2006年に最も輝いていた男優 キリアン・マーフィー!
2006年の外国映画で特に印象に残った男優を挙げろと言われれば、上半期でドン・チードル(『ホテル・ルワンダ』『クラッシュ』)、下半期でキリアン・マーフィー(『プルートで朝食を』『麦の穂をゆらす風』)ではないでしょうか。
ドン・チードルに関しては、以前に当ブログでもまとめたので、今回はキリアン・マーフィーについてまとめてみたいと思います。
◆プロフィール
1976年5月25日、アイルランド南部のコークに生まれる。父親は学校の監督官(inspector)で母親はフランス語の教師。4人兄弟の長男。
フランク・ザッパの曲名である“Sons of Mr. Greengenes”という名のロックバンドを組んでいたことがある。
Presentation Brothers College Corkで法律を学ぶが、退屈しのぎに始めたCorcadorca Theaterの舞台“Disco Pigs”で演技に目覚め、その公演ツアーのために、大学を中退する。当初は法律の道に戻るつもりだったが、自分がもう法律に興味を失っていることを悟って俳優になることにする。
初期のころは短編への出演が多かった。
俳優として大きく注目を受けるようになったのは、ダニー・ボイルの『28日後…』以降。
現在はロンドンに住んでいるが、アイルランド映画に出演することが多い。
2004年にアーティストのイヴォンヌ・マッギネスと結婚し、一男をもうけた。
身長1m75cm。愛称はCilly。
尊敬する俳優はリーアム・ニーソン。
フランス語とアイルランド語を話す。
◆フィルモグラフィー
【1997年】
・Quando(アイルランド/監督:デクラン・レックス)[短編]
*ジャック、パット、ブライアンという3人組が主人公の物語で、メインとなるのは新しい美容師エイリーンとジャックの恋物語。
共演者はポール・ミード、ポール・ヒッキーら。
【1998年】
・The Tale of Sweety Barrett (アイルランド・アイスランド/監督:スティーヴン・ブラッドリー)
*物語:スウィーティ・バレット(ブレンダン・グリーソン)は、サーカスの団員であったが、職を失い、密造酒業者のフリック・ヘネシー(トニー・ローア)に雇われる。その街は警察署長のマニックス・ボーン(リーアム・カニンガム)が幅をきかせていた。スウィーティが知り合ったアン・キング(リンダ・ステッドマン)の夫レオ(アンディ・サーキス)も署長の犠牲になった1人で、今は獄中にいた。レオは出所したら署長に復讐してやると誓っていた……。
キリアン・マーフィーは、あまり大きくない役のはずで、役名はPat the Barman。
【1999年】
・Eviction(アイルランド/監督:トム・ウォラー)[短編]
*物語:19世紀のアイルランド。“モリー・マグワイア”は地主に告げ口をした老人に復讐を誓う。
キリアン・マーフィーの役はブレンダン・マクブライド。共演は、ルパート・ヴァニシタルトやダーモット・マーティン。
・At Death's Door(アイルランド/監督:コナー・モリッシー)[短編]
*物語:死神(Des Keogh)が家業を息子(キリアン・マーフィー)に教えている。ある日、息子が自分だけでこれから死ぬはずの人の元に行くと、その友人に助けてくれと頼まれてしまう。自分の姿が人間に見えるはずはないのに、その友人には見えるらしいことに訝りつつ、彼は頼まれるまま蘇生を手伝ってしまう。そのことが父に知れると、父は激怒し、24時間以内に蘇生を手伝わせた男トムの命を手に入れて来いと命令する。
“息子”は再び人間界に戻るが、なかなかトムの命を奪うことができない。
様子を見に来た父は、“息子”の姿が見えないことに気づくが、そんなことにはおかまいなく、さっとトムに手を触れてトムの命を奪ってしまう。その結果、トムは急に妻から姿が見えなくなってしまい、そうなってしまったことにトム自身も気づく。
翌日、何がどうなったかわからないトムは、“息子”をみつけて問いかける。“息子”の方もわけがわからず、トムに触れようとするが、トムは昨日のことを思い出してか、“息子”の手をはねのける。すると、トムの姿は妻たちに見えるようになり、トムも妻も大喜び。“息子”はまたも失敗してしまってことにショックを受けて、トボトボと帰っていくのだった。
・Sunburn(米/監督:ネルソン・ヒューム)
*物語:ダイヴィン・マクダービー(キリアン・マーフィー)はアイルランドの若者で、単調な生活を逃れて、ひと夏をロングアイランドのモントークで過ごすためにアメリカにやってくる。そこで、ロバート(バリー・ウォード)やアイディーン(パロマ・バエザ)とハメをはずして楽しむうち、互いをかけがえのない存在のように思い始めるのだった……。
この作品の写真がたくさんあるサイト:http://smg.photobucket.com/albums/v334/cillian-murphy/Sunburn/
