ジャコ・ヴァン・ドルマルが手がけたミュージック・ビデオ

 ミュージック・ビデオというのは、演出する監督の個性が表われるものですが、“La ceinture”は、『トト・ザ・ヒーロー』『八日目』で知られるジャコ・ヴァン・ドルマルが手がけた作品です。
 ジャコ・ヴァン・ドルマルは、1996年の『八日目』以降新作を発表していないので、これが彼の最新作ということになります。



 女性の体をなでる男性の手。それが、顔から着衣に移り、上着の前をはだけさせ、最後に女性自身がスカート(?)のベルトに手をかける……。

 ベルトに手をかける前に、女性が男性の手から指輪を抜き取るシーンがあるので、どうやら不倫関係であることが仄めかされます。歌詞がフランス語なので、歌っている内容はさっぱりわかりませんが、禁じられた恋、狂おしい恋といった内容を歌った歌なのでしょうか。

 ミュージック・ビデオとしては、歌っている彼女を愛撫するのではなく、ドラマ部分を別の女性で別撮りして、歌のパートと交互に流せばよかったのではないかと私は思ったりするのですが、そうはしたくないという希望や意図があったのかもしれません。

 全編1シーン1カットなのは、ミュージック・ビデオとしてはさほど珍しいものでもないと思うのですが、ちょっと異様だなあと思わせるのは、全編が歌う彼女のクローズアップで撮られていることで、少々息苦しさすら感じさせます。ひょっとするとそれだけ狂おしい恋であることを、こういう撮り方をすることで象徴的に示したのかもしれません。

 ジャコ・ヴァン・ドルマル作品としては、長編2作品の印象(特に『トト・ザ・ヒーロー』は音楽を印象的に使った作品でした)から、もう少しドラマ仕立てで温かみのあるようなドラマが入った作品を予想していたのですが、予想を裏切るようなちょっと意外な作品でした。

 歌っているのは、1982年生まれのElodie Frégéというフランスのシンガーで、フランスのオーディション番組“Star Academy France”の第3シーズン(2004年)で優勝して、デビューの栄冠をつかんだ、ある種のシンデレラ・ガールです。
 2004年に、自身の名前をタイトルにしたファースト・アルバムを出し、2006年にセカンド・アルバム“Le Jeu des 7 Erreurs”を発表しています。
 “La ceinture”は、2006年にリリースされたシングル曲で、セカンド・アルバムにも収録された曲で、タイトルの意味は、「ベルト」ですが、「つながり」のようなことを意味しているのかもしれません。
 ファースト・アルバムは、番組を観ていた視聴者の支持もあってか、25万枚も売れたのに対し、セカンド・アルバムのリリースは7万5千枚だそうです。厳しいですね。(公式サイト:http://elodiefrege.artistes.universalmusic.fr/
 彼女は、ドラマにも時々出演したりしているようです。

画像

 ◆作品データ
 2006年/仏/3分24秒
 台詞なし・フランス語歌詞あり/字幕なし
 ミュージック・ビデオ

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 ◆監督について
 ジャコ・ヴァン・ドルマル
 1957年 ベルギー生まれ。
 心に傷を持つ者や、肉体にハンディキャップを負う者に、深い共感を示した作品作りを行ない、寡作ながら、国際的にも評価が高く、新作が待望されている映画監督の1人。

 へその緒が首に巻き付いて生まれ、それが成長過程でもトラウマになっているという。

 子どもが好きで、一時はサーカスのピエロを目指したこともある。

 1980年代に映画に興味を持ち始め、いくつかの短編を制作。批評家から高評価を受ける。

 1991年に『トト・ザ・ヒーロー』で長編監督デビュー。この作品で、カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人賞)を受賞したほか、セザール賞外国映画賞等を受賞。高い評価を受け、監督として一躍注目の存在となる。

 1996年に第二長編『八日目』を発表し、絶賛されたが、以後10年間映画は1本も制作していない。これは、彼の細部にこだわる制作姿勢と資金繰りの難しさによるものだとされる。

 2008年に第三長編“Mr. Nobody”が完成予定。

 兄ピエール・ヴァン・ドルマルはジャズ・ギタリスト。

 ◆フィルモグラフィー
 ・1980年“Maedeli la brèche”[短編]
 1981年 米国・学生アカデミー賞 名誉外国映画賞(Honorary Foreign Film Award)受賞
 ・1981年“Stade 81” [短編]
 ・1982年“L'Imitateur” [短編]
 ・1983年“Sortie de secours” [短編]
 ・1984年“È pericoloso sporgersi” [短編]
 1985年 Brussels International Festival of Fantasy Filmで観客賞受賞、クレモン・フェラン国際短編映画祭でグランプリ受賞
 ・1985年“De Boot” [短編]
 ・1991年 『トト・ザ・ヒーロー』“Toto le héros”
 1991年 カンヌ国際映画祭カメラ・ドール&Award of the Youth受賞、ヨーロッパ映画賞 脚本賞&Best Young Film受賞、1992年 セザール賞 外国映画賞受賞
 ・1992年 “Sur la terre comme au ciel”[脚本のみ](監督:Marion Hänsel)
 ・1995年 『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』“Lumière et compagnie”
 *世界初の映画撮影用カメラ“シネマトグラフ”を使って製作された、40名の映画監督によるオムニバス映画。参加監督は、デイヴィッド・リンチ、パトリス・ルコント、ヴィム・ヴェンダース、ジャック・リヴェット、スパイク・リー、ジェームズ・アイヴォリー、ピーター・グリーナウェイ、アッバス・キアロスタミ、アーサー・ペン、テオ・アンゲロプロス、アンドレイ・コンチャロフスキー、吉田喜重ら。総監督がサラ・ムーン。
 ・1996年 『八日目』“Le Huitième jour”
 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
 ・2006年 “La ceinture”[ミュージック・ビデオ]
フランスのシンガー Elodie Frégé のシングル“La ceinture”のミュージック・ビデオ。
 ・2007年 “La Face cachée”[製作] (監督:Bernard Campan)
 ・2008年“Mr. Nobody”

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