ウォン・カーウァイ+エヴァ・グリーン = “Midnight Poison”

 ウォン・カーウァイが監督した、クリスチャン・ディオールの香水“Midnight Poison”のCMです。主演は、エヴァ・グリーン



 【物語】
 雲の中から満月が現れる。
 鏡の前で深夜のパーティーへ向かう支度をしている女性。
 タイム・リミットは零時ちょうどらしく、あまり時間は残されていないが、彼女の表情に焦りは感じられない。
 街を抜けてパーティー会場へ。
 そして零時ちょうどに、ロープを使って、会場に飛び込む。
 光のくす玉が割れて、彼女の上に光の粒が降り注ぐ。

画像

 ◆解説

 ブルーがとても印象的!(“Midnight Poison”の香水瓶も濃いブルー=ミッドナイト・ブルー)

 イメージはシンデレラでしょうか。零時までに家に帰らなければならないシンデレラではなくて、零時までにパーティー会場に現れなければならないエヴァ・グリーン。舞踏会の会場から出て、階段を駆け下りていくシンデレラに対して、階段を駆け上って、パーティー会場に入るエヴァ・グリーン。そしてみんなの前への登場の仕方も、ぐっと派手な演出で。

 “Midnight Poison”は、真夜中の大人だけのパーティーに身に着けていくゴージャスで妖艶な香水というイメージでしょうか。

 映像では、円運動と直線運動が交互に挿入されます。
 時間が進んでいることの象徴と思われる時計まわりの円運動と、それを押しとどめようとするかのような逆まわりの円運動、そしてそれらを貫いてただ前に向かおうとする直線運動。音楽も同様で、ピアノによる同じメロディーが繰り返されたか(円運動)と思うと、それを突き破るかのような歌声が突き抜けていきます。

 唐突に挿入される列車は、彼女と進行方向が同じで、彼女の急ぐ気持ちの象徴とも考えられます。
 ラストでの降り注ぐ光の粒は、登場した彼女の圧倒的な存在感であり、彼女が身に着けているはずの香水“Midnight Poison”が皆の上に降り注ぐイメージと重ね合わせているのでしょう。
 降り注ぐ光の中に、サブリミナル的に“Midnight Poison”の文字(香水瓶)がインサートされてもいます。その背後に、“You make me sick”(あなたは私を狂わせる)とBGMがかぶさります。

 調べてみると(http://www.shoppingsquare.com.au/p_2957_Midnight_Poison_100ml_EDP_by_Christian_Dior)――
When the 12 strokes of midnight have struck, everything can begin... Dior reinterprets the tale of Cinderella. This intensely blue fragrance incarnates the magical spells to perfectly. A mysterious rose over an oriental bed of ambry patchouli. Actress Eva Green incarnates this modern Cinderella for director Wong Kar Wai, photographer Solve Sundsbo and the House of Dior's couturier, John Galliano.
"Not a well-behaved floral bouquet, but a strong statement". A fruity opening built around citrus. A heart of dark rose, strengthened with patchouli, and an oriental trail of amber, French vanilla and ambrox. A perfume designed by François Demachy in collaboration with Olivier Cresp and Jacques Cavallier, from Firmenich.
Intense and chromatic, the Poison bottle has been reinterpreted in a midnight-blue hue.

 と、このCMは、確かに、「モダン・シンデレラ」をエヴァ・グリーンで「再現」しようとしたことがわかります。

 撮影は、ノルウェー生まれ(1970年)のファッション・フォトグラファーSolve Sundsbo(ソルヴァ・スンツボ)。ネットで検索すると、この人の作品をいろいろ観ることができますが、本作のアート・ディレクションはこのスンツボのセンスに拠っている部分が多いであろうことは十分に想像できます(基本ラインは、ジョン・ガリアーノが決めたのかもしれませんが)。
 本作を観ると、ヴァンパイアをイメージさせるようなところがありますが、スンツボにも少女のヴァンパイアをイメージした作品があります。

 *当ブログ関連記事
 ・ひらりひらりと舞い降りた美神 エヴァ・グリーン!

