傑作! 『少女と雲』 ジョルジュ・シュヴィツゲベル

 ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品は、私は『78回転』が最初で、本作が2本目だったんですが、『78回転』みたいな実験映画風の作品だけでなく、こういうのも作れるのか、とちょっと驚き、もっと彼の作品が観てみたくなりました。DVDも欲しいですね~。



 最初は、メタモルフォーズする映像に幻惑されながら観て、ラスト近くでようやくこれが『シンデレラ』の物語の翻案なんだと気づいて驚き、何度も繰り返しリプレイして観てしまいました。その度に発見があって、実に味わいがある作品でしたね~。傑作ですよ! 一度観ただけではこの作品のどこが傑作なのかわからないかもしれませんが、短いですし、繰り返し観てみることをオススメします。

 見直して観ると、いろいろ混乱させる部分もあって、それが一度ではわからなくしている理由なんですが、ここで解説しておくと――
 ・電車の中のシーン ずっと電車の中のシーンが続いているのかという印象も持ってしまうんですが、電車の中のシーンは、ここだけ。
 電車の中には3人の女性が映っているのですが、真ん中の女性はどうやら姉妹の母親のようで、このシーン以外では出てきません。ポニーテールにしてる窓側の席の女性とおかっぱの通路側の席の女性が姉妹です。
 電車のシーンは、単に姉たちが旅行に行っていたというだけのシーンとも考えられますが、ひょっとするとダンス・パーティーに出るために彼女たちがこの地にやってきた、ということを示しているのかもしれません。
 ・その後のシーンは、初見では、4人の女性がテーブル席についているのかと思ってしまいましたが、これは姉妹が鏡に向かってメイクしているシーンで、姉妹と鏡に映っている彼女たちが同時に映っているので一瞬4人に見えてしまうのでした。
 メイクしている女性の顔をグチャグチャにしてどんよりとした雲にメタモルフォーズしてしまうのは、ちょっと意地が悪いなあと思ってしまいましたが(笑)、シュヴィツゲベル流のちょっとしたいたずらなのでしょう。
 ・シンデレラ役の彼女は、青い髪をしていて、これが彼女を見分ける手がかりになります。
 ダンス・パーティーの相手と最後に再会できた彼女は、彼と飛行機でハネムーンにでかけ、飛行機の中では、縁結びとなった靴を脱いで、くつろいでいる、というのがラストシーンの意味ということになるでしょうか。

 青空から始まって、夕陽で終わるのもいいですね。

 電車の中で、窓に反対側の窓の景色が反射して映るシーン、ダンス・パーティーでミラーボールの光の中で踊ったりするシーンなど、映像的に印象に残る面白いシーンも多かったですね。

 『シンデレラ』の場合は、魔法使いが彼女に12時までの魔法をかけてくれるわけですが、この作品では魔法使いは出てきません。“シンデレラ”が勝手に姉さんたちのドレスを着て、勝手にダンス・パーティーに出席したのだと考えると、やる気まんまんな感じがして、ちょっと嫌だなあとも思ってしまいますが(笑)、ここは日頃彼女にエサをもらっていたハトが彼女に魔法をかけてくれたのだと、私は考えたいと思います。

画像

 ◆作品について
 2001年/スイス/4分16秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 ◆監督について
 ジョルジュ・シュヴィッツゲベル
 スイスを代表するアニメーション作家&グラフィック・デザイナー。キャリアは30年以上ですが、この10年間で特に評価が高まっているようです。
 1944年 スイスのベルン生まれ。1951年にジュネーブに移る。
 1961年 ジュネーブのArt School and College of Decorative Artsに入学(~1965年)
 1966年 ジュネーブの広告代理店に入社(~1970年)
 1970年 独立して、Claude Luyet 、Daniel Suter とともにGDS Studio を設立し、テレビ番組のタイトルやポスター、広告イラスト、短編アニメーション等を手がける。
 1983-1984年 中国語を学ぶために1年間、上海の復旦大学で学ぶ。
 1986年 スイスのビュルにあるGruyerien美術館で GDS Studioの展覧会開催。
 1987年 Nürenbergで回顧展開催。
 1992年 ジュネーブで舞台“Children's King”のためのセットを手がける。
 ジュネーブの Building-House のためにフレスコ画を手がける。
 1994年 シュツットガルトで展覧会&回顧展開催。
 1995年 東京と大阪とパリで回顧展開催。
 ジュネーブのギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。
 1996年 ジュネーブのJardin BotaniqueとギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。

 ・1971年“Patchwork ” *カンヌ国際映画祭 短編部門ノミネート
 ・1974年 『イカロスの飛翔』 “Le Vol d'lcare”
 ・1975年 『遠近法』 “Perspectives”
 ・1977年 『オフサイド』 “Hors-jeu”
 ・1982年 『フランケンシュタインの恍惚』 “Le Ravissement de Frank N. Stein” *ベルリン国際映画祭C.I.D.A.L.C. Award名誉賞受賞
 ・1985年 『78回転』 “78 Tours”
 ・1986年 『ナクーニン』 “Nakounine”
 ・1987年“Academy Leader Variations” *カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
 ・1989年 『絵画の主題』 “Le Sujet du tableau”
 ・1992年 『破滅への歩み』(『深遠への旅』) “La Course à l'abîme” *広島国際アニメーションフェスティバル 5分以内の作品部門2位
 ・1995年 『鹿の一年』 L' Année du daim(The Year of the Deer)” *ザグレブ国際アニメーションフェスティバルCategory A - 30 Sec. to 5 Min First Prize受賞
 ・1996年 『ジグザグ』 “Zig Zag”
 ・1998年 『フーガ』 “Fugue” *オタワ国際アニメーションフェスティバルBest Use of Colour Craft Prizes受賞、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞
 ・2001年 『少女と雲』 “La Jeune fille et les nuages(The Young Girl and the Clouds)” *スイス映画賞最優秀短編賞受賞、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞受賞
 ・2004年 『影のない男』 “L' Homme sans ombre(The Man with No Shadow)” *カンヌ国際映画祭 短編部門Prix Regards Jeune受賞、ジニー賞短編アニメーション部門ノミネート、スイス映画賞短編アニメーション部門ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル審査員特別賞&Jury Award of the Partner Festival Krok 受賞、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞
 ・2006年 『技』 “Jeu” *スイス映画賞最優秀短編アニメーション賞ノミネート、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞

 *1995年にイメージフォーラムの<Magical View!>というプログラムで、イギリスの映像作家トニー・ヒルの6作品とともに、8作品(『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』)が劇場公開されました。

 *第7回ラピュタアニメーションフェスティバル2006で『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『ナクーニン』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』『ジグザグ』『フーガ』『少女と雲』『影のない男』『技』という主だった14作品が<ジョルジュ・シュヴィッツゲベル作品集>として上映されました。
 これに先立って、『技』以外の13作品が『ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品集』として2005年に日本でもDVDリリースされています。

 *参考サイト:THE GALLARY:http://www.awn.com/gallery/schwizgebel/index.html

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック