『双子の王子の冒険』 ハンガリアン・フォークテイルズ

 ユーロスペースで上映された<ハンガリアン・フォークテイルズ>について5日間にわたって記事を書き手きましたが、Aプログラム上映作品の中で、ネット上で動画が観られるのは、この『双子の王子の冒険』が最後になります(Bプログラムは、残念ながら、結局観に行くことができませんでした)。



 【物語】
 王国には双子の王子がいて、立派な青年に成長しました。
 王は、2人に国を任せようと思っていましたが、王子は2人とも旅に出たいと言います。
 そこで、王は2人に十分なお金を持たせて、旅に行かせることにしました。
 途中で、花屋をみつけたので、2人の王子はそれぞれ花束を買います。
 さらに歩いていくと、今度はライオンとクマとオオカミを2頭ずつ連れた猛獣使いに出会いました。
 2人は、1頭ずつ猛獣を分けてもらうことにします。
 猛獣を連れて、2人が歩いていくと、道は2手に分かれていました。2人は左右に分かれて進むことにします。
 その分岐点にそれぞれの花を置き、2人が無事かどうかの目印にしようと言います。
 左の道に行った兄は、猛者がお姫様の結婚相手の候補を次々と倒していくので、国が困ったことになっているという話を聞きました。
 そこで、兄王子はその猛者と闘うことにしますが、彼はあっさり相手を倒すことに成功し、お姫さまと結婚することになりました。
 ある日、王は、兄王子に森に用事を頼みます。
 兄王子が、森の中で夜を明かしていると、魔法使いのおばあさんが現れます。
 魔法使いおばあさんは、この枝を振ってごらんと、兄王子に枝を渡しますが、彼がその枝を振ると、3頭の猛獣が次々石になってしまいました。
 さらに、おばあさんによって兄王子自身も石にされてしまいます。
 右の道に行った弟王子は、道を引き返してきて、分岐に置いておいた兄王子の花が枯れているのを見て、兄に何かあったに違いないと思い、兄が行った道へと進みます。
 街では、「よくお帰りになりました」と住人が彼を出迎えてくれますが、彼は「それは兄のことに違いない」と人違いを正し、兄の消息を尋ねます。
 兄王子が森へ向かったと知ると、弟王子もまた同じ森へ。
 彼が森の中に着くと、またもや魔法使いのおばあさんが出てきて、彼に木の枝を差し出します。
 彼は、不審に思い、おばあさんの言う通りにはしないで、反対側にあった石に向かって振ってみました。すると、兄王子と3頭の猛獣が元の姿に戻ります。
 6頭の猛獣に囲まれることになった魔法使いは身動きできず、弟王子の枝の一振りで石になってしまいました。
 魔法使いは、今でもきっと石の姿のままでしょう。
 おしまい。

画像

 【コメント】
 いかにもおとぎ話っぽいおとぎ話(=剣と魔法の物語)で、私もなかなか面白く観ることができたのですが、物語を反芻してみると、王子が双子であること、3頭の猛獣を手に入れることなどが、物語の中でうまく生かされていないことに気づきます。この後、2人の王子がどうなったかもわかりませんし(弟王子は故郷に帰って父の後を継いだ?)、どうも中途半端である気もします。ひょっとすると、これはもっと長い物語の一部だったりするのかもしれません。

 この物語に出てくる、双子の王子、3頭の猛獣、隣国を悩ませる悪党、森の魔女、などには、何か暗喩もありそうで、もしかすると、それぞれ、ハンガリー人だったら誰でもわかるようなメタファーが含まれているのかもしれません。そういう風に考えてみると、この物語はまた違って見えてくるようです。

 また、この物語を観て、感じたことの1つに、この物語は、『シンドバットの冒険』などに似た雰囲気があるということがあります。ハンガリーという国は、地理的にイスラム圏に距離的にかなり近いですから、『アラビアン・ナイト』などから影響を受けているということもあるのかもしれません。

 ◆作品データ
 2004年?/ハンガリー/7分14秒
 ハンガリー台詞あり/日本語字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、2007年12月に<ハンガリアン・フォークテイルズ>と題した特集でユーロスペースにて上映されました(Aプログラム)。

 
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 これまで日替わりで<ハンガリアン・フォークテイルズ>を5編紹介してきましたが、You Tubeで“Magyar Népmesék”を検索すると、まだまだ作品を観ることができます。ハンガリー語の台詞に日本語字幕はついていませんが、絵を見ただけでけっこう理解できたりもするので、興味がある方は是非チャレンジしていただきたいと思います。

