れ替え)
・No.12(こんな車いらない)
・No.13(食事)
・No.15(目を押すと)
・No.16(耳から口へ抜ける)
・No.18(loop)
・No.20(ふたりにクギづけ)
・No.22(死の影)
・No.23(のどにしずく)
・No.24(頭がかゆくて)
・No.26(トランスフォーマー)
・No.27(目からヒョロヒョロ)
・No.29(換気扇)
・No.33(8本手男)
・“Connections”
・“loop #1” [グラフィティ・アニメーション]
※参考サイト
・公式サイト(英語):http://blublu.org/
WALL S(2000年からの年別グラフィティ・アート)、Drawings(スケッチ集)、News、リンク集、Video、Shopなどで構成。
・公式ブログ(英語):http://www.blublu.org/blog/
2008年3月スタートのBLUのブログ。BLUとしては3つ目のブログだとか。
・notblu(BLU video channel):http://jp.youtube.com/user/notblu
・Megunica(インタビュー/英語/PDF):http://www.megunica.org/download/swindle.pdf
・NAMES FEST@プラハ(インタビュー/英語):http://namesfest.net/news.php?extend.19
NAMES FESは、さまざまなグラフィティ・アーティストのフェス。
・STUDIOCROMIE:http://www.studiocromie.org/gallery.php?id_art=56
・POW(Pictures on Wall):http://www.picturesonwalls.com/
・GIZMODO Japan:http://www.gizmodo.jp/2008/07/post_3935.html
2008年7月にBLUを紹介している。
【物語】
卓球台からサーブ。
ピンポン玉は、いくつものネットを越え、対戦相手をも越えて飛んでいく。
ピンポン玉は割れて、中から玉が飛び出し、(もう1つの?)地球に落下。
玉は隕石となって、バチカンのローマ法王の口の中へ。
すると大爆発が起こって、ビルが倒れ、車もひっくり返って積み重なり、戦車も使いものにならなくなる。そして大きなクレーターができる。
クレーターは骸骨の眼窩に沈み、骸骨の倒れている家は宙に舞った後、地面に落下して、バラバラに解体する。
その砂煙は、煙突の煙につながり、煙突は倒れて、車を押しつぶす。
倒れた煙突から玉が飛び出して、階段を転がっていく。
階段の傾斜が卓球のラケットのグリップ部分に消える。そしてラケットは卓球をしようとしている男の手へ。その姿は見る見る小さくなり、点になって消える。
【コメント】
“Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)を歌っているのは、イタリアのハードコア・パンクバンド「la quiete」(静けさ/ザ・サイレンス)です。「la quiete」は、2000年に結成された5人組のバンド(http://www.laquiete.org/)で、Wikipediaでは“a popular Italian screamo band”(イタリアの人気絶叫系バンド)とも説明されています(http://en.wikipedia.org/wiki/La_Quiete)。2007年にはオーストラリアと日本をまわるツアーも行なっています。
BLUのアニメーション作家としての成長はめざましく、物語性があって、カメラ(視点)の移動や回り込み、極端な引きとアップもあり、イメージの連鎖等も使われて、商業作品としても十分に見られる作品になっています。
映像としては、この作品で行なわれていることは、破壊に次ぐ破壊、ただそれだけでしかありませんが、物語的には、「オレのサーブはこんなに凄いんだぞ」ということの比喩としても見ることができるかもしれません。ま、BLU作品に共通して見られるブラックな笑いは健在で、法王も嫌いだけど、戦車も嫌い、高いビルや煙突も目障りだ、というのが見てとれます(笑)。(澄まして立ってるビルなんかが嫌いだから落書きするのでしょうが。)
“Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)の歌詞も探してみましたが、イタリア語であれ、英語であれ、ネット上では見つけられませんでした。
本作を観て私が最初に思ったのは、「BLUは、曽我利彦の『ピンポン』を観て、本作の参考にしたんじゃないか」ということですが、果たしてどうでしょうか。アニメーションのダイナミズムが松本大洋っぽかったりもしますね。
◆作品データ
2006年/伊/1分15秒
イタリア語歌詞あり/日本語字幕なし
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※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ
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◆アーティストについて
BLU
イタリアのボローニャを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、画家、壁画作家(muralist)、アニメーション作家。
