底抜けの楽観主義に感動すら… 『パットとマット 「鍵」』

 久々に観てみると、逆境を逆境と思わないこの底抜けの楽観主義にはホッとさせられる部分がありますね。誰も傷つかないし、誰も傷つけないし……。



 【物語】
 パットとマットが13番地のマットの家にいて、マットがパットを送り出す。
 ところがパットは、12番地の自分の家のフェンスの鍵がなかなかみつからない。
 着ている服をひっくり返しているところに、心配したマットもやってくる。マットは、これじゃないかと目当ての鍵を指差して、また自分の家に戻る。しかし、パットはその鍵を排水溝に落としてしまう。
 2人で、手を変え、品を変えて、なんとか排水溝から鍵を取り戻そうとして、ようやく鍵が戻ったと思ったら、また別の排水溝に落としてしまう。
 排水溝に降りていって、鍵を拾い、下からホールのふたに手をつっこむと抜けなくなってしまったり……。
 さんざん苦労してようやく鍵を手にしたパットはそれでフェンスの鍵を開けて、自分の家に帰っていくのだった。

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 ◆パットとマット シリーズについて

 ベレー帽に黄色いタートルネックのシャツを着て、丸い顔をしているのが、パットで、ボンボンのついたスキー帽をかぶり、赤いタートルネックのシャツを着て、ちょっと縦長の顔をしているのがマット。
 1976年から2003年まで73作品が作られたシリーズ。
 最初の『へま』だけが劇場公開用の作品として作られ、3年後の1979年からはスロバキアでTV用にシリーズ化され、1989年の民主化以降はチェコでも作られるようになった。
 監督は、1994年の第49作まではルボミール・ベネシュで、1995年にベネシュが亡くなると、他の監督が引き継いでいる(その中の1人は、ルボミールの息子のマレク)。
 ルボミール・ベネシュのパートナーとして、風刺漫画家でもあるヴラディミール・イラネークが脚本やデザインを担当した。

 2人のコンビ関係は、つっこみなしのダブル・ボケで、ヘマしてばかりなのに、誰もつっこまないし、怒らない、あきらめたり、ため息をついたりすることもなく、絶えず前向きで、事態に対処していく。せっかく1つのトラブルが解決したと思った瞬間に別のトラブルが起こることもしばしばで、トラブルを解決することに一所懸命で最初何をしようとしていたのかすっかり忘れてしまい、でも“最終的なトラブル”が解決してことで満足してハッピーエンドになることも多い。

 パットがトラブルを起こすのが通例で、それをなんとかしようとして、マットがさらに問題を大きくしてしまうことも多い。

 劇場公開用の第1作にだけ、2人の顔には眉が描かれていた。

 世界10数カ国で紹介されている人気作品であるが、台詞なしのはずの作品に、台詞をつけている国もある(動画サイトで視聴可。たぶん台詞をつけているのはロシア)。

 いくつかの作品は、各国の映画祭で上映されて、個々の作品として、あるいはシリーズ作品として、優秀賞を受賞している。

 ファン・サイトによると、ルボミール・ベネシュが亡くなった後の第50作“Kathy”は幻の作品で、存在は知られているのに誰も観たことがないという。

 日本で初紹介されたのは、1999年の<チェコアニメ映画祭’99>で、2000年の<チェコアニメ映画祭2000>、2001年の特集上映と合わせて、計33作品が劇場公開され、2007年9月現在、35作品が5つのDVDに収録されてリリースされています。今のところDVDがリリースされているのは、チェコと日本のみ。

 ◆作品データ
 1990年/チェコ/7分24秒
 台詞なし/字幕なし
 人形アニメーション

 *この作品は、<チェコアニメ映画祭’99>で上映されました。

 * この作品は、DVD『パットとマット ドジで愉快な2人組 なにもそこまで』に収録されています。

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 ◆監督について
 ルボミール・ベネシュ Lubomir Benes

 1935年生まれ、1995年没
 1950年 プラハ・ショート・フィルムでキャリアをスタートさせる。
 1960年代に『人類』で監督デビュー。
 1976年からシリーズ<パットとマット>を手がけ、1994年まで全49作を発表する。

