出世作! 『夫婦生活』 ミハエラ・パヴラートヴァー

 先週ご紹介した『反復』がとても面白かったので、ミハエラ・パヴラートヴァーの他の作品はないかと思って調べたら、みつかったのが、この作品です。

 

 【物語】 編み物をしている妻の向かいで退屈そうにしている夫。
 気まぐれに「A」と話しかけてみるが、妻の返事は「b」。
 噛み合わないので、夫は再び「A」と話すが、妻はやはり「b」と応じる。
 それが繰り返され、夫のイライラが頂点に達した頃、妻は「b」型のソーセージを夫に差し出す。
 ソーセージの匂いにつられた夫は、一皿をペロリと平らげたあと、満足気に「b」とつぶやく。

 ブロック体の「A」に筆記体の「b」は、夫婦それぞれの話の内容と語り方を象徴しているのでしょう。このままではずっと平行線で、噛み合わないんですが、妻は夫の胃袋をコントロールすることで、うまく夫を操縦する。

 この作品は、パヴラートヴァーの卒業制作作品で、この時、彼女は26歳。これがきっかけで彼女が商業デビューすることになったという記念碑的な作品です。

 やらなくてもいい議論をふっかけたり、面倒を起こしたりするのはいつも男で、女はそれを真っ向から受け止めて対決したりする事はせずに、衝突を避けて、やさしく包み込む、という男性観・女性観は、『反復』で描かれているものと同じですね。

 男女のカップルがいて、反復があり、衝突、あるいは、ふと立ち止まる瞬間があって、そののちに現状が回復される、というパターン性も『反復』と同じです。

 日常生活から題材を取ってアニメーション化するというパヴラートヴァー作品の特徴は、この作品から既に見てとることができます。

画像

 ◆作品データ
 1987年/チェコ/3分42秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *日本では<チェコアニメ映画祭2006>のBプログラムで『夫婦生活』『クロスワード』『ことば、ことば、ことば』『反復』『永遠に…』が上映されました。

 *この作品は、DVD『Fantastic! Czech Animation 80’s~90’s 2D傑作アニメーション』に収録されています。

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 ◆監督について
 ミハエラ・パヴラートヴァー
 1961年 プラハ生まれ。
 1987年 プラハ工芸美術大学(UMPRUM)を卒業。卒業制作である『夫婦生活』が認められて、クラートキー・フィルムからオファーがあり、プロのアニメーション作家としての道が開ける。
 1992-98年 チェコ国立芸術アカデミーとプラハ工芸美術大学で教鞭を取る。
 1998年~ サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート・カレッジで教鞭を取る。
 サンフランシスコでは、アニメーション製作会社Wildbrain Inc.( http://www.wildbrain.com/)と協力して制作を行なっている。『墓場』等はその成果の1つ。
 2002年にプラハに戻り、実写作品『不貞ゲーム』を手がける。

 他に、ハーバード大学でも教鞭を取っているようです。

 小さい役ながら、映画仲間のいくつかの作品では女優としても出演している。

 CM作品として、ネスレ、コダック、マツダなど。

 イラストも手がけていて、その作品の1つ“Yoko、the Imaginary Dog”はここ(http://www.volny.cz/aamica/show/folder_ill/ill_yak00.html)で見ることができます。

 愛・地球博で“Letters from Czech Repubric”という作品(パヴェル・コウツキー、イジー・バルタ、アウレル・クリムトとの共同作品)が上映されています。

