『ある一日のはじまり』 ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービス

 広島国際アニメーションフェスティバルの第10回大会(2004年)でグランプリを受賞したのが、米国アカデミー賞短編アニメーション賞にもノミネートされた山村浩二監督の『頭山』、第9回大会のグランプリがマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の『岸辺のふたり』、そして第8回大会のグランプリがウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービス監督の『ある一日のはじまり』になります。



 ニワトリのオジサンの食事のシーンに続いて、ブタのお嬢さん(?)がじゃがいもの皮を剥き、実を捨てて、皮を残すという朝食の支度のシーンが始まって、何かほのぼのとしたドラマが始まるのかなあと思っていると、突然、悲劇が降ってわいて、ムードが一変してしまいます。
 わあ、ナニナニ? この物語は何を伝えようとしているの?と観ていて戸惑ってしまいますが、まずは、この作品が伝えようとしているものを予備知識なしで受け止めてみるのがいいかもしれません。

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  わかりやすい解釈としては―
 一見、便利で快適な都市生活には、一瞬先には闇が待ち構えているかもしれず、そんな人々の生活を繋いでいるのは、電気や電波、上下水道のパイプくらいしかない。そんな都市生活者の不安や孤独を浮き彫りにした作品、ということになるでしょうか。

 静物画を思わせる背景描写(実写コピーをベースにしているらしい)、ユーモラスで感情移入しやすい人物像、そして、すぐに言葉にすることはできないものの、観る者に何かを強く訴えかける物語……。
 短編映画、短編アニメというと、単純に笑えるもの、シンプルに泣けるもの、いわゆるショート・ショート的なオチのある作品など、わかりやすいものを連想しがちですが、こうした複雑な感情を呼び起こす作品もあるんですね~、という見本のような作品です。
 数々の受賞歴もダテではありませんね。
 この監督の他の作品を私は観たことがありませんが、もっと観てみたくなります。

 この作品が日本で上映されたのは、2001年に国際交流フォーラムで開催された<カナダ映画祭2001>のアニメーション&短編映画特集がおそらく初めてで、その後、2002年に広島国際アニメーションフェスティバルでも上映されています。

 ◆監督について
 ウェンディ・ティルビー
 1960年 カナダ・エドモントン生まれ。
 ヴィクトリア大学で視覚芸術と文学を学んだ後、バンクーバーのEmily Carr Institute of Art and Designで映画とアニメーションを専攻する。学生時代に制作した『やすらぎのテーブル』“Tables of Content”が数々の賞を受賞。1987年に、NFB(National Film Board of Canada)に招かれる。

 ・1986年 『やすらぎのテーブル』“Tables of Content”:1986年 モントリオール国際映画祭短編部門グランプリ受賞、オタワ国際アニメーションフェスティバル 第1回作品賞受賞。
 ・1991年 『ストリングス』“Strings/Cordes”:1992年 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート、ジェニー賞(カナダ・アカデミー賞)短編アニメーション賞受賞、オタワ国際アニメーションフェスティバル 最優秀カナダ映画賞受賞。
 ・1991年 “The National Film Board of Canada's Animation Festival”:NFBの8人の監督によるオムニバス作品
 ・1995年 “Inside Out”
 ・1999年 『ある一日のはじまり』
 現在は、モントリオールのConcordia大学でアニメーションを教えているほか、ハーバード大学でもアニメーションについて講義をしている。
 共同監督のアマンダ・フォービスと組むのは『ある一日のはじまり』が初めて。共同監督作品にはCMもあるようです。

 ☆『やすらぎのテーブル』『ストリングス』はDVD 世界のベスト・アニメーションVol.1『雪深い山国』に収録されています。

 アマンダ・フォービス
 カナダのカルガリー生まれ。
 バンクーバーのEmily Carr Institute of Art and Designで映画とアニメーションを専攻する。NFBのディレクター。
 1995年に“The Reluctant Deckhand”という教育映画を制作。
 現在は、子どものためのワークショップを開いたりしている。
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 *関連サイト Acme Filmworks:http://www.acmefilmworks.com/dir_folders/dirTilby/tilby.html

 ◆データ
 1999年/カナダ/9分40秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション(一部実写あり)
 1999年 カンヌ国際映画祭短編部門パルムドール受賞
 2000年 米国アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート、アヌシー国際アニメーションフェスティバル 短編部門グランプリ&国際批評家連盟賞受賞、オタワ国際アニメーションフェスティバル 最優秀カナダ映画賞受賞、など受賞歴多数。
 コピーを鉛筆や絵の具でなぞるという手法を用いているようで、リトグラフを思わせるとも評されています。

 ちなみに、ブタのお嬢さんにはRubyという名前があります。

 『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと)で55位。

 *関連サイト:http://www.onf.ca/trouverunfilm/fichefilm.php?id=33251&v=h#

 *関連サイト 知られざるアニメーション:http://yamamuraanimation.blog13.fc2.com/blog-entry-85.html

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