またもや“親殺し”がテーマ フランソワ・オゾン『ヴィクトール』

 フランソワ・オゾンのフェミス(国立の映画学校)時代の作品。日本では、上映もDVD収録もされていないようです。




 【物語】
 ヴィクトールは、親を殺して自分も死のうと遺書を書くが、親を殺しただけで、自殺には踏み切れない。
 そして、親の死体の始末すらできず、そのまま数日死体とともに過ごしてしまう。
 女中は、ヴィクトールがやったことを知ってか知らずか、母のワードローブを勝手に漁ったり、男を連れ込んだりしたあげく、金目のものを持ち出して去ってしまう。
 ようやく親の死体を埋めたヴィクトールは、新しい人生に旅立つことに決める。

 本作を含んで、1991年の“Deux plus un”から1994年の“Une rose entre nous”までの4作品は、製作がフェミスとなっていますから、おそらくフェミスの実習の一環として作られた作品なのだと思われます。

 本作は、フランソワ・オゾン作品のおなじみのテーマ、「親殺し」が描かれる作品で、『家族写真』“Photo de famille”と『ホームドラマ』の間に位置する作品と言うことができると思います。

 他の3作品は未見ですが、この時期のオゾンは、それまでやってきたことを発展させ、次のステップにつなげる時期だったようで、“Deux plus un”は、2人のゲイと1人の女性がビーチで出会う物語で、明らかに『サマードレス』につながる作品となっています。“Une rose entre nous”は英国人女性がパリで見習いの美容師を拾う話だそうです(“Thomas reconstitué”は詳細不詳)。

 これまではそう多くはないスタッフで映画制作を行なってきたオゾンですが、『ヴィクトール』では、20人以上のスタッフで臨み、脚本も共同作業で取り組んでいます(共同で脚本を書くのはおそらくこれが初めて)。

 ◆作品データ
 1993年/仏/12分57秒
 フランス語の台詞あり/字幕なし
 実写作品

画像

 ◆監督について
 フランソワ・オゾン
 1967年パリ生まれ。
 子役としてモデルをしていたこともあり、そのお金で映画館に通っていた。
 父親がスーパー8で家族を撮っているのを見て、自分でも撮るようになる。
 1989年にパリ第一大学映画コースで修士号を取得。1993年に国立の映画学校フェミスの監督コースを卒業。大学卒業後に発表し始めた短編は評判になり、OZON OSER(大胆なことをやるオゾン)と呼ばれるようになる。
 1995年にはフランス大統領選をリオネル・ジョスパン(のちにフランス首相)の側から撮った『ジョスパンの光』というドキュメンタリーを発表(ジョスパンは友人の父親だった)。
 1998年『ホームドラマ』で長編監督デビュー。
 いつしかフランスの女優がこぞって出演を希望する監督となり、今やフランス映画界のエースと言っていい存在となっている。
 1999年の初来日時の言葉:「ぼくにとって映画づくりはカタルシス(浄化)であって、エクソシズム(悪魔払い)でもあるんだ。もし映画を撮っていなかったら、父親を殺して、母親と寝るような人間になっていたかもしれないな」

 ・1988年  “Photo de famille”「家族写真」
 ・1988年 “Les Doigts dans le ventre”「腹に指」 DVD『まぼろし』に収録
 ・1990年  “Mes parents un jour d'été”「ある夏の日の両親」  DVD『まぼろし』に収録
 ・1991年 “Une goutte de sang”「血の一滴」
 ・1991年 “Le Trou madame” *短編ドキュメンタリー
 ・1991年 “Peau contre peau” *短編ドキュメンタリー
 ・1991年 “Deux plus un”
 ・1992年 “Thomas reconstitué”
 ・1993年 “Victor”
 ・1994年 『僕らの間にあるバラ』 “Une rose entre nous”
 ・1994年 『アクション、ヴェリテ』
 ・1995年 『小さな死』 DVD『ホームドラマ』に収録
 ・1995年 “Jospin s'éclaire”(ジョスパンの光)
 ・1996年 『サマードレス』 DVD『海をみる』に収録
 ・1997年 『海をみる』
 ・1997年 『ベッドタイム・ストーリーズ』 DVD『海をみる』に収録
 ・1998年 『X2000』 DVD『焼け石に水』に収録
 ・1998年 『ホームドラマ』
 ・1999年 『クリミナル・ラヴァーズ』
 ・2000年 『焼け石に水』 ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 テディ賞受賞
 ・2001年 『まぼろし』
 ・2002年 『8人の女たち』 ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 Reader Jury of the "Berliner Morgenpost"受賞
 ・2003年 『スイミング・プール』 カンヌ国際映画祭コンペ部門出品
 ・2004年 『ふたりの5つの分かれ路』 ベネチア国際映画祭コンペ部門出品
 ・2005年 『ぼくを葬る』
 ・2006年 “Un lever de rideau” *久々の短編
 ・2007年 “Angel”(The Real Life of Angel Deverell) ベルリン国際映画祭コンペ部門出品 *現代ものではない初めての作品

 *このほか、1988年のソフィー・マルソー主演の『スチューデント』には学生役で出演もしています(ノン・クレジット)。

 *フランソワ・オゾンのことを「短編王」と呼ばれたと紹介してある記事がありますが、これは最初にオゾンの作品を配給したユーロスペースが紹介文の中に織り込んだもので、実際にはオゾンが「短編王」と呼ばれたことはありません(直接本人に確認しました)。上にも書いたように、フランスでは短編時代のオゾンをOZON OSER(大胆なことをやるオゾン)と呼んでいたそうです。
 オゾン作品の配給が、ユーロスペースからギャガに変わるに及び、オゾンのプロフィール紹介文の中から「短編王」の称号は消えていきました。

 *参考サイト
 オゾンの公式サイト:http://www.francois-ozon.com/

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この記事へのコメント

2007年02月17日 18:11
こんにちはー。
短編王と呼ばれていたとは知らなかったです。
配給会社が変わったから、シャンテシネなんかで上映されるようになったんですねー。
焼け石に水はユーロだったような。
そして、私は“Un lever de rideau”がとっても観たいんですよーー。
なんだかたくさんの短編やアニメが貼り付けられていてワクワクしますね。
時間のある時に隅々までじっくり観させていただきますー。 
“Un lever de rideau” 
umikarahajimaru
2007年02月18日 08:25
かえるさま
コメントありがとうございました。
“Un lever de rideau”は短編といっても30分くらいあるんですが、マチュー・アルマリックが出てるんですよね。
オゾンの新作がDVD化された時に特典として収録されたりするでしょうか?

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