フレデリック・バック  『トゥ・リエン』

 久々に、“フレデリック・バック”で検索していみたら、『トゥ・リエン』の動画が見つかりました。私個人は、この作品が収録されているDVDを持っているのですが、当ブログでまた1つバックの作品を動画つきでご紹介できるのは嬉しいですね。



 【物語】
 神さまが星、太陽、そして地球を創り、海や大地を創造していく。
 続いて、鳥を生み出すが、最初に創った鳥は丸裸で、どうにも不恰好だったので、神さまが羽根を与えてやると鳥は元気に空を飛び回るようになる。
 さらに神さまは、獣や魚を創り、それぞれに毛皮や鱗を与えてやる。
 最後に創ったのが人間の男女。
 人間は、鱗を与えて自由に泳げるようにしても、毛皮を与えて自由に走り回れるようにしても、羽根を与えて自由に飛び回れるようにしても満足しない。困った神さまは、人間を丸裸のまま放り出してしまう。
 神さまに見放された人間は、自分で狩りを始め、鳥や魚や獣を獲り、獣から剥いだ毛皮をまとい、鳥の羽根で着飾るようになる。
 人間は、獣や鳥を狙う槍を神さまに向け、ついに神さままでも射殺してしまう。
 その後も、人間は、鉄砲などの道具を作り出して、狩りをエスカレートさせていく。街を作り、森もどんどん伐採し、地球を人造物で埋め尽くしていく。しかし、そんな人間にも終わりが来る。
 人間の痕跡が壁画や地上絵だけになったと思われた頃、人間の子どもたちが、自らを着飾らせていた獣や鳥たちを解放させる。そしてすべての生物が共存共栄するようになり、その姿は神さまに重なり、虹となって、空に広がっていく。

 本作は、フレデリック・バックによる天地創造を描いた作品で、どこまでも果てしのない人間の欲望に警告を発し、人類に地球規模での共存共栄で考えるということを求めています。
 人類の暴走に歯止めをかけるのは、やっぱり、子ども、なんですね。

 ちょっとお説教くさい感じもしてしまうのですが、その分、監督の言いたいことはストレートに伝わってきます。

 個人的には、人間に鱗を与えたり、毛皮を与えたり、羽根を与えたりするというような、バックのイマジネーション&アニメーションの展開をもっと見てみたいという気がするのですが、まあ、それはそれで、こうした危機意識こそがフレデリック・バックに創造意欲を掻き立てさせ、何ヶ月にもわたる制作期間を持続させる力ともなるということなのでしょう。

 DVDに封入されていた解説書によると、タイトルの“トゥ・リエン”は、英語で言うと“All Nothing”で、詩人ラミューズと作曲家ストラヴィンスキーによるバレエ音楽『兵士の物語』に由来するものだそうです(『兵士の物語』とは、愛用のバイオリンと魔法の本を交換した兵士は、魔法の本によって裕福になるが、自分のアイデンティティーであったバイオリンを手放したことで、そのほかのすべてを失ってしまう、という物語)。

 音楽監督は、フレデリック・バック作品ではおなじみのノーマン・ロジェ。本作では、特に映像と音楽のシンクロが見事ですが、音楽に合わせて映像を展開させたのではなく、映像として完成した作品にロジェが後から音楽をつけたそうです。

 制作期間20ヶ月。

画像

 ◆作品データ
 1978年/カナダ/10分59秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *1980年 米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート

 *2000年に『イリュージョン』から『大いなる河の流れ』までの6作品を収めたDVD「フレデリック・バック作品集」が、パイオニアLDCから出ました(税込み7140円)が、その後、初DVD化作品を含む9作品を収めた「フレデリック・バック作品コレクション」がジェネオン エンタテインメントから発売されました(税込み12800円。新たに収録された作品は『アブラカダブラ』『神様イノンと火の物語』『鳥の誕生』)。

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 ◆監督について
 フレデリック・バック
 1924年 ドイツのザールブリュッケン(当時はフランス領)生まれ。父親は音楽家。
 1938-1939 年 パリのEcole Estienneで学ぶ。
 1939-1945年 レンヌの美術学校で画家マテラン・メウに学ぶ。
 1948年 文通で知り合ったカナダ人女性に会うために、カナダに向かう。
 1949年 結婚。以後、モントリオールを活動拠点とする。
 1952年 カナダ国営放送(Radio Canada)にグラフィック・アーティストとして参加し、教育番組や科学番組の作画や視覚効果を担当する。
 1967年 モントリオールのPlace-des-Arts Metro station にL'histoire de la musique à Montréal ("history of music in Montreal") という題のステンドグラスを制作。
 1968年 Hubert Tisonによって開設されたアニメ部門に移る。最初はタイトル・ロゴなどを担当していたが、70年以降、子ども番組を制作するようになる。
 1989年 ケベック州からナイトの称号を受ける(National Order of Quebec)。
 2004年 Planet in Focus film festivalでEco-Hero Media Award を受賞。
 色鉛筆とフェルペンによる作画で、1作品1作品、時間をかけて制作。作品の中に、ケベック州の美しい自然を描き、人と自然環境をテーマに作品を作り続けている、と評される。

 1970年 『アブラカダブラ』“Abracadabra”
 1971年 『神様イノンと火の物語』“Inon Ou LaConquet De Feu”
 1973年 『鳥の誕生』“The miracle of spring”
 1974年 『イリュージョン』
 1977年 『タラタタ』
 1978年 『トゥ・リエン』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
 1981年 『クラック!』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1987年 『木を植えた男』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1993年 『大いなる河の流れ』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート

 公式HP:http://www.fredericback.com/

 参考サイト:http://www.animationarchive.org/bio/2005/12/back-frederic.html

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