一年後にはこんな結末が…… ジョルジュ・シュヴィツゲベル『鹿の一年』

 ジョルジュ・シュヴィツゲベルの1995年の作品『鹿の一年』。

 ここ数ヶ月にわたって、動画サイトをチェックして、見つける度にその作品を当ブログで紹介してきたジョルジュ・シュヴィツゲベルですが、ずっと見つからなかった『鹿の一年』をようやく見つけることができました(誰かが動画サイトに動画を投稿したというだけのことですが)。
 彼の作品に関しては、まだ、最初期の作品“Patchwork ”(1971)が残されていますが、この作品はDVDにも収録されていないようなので、彼が新作を発表(し、それを誰かが動画サイトに投稿)するまで、とりあえず、もうこれ以上の作品は観られないということになります。



 【物語】
 山の奥地に、鹿たちの住処があった。
 そこに犬がやってきて、1頭の鹿を襲う。
 犬は、野犬でもなく、猟犬でもなく、たまたまトレッキングか何かでそこにやってきた、男性の飼い犬で、飼い主は自分の犬を食らい付いた鹿から引き離して、その鹿を家に連れ帰り、傷の手当てをしてやる。
 しかし、犬は、そんな飼い主の気持ちなど全く解せずに、何度も何度も鹿を襲おうとする。飼い主は、そんな犬の行動を見かねて、犬に口輪をはめさせることにする。
 犬は、口輪をはめてもなお鹿を襲おうとし続けたが、やがて、鹿を襲ってはいけないということを学習したのか、口輪を外しても鹿を襲うことはなくなり、一緒に仲良く水を飲んだりするようになる。
 ある日、鹿は、自分が自由に飼い主の敷地から出て行けるということに気づく。
 飛び出した外の世界の先には、3匹の犬がいる。
 それを見た鹿の顔には、犬など恐れるに足りないというような犬に対する侮蔑の笑いが浮かぶ。
 しかし、次の瞬間に、3匹の犬は、牙を剥いて、鹿に襲いかかるのだった。

画像

 【コメント】
 メタモルフォーズと、カメラの移動や回り込み、そしてそれらを使って次々とパラダイムをシフトさせて、観る者に驚きの視覚体験をもたらせてきたジョルジュ・シュヴィツゲベル。
 そんな風にとらえられる彼ですが、本作では、視覚的なテクニックで見せるのではなく、ごく普通に物語で見せるということに挑戦しています。
 その試みは成功していて、次はどうなるんだろう、どういう結末が待っているんだろう、と私も思わずこの物語に引き込まれてしまいました。
 犬の、獲物に対する野性的な本能が飼いならされていく一方で、実は、鹿の防衛本能もまた飼いならされてしまっていた、というオチだったんですね~。面白い!

 ジョルジュ・シュヴィツゲベルは、「視覚表現」と「物語を語ること」の2つの間をずっと行ったり来たりしている映像作家で、『破滅への歩み』(1992)、『少女と雲』(2001)、『影のない男』(2004)では視覚表現を物語に奉仕させる方に傾いていたかと思うと、『ジグザグ』(1996)、『フーガ』(1998)、『技』(2006)ではまた視覚的なテクニックに戯れる方に回帰しています。
 2つの間を揺れ動く間に、『鹿の一年』のように、ただ物語だけで、普通に見せてしまえる作品を作っていたことにも驚きましたが、その後、そちらの方向でずっと作品作りを進めていくのではなく、また視覚的なテクニックに戯れてみたくなってしまうというのが、ジョルジュ・シュヴィツゲベルのジョルジュ・シュヴィツゲベルらしいところと言うべきでしょうか。

 これで、当ブログでは彼の14作品を紹介したことになりますが、個人的に最も好きなのは,
視覚的なテクニックと物語性が見事な融合を見せた『少女と雲』でしょうか。

 ◆作品データ
 1995年/スイス/5分9秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *本作は、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルでCategory A - 30 Sec. to 5 Min First Prizeを受賞しています。