1990年代半ば、15歳からグラフィティ・アートを描き始める。当時、イタリアではグラフィティ・アートのブームがあり、雑誌も出版されていて、大いに刺激を受ける。
元々は無許可で、ストリートや廃屋などに夜中に描くことが多かった。初期に描いたものはほとんど残っておらず、「ストリートなどに描いたものは消されて当然だし、描いた壁や建物が取り壊されてしまうことは決して苦痛ではない」、と語っている。
古い建物、古い壁に触発(「古い壁が語りかけてくる」)されて描くことも多い、という。
最近では依頼を受けて、プロジェクトとしてビルの外壁などに絵を描くことが
多い。
2006年に映像作家ロレンツォ・フォンダLorenzo Fonda(http://www.lorenzofonda.com/index.html?id=hom)からBLUのドキュメンタリー“Megnica”を撮らせてほしいという申し出があり、彼と一緒にメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、アルゼンチンを旅する(http://www.megunica.org/news.php)。 “Megnica”は2008年国際アムステルダム映画祭(http://www.dnerve.com/IAFF_2008/films/competition.html)で上映されて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。BLU自身、この旅はとてもインスパイアされるものが多かったと語り、最新ウォール・アニメーション“Muto”もブエノスアイレスで制作している。
2008年6月 第一画集“BLU-2004 2007”を出版。
画家Ericailcane(http://www.ericailcane.org/)とともに(壁画の)仕事をすることが多い。
壁画作品は、公式サイトの「WALL S」(http://blublu.org/sito/walls/walls.htm)で見ることができる。
動画作品は、vimeo(http://www.vimeo.com/blu/videos)やYou Tube(http://jp.youtube.com/user/notblu)に自ら投稿している。
公式には、プロフィール、作品年譜などは発表していない(生年すら明らかになっていませんが、1980年前後の生まれで、現在30歳くらいのようです)。
【フィルモグラフィー】
・2005年 “Child”
・2006年 “ffwd”
・2006年 “fino”
・2006年 “Sulla differenza fra un sorriso e una risata”[ミュージック・ビデオ]
・2007年 “LETTER A” [グラフィティ・アニメーション]
・2007年 “WALKING” [グラフィティ・アニメーション]
・2008年5月 “MUTO” [グラフィティ・アニメーション]
・2009年9月 “COMBO” [David Ellisとの共作]
・2010年7月 “BIG BANG BIG BOOM” [グラフィティ・アニメーション]
2008年以前の作品(制作年不詳)
・No.1(手回しカメラ)
・No.3(ネクタイ)
・No.4(腸があふれ出てきて困る)
・No.7(輪切り)
・No.8(ゲップ)
・No.10(脳の入れ替え)
・No.12(こんな車いらない)
・No.13(食事)
・No.15(目を押すと)
・No.16(耳から口へ抜ける)
・No.18(loop)
・No.20(ふたりにクギづけ)
・No.22(死の影)
・No.23(のどにしずく)
・No.24(頭がかゆくて)
・No.26(トランスフォーマー)
・No.27(目からヒョロヒョロ)
・No.29(換気扇)
・No.33(8本手男)
・“Connections”
・“loop #1” [グラフィティ・アニメーション]
※参考サイト
・公式サイト(英語):http://blublu.org/
WALL S(2000年からの年別グラフィティ・アート)、Drawings(スケッチ集)、News、リンク集、Video、Shopなどで構成。
・公式ブログ(英語):http://www.blublu.org/blog/
2008年3月スタートのBLUのブログ。BLUとしては3つ目のブログだとか。
・notblu(BLU video channel):http://jp.youtube.com/user/notblu
・Megunica(インタビュー/英語/PDF):http://www.megunica.org/download/swindle.pdf
・NAMES FEST@プラハ(インタビュー/英語):http://namesfest.net/news.php?extend.19
NAMES FESは、さまざまなグラフィティ・アーティストのフェス。
・STUDIOCROMIE:http://www.studiocromie.org/gallery.php?id_art=56
・POW(Pictures on Wall):http://www.picturesonwalls.com/
・GIZMODO Japan:http://www.gizmodo.jp/2008/07/post_3935.html
2008年7月にBLUを紹介している。
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