 ※<ハンガリアン・フォークテイルズ>上映作品
 Aプログラム
 ・ケレシュテス・ドーラ監督作品 『ムーン・フィルム』(1975年/3分)、『マジック』(1985年/5分)、『イチ、ニ、サン』(2005年/4分)
 ・マリア・ホルヴァット監督作品 『夜の奇跡』(1982年/9分)、『ドアNo.8』(1983年/1分)、『ドアNo.9』(1983年/1分)、『KAFFオープニングフィルム』(1985-1995年/3分)
 ・イシュトヴァーン・オロス監督作品 『マインド・ザ・ステップ!』(1989年/6分)、『ザ・ガーデン』(1993年/7分)、『叫び』(1995年/3分)
 ・ハンガリアン・フォークテイルズ 『フィデルになったお姫さま』『少年の見た夢』『貧乏な男と悪魔たち』『妬みの報い』『双子の王子の冒険』『貧者と利口な馬』

 Bプログラム
 ・ケレシュテス・ドーラ監督作品 『顔』(1996年/4分)、『ゴールデン・バード』(1989年/13分)、『柳の微笑み』(2001年/3分)、『ナンダ、ナンダ?』(2002年/3分)
 ・マリア・ホルヴァット監督作品 『グリーンツリー・ストリート66番地』(2002年/8分)
 ・イシュトヴァーン・オロス監督作品 『ブラックホール―ホワイトホール』(2001年/4分)、『タイム・サイト』(2004年/10分)
 ・ハンガリアン・フォークテイルズ 『かくかくしかじか』『靴をはきつぶす王女たち』『天使の羊』『とんまな妻』『金の毛の子羊』『魔法の南京錠』『ツェルセルーシュカ』

 ◆監督について
 マリア・ホルヴァット(マリア・ホルヴァシュ) Horváth Maria
 アニメーション作家、イラストレーター。
 1952年西部のペーチェ生まれ。ペーチェの美術高校で彫金を学んだ後、1971年のカチカメート・アニメーション・スタジオの創立に参加する。「詩とアニメーションの融合」を目指した短編アート・アニメーション作品を発表。平行して民話をモチーフとした<ハンガリアン・フォークテイルズ>のシリーズの監督も務めている。
 <ハンガリアン・フォークテイルズ>は、カチカメート・アニメーション・スタジオが手がけるアニメーションの人気シリーズで、1977年から現在まで続いている。監督には、マリア・ホルバットのほか、Jankovics MarcellやNagy Lajosがいる。
 マリア・ホルバットには、2人の娘と1人の孫がいる。

 2003年に彼女が一連の<ハンガリアン・フォークテイルズ>を出品した飛騨国際メルヘンアニメ映像祭(http://www.hida-anime.jp/top.html)における、審査員・片渕須直(アニメーション監督)の講評は以下の通り。
 「マリア・ホロバット氏は今回一連の作品群を連ねて応募してきたが、その中の代表的な一作を取り上げて審査委員団から特別賞を進呈することとなった。
 アニメーションに「メルヘン」を冠しての作品募集は実は難しい。定義に幅があること以上に、アニメーションの若いつくり手たちはそこに多くの自負心を見つけることに熱中し、結果として例えばメルヘンの意味を逆手に取った「怪談」として仕上げるとか、民話的な題材に仮託して卑近な人生の機微を物語ろうなどとしがちになってしまう。
 ホロバット氏の今回の応募作は、すべて民話的なモチーフによって構成されたものだったが、それらはすべて屈託のない素朴な喜びを表現するためのものだった。必ず最後には王子さまとお姫さまが、男の子と女の子が、生き別れになっていた双子の兄弟が抱きいだきあい、「めでたし、めでたし」となる筋立てこそ、実は『メルヘンアニメ映像祭』と名打ったコンテストが、内心もっとも望んでいたものだったのではなかったか、という気にすらさせられてしまう。  この受賞作はひとつのレファランスとして今後のこのコンテストへの応募者たちに示されるだけの価値がある。」