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 ◆監督について
 ジョルジュ・シュヴィッツゲベル
 スイスを代表するアニメーション作家&グラフィック・デザイナー。キャリアは30年以上ですが、この10年間で特に評価が高まっているようです。
 1944年 スイスのベルン生まれ。1951年にジュネーブに移る。
 1961年 ジュネーブのArt School and College of Decorative Artsに入学(~1965年)
 1966年 ジュネーブの広告代理店に入社(~1970年)
 1970年 独立して、Claude Luyet 、Daniel Suter とともにGDS Studio を設立し、テレビ番組のタイトルやポスター、広告イラスト、短編アニメーション等を手がける。
 1983-1984年 中国語を学ぶために1年間、上海の復旦大学で学ぶ。
 1986年 スイスのビュルにあるGruyerien美術館で GDS Studioの展覧会開催。
 1987年 Nürenbergで回顧展開催。
 1992年 ジュネーブで舞台“Children's King”のためのセットを手がける。
 ジュネーブの Building-House のためにフレスコ画を手がける。
 1994年 シュツットガルトで展覧会&回顧展開催。
 1995年 東京と大阪とパリで回顧展開催。
 ジュネーブのギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。
 1996年 ジュネーブのJardin BotaniqueとギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。

 ・1971年“Patchwork ” *カンヌ国際映画祭 短編部門ノミネート
 ・1974年 『イカロスの飛翔』 “Le Vol d'lcare”
 ・1975年 『遠近法』 “Perspectives”
 ・1977年 『オフサイド』 “Hors-jeu”
 ・1982年 『フランケンシュタインの恍惚』 “Le Ravissement de Frank N. Stein” *ベルリン国際映画祭C.I.D.A.L.C. Award名誉賞受賞
 ・1985年 『78回転』 “78 Tours”
 ・1986年 『ナクーニン』 “Nakounine”
 ・1987年“Academy Leader Variations” *カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
 ・1989年 『絵画の主題』 “Le Sujet du tableau”
 ・1992年 『破滅への歩み』(『深遠への旅』) “La Course à l'abîme” *広島国際アニメーションフェスティバル 5分以内の作品部門2位
 ・1995年 『鹿の一年』 L' Année du daim(The Year of the Deer)” *ザグレブ国際アニメーションフェスティバルCategory A - 30 Sec. to 5 Min First Prize受賞
 ・1996年 『ジグザグ』 “Zig Zag”
 ・1998年 『フーガ』 “Fugue” *オタワ国際アニメーションフェスティバルBest Use of Colour Craft Prizes受賞、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞
 ・2001年 『少女と雲』 “La Jeune fille et les nuages(The Young Girl and the Clouds)” *スイス映画賞短編映画部門受賞、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞受賞
 ・ 2004年 『影のない男』 “L' Homme sans ombre(The Man with No Shadow)” *カンヌ国際映画祭 短編部門Prix Regards Jeune受賞、ジニー賞短編アニメーション部門ノミネート、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル審査員特別賞&Jury Award of the Partner Festival Krok 受賞、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞
 ・2006年 『技』 “Jeu” *スイス映画賞最優秀短編アニメーション賞ノミネート、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞

 *1995年にイメージフォーラムの<Magical View!>というプログラムで、イギリスの映像作家トニー・ヒルの6作品とともに、8作品(『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』)が劇場公開されました。

 *第7回ラピュタアニメーションフェスティバル2006で『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『ナクーニン』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』『ジグザグ』『フーガ』『少女と雲』『影のない男』『技』という主だった14作品が<ジョルジュ・シュヴィッツゲベル作品集>として上映されました。
 これに先立って、『技』以外の13作品が『ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品集』として2005年に日本でもDVDリリースされています。

 *参考サイト:THE GALLARY:http://www.awn.com/gallery/schwizgebel/index.html

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