 ◆作品データ
 2007年9月/仏/1分
 台詞なし(BGMあり)/日本語字幕なし
 CM

 ショート・ヴァージョンもありますが↓、元々1分ヴァージョンを想定して作られた作品だからか、ショート・ヴァージョンは「タメ」が少なくて味わいに乏しいですね。


 メイキング(2分)も観られます↓



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 ◆監督について

 ウォン・カーウァイ 王家衛(Won Kar-Wai)

 1958年、上海生まれ。
 1963年、5歳の時、末子のウォン・カーウァイだけが母親と一緒に香港へ移住。彼は、北京語と上海語は話せたが、広東語がなかなか話せなかった(13歳くらいまで)ということもあり、母親と毎日映画館へ通うようになる。
 1980年に香港理工学院を卒業し、香港のTV局TVBへ入社。アシスタントと脚本を手がける。
 1980年代半ばには、TVBを辞め、The Wing Scope Co. 、アラン・タンのプロダクションIn-gear Film Production Companyで、脚本家/監督として活躍するようになる。
 1988年に『いますぐ抱きしめたい』で監督デビューするまでに10本以上の脚本を手がける。
 1990年に監督第二作『欲望の翼』を発表。この作品で初めて組んだオーストラリア出身の撮影監督クリストファー・ドイルと組み、彼の、手持ちカメラという撮影スタイル、および、画面構成と色彩設計が、ウォン・カーウァイ作品と分かちがたく結びついて、認識されていくようになる(2人のコンビは『2046』まで続いた)。
 1992年にクランクインした『楽園の瑕』の製作が難航し、1994年にゲリラ的に撮影した『恋する惑星』が先に完成し、公開。
 『恋する惑星』(日本公開は1995年7月)は、これまでの香港映画にはない、新しい映像センス、カッコよさを持った作品として日本でも記録的なヒットとなり、ウォン・カーウァイは日本でも人気の高い監督の1人となった。『恋する惑星』は、クエンティン・タランティーノが惚れ込み、自社でアメリカ公開した。
 1992年にジェフ・ラウとともにジェット・トーン・プロダクションを設立。同社は、『大英雄』『恋する惑星』『天使の涙』『初恋』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』『マイ・ブルーベリー・ナイツ』などの作品を手がけている。
 1998年の『ブエノスアイレス』では、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、同賞を受賞した初めての中国人となった。
 2007年の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』でアメリカに進出した。
 ウォン・カーウァイは、脚本家としてデビューしながら、自作ではちゃんとした脚本もないままに撮影を始めるという方式を取っている。
 近年は、CM、ミュージック・ビデオ、短編作品を手がけることも多く、2000年の『花様的年華』“Hua yang de nian hua”はベルリン国際映画祭の短編部門に出品された。

