『僕らの間にあるバラ』 フランソワ・オゾン

 今春、フランス映画祭の<FEMIS(フランス国立映画学校)短編集>でも上映された、フランソワ・オゾン『僕らの間にあるバラ』。<FEMIS(フランス国立映画学校)短編集>について書いた時に、一度、この作品について触れていますが、動画サイトをチェックしていて、この作品の動画を見つけたので、改めて記事にしたいと思います。<FEMIS(フランス国立映画学校)短編集>の時は英字幕付きでの上映でしたが、今回は、字幕が一切入っていないバージョン(フランス語(+英語)の台詞のみ)です。




 【物語】 ポールの勤める美容院にローズがやってくる。「黒くして欲しいの」と言って入店したローズは、担当したポールには「赤く染めて欲しい」と言い、出来上がった髪を鏡で見せられると、オーダーと違うと言って怒り出し、お金も払わないで店を飛び出してしまう。ポールはローズを追うが、ローズはあなたがミスしたんだからと言って代金は支払わずに小銭を渡してごまかそうとする。そんなローズをポールは殴るが、ローズはお詫びに今晩ディスコ(Paris by Night)に行かないかとポールを誘う。店に戻ると「逃げられた」と報告するポール。

 その夜、ディスコにやってきたポールの服装を見たローズは、ポールの上着を脱がせてシャツ1枚にし、この方がかっこいいわと言って入店させる。
 ローズは、前からの知り合いなのかロベールという中高年にポールをイギリスからやってきた弟なのと紹介する。ポールを全くかまおうとしないローズに失望する。そんなポールをじっと見つめる中年男性イーヴ。

 ローズは、イーヴにも声をかけて、ロベールのアパートへ行く。
 ローズは、シャワールームでちょっとしたおこづかい稼ぎをしないかと言って、ポールにイーヴと寝るように言う。
 ポールはイーヴとベッドに入るが、抵抗があって、イーヴの求めに応じないでいると、「約束が違う。3000フランも払ったんだぞ」とイーヴ。ポールは、ローズの話とケタが違うのに驚き、イーヴの言うがままにされる。
 一方のローズは、今日は眠いからと言って、ロベールに背中を向けてさっさと寝てしまう。

 翌朝、ポールは「イーヴから全部聞いた、騙したんだな」と言って、ローズに襲い掛かる。ローズの激しい抵抗に遭い、ポールはローズを放り出して、アパートを飛び出す。そんなポールをローズが追う。
 ローズはポールに謝り、アパートに来ないかと誘う。
 アパートへ向かう道すがら何となく気持ちが寄り添っていき、2人はローズのアパートで結ばれる。

 一眠りした後、ポールが先にベッドを出る。部屋を出て行こうとするポールに、「どこ行くの?戻ってくる?」とローズ。「クロワッサンを買ってくるだけだよ」とポール。ローズは、「あのお金なら、みんなあげてもいいのよ」と出て行くポールの背中ごしに声をかける。
 クロワッサンを買ったポールは、しかし、ローズのアパートには戻らず、勤務先の店に向かう。
 何時だと思ってるんだとオーナーには叱られるが、さして気にもとめない。同僚に「昨日、ディスコに行ったんだ」「おまえもようやくディスコ・デビューか」などと言い合い、シャンプーなみれの手でクロワッサンを食べさせあいしようとしたりして、ふざけあう。イーヴのことも、ローズのことも過去のこととして、すっかりふきれたような笑顔を見せるポールだった。

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  出会いがあり、ある刺激的な体験をして、心境に変化をもたらし、それが現在の人間関係にも反映されるようになる、というストーリー・ラインは、1996年の『サマードレス』と全く同じです。また、この作品自体が1997年の『ベッドタイム・ストーリーズ』の1編であってもよさそうな物語で、この作品がきっかけとなって、『ベッドタイム・ストーリーズ』のアイデアが生まれたということもありそうです。

 タイトルにある「バラ」はローズのことであり、また、ローズの右肩甲骨のところにあるバラの刺青のことでもあります。

 ローズ役のサーシャ・ヘイルズ『海を見る』でも主演を務めた女性で、女優として活躍しているほか、監督作品や脚本作品(最近はこちらの方が主)もあります。

 共同脚本のNicolas Mercierは、前作『ヴィクトール』でも共同脚本を務めた人物。

 撮影は、おなじみのヨリック・ルソー。

 フランソワ・オゾンは、“トイレの男”として出演もしています。

画像

 ◆作品データ
 1994年/仏/27分
 仏語・英語台詞あり/字幕なし
 実写作品

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 ◆監督について
 フランソワ・オゾン
 1967年パリ生まれ。
 子役としてモデルをしていたこともあり、そのお金で映画館に通っていた。
 父親がスーパー8で家族を撮っているのを見て、自分でも撮るようになる。
 1989年にパリ第一大学映画コースで修士号を取得。1993年に国立の映画学校フェミスの監督コースを卒業。大学卒業後に発表し始めた短編は評判になり、OZON OSER(大胆なことをやるオゾン)と呼ばれるようになる。
 1995年にはフランス大統領選をリオネル・ジョスパン(のちにフランス首相)の側から撮った『ジョスパンの光』というドキュメンタリーを発表(ジョスパンは友人の父親だった)。
 1998年『ホームドラマ』で長編監督デビュー。
 いつしかフランスの女優がこぞって出演を希望する監督となり、今やフランス映画界のエースと言っていい存在となっている。
 1999年の初来日時の言葉:「ぼくにとって映画づくりはカタルシス(浄化)であって、エクソシズム(悪魔払い)でもあるんだ。もし映画を撮っていなかったら、父親を殺して、母親と寝るような人間になっていたかもしれないな」

 ・1988年  “Photo de famille”「家族写真」
 ・1988年 “Les Doigts dans le ventre”「腹に指」 DVD『まぼろし』に収録
 ・1990年  “Mes parents un jour d'été”「ある夏の日の両親」  DVD『まぼろし』に収録
 ・1991年 “Une goutte de sang”「血の一滴」
 ・1991年 “Le Trou madame” *短編ドキュメンタリー
 ・1991年 “Peau contre peau” *短編ドキュメンタリー
 ・1991年 “Deux plus un”
 ・1992年 “Thomas reconstitué”
 ・1993年 “Victor”
 ・1994年 『僕らの間にあるバラ』“Une rose entre nous”
 ・1994年 『アクション、ヴェリテ』
 ・1995年 『小さな死』 DVD『ホームドラマ』に収録
 ・1995年 “Jospin s'éclaire”(ジョスパンの光)
 ・1996年 『サマードレス』 DVD『海をみる』に収録
 ・1997年 『海をみる』
 ・1997年 『ベッドタイム・ストーリーズ』 DVD『海をみる』に収録
 ・1998年 『X2000』 DVD『焼け石に水』に収録
 ・1998年 『ホームドラマ』
 ・1999年 『クリミナル・ラヴァーズ』
 ・2000年 『焼け石に水』 ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 テディ賞受賞
 ・2001年 『まぼろし』
 ・2002年 『8人の女たち』 ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 Reader Jury of the "Berliner Morgenpost"受賞
 ・2003年 『スイミング・プール』 カンヌ国際映画祭コンペ部門出品
 ・2004年 『ふたりの5つの分かれ路』 ベネチア国際映画祭コンペ部門出品
 ・2005年 『ぼくを葬る』
 ・2006年 “Un lever de rideau” *久々の短編
 ・2007年 “Angel”(The Real Life of Angel Deverell) ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 *現代ものではない初めての作品

 *このほか、1988年のソフィー・マルソー主演の『スチューデント』には学生役で出演もしています(ノン・クレジット)。

 *フランソワ・オゾンのことを「短編王」と呼ばれたと紹介してある記事がありますが、これは最初にオゾンの作品を配給したユーロスペースが紹介文の中に織り込んだもので、実際にはオゾンが「短編王」と呼ばれたことはありません(直接本人に確認しました)。上にも書いたように、フランスでは短編時代のオゾンをOZON OSER(大胆なことをやるオゾン)と呼んでいたそうです。
 オゾン作品の配給が、ユーロスペースからギャガに変わるに及び、オゾンのプロフィール紹介文の中から「短編王」の称号は消えていきました。

 *参考サイト
 オゾンの公式サイト:http://www.francois-ozon.com/

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