愛すべきヤスミン・アハマド CM作品"スペシャル・シューズ”

 先日開催された<ヤスミン・アハマドとマレーシア新潮>でも多くの観客を魅了したマレーシアの女性監督ヤスミン・アハマド。
 彼女は、マレーシアのCM監督出身だというので、動画を探してみたらけっこうありました。
 マレー語なので、台詞の詳細はわかりませんが、映像を見ればわかる部分も多いですね。
 今回、ここで紹介するのは、Petronasというマレーシアの石油&ガス会社のCMで、タイトルは“Special Shoes”。
 2分程度しかありませんから、まずは、映像から伝わるものを感じ取ってみてください。

 

 【物語】
 少年2人が靴屋の店先で、ショー・ウィンドウを覗き込んでいる。
 すると、すぐ近くで座って、なにやら作業をしていたおじさんが声をかけてくる。
 (以下の台詞は私が想像によるものです)
 おじさん「どうしたんだい?」
 少年「サッカーのチームに入るために、どうしてもスペシャル・シューズが欲しいんだ」
 おじさん「そうか。おじさんもスペシャル・シューズを持っているんだよ」
 と言うと、おじさんは、自分のスペシャル・シューズの話を始める。
 おじさんは、少年時代に事故で片足をなくし、義足をつけることになった。リハビリのおかげで、歩くことにはほぼ不自由がなくなり、ゴールキーパーだったらサッカーの試合にも出られるようになった。たまには、ボールと一緒に義足が飛んでいってしまうこともあったけど、友だちが仲間に入れてくれないということはなかったし、要はスペシャル・シューズ云々というよりやる気の問題かもしれないね。
 と言うと、おじさんは、「これが、おじさんのスペシャル・シューズさ」と言って、修理した義足をはめると、ニッコリ笑って、待っていた車に向かって歩いていくのだった。

画像

 【コメント】
 具体的な台詞の意味は違っているかもしれませんが、言いたいことは大体こんな感じでしょうか。
 Petronas(http://www.petronas.com.my/internet/corp/centralrep2.nsf/frameset_people?OpenFrameset)は、マレーシアの大手石油&ガス会社で、人的支援や技術開発、教育にも熱心な会社ですから、このCMのメッセージあるいは社是は、“あなたの大事な暮らしを足元から支えるPetronas”、というところだと思います。

 CMも、偏見がなく、人間的なやさしさや温かさに満ちたものになっています。作り手=ヤスミン・アハマドが人間味あふれる心の大きな人なんだろうなというのが、この2分間からも伝わってきますし、オーキッド4部作に通じるものも感じられますね。
 まさに好きにならずにいられない感じで、マレーシアで彼女が愛されているらしいこともよく理解できます。

 ◆作品データ
 ?/マレーシア/2分1秒
 マレー語台詞あり/字幕なし
 CM

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 ◆監督について
 ヤスミン・アハマド
 マレーシアのCMディレクター、映画監督

 1959年生まれ。日本人のクォーター。
 初めて観た日本映画は三隅研二の『座頭市物語』。母が日本人のハーフで、日本語ができることもあって、日本映画をよく観るようになる。
 イギリスで心理学を学んだ後、帰国し、Ogilvy & Matherのコピーライターからキャリアをスタートさせる。現在もLeo Burnett Kuala Lumpurのクリエイティブ・ディレクターを務める。彼女の作ったCMは、マレーシアではよく知られていて、特にマレーシアの石油&ガス会社PetronasのCMは有名。
 2003年に『ラブン』で映画監督デビュー。第2作『細い目』(2004)は、2005年マレーシア映画祭で作品賞・助演女優賞・新人男優賞・新人女優賞・脚本賞・ポスター賞、東京国際映画祭でアジア映画賞を受賞するなど高い評価を受ける。
 2005年に『グブラ』、2006年に『ムクシン』を発表。最初の4作はすべてマレーシアに住むオーキッドという少女/女性の家庭を舞台とした物語で、この4部作を通して、ヤスミン・アハマドはマレーシア・ニューウェーブの中心人物ともみなされるようになった。
 2006年10月に、彼女の初のレトロスペクティブ(4作品)が東京国際映画祭で開催された。ほぼ同様のマレーシア映画特集は、2007年1月のロッテルダム国際映画祭でも組まれた。2007年4月には、東南アジア研究所、ハワイ大学、ホノルル美術館の提供で、ハワイthe Doris Duke Theatreでもレトロスペクティブが開催された。

 『細い目』『グブラ』はいずれもマレーシア映画祭で監督賞と脚本賞を受賞した(それぞれ2005年、2006年)。
 『ムクシン』は、2007年 ベルリン国際映画祭で、Deutsches Kinderhilfswerk Grand Prix、Glass Bear - Special Mention受賞。

 彼女の作品は、これまでのマレー人によるマレー人のためのマレー語のマレーシア映画とは違って、マレー系の家族を通して、多民族社会たるマレーシアを活写するというもので、彼女の持つフレンドリーなリベラルさも相俟って、観る者に新鮮な感動と驚きとを与えている。
 マレーシアでは、彼女の映画は日本映画に似た“静かな映画”だという評価のされ方もしている。

 彼女には、ブログ“THE STORYTELLER”(英語)があり、コメント&TB可で、彼女もコメントにまめにレスをつけている。内容は身辺雑記というより、映画や映画監督、アートに関するものが多い。http://yasminthestoryteller.blogspot.com/
 2006年の東京国際映画祭での滞在記は、2006年11月19日づけのところにあります。

 好きな映画は、『ケス』『チャルラータ』『モナリザ』『ボビー』『アパートの鍵貸します』『街の灯』『トーク・トゥ・ハー』『大樹のうた』『その男、凶暴につき』『ソナチネ』。(上記ブログのプロフィール欄より)

 【フィルモグラフィー】
 ・2003年 『ラブン』
 ・2004年 『細い目』
 ・2005年 『グブラ』
 ・2006年 『ムクシン』
 ・2007年 『ムアラフ-改心-』
 ・2008年 『タレンタイム』

 ホー・ユーハン監督の“Min”(2003)、『Rain Dogs 太陽雨』(2006)には出演もしている。

 *当ブログ関連記事
 ・日本で上映されたマレーシア映画 1956~2007
 ・インタビュー with ヤスミン・アハマド
 ・訃報・ヤスミン・アハマド、または、CM作品“Family”

 追記:本エントリにTBとコメントをいただいているうささん(Saya Cinta Malaysia)を通して、このCMで語られるマレー語の台詞の意味を教えていただきました。
 テーマは助け合いで、義足のおじさんがシューズを欲しがる少年たちに、彼が経験した助け合いとその結果手に入れた自由について語って聞かせる、というのがおおまかなストーリーということのようです。
 詳しくは、下記TBからうささんのブログに飛んで、そこにあるコメント欄を見てみてください。
 それにしてもブログのネットワークって凄いですね!
 ご協力していただいたうささま、nurullyさま、そしてmalam_malaysiaさま、どうもありがとうございました。この場を借りてお礼申しあげます。

この記事へのコメント

うさ
2007年08月10日 16:59
TBありがとうございました。また、コメントもありがとうございます!私のブログでこのCMについての記事のUPをしました。マレーシア語が得意な方に、観ていただきたいと思っています。
これからもまた遊びにきますので、よろしくお願いします!
umikarahajimaru
2007年08月10日 18:53
うささま
わざわざブログに告知までしていただいて恐縮です。
ヤスミン・アハマドの監督としての資質が垣間見えるような気がしたので、CM作品を1つ紹介してみたまでなので、負担になるような問いかけになってしまったら申し訳ありません。てっきりうささんであれば、簡単にマレー語の台詞の意味がおわかりになるかなあと思っただけなんです。
とは言っても、やっぱり台詞の意味を教えてくださる方がいらしたらうれしいですね。
ちなみに、GOOGLE VIDEOで検索すれば、ヤスミン・アハマド監督のCMは他にもたくさん見ることができます。

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