隠れた名作 『ことば、ことば、ことば』 ミハエラ・パヴラートヴァー

 1993年に米国アカデミー賞にノミネートされていながら、日本では2006年まで知られていなかった隠れた名作。



 【物語】
 あるレストランの風景。
 妻の言うことを右から左に流す夫。
 男の会話にうんざりして、別の席のワイルドな男に興味を持つ女性。
 噂話に花を咲かせる女性の2人組。
 隣り合った相手とだけ会話をまわしていく5人組のテーブル。
 妻と話すことに気力を使い果たす老人。
 口ゲンカする2人の男。互いの主張を入れ替えてもケンカはやまない。
 テーブル席がベッドに変わってしまうくらい甘い言葉を女にささやく男。
 何やら隠れていかがわしい話をする男2人と、その会話をピシャリと止めさせる同席の女。
 憔悴し切っている相手に陽気に話しかける男。しかい、相手はその話には乗らず、男がヘマをすると大笑いする。
 耳に入ってきた大きな話を相手にするうち、大きな話がどんどん小さくなっていく老人の2人組。

 物語の中心になっているのは、1人で来ていた女性客と、彼女に片思いするウェイターのエピソード。
 彼女は、ウェイターの気持ちも知らずに、店に入ってきた男性と出会い、恋に落ちる。
 2人は、会話もうまく噛み合っていたが、最後の1ピースがどうしても合わないことに気づく。それで2人はケンカし、女が泣き、男が立ち去る。
 ウェイターは、2人が見つけられなかった1ピースを女のもとに届けるが、女はウェイターのことは全く眼中になく、最後の1ピースを見つけた嬉しさを体いっぱいに表して、店を出て行く。

 店にはもう誰もいなくなり、明かりが消される。

 【コメント】
 ビル・プリンプトンの“EAT”と同様の趣向で、レストランの開店から閉店までの間に繰り広げられる小さなドラマを拾っていくことで、人生の悲喜こもごもを鮮やかに浮かび上がらせる作品。
 パヴェル・コウツキーの『カフェ』やクロード・ソーテの『ギャルソン!』にも通じるところがあると言ってもいいかもしれません。

 ミハエラ・パヴラートヴァーがこの作品で焦点を当てたのは、会話で、1つのレストランでも、人生を垣間見させるようないろんな会話があり、それを台詞なしで吹出しだけで示すことが、この作品の目的だったのでしょうが、それは十二分に成功しておつりがくるくらい作品に仕上がっています。

 恋があり、失恋があり、出会いがあり、歓喜があり、ほろ苦い思いもある。
 レストランでの数時間の出来事の中に、人生の1ページを垣間見させ、それをわずか8分弱の中に凝縮してみせるミハエラ・パヴラートヴァーの手腕は見事ですね。

 本作は、米国アカデミー賞にノミネートされた作品で、そういう意味で既に高評価を得ているわけですが、なかなか作品が広く日の目を見る機会もなく、作品の評価も伝わって来ないもので、(作品としては不本位なのかもしれませんが)隠れた名作の1つになっています。

画像

 ◆作品データ
 1991年/チェコ/7分47秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、米国アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされたほか、クラクフ映画祭で特別賞受賞、モントリオール国際映画祭で短編映画部門グランプリを受賞しています。

 *日本では<チェコアニメ映画祭2006>のBプログラムで『夫婦生活』『クロスワード』『ことば、ことば、ことば』『反復』『永遠に…』が上映されました。

 *この作品は、DVD『Fantastic! Czech Animation 80’s~90’s 2D傑作アニメーション』に収録されています。

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 ◆監督について
 ミハエラ・パヴラートヴァー
 1961年 プラハ生まれ。
 1987年 プラハ工芸美術大学(UMPRUM)を卒業。卒業制作である『夫婦生活』が認められて、クラートキー・フィルムからオファーがあり、プロのアニメーション作家としての道が開ける。
 1992-98年 チェコ国立芸術アカデミーとプラハ工芸美術大学で教鞭を取る。
 1998年~ サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート・カレッジで教鞭を取る。
 サンフランシスコでは、アニメーション製作会社Wildbrain Inc.( http://www.wildbrain.com/)と協力して制作を行なっている。『墓場』等はその成果の1つ。
 2002年にプラハに戻り、実写作品『不貞ゲーム』を手がける。

 他に、ハーバード大学でも教鞭を取っているようです。

 小さい役ながら、映画仲間のいくつかの作品では女優としても出演している。

 CM作品として、ネスレ、コダック、マツダなど。

 イラストも手がけていて、その作品の1つ“Yoko、the Imaginary Dog”はここ(http://www.volny.cz/aamica/show/folder_ill/ill_yak00.html)で見ることができます。

 愛・地球博で“Letters from Czech Repubric”という作品(パヴェル・コウツキー、イジー・バルタ、アウレル・クリムトとの共同作品)が上映されています。

 ・1987年 『夫婦生活』 “Etuda z alba”
 ・1989年 『クロスワード』 “Krízovka(The Crossword Puzzle)”
 ・1991年 『ことば、ことば、ことば』 “Reci, reci, reci…(Words, Words, Words)”
 *米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート、クラクフ映画祭特別賞受賞、モントリオール国際映画祭短編映画部門グランプリ受賞
 ・1992年 『叔父と叔母』 “uncles and ants”
 ・1994年 『反復』 “Repete”
 *ベルリン国際映画祭最優秀短編映画賞受賞、広島国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞
 ・1995年 『私かもしれない』 “This could be me”
 ・1998年 『永遠に…』 “Az na veky(Forever and Ever)”
 *オタワ国際アニメーションフェスティバル Television Specials部門OIAF Award受賞
 ・1998年 『プラハの話』 “Praha ocima(Prague Stories/Prague vu par) ” (実写作品)
 ・2000年 『おばあさんの話』 “O babicce(On Grandma)”
 ・2001年 『墓場』 “graveyard”
 ・2002年 『シッポの話』 “Taily Tales”
 ・2003年 『不貞ゲーム』 “Neverné hry(Faithless Games)”(実写作品)
 *サンセバスチャン国際映画祭 Best New Director Special Mention受賞
 ・2005年 “Letters from Czech Repubric”
 ・2006年 『動物の謝肉祭』 “Karneval zvirat (Le Carnaval des Animaux / The Carnival of Animals).”

 *参考サイト
 ・インタビュー Radio Praha:http://www.radio.cz/en/article/78278

 ・アニメーション製作会社Wildbrain Inc.のサイト:http://www.wildbrain.com/about_us/bios/d_michaela.html

 ・http://www.volny.cz/aamica/show/folder_about/about_Mich.html

 *参考書籍
 ・『メッセージ・フロム・チェコアート』(2006年 アーティストハウス刊)

 *当ブログ関連記事
 ・アカデミー賞短編アニメーション賞 リスト!

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