 ・1987年 『夫婦生活』 “Etuda z alba”
 ・1989年 『クロスワード』 “Krízovka(The Crossword Puzzle)”
 ・1991年 『ことば、ことば、ことば』 “Reci, reci, reci…(Words, Words, Words)”
 *米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート、クラクフ映画祭特別賞受賞、モントリオール国際映画祭短編映画部門グランプリ受賞
 ・1992年 『叔父と叔母』 “uncles and ants”
 ・1994年 『反復』 “Repete”
 *ベルリン国際映画祭最優秀短編映画賞受賞、広島国際アニメーションフェスティバル グランプリ受賞
 ・1995年 『私かもしれない』 “This could be me”
 ・1998年 『永遠に…』 “Az na veky(Forever and Ever)”
 *オタワ国際アニメーションフェスティバル Television Specials部門OIAF Award受賞
 ・1998年 『プラハの話』 “Praha ocima(Prague Stories/Prague vu par) ”
 ・2000年 『おばあさんの話』 “O babicce(On Grandma)”
 ・2001年 『墓場』 “graveyard”
 ・2002年 『シッポの話』 “Taily Tales”
 ・2003年 『不貞ゲーム』 “Neverné hry(Faithless Games)”
 *サンセバスチャン国際映画祭 Best New Director Special Mention受賞
 ・2005年 “Letters from Czech Repubric”
 ・2006年 『動物の謝肉祭』 “Karneval zvirat (Le Carnaval des Animaux / The Carnival of Animals).”

 *参考サイト
 ・インタビュー Radio Praha:http://www.radio.cz/en/article/78278

 ・アニメーション製作会社Wildbrain Inc.のサイト:http://www.wildbrain.com/about_us/bios/d_michaela.html

 ・http://www.volny.cz/aamica/show/folder_about/about_Mich.html

 *参考書籍
 ・『メッセージ・フロム・チェコアート』(2006年 アーティストハウス刊)

この記事へのコメント

darmos
2008年12月01日 19:52
はじめまして。
ミハエラ・バヴラートヴァーで検索したら、こちらのサイトにたどり着きました。「夫婦生活」もウィットに富んでいますが、「ことば、ことば、ことば」も素晴らしい。今度、渋谷のCafe anoで上映があるので、事前にどんな作品か調べるのが目的だったのですが、益々上映日が待ち遠しくなりました。それより何より、こちらのサイトの情報量の豊かさには、目をみはるものがあり、是非お礼をしたいと思いました。短編アニメーションに関する細かい情報があるサイトはなかなか見ないです。たいていYouTubeで作品を検索して見ることが多いのですが、今後はこちらのサイトで殆ど見ることができるのでは、と思って嬉しいです。しかも丁寧なコメントもあり、作品たちだけでなく、この「海からはじまる!?」というサイト自体に深く感動しました。これからも頻繁に訪問させていただきます。本当にどうも有難うございます。頑張ってください!
umikarahajimaru
2008年12月01日 21:01
darmosさま
コメントありがとうございました。
Cafe anoというのはチェコ料理の専門店ですよね。行ったことはありませんが、いつか行ってみたいとは思っていました。
短編映画&アニメーションの記事は、気力がないとなかなか更新できないんですが、しばらく更新がなくても、そのうち再開しますので、気長にお待ちくだされば幸いです。
darmos
2009年02月25日 22:55
いつも豊富な情報どうも有難うございます。
年末に、Cafe Anoでの上映会に行きました(ハヴェル・コウツキーとミハエラ・パヴラートヴァー作品)。食事付きで3000円。チェコアニメーションは、アットホームなセッティングでの鑑賞に向いているような気がしました。お食事は上映会用のものなので、そこがちょっとネックではありますが(折角だからブランボラークとチェコビールがよかったのですが)。
もう少しお手頃なところでは、四谷3丁目の「だあしゑんか」。昨日シュヴァンクマイエル作品を見てきました(1300円でドリンク付き)。15人弱収容という小さなお店ですが、チェコ関連の本も閲覧できるようになっていて(原書のコレクションもアリ)、今度は是非読書をしに行きたいお店です。他諸々イベントを催していて、3月に開店一周年を迎えるようですが、是非とも繁盛して欲しいお店です(あまり大きくなりすぎるとさびしいですが)。

だあしゑんか
http://bardasenka.blog34.fc2.com/
umikarahajimaru
2009年02月28日 01:57
darmosさま
情報ありがとうございます。
3000円だと、もう少しでDVDが買えそうな値段なので、ちょっとどうかなあとは思ったりもしますが、1300円ぐらいだと手ごろでいい感じですね。

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