 【フィルモグラフィー】

 ・1982年 “彩雲曲/Choi wan kuk(Rainbow Could Song)”[脚本](監督:アグネス・ホアン)
 ・1983年 “空心大少爺/Kong xin da shao ye(Just For Fun)”[脚本] (監督:フランキー・チェン)
 ・1984年 “伊人再見/Yi ren zai jian(Silent Romance)”[脚本・出演] (監督:フランキー・チェン)
 ・1985年 “吉人天相/Ji ren tian xiang (Chase a Fortune)”[脚本](監督:Wai Hung Liu)
 ・1985年 『レスリー・チャン あの日にかえりたい(美人スリに御用心))』<未> [脚本] (監督:ガイ・ライ)
 ・1985年 『ファンタジー・フォックス・ストーリー』<未>“小狐仙/Xiao hu xian(Unforgettable Tantasy)”[脚本](監督:フランキー・チェン)
 ・1986年 『傷だらけのメロディー』<未> [脚本] (監督:ノーマン・ロウ)
 ・1986年 “我要金龟婿/Wo yao jin gui xu(Sweet Surrender)”[脚本](監督:フランキー・チェン、ノーマン・ロウ)
 ・1986年 『ユン・ピョウ in ポリス・ストーリー(俺たちに明日はある!?)』[脚本](監督:チェン・タンチョウ)
 ・1986年 “悪男/E nan”[脚本](監督:フランキー・チェン)
 ・1987年 “最后一战/Zui hou yi zhan(The Final Test)”[脚本](監督:Kin Lo)
 ・1987年 『バンパイア・コップ』<未> [脚本] (監督:ラウ・チェンウェイ)
 ・1987年 『最後勝利』<未> [脚本] (監督:パトリック・タム)
 ・1987年 『マカオ極道ブルース』<未> [脚本] (監督:チェン・タンチョー)
 ・1988年 『バンパイア・コップ2』<未> [脚本・出演] (監督:ジェフ・ラウ)
 ・1988年 “猎鹰计划/Lie ying ji hua(Walk on Fire)”[脚本](監督:ノーマン・ロウ)
 ・1988年 “愛情謎語/Ai qing mi yu(Chaos by Design)”[出演](監督:アンジェラ・チャン)
 ・1988年 『いますぐ抱きしめたい』[監督/脚本]
 ・1988年 “Motolora”[監督](CM)
 ・1990年 『欲望の翼』[監督/脚本]
 ・1990年 『アンディ・ラウ/武闘派列伝』<未> [脚本] (監督:チョン・ファンツォ)
 ・1991年 『神鳥伝説』 [原案] (監督:デイヴィッド・ライ、ユン・ケイ、ジェフ・ラウ)
 ・1993年 『大英雄』<未> [製作総指揮] (監督:ジェフ・ラウ)
 ・1994年 『楽園の瑕(きず)』 [監督/脚本]
 ・1994年 『恋する惑星』[監督/脚本]
 ・1995年 『天使の涙』 [監督/脚本]
 ・1996年 『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』 [監督](短編)
 ・1997年 『初恋』[製作] (監督:エリック・コット)
 ・1997年 『ブエノスアイレス』 [監督/製作/脚本]
 ・1999年 『ブエノスアイレス 摂氏零度』 <未> [出演] (監督:クアン・プンリョン、アモス・リー)
 ・2000年 『花様年華』[監督/製作/脚本]
 ・2000年 「花様年華MTV」[監督](ミュージック・ビデオ)
 ・2000年 『花様的年華』 “Hua yang de nian hua”[監督/製作](短編)
 ・2000年 “Suntime Wine(新天葡萄酒)”[監督](CM)
 ・2000年 JCDecaux “Un matin partout dans le monde”[監督](CM)
 ・2001年 “The Hire:The Fellow”[監督](短編)
 ・2001年 Orange France“Dans la ville”[監督](CM)
 ・2002年 “天下無双/Tian xia wu shuang (Chinese Odyssey 2002)”[製作]
 ・2002年 “Six Days”[監督/脚本](ミュージック・ビデオ)
 ・2002年 ラコステ “La Rencontre”[監督](CM)
 ・2004年 『愛の神、エロス』[監督/製作/脚本]
 ・2004年 『2046』[監督/製作/脚本]
 ・2005年 クリスチャン・ディオール 香水“Capture Totale”[監督](CM)
 ・2007年 ランコム・パリ 香水 “Hypnôse Femme”[監督](CM)
 ・2007年 ランコム・パリ 香水 “Hypnôse Homme” [監督](CM)
 ・2007年 『マイ・ブルーベリー・ナイツ』[監督/製作/原案/脚本]
 ・2007年 "I Travelled 9000 km To Give It To You"(『それぞれのシネマ』)[監督・脚本]
 ・2007年 ソフトバンクCM [監督](CM)
 ・2007年 クリスチャン・ディオール 香水“Midnight Poison”[監督](CM)
 ・2007年 “There's Only One Sun”[監督](短編)
 ・2009年 “The Lady from Shanghai”[監督/脚本]

 *参考サイト
 ・Allcinema Movie & DVD Database:http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=5248&ct=
 ・IMDb:http://us.imdb.com/name/nm0939182/
 ・Wikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Wong_Kar-wai
 ・「ウォン・カーウァイ FILMOGRAPHY」:http://members.jcom.home.ne.jp/baht/wkw_filmo_j.html
 ・香港影庫HKMDB:http://www.hkmdb.com/db/people/view.mhtml?id=5243&display_set=eng

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