太陽のように輝く笑顔 『歓びを歌にのせて』

画像 銀座のプレイガイドで、この映画の前売り券を買おうとしたら、「売り切れです」と言われてしまいました。前評判がいい作品であるという認識が全くなかったので、ちょっと驚きました。少々大げさな邦題でもあるし、公開劇場は銀座ではなく、渋谷だったからなのですが。

 で、たまたま時間が空いたので今日観て来たのですが、平日の昼であるのにも拘らず、8割くらいの入り。大盛況じゃないですか!

 ストーリーは、国際的な活躍をしていた指揮者が、心臓病を患い、そのために若くして故郷に戻り、聖歌隊の指導をすることになる、というもので、ちょっと『コーラス』を思わせるものでした(だからヒットしているのかな?)
 実際にも『コーラス』を思わせるところはあるんですが、もう1つ、故郷に舞い戻ってきた彼――幼い頃に村を離れていたし、途中で名前も変えていたので、彼が同郷人であることは誰も気づかなかった――が、その村のいくつかの家庭や人物に変化をもたらすというサブ・プロットもあって、それは、例えば『ショコラ』あたりを連想させるものでした(彼の存在は人々に幸せをもたらす「天使」のようなものだと私は考えたのですが、本作の英語題はむしろ彼の側から見てこの村を天国のようなところと解釈した“As in Heaven”もしくは“As It Is in Heaven”となっています。ステージで主人公が倒れて以降の物語を、いまわの瞬間に主人公が夢見た、本当はこうだったらよかったのに、こういうこともしてみたかったという理想の人生、と見なすこともできそうです)。

 視点を変えて、映画のオープニングとエンディングから考えると、本作は、主人公が自分の少年時代を取り戻す、あるいは自分の帰るべきところを見つけるという物語でもあるようです。

 結局、彼にとっても、聖歌隊の彼らにとっても、彼がここにやってきたことはいい結果をもたらすということなのですが、「変化」というものは、ある人にとってはいいものであっても、別の人にとってはそうでない場合もあるわけで、映画の後半は、自分らしさを発見し、歌うことに歓びを見出す人々と、村人や家族を自分の手の届くところに置いておきたいという人々との摩擦の物語(つまり不寛容さについての物語)に変わっていきます。

 映画の全般を通してみると、忙しい日常の中で忘れかけている自分を取り戻すこと、近しく人とのふれ合うこと、そういうことの大切さを描いた映画ということになりますが、今、こういうものを求めているのは、日本だけじゃなかったんですね。

 まあ、あまり物語を説明しても仕方ないので、このくらいにしておきますが、もう1つだけつけ加えておくなら、この映画には、歌のシーンを中心に感動的なシーンがいくつもある(少なくとも2つ以上)、ということでしょうか。

画像 ところで、主人公は独身という設定になっていて、彼に絡んでくる女性が何人かいるのですが(それもトラブルの種になります)、その中では雑貨店で働いている娘レナが特に魅力的に感じられます(そういう描かれ方もしています)。レナは、最初、男性の出入りが激しい娘として登場いながら、その後、知恵遅れ(?)の青年に見せる気づかいなどから、次第に彼女が感情豊かで、人の心の痛みがわかる優しい心を持った女性であることがわかってきます。
 レナを演じるのが、フリーダ・ハルグソンという女優(写真・右)で、ちょっとぽっちゃりしているし、とりたてて美人という感じでもないのですが、大きな口が特徴的で、彼女が笑うとぱあっとその場が明るくなります。まさに“太陽のように輝く笑顔”を持った女性。他の映画で、どういう表情を見せているのかはわかりませんが、彼女の笑顔には大いに心惹かれました。

 日本ではノベライズも出ていますが、歌のシーンといい、フリーダ・ハルグソンの笑顔といい、さすがにノベライズでは味わえないところ(魅力)が多い映画になっています。

 ところで、この映画を観ていて思い出した映画がもう1本あって、それはノルウェー映画『歌え!フィッシャーマン』(01)です。ノルウェーのある漁村の男性合唱団に関するドキュメンタリーで、この合唱団も素人合唱団ながら評判がよくて、外国にツアーに出るというシーンがありました。本作に出てくる聖歌隊もオーストリアにコンクールに出かけていましたが、北欧(またはヨーロッパ)では、合唱団の活動が活発、ということなのでしょうか。もしそうだとすると、その起源には、やはり聖歌隊の伝統があるのかもしれません。
 ちなみに、『歌え!フィッシャーマン』はノルウェーで1年以上のロングランを記録してノルウェー国民の7人に1人が観たと言われ、『歓びを歌にのせて』はスウェーデン映画史上第3位の興行成績を記録して、スウェーデン国民の5人に1人が観たと言われています。
 あ、そうそう、『コーラス』のキャッチ・コピーの1つは「フランスで8人に1人が観た!」でした。こういうタイプの映画にこういう言い方って……偶然なんでしょうか?

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 実は、今日は最終回にもう1本別の映画を観たのですが、同じくまだ公開1週目のその作品はお客さんが10数人という泣きたいくらいの客入りでした(にも拘らず座席指定でしたが)。もうお正月映画の勝ち負けがはっきりと分かれてきