豪華な監督陣が手がけたCMシリーズ 『パリジャン』 クストリッツァ篇

 スイスのタバコ“Parisienne”(パリジャン)は、1994年以降、世界の有名映画監督を監督に起用し、一連のCMを制作しています。
 その顔ぶれは、ロバート・アルトマン、コーエン兄弟、ロマン・ポランスキー、デイヴィッド・リンチ、ジャン=リュック・ゴダール&アン=マリー・ミエヴィル、エンキ・ビラル、ヴィム・ヴェンダース、Oliver Paulus、ジュゼッペ・トルナトーレ(1995)、Juan Carlos Tabio(1997)、Marc-Henri Wajnberg(1998)などなど。
 当然といえば当然ですが、喫煙派で、自作にも喫煙シーンを盛り込むことを厭わない監督ばかりのようです。

 下の動画は、そのエミール・クストリッツァ篇です。ノー・スモーキング・オーケストラというバンドの一員でもあるクストリッツァですが、よく知られているように、彼も喫煙派です。



 【物語】
 酒場。
 手品師が炎の中から鳩を出したり、フラフープをしている女性がいたり、サーカスの一段か曲芸師ばかりが集まっているアンダーグラウンドの酒場のようにも見える。
 その中に一人の少女。
 カメラは、ぐるっとまわって何度も酒場の様子を映し出す。
 3度目に少女の姿を捉えた時、少女は手品師からもらったタバコに、火吹き師の吐き出す炎で火をつけ、気持ちよさそうにタバコの煙を吐き出す。

画像

 タバコ“Parisienne”(パリジャン)は、スイスのタバコ・メーカーF.J.Burrusの商品です(他にBarclay、Select、Mary Longがある)。

 F.J.Burrusは、100年以上の歴史を持つ会社ですが、1996年にイギリスのタバコ&ビール・メーカーのRothmans(ダンヒルが有名。F1のスポンサーとしても知られる)に買収されています。
 こんなに有名な監督ばかりを起用したCMを制作するには、何かきっかけがあったのではないかと思い、それはRothmansグループの傘下になった時かとも考えたのですが、傘下になったのはこのCMが作られ始めた2年後なので、買収とCMは関係ないようです。ひょっとすると、RothmansがF.J.Burrusを買収したのは、こういうブランド・イメージを持つ会社だったからこそ、だったのかもしれません。
 F.J.Burrusは、サッカーのスポンサーを務めたり、高齢者のための施設を作ったりする企業として、地元では家族的な会社として知られているようです。

 スイスは、比較的に喫煙に対して寛容な国だそうで、これらのCMはスイスの映画館で映画の上映前に流されています。

 音楽を担当しているのは、クストリッツァ組の常連ゴラン・ブレゴヴィッチGoran Bregović。『ジプシーのとき』『アリゾナ・ドリーム』『可愛いだけじゃダメかしら』『王妃マルゴ』『アンダーグラウンド』『シェフ・イン・ラブ』『シビラの悪戯』『悪魔のくちづけ』『ロスト・サン』『ツバル』など手がけた映画音楽は多数あります。

◆作品データ
 1994年/スイス/30秒
 台詞なし/日本語字幕なし
 CM

 You Tubeにアップされている動画からすると、有名映画監督が手がけた“Parisienne”のCMだけ集めたビデオが存在するようです。

 
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 ◆監督について
 エミール・クストリッツァ Emir Kusturica
 カンヌ国際映画祭で2度のパルムドールを受賞している数少ない監督の1人。

 1954年 ユーゴスラビア・サラエボ生まれ。
 10代の頃から映画に興味を持って、短編映画を作り始める。
 チェコスロバキアのAcademy of Performing Arts (FAMU)映画学部で学ぶ。1978年卒業。
 在学中に作った“Guernica”はカルロヴィ・ヴァリ学生映画祭で入賞した。
 卒業後は、サラエボに戻り、いくつかのテレビ映画を監督。
 初長編『ドリー・ベルを憶えてる?』がベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、華々しいデビューを飾った。

 主にジプシーの視点から、社会を、そして故郷ユーゴスラビアのたどった過酷な歴史を描くことが多いが、ただ悲惨な現状をリアルに描写するのではなく、厳しい現実を大胆に笑い飛ばすパワーとイマジネーションがあって、生命力あふれる作品に仕上がっていることが多い。

 受賞歴も多く、1981年『ドリー・ベルを憶えてる?』がベネチア国際映画祭で金獅子賞受賞、1985年カンヌ国際映画祭で『パパは、出張中!』がパルムドール&国際批評家連盟賞受賞、1989年カンヌ国際映画祭で『ジプシーのとき』が監督賞受賞、1993年ベルリン国際映画祭で『アリゾナ・ドリーム』が銀熊賞受賞、1995年カンヌ国際映画祭で『アンダーグラウンド』がパルムドール受賞。そのほか『ライフ・イズ・ミラクル』や“Zavet”もカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されている。
 2007年にはフランス芸術文化勲章(Ordre des Arts et des Lettres)が贈られている。

 現在は、『ライフ・イズ・ミラクル』のロケ地に小さな映画学校Kustendorfを開校し、後進の指導にも当たっている。
 また、ユニークなルックスと存在感を買われてか、『サン・ピエールの生命』『ギャンブル・プレイ』など、いくつかの作品には俳優として出演している。
 90年代以降は、数多くのCMも手がけている。
 自らがギタリストを務めるバンド ノー・スモーキング・オーケストラは、2008年にワールド・ツアーを行ない、東京でもコンサートも開いている。
 2007年にはパリでオペラ版「ジプシーのとき」を演出した。

 【フィルモグラフィー】

 ・1971年 “A Part of the Truth”[短編][監督]
 ・1972年 “Autumn”[短編][監督]
 ・1972年 “Valter brani Sarajevo”[出演](監督:Hajrudin Krvavac)
 ・1974年 “Valter brani Sarajevo”(TVシリーズ)[出演](監督:Hajrudin Krvavac)
 ・1978年 “Guernica”[短編][監督/脚本]
 ・1978年 “Nevjeste dolaze(The Brides Are Coming)”(TV)[監督/出演]
 ・1979年 “Bife 'Titanik'(Buffet Titanic)”(TV)[監督/脚色]
 ・1981年 『ドリー・ベルを憶えてる?』[監督/脚本]
 ・1982年 “13. jul”[出演](監督:Radomir Saranovic)
 ・1985年 『パパは、出張中!』 [監督]
 ・1987年 “Strategija svrake”[脚本](監督:Zlatko Lavanic)
 ・1987年 “Zivot radnika”[脚本](監督:Miroslav Mandic)
 ・1988年 “Vizantija”(TV)[出演](監督:Milan Bilbija)
 ・1989年 『ジプシーのとき』 [監督/脚本]
 ・1992年 『アリゾナ・ドリーム』 [監督/脚本/出演]
 ・1994年 “Parisienne People”[CM][監督]
 ・1994年 “Le Sucre”[CM][監督]
 ・1995年 『アンダーグラウンド』 [監督/脚本/出演]
 ・1995年 “L'envol”[CM][監督]
 ・1995年 “Bila jednom jedna zemlja”(TVシリーズ)[監督/脚本/出演]
 ・1996年 “Seven Days in a Life of a Bird”[短編][監督]
 ・1996年 “XS”[CM][監督]
 ・1997年 “Magic Bus”[短編][監督]
 ・1997年 “Maxwell”[CM][監督]
 ・1998年 『黒猫・白猫』 [監督]
 ・1999年 『サン・ピエールの生命(いのち)』 [出演](監督:パトリス・ルコント)
 ・1999年 “Unza Unza Time”[ミュージック・ビデオ][監督]
 ・1999年 “Le coucher de solei”[CM][監督]
 ・1999年 “L'épi”[CM][監督]
 ・2001年 『SUPER 8』 [監督/製作総指揮/出演]
 ・2001年 “Ali Baba”[CM][監督]
 ・2002年 『ギャンブル・プレイ』 [出演](監督:ニール・ジョーダン)
 ・2003年 “Jagoda u supermarketu”[出演](監督:Dusan Milic)
 ・2004年 『ライフ・イズ・ミラクル』 [監督/製作/脚本/音楽]
 ・2004年 “Next”[CM][監督]
 ・2005年 『ブルー・ジプシー』(『それでも生きる子供たちへ』) [監督/製作総指揮]
 ・2005年 “Gypsy Ketchup”[CM][監督]
 ・2006年 “Zivot je cudo”(TVシリーズ)[監督]
 ・2006年 “Guca!”[製作](監督:Dusan Milic)
 ・2006年 “Viaggio segreto”[出演](監督:Roberto Andò)
 ・2007年 “Zavet(Promise Me This)”[監督/脚本/音楽]
 ・2007年 “Rainin In Paradize”[ミュージック・ビデオ][監督]
 ・2007年 “Hermano”[出演](監督:Giovanni Robbiano)
 ・2008年 “Maradona by Kusturica”[監督/脚本]
 ・2008年 “Mavi Jeans”[CM][監督]

 *参考サイト
 ・kustu.com:http://www.kustu.com/w2/en:commercials?redirect=1

 *当ブログ関連記事
 エミール・クストリッツァが作った小さな小さな映画学校:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200801/article_10.html


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