 ◆フィルモグラフィー
 ・1982年 『夜の奇跡』“Az éjszaka csodál(Miracles of the Night)”
 オタワ国際アニメーションフェスティバル 第1回監督部門2位
 ・1983年 『ドアNo.8』“Atjó 8”
 1984年カンヌ国際映画祭短編部門コンペティション出品、クラクフ映画祭スペシャルメンション
 ・1983年 『ドアNo.9』“Atjó 9”
 ・1985年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ1)
 ・1987年 『ドアNo.2』“Atjó 2”
 ・1987年 『ドアNo.3』“Atjó 3”
 ・1988年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ2)
 ・1992年 『グリーンツリーストリート66番地』“Zõldfa u 66”
 1992年 Espinhoフェスティバル カテゴリー第1位、1993年カチカメート映画祭審査員特別賞受賞
 ・1993年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ3)
 ・1996年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ4)
 ・1997年 “Kis emberek dalai(Small Folks’ Songs)”
 1998年 ハンガリー レティナ国際映画祭(RETINA98’) 最優秀アニメーション賞受賞
 ・1997年 “Széles ember meséi”
 ・1998年 “Kecskemét Katona József Theater is 100 years old”
 ・1999年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ5)
 ・2000年 『静寂(ある日の風景画)』“Allokepek “Rajzok egy élet tájairól”(Stills(Drawing about a Landscape of a life))”
 2000年(ハンガリー)国際フィルム&ビデオフェスティバル Sellye市賞受賞
 ・2004年 “Mesél a kõ(The Telling Stone)”
 2004年 CICDAF 審査員特別賞受賞

 <ハンガリアン・フォークテイルズ>“Magyar Népmesék Ⅳ sorozat”
 ・1980年“Egyszemű, kétszemű, háromszemű”(1つ目、2つ目、3つ目)(Jankovics Marcellと共同監督)
 ・2002年『魔法の南京錠』“A bűbájos lakat”
 ・2002年『妬みの報い』“A kerek kő”(丸い石)
 ・2002年『少年の見た夢』“A kékfestő inas”
 ・2002年『天使の羊』“Angyalbárányok”
 ・2002年『貧者と利口な馬』“A szegény ember meg a lova”
 ・2002年『金の毛の子羊』“Az aranyszőrű bárány”(Nagy Lajosと共同監督)
 ・2002年『ツェルセルーシュカ』“Cerceruska”
 ・2002年『貧乏な男と悪魔たち』“Hetet egy csapásra”(1打で7倒)
 ・2004年? 『双子の王子の冒険』“A kővé vált királyfi ( The Prince Who Turned into Stone)”
 2004年 飛騨国際メルヘンアニメ映像祭 第2回メルヘンアニメ・コンテスト審査員特別賞受賞
 ・2005年“Gyöngyvirág Palkó”(真珠の花 Palkó)

 *参考サイト
 ・アニドウのHP:http://www.anido.com/html-j/yurospace.html
 ・カチカメート・フィルム Kecskemétfilm:http://www.kecskemetfilm.hu/kfilm.html
 ・Pannonia film studio  History 50 Years in the Forefront of Animation:http://www.mediaguide.hu/pannoniafilm/story.html
 ・ハンガリアン・フォークテイルズに関するWikipedia(ハンガリー語):http://hu.wikipedia.org/wiki/Magyar_n%C3%A9pmes%C3%A9k_(sorozat)
 ・Directory of Hungarian Links:http://www.wideweb.hu/hungary/business-investments/entertainment-film-industry
 ・ハンガリー語翻訳サイト InterTran:http://www.tranexp.com:2000/Translate/result.shtml

この記事へのコメント

2007年12月20日 00:07
こんばんは。
ハンガリアン・フォークテイルズ、よかったですよねー。
私は逆で、Bプログラムだけ観たのですよ。
というわけで、こちらでAプロを楽しませていただきます。
物語展開に脈絡がないのが面白かったです。
今日は「雪の女王」、「鉛の兵隊」を観てきましたよー。

そうそう、最近、「ペネロピ」の予告や「フローズン・タイム」の予告にものすごーく惹かれたところだったんですよ。
こちらの記事はまるで、私の心をよんで作成されているかのようにタイムリーです♪
umikarahajimaru
2007年12月20日 21:33
かえるさま
そうですか。Bプログラムをご覧になったんですね。
『ハンガリアン・フォークテイルズ』は、ブログでレビュー記事を書いてる方がほとんどいなくて寂しく思っていたんですよ。かえるさんはレビュー記事を書かないのでしょうか。
ジブリのアニメは、『雪の女王』は昔観てるので、『鉛の兵隊』だけ観るために劇場に行くかどうか思案中です。果たしてその価値はあるでしょうか。

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