・ザ・トレンチ 塹壕 The Trench(仏・英/監督:ウィリアム・ボイド) DVD
*第一次世界大戦で、2日間に6万人もの死者を出したというソンムの戦いを描く。
キリアン・マーフィーは、小さな役だったはずで、役名はラグ・ロックウッド。共演は、ポール・ニコルズ、ダニエル・クレイグ、ジュリアン・リンド=タット、ジェイムズ・ダーシー。
【2000年】
・A Man of Few Words(アイルランド/監督:テレンス・ホワイト)[短編]
詳細不詳。役名は“Best Man”。
・Filleann an Feall(アイルランド)[短編]
詳細不詳。
【2001年】
・オン・エッジ 19歳のカルテ On the Edge(アイルランド/監督:ジョン・カーニー)
米国版公式HP:http://ontheedgemovie.com/
*物語:19歳のジョナサン(キリアン・マーフィー)は、父を亡くして、激しい鬱状態に陥っていた。自殺願望が募っていたが、ギリギリのところで精神病院に入院し、グループ・セラピーを受けることになる。最初は担当医師(スティーヴン・レイ)とも衝突を繰り返していたが、セラピーの仲間トビー(ジョナサン・ジャクソン)とも親しくなり、レイチェル(トリシア・ヴェッセイ)に恋心を抱くようにもなる……。
ジム・シェリダン プロデュース作品。
ディナール・ブリティッシュ・フィルム・フェスティバルで観客賞受賞。
・How Harry Became a Tree(伊・仏・英・アイルランド/監督:ゴラン・パスカリェーヴィチ)
イタリア版公式HP:http://www.cattleya.it/movies/details.php?id=18
*物語:1924年のアイルランド。ハリー(コルム・ミニー)は最愛の息子を内戦で失ってしまう。その後まもなく妻も死に、もう1人の息子ガス(キリアン・マーフィー)と2人暮らしになる。ハリーの気持ちは閉ざしていき、世界がみな自分の敵のように思えてくる。彼の怒りはやがて村一番の有力者ジョージ(エイドリアン・ダンバー)に向けられることになる……。
ベネチア国際映画祭コンペ部門出品作品。IFTA(アイルランド・アカデミー賞)でコルム・ミニーが主演男優賞受賞。
・Disco Pigs (英/監督:カースティン・シェリダン)
英国版公式HP:http://www.discopigs.com/#
*物語:ピッグとラントは、同じ日、同じ病院で生まれた。血はつながっていないけれど、2人はまるで双子のようで、離れて暮らしても互いの考えを手を取るように知ることができた。気心が知れ合っている2人は組んで悪事を働いたが、つかまることはなかった。しかし、17歳を前にして、ピッグは性に目覚め、これまで通りラントと接することができなくなったのだった……。
キリアン・マーフィーが演技に目覚めることになった同名の舞台の映画化で、マーフィーは舞台と同じ役(ピッグ役)を演じている。共演はエレイン・キャシディ。
スペインのオレンセ・インディペンデント・フィルム・フェスティバルで主演男優賞受賞。IFTA(アイルランド・アカデミー賞)で主演男優賞にノミネート。
・"The Way We Live Now" (英/監督:デイヴィッド・イエーツ)[TVミニシリーズ]
米国版公式HP: http://www.pbs.org/wgbh/masterpiece/waywelive/index.html
*ロンドンにやってきたアンガスタス・メルモット(David Suchet)はヨーロッパ生まれの投資家で、ロンドンに着くやいなや新しい会社を設立し、自分と組めば儲かること間違いなしと約束。その結果、彼は多くの人々に取り巻かれることになる……。
アントニー・トロロープの同名小説のドラマ化作品。監督のデイヴィッド・イエーツは『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の監督を手がけることになった方。
キリアン・マーフィーは、大陸横断鉄道を手がけることが夢の鉄道会社のエンジニア、ポール・モンターニュ役。
【2002年】
・28日後… 28 Days Later...(英/監督:ダニー・ボイル) DVD
米国版公式HP:http://www.foxsearchlight.com/28dayslater/
日本版公式HP:http://www.foxjapan.com/movies/28dayslater/main.html
*物語:自転車メッセンジャーのジム(キリアン・マーフィー)は、交通事故に遭って、昏睡状態に陥っていた。彼が病院の中で目覚めた時、まわりには全く人の気配が感じられなかった……。
アレックス・ガーランドの初めてのオリジナル脚本作品で、キリアン・マーフィーがブレイクスルーすることになったきっかけの作品でもある。