 パットとマット “Pat & Mat”(1976~1994)
 ・1976年「へま」‘Kutaci’ (00) ⑤
 ・1979年「額縁」‘Obraz’ ①
 ・1979年「揺り椅子」‘Houpaci kreslo’ ①
 ・1979年「書庫」‘Garaz’ ①
 ・1979年「カーペット」‘Koberec’ ①
 ・1979年「本棚」‘Dilna’ ①
 ・1979年「ライト」‘Svetlo’ ①
 ・1979年「壁紙」‘Tapety’①
 ・1981年「蓄音機」‘Gramofon’ (01) ④
 ※第6回エスピニョ映画祭 子供映画部門最優秀賞受賞
 ・1981年「グリル」‘Gril’②
 ・1982年「ペンキ塗り」‘Malovani’ ②
 ・1982年「移動」‘Stehovani’ ②
 ・1982年「飛行」‘Skokani’ ②
 ・1982年「クロスワードパズル」‘Krizovka’(01) ③
 ・1982年「庭園」‘Zahradka’ ②
 ・1982年「水」‘Voda’ ②
 ・1983年「巣箱」‘Budka’ ②
 ・1983年「洗濯機」‘Pracka’ ③
 ・1983年「運動」‘Telocvicna’ (01) ④
 ・1983年「朝食」‘Snidane v trave’ ③
 ・1983年「雨」‘Dest’ ③
 ・1983年「洗濯」‘Velke pradlo’ (01) ③
 ・1984年「遠出」‘Vylet’ (01) ③
 ・1984年「ワイン作り」‘Vinari’ (01) ③
 ・1984年「ピアノ」‘Klavir’ ④
 ・1984年「スケート」‘Brusle’ ④
 ・1985年「テレビ」‘Porucha’ (01) ④
 ・1985年「りんご」‘Jablko’ (01) ④
 ・1985年「陶芸」‘Hrnciri’ (01) ④
 ・1990年「ドア」‘Dvere’ (99) ⑤
 ・1990年「芝刈り機」‘Sekacka’ (99) ⑤
 ・1990年「屋根」‘Strecha’ (99) ⑤
 ・1990年「家具」‘Nabytek’ (99) ⑤
 ・1990年「大掃除」‘Generalni uklid’ (99) ⑤
 ・1990年「鍵」‘Klíc’ (99) ⑤
 ・1992年「ビスケット」‘Susenky’ (99)
 ・1992年「サイクリング」‘Cyklisti’ (99)
 ※1993年アヌシー国際アニメーションフェスティバルで優秀作品セレクション’93に選出、ケベック映画祭 アニメ部門作品賞受賞
 ・1992年「寄木細工」‘Parkety’ (99)
 ・1992年「雨どい」‘Okap’ (99)
 ・1992年「レンガ」‘Dlazdice’ (99)
 ・1992年「パンク」‘Nehoda’ (99)
 ・1992年「ガレージドア」‘Vrata’ (99)
 ・1992年「幌つき自動車」‘Kabriolet’ (99)
 ・1994年「ウインドサーフィン」‘Windsurfing’ (99)
 ・1994年「泥よけ」‘Blatnik’ (99)
 ・1994年「模型」‘Modelari’ (99)
 ・1994年「金庫」‘Trezor’ (99)
 ・1994年「ビリヤード」‘Kulecnik’ (99)
 ※1997年 ワールド・アニメーション・セレブレーションでアニメシリーズ部門優勝、人形アニメ部門準優勝
 ・1994年「生け垣」‘Zivy plot’ (99)

 ※ベネシュの死後、1997年以降は他の監督がシリーズを引き継いでいる。
 (99):<チェコアニメ映画祭’99>で上映された作品 21作品
 (00):<チェコアニメ映画祭2000>で上映された作品 6作品
 (01):特集上映<ぼくらと遊ぼう!>で上映された作品 12作品
 ①:DVD『パットとマット ドジで愉快な2人組 それでいいのか』収録作品
 ②:DVD『パットとマット ドジで愉快な2人組 されどまだまだ』収録作品
 ③:DVD『パットとマット ドジで愉快な2人組 なにがなにやら』収録作品
 ④:DVD『パットとマット ドジで愉快な2人組 よくもここまで』収録作品
 ⑤:DVD『パットとマット ドジで愉快な2人組 なにもそこまで』収録作品

 ・?年 『人類』
 ・?年 『不均衡の決闘』
 ※ヴァンクーバー映画祭 最優秀賞受賞
 ・?年 『微笑みを浮かべて』
 ※ウエスコ映画祭 最優秀賞受賞
 ・1981年 『王様と小人』“Král a skritek(The King and the Goblin)”
 ※カンヌ国際映画祭短編映画部門コンペティション出品、シッチェス・カタロニア国際映画祭 短編部門Medalla Sitges en Plata de Ley受賞
 ・1984年 “Muzikant a smrt(The Musician and Death)”
 ※ファンタスポルト 観客賞特別賞受賞
 ・1986年 “Rohy(The Horns)”
 ・1987年 “Jája a Pája”(TVシリーズ)

 *参考サイト
 ・the Pat & Mat fansite:http://www.schaeppi.tv/patandmat/

 *参考書籍
 ・「夜想35 チェコの魔術的芸術」(ペヨトル工房)p2~9

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