共演は、ナオミ・ハリス、クリストファー・エクルストン、ブレンダン・グリーソン。
キリアン・マーフィーは、エンパイア・アワード新人賞ノミネート、MTVアワード新人賞ノミネート、IFTA(アイルランド・アカデミー賞)主演男優賞ノミネート。
【2003年】
・Zonad(アイルランド/監督:ジョン・カーニー、キーラン・カーニー、トム・ホール)
*詳細不詳 Guy Hendrickson役。共演は、サイモン・ディラーニー、アントニー・コナティ。You Tubeで動画の一部を観ることができます(http://www.youtube.com/watch?v=PqFHfeim-lI)。
・ダブリン上等! Intermission(アイルランド・英/監督:ジョン・クローリー) DVD
日本版公式HP:http://www.at-e.co.jp/dublin/
英国版公式HP:http://www.thefilmfactory.co.uk/intermission/intermission.html
*ダブリンを舞台に“負け組”の若者たちが繰り広げる群像クライム・コメディー。
キリアン・マーフィーは、恋人の愛を確かめようとして別れを切り出して、本当に別れることになってしまうジョン役。レイフ(コリン・ファレル)に誘われて銀行強盗すると、別れた恋人デイドラ(ケリー・マクドナルド)を人質にすることになってしまう。
ニール・ジョーダン プロデュース作品。
・真珠の耳飾りの少女 Girl with a Pearl Earring(米・英・ルクセンブルグ/監督:ピーター・ウェーバー) DVD
米国版公式HP:http://www.girlwithapearlearringmovie.com/
日本版公式HP:http://www.gaga.ne.jp/pearl/
*キリアン・マーフィーは、フェルメール(コリン・ファース)の家に奉公に出ることになった17歳の娘グリート(スカーレット・ヨハンソン)、の恋人ピーター(肉屋の息子)役。
キリアン・マーフィーはベジタリアンですが、この役のために肉のさばき方の練習をしたとか。
・コールド・マウンテン Cold Mountain(米/監督:アンソニー・ミンゲラ) DVD
*北軍の兵士バードルフ役。インマン(ジュード・ロウ)が逃亡中に立ち寄る家に食料を強奪に来る3人の兵士のうちの1人で、赤ん坊と2人で暮らすその家の母親(ナタリー・ポートマン)に撃たれてしまう。
【2005年】
・バットマン・ビギンズ Batman Begins(米/監督:クリストファー・ノーラン) DVD
米国版公式HP:http://www2.warnerbros.com/batmanbegins/index.html
*キリアン・マーフィーは精神科医ジョナサン・クレイン(スケアクロウ)役。キリアン・マーフィーは最初バットマン役のオーディションにやってきたが落選し、バットマン役はクリスチャン・ベールに譲ることになった。しかし、監督のクリストファー・ノーランに気に入られて、ジョナサン・クレイン役を演じることになった。
MTVアワードでベストVillain(悪役)のノミネート。IFTA(アイルランド・アカデミー賞)で助演男優賞にノミネート。
・パニック・フライト Red Eye(米/監督:ウェス・クレイヴン) DVD
英国版公式HP:http://java.europe.yahoo.com/uk/uip/redeye/index.html
日本版DVD HP:http://www.kadokawa-ent.co.jp/ms/red_eye/
*ホテル・マネージャーのリサ(レイチェル・マクアダムス)は飛行機で勤務地マイアミに向かう途中でジャクソン・リッパー(キリナン・マーフィー)という男性と出会う。しかし、リッパーは国家要人暗殺チームの一員で、フライト中で逃げ場のないリサを脅して暗殺に協力させようとする……。
日本ではビデオ・スルーになってしまいましたが、全米では3079スクリーンで上映されて初登場2位でした(1位は『40歳の童貞男』)。ブログ等の映画評ではけっこう評判がよいようです。
IFTA(アイルランド・アカデミー賞)主演男優賞ノミネート。
・プルートで朝食を Breakfast on Pluto(アイルランド・英/監督:ニール・ジョーダン) DVD
日本版公式HP:http://www.elephant-picture.jp/pluto/
英国版公式HP:http://www.breakfastonpluto.co.uk/
*物語:パトリックは赤ん坊の時に教会の前に棄てられる。その後、普通の家庭で育てられるが、ある時から自分が女性の装いを身につけるのが好きだということに気づく。彼は、いつしかパトリック・“キトゥン”・ブレイデンと名乗るようになり、成人して母を捜す旅に出る。それはIRAのテロが激化する1970年代イギリスでのことであった……。
共演は、スティーヴン・レイ、リーアム・ニーソン、ブレンダン・グリーソン、ブランアン・フェリー、他。
英国版HPは、ちょっとわかりにくいですが、キトゥンのスーツケース(や部屋の中)をクリックすることで、キャストのプロフィールや予告編、映画の中のステージ・シーン、サントラ(6曲)等を楽しむことができます。
キリアン・マーフィーは本作でゴールデン・グローブ賞コメディー/ミュージカル部門主演男優賞にノミネート。
【2006年】
・麦の穂をゆらす風 The Wind That Shakes the Barley(独・伊・西・仏・アイルランド・英/監督:ケン・ローチ)
日本版公式HP:http://www.muginoho.jp/
*物語:1920年アイルランド。英国が送り込んでくる“Black and Tan”(Royal Irish Constabulary Reserve Force=王立アイルランド警察隊の予備軍)に対抗すべく、国中からゲリラ軍への志願者が集まってくる。自由を求めて、過激な戦いを繰り広げるテディ(ポードリック・ディレーニー)に、前途ある医者としての仕事を捨てて、弟デミアン(キリアン・マーフィー)も加わる。激しいテロ闘争の結果、和平が成立するが、勝利は束の間ですらなく、引き続き内戦が始まるのだった……。
物語の舞台となったコールは、キリアン・マーフィーの出身地。
キリアン・マーフィーは本作でブリティッシュ・インディペンデント・フィルム・アワード主演男優賞にノミネート。ヨーロッパ映画賞にも本作と『プルートで朝食を』でノミネート。
【2007年】
・Sunshine(英/監督:ダニー・ボイル 脚本:アレックス・ガーランド)
公式HP:http://www.sunshinedna.com/
*物語:50年後の未来。太陽のパワーが低下し始め、その影響は地球にも及ぶ。太陽を再生させるために宇宙飛行士たちのチームが編成されるが、ミッションは失敗し、イカロス号の乗組員の音信は途絶えてしまう。7年後、最後の希望を乗せて、新たなミッションがスタート。アメリカ人と中国人からなる8人の科学者を乗せたイカロス2号が送り出される……。
キリアン・マーフィーはイカロス2号の乗組員の1人キャパ。共演者は、クリス・エヴァンス、クルフ・カーティス、ミシェル・ヨー、真田広之。
ストーリー的に『アルマゲドン』や『ザ・コア』を連想させるプロットながら、ダニー・ボイル&アレックス・ガーランドなので期待してもいいのではないかという前評判です。
・Watching the Detectives(米/監督:Paul Soter)
*物語:フィルムノワール狂である主人公(キリアン・マーフィー)はある女性(ルーシー・リュー)との出会いによって、人生が大きく変わってしまう……。
ロマンチック・コメディーの作品らしく、キャッチ・コピーは“Sometimes love is stranger than fiction”。タイトルはエルビス・コステロのナンバーから?
*以上のほかに、出演した舞台が多々あります。
--------------------------------
・ルックス的にはやさしそうにも強い強迫観念に囚われているようにも見え、その目は哀しみをたたえているようにも狂気を孕んでいるようにも見えます。そうしたルックスがこれまで演じてきた役柄に反映されているようで、狂気の方が強調されれば悪役になり、哀しみが強調されれば、悲劇的な人物になる、という感じでしょうか。
キャラクター的にジュード・ロウに重なる部分もあって(ルックス的にはともに爬虫類系?)、これまで演じてきた役でもジュード・ロウのそれと重なる部分があります。2人が共演した『コールド・マウンテン』ではひょっとすると同じ役を争っていたのかもしれませんね。
最近では、キリアン・マーフィーのこうした両面性が反映されるような役も増え、そうした両面性を理解して、うまく作品に生かす監督に起用されて、役者としての評価も高まってきたのだと思われます。
・ルックスから感じられるアンビバレンツなキャラクターは、ひょっとするとともに教師であった両親から厳格に育てられた結果なのかもしれません。
・初期に短編への出演が多いのは、その期間に舞台活動が忙しかったためか、あるいは、短編製作支援プロジェクトに協力的だったため(?)、なのでしょうか。
・2004年のフィルモグラフィーだけぽっかり空白になっていますが、これは2005年公開作の撮影に取り掛かっていて、たまたま公開作がなかったということなのかもしれません。
・日本未公開作の“Disco Pigs”や“How Harry Became a Tree”も面白そうで、観てみたいという気にさせられますね。
・米国アカデミー賞はともかく、IFTA(アイルランド・アカデミー賞)は、これまで3回ノミネートされている(主演・助演でダブル・ノミネートされている年があるので実質は4回ノミネートされている)ので、そろそろ受賞させてあげたいようにも思います。
*知らないこともいろいろあったね~と思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓

ドン・チードルに関しては、以前に当ブログでもまとめたので、今回はキリアン・マーフィーについてまとめてみたいと思います。
◆プロフィール

フランク・ザッパの曲名である“Sons of Mr. Greengenes”という名のロックバンドを組んでいたことがある。
Presentation Brothers College Corkで法律を学ぶが、退屈しのぎに始めたCorcadorca Theaterの舞台“Disco Pigs”で演技に目覚め、その公演ツアーのために、大学を中退する。当初は法律の道に戻るつもりだったが、自分がもう法律に興味を失っていることを悟って俳優になることにする。
初期のころは短編への出演が多かった。
俳優として大きく注目を受けるようになったのは、ダニー・ボイルの『28日後…』以降。
現在はロンドンに住んでいるが、アイルランド映画に出演することが多い。
2004年にアーティストのイヴォンヌ・マッギネスと結婚し、一男をもうけた。
身長1m75cm。愛称はCilly。
尊敬する俳優はリーアム・ニーソン。
フランス語とアイルランド語を話す。
◆フィルモグラフィー
【1997年】
・Quando(アイルランド/監督:デクラン・レックス)[短編]
*ジャック、パット、ブライアンという3人組が主人公の物語で、メインとなるのは新しい美容師エイリーンとジャックの恋物語。
共演者はポール・ミード、ポール・ヒッキーら。
【1998年】
・The Tale of Sweety Barrett (アイルランド・アイスランド/監督:スティーヴン・ブラッドリー)
*物語:スウィーティ・バレット(ブレンダン・グリーソン)は、サーカスの団員であったが、職を失い、密造酒業者のフリック・ヘネシー(トニー・ローア)に雇われる。その街は警察署長のマニックス・ボーン(リーアム・カニンガム)が幅をきかせていた。スウィーティが知り合ったアン・キング(リンダ・ステッドマン)の夫レオ(アンディ・サーキス)も署長の犠牲になった1人で、今は獄中にいた。レオは出所したら署長に復讐してやると誓っていた……。
キリアン・マーフィーは、あまり大きくない役のはずで、役名はPat the Barman。
【1999年】
・Eviction(アイルランド/監督:トム・ウォラー)[短編]
*物語:19世紀のアイルランド。“モリー・マグワイア”は地主に告げ口をした老人に復讐を誓う。
キリアン・マーフィーの役はブレンダン・マクブライド。共演は、ルパート・ヴァニシタルトやダーモット・マーティン。
・At Death's Door(アイルランド/監督:コナー・モリッシー)[短編]
*物語:死神(Des Keogh)が家業を息子(キリアン・マーフィー)に教えている。ある日、息子が自分だけでこれから死ぬはずの人の元に行くと、その友人に助けてくれと頼まれてしまう。自分の姿が人間に見えるはずはないのに、その友人には見えるらしいことに訝りつつ、彼は頼まれるまま蘇生を手伝ってしまう。そのことが父に知れると、父は激怒し、24時間以内に蘇生を手伝わせた男トムの命を手に入れて来いと命令する。
“息子”は再び人間界に戻るが、なかなかトムの命を奪うことができない。
様子を見に来た父は、“息子”の姿が見えないことに気づくが、そんなことにはおかまいなく、さっとトムに手を触れてトムの命を奪ってしまう。その結果、トムは急に妻から姿が見えなくなってしまい、そうなってしまったことにトム自身も気づく。
翌日、何がどうなったかわからないトムは、“息子”をみつけて問いかける。“息子”の方もわけがわからず、トムに触れようとするが、トムは昨日のことを思い出してか、“息子”の手をはねのける。すると、トムの姿は妻たちに見えるようになり、トムも妻も大喜び。“息子”はまたも失敗してしまってことにショックを受けて、トボトボと帰っていくのだった。
・Sunburn(米/監督:ネルソン・ヒューム)
*物語:ダイヴィン・マクダービー(キリアン・マーフィー)はアイルランドの若者で、単調な生活を逃れて、ひと夏をロングアイランドのモントークで過ごすためにアメリカにやってくる。そこで、ロバート(バリー・ウォード)やアイディーン(パロマ・バエザ)とハメをはずして楽しむうち、互いをかけがえのない存在のように思い始めるのだった……。
この作品の写真がたくさんあるサイト:http://smg.photobucket.com/albums/v334/cillian-murphy/Sunburn/
・ザ・トレンチ 塹壕 The Trench(仏・英/監督:ウィリアム・ボイド) DVD
*第一次世界大戦で、2日間に6万人もの死者を出したというソンムの戦いを描く。
キリアン・マーフィーは、小さな役だったはずで、役名はラグ・ロックウッド。共演は、ポール・ニコルズ、ダニエル・クレイグ、ジュリアン・リンド=タット、ジェイムズ・ダーシー。
【2000年】
・A Man of Few Words(アイルランド/監督:テレンス・ホワイト)[短編]
詳細不詳。役名は“Best Man”。
・Filleann an Feall(アイルランド)[短編]
詳細不詳。
【2001年】
・オン・エッジ 19歳のカルテ On the Edge(アイルランド/監督:ジョン・カーニー)
米国版公式HP:http://ontheedgemovie.com/
*物語:19歳のジョナサン(キリアン・マーフィー)は、父を亡くして、激しい鬱状態に陥っていた。自殺願望が募っていたが、ギリギリのところで精神病院に入院し、グループ・セラピーを受けることになる。最初は担当医師(スティーヴン・レイ)とも衝突を繰り返していたが、セラピーの仲間トビー(ジョナサン・ジャクソン)とも親しくなり、レイチェル(トリシア・ヴェッセイ)に恋心を抱くようにもなる……。
ジム・シェリダン プロデュース作品。
ディナール・ブリティッシュ・フィルム・フェスティバルで観客賞受賞。
・How Harry Became a Tree(伊・仏・英・アイルランド/監督:ゴラン・パスカリェーヴィチ)
イタリア版公式HP:http://www.cattleya.it/movies/details.php?id=18
*物語:1924年のアイルランド。ハリー(コルム・ミニー)は最愛の息子を内戦で失ってしまう。その後まもなく妻も死に、もう1人の息子ガス(キリアン・マーフィー)と2人暮らしになる。ハリーの気持ちは閉ざしていき、世界がみな自分の敵のように思えてくる。彼の怒りはやがて村一番の有力者ジョージ(エイドリアン・ダンバー)に向けられることになる……。
ベネチア国際映画祭コンペ部門出品作品。IFTA(アイルランド・アカデミー賞)でコルム・ミニーが主演男優賞受賞。
・Disco Pigs (英/監督:カースティン・シェリダン)
英国版公式HP:http://www.discopigs.com/#
*物語:ピッグとラントは、同じ日、同じ病院で生まれた。血はつながっていないけれど、2人はまるで双子のようで、離れて暮らしても互いの考えを手を取るように知ることができた。気心が知れ合っている2人は組んで悪事を働いたが、つかまることはなかった。しかし、17歳を前にして、ピッグは性に目覚め、これまで通りラントと接することができなくなったのだった……。
キリアン・マーフィーが演技に目覚めることになった同名の舞台の映画化で、マーフィーは舞台と同じ役(ピッグ役)を演じている。共演はエレイン・キャシディ。
スペインのオレンセ・インディペンデント・フィルム・フェスティバルで主演男優賞受賞。IFTA(アイルランド・アカデミー賞)で主演男優賞にノミネート。
・"The Way We Live Now" (英/監督:デイヴィッド・イエーツ)[TVミニシリーズ]
米国版公式HP: http://www.pbs.org/wgbh/masterpiece/waywelive/index.html
*ロンドンにやってきたアンガスタス・メルモット(David Suchet)はヨーロッパ生まれの投資家で、ロンドンに着くやいなや新しい会社を設立し、自分と組めば儲かること間違いなしと約束。その結果、彼は多くの人々に取り巻かれることになる……。
アントニー・トロロープの同名小説のドラマ化作品。監督のデイヴィッド・イエーツは『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の監督を手がけることになった方。
キリアン・マーフィーは、大陸横断鉄道を手がけることが夢の鉄道会社のエンジニア、ポール・モンターニュ役。
【2002年】
・28日後… 28 Days Later...(英/監督:ダニー・ボイル) DVD
米国版公式HP:http://www.foxsearchlight.com/28dayslater/
日本版公式HP:http://www.foxjapan.com/movies/28dayslater/main.html
*物語:自転車メッセンジャーのジム(キリアン・マーフィー)は、交通事故に遭って、昏睡状態に陥っていた。彼が病院の中で目覚めた時、まわりには全く人の気配が感じられなかった……。
アレックス・ガーランドの初めてのオリジナル脚本作品で、キリアン・マーフィーがブレイクスルーすることになったきっかけの作品でもある。
共演は、ナオミ・ハリス、クリストファー・エクルストン、ブレンダン・グリーソン。
キリアン・マーフィーは、エンパイア・アワード新人賞ノミネート、MTVアワード新人賞ノミネート、IFTA(アイルランド・アカデミー賞)主演男優賞ノミネート。
【2003年】
・Zonad(アイルランド/監督:ジョン・カーニー、キーラン・カーニー、トム・ホール)
*詳細不詳 Guy Hendrickson役。共演は、サイモン・ディラーニー、アントニー・コナティ。You Tubeで動画の一部を観ることができます(http://www.youtube.com/watch?v=PqFHfeim-lI)。
・ダブリン上等! Intermission(アイルランド・英/監督:ジョン・クローリー) DVD
日本版公式HP:http://www.at-e.co.jp/dublin/
英国版公式HP:http://www.thefilmfactory.co.uk/intermission/intermission.html
*ダブリンを舞台に“負け組”の若者たちが繰り広げる群像クライム・コメディー。
キリアン・マーフィーは、恋人の愛を確かめようとして別れを切り出して、本当に別れることになってしまうジョン役。レイフ(コリン・ファレル)に誘われて銀行強盗すると、別れた恋人デイドラ(ケリー・マクドナルド)を人質にすることになってしまう。
ニール・ジョーダン プロデュース作品。
・真珠の耳飾りの少女 Girl with a Pearl Earring(米・英・ルクセンブルグ/監督:ピーター・ウェーバー) DVD
米国版公式HP:http://www.girlwithapearlearringmovie.com/
日本版公式HP:http://www.gaga.ne.jp/pearl/
*キリアン・マーフィーは、フェルメール(コリン・ファース)の家に奉公に出ることになった17歳の娘グリート(スカーレット・ヨハンソン)、の恋人ピーター(肉屋の息子)役。
キリアン・マーフィーはベジタリアンですが、この役のために肉のさばき方の練習をしたとか。
・コールド・マウンテン Cold Mountain(米/監督:アンソニー・ミンゲラ) DVD
*北軍の兵士バードルフ役。インマン(ジュード・ロウ)が逃亡中に立ち寄る家に食料を強奪に来る3人の兵士のうちの1人で、赤ん坊と2人で暮らすその家の母親(ナタリー・ポートマン)に撃たれてしまう。
【2005年】
・バットマン・ビギンズ Batman Begins(米/監督:クリストファー・ノーラン) DVD
米国版公式HP:http://www2.warnerbros.com/batmanbegins/index.html
*キリアン・マーフィーは精神科医ジョナサン・クレイン(スケアクロウ)役。キリアン・マーフィーは最初バットマン役のオーディションにやってきたが落選し、バットマン役はクリスチャン・ベールに譲ることになった。しかし、監督のクリストファー・ノーランに気に入られて、ジョナサン・クレイン役を演じることになった。
MTVアワードでベストVillain(悪役)のノミネート。IFTA(アイルランド・アカデミー賞)で助演男優賞にノミネート。
・パニック・フライト Red Eye(米/監督:ウェス・クレイヴン) DVD
英国版公式HP:http://java.europe.yahoo.com/uk/uip/redeye/index.html
日本版DVD HP:http://www.kadokawa-ent.co.jp/ms/red_eye/
*ホテル・マネージャーのリサ(レイチェル・マクアダムス)は飛行機で勤務地マイアミに向かう途中でジャクソン・リッパー(キリナン・マーフィー)という男性と出会う。しかし、リッパーは国家要人暗殺チームの一員で、フライト中で逃げ場のないリサを脅して暗殺に協力させようとする……。
日本ではビデオ・スルーになってしまいましたが、全米では3079スクリーンで上映されて初登場2位でした(1位は『40歳の童貞男』)。ブログ等の映画評ではけっこう評判がよいようです。
IFTA(アイルランド・アカデミー賞)主演男優賞ノミネート。
・プルートで朝食を Breakfast on Pluto(アイルランド・英/監督:ニール・ジョーダン) DVD
日本版公式HP:http://www.elephant-picture.jp/pluto/
英国版公式HP:http://www.breakfastonpluto.co.uk/
*物語:パトリックは赤ん坊の時に教会の前に棄てられる。その後、普通の家庭で育てられるが、ある時から自分が女性の装いを身につけるのが好きだということに気づく。彼は、いつしかパトリック・“キトゥン”・ブレイデンと名乗るようになり、成人して母を捜す旅に出る。それはIRAのテロが激化する1970年代イギリスでのことであった……。
共演は、スティーヴン・レイ、リーアム・ニーソン、ブレンダン・グリーソン、ブランアン・フェリー、他。
英国版HPは、ちょっとわかりにくいですが、キトゥンのスーツケース(や部屋の中)をクリックすることで、キャストのプロフィールや予告編、映画の中のステージ・シーン、サントラ(6曲)等を楽しむことができます。
キリアン・マーフィーは本作でゴールデン・グローブ賞コメディー/ミュージカル部門主演男優賞にノミネート。
【2006年】
・麦の穂をゆらす風 The Wind That Shakes the Barley(独・伊・西・仏・アイルランド・英/監督:ケン・ローチ)
日本版公式HP:http://www.muginoho.jp/
*物語:1920年アイルランド。英国が送り込んでくる“Black and Tan”(Royal Irish Constabulary Reserve Force=王立アイルランド警察隊の予備軍)に対抗すべく、国中からゲリラ軍への志願者が集まってくる。自由を求めて、過激な戦いを繰り広げるテディ(ポードリック・ディレーニー)に、前途ある医者としての仕事を捨てて、弟デミアン(キリアン・マーフィー)も加わる。激しいテロ闘争の結果、和平が成立するが、勝利は束の間ですらなく、引き続き内戦が始まるのだった……。
物語の舞台となったコールは、キリアン・マーフィーの出身地。
キリアン・マーフィーは本作でブリティッシュ・インディペンデント・フィルム・アワード主演男優賞にノミネート。ヨーロッパ映画賞にも本作と『プルートで朝食を』でノミネート。
【2007年】
・Sunshine(英/監督:ダニー・ボイル 脚本:アレックス・ガーランド)
公式HP:http://www.sunshinedna.com/
*物語:50年後の未来。太陽のパワーが低下し始め、その影響は地球にも及ぶ。太陽を再生させるために宇宙飛行士たちのチームが編成されるが、ミッションは失敗し、イカロス号の乗組員の音信は途絶えてしまう。7年後、最後の希望を乗せて、新たなミッションがスタート。アメリカ人と中国人からなる8人の科学者を乗せたイカロス2号が送り出される……。
キリアン・マーフィーはイカロス2号の乗組員の1人キャパ。共演者は、クリス・エヴァンス、クルフ・カーティス、ミシェル・ヨー、真田広之。
ストーリー的に『アルマゲドン』や『ザ・コア』を連想させるプロットながら、ダニー・ボイル&アレックス・ガーランドなので期待してもいいのではないかという前評判です。
・Watching the Detectives(米/監督:Paul Soter)
*物語:フィルムノワール狂である主人公(キリアン・マーフィー)はある女性(ルーシー・リュー)との出会いによって、人生が大きく変わってしまう……。
ロマンチック・コメディーの作品らしく、キャッチ・コピーは“Sometimes love is stranger than fiction”。タイトルはエルビス・コステロのナンバーから?
*以上のほかに、出演した舞台が多々あります。
--------------------------------
・ルックス的にはやさしそうにも強い強迫観念に囚われているようにも見え、その目は哀しみをたたえているようにも狂気を孕んでいるようにも見えます。そうしたルックスがこれまで演じてきた役柄に反映されているようで、狂気の方が強調されれば悪役になり、哀しみが強調されれば、悲劇的な人物になる、という感じでしょうか。
キャラクター的にジュード・ロウに重なる部分もあって(ルックス的にはともに爬虫類系?)、これまで演じてきた役でもジュード・ロウのそれと重なる部分があります。2人が共演した『コールド・マウンテン』ではひょっとすると同じ役を争っていたのかもしれませんね。
最近では、キリアン・マーフィーのこうした両面性が反映されるような役も増え、そうした両面性を理解して、うまく作品に生かす監督に起用されて、役者としての評価も高まってきたのだと思われます。
・ルックスから感じられるアンビバレンツなキャラクターは、ひょっとするとともに教師であった両親から厳格に育てられた結果なのかもしれません。
・初期に短編への出演が多いのは、その期間に舞台活動が忙しかったためか、あるいは、短編製作支援プロジェクトに協力的だったため(?)、なのでしょうか。
・2004年のフィルモグラフィーだけぽっかり空白になっていますが、これは2005年公開作の撮影に取り掛かっていて、たまたま公開作がなかったということなのかもしれません。
・日本未公開作の“Disco Pigs”や“How Harry Became a Tree”も面白そうで、観てみたいという気にさせられますね。
・米国アカデミー賞はともかく、IFTA(アイルランド・アカデミー賞)は、これまで3回ノミネートされている(主演・助演でダブル・ノミネートされている年があるので実質は4回ノミネートされている)ので、そろそろ受賞させてあげたいようにも思います。
*知らないこともいろいろあったね~と思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓

この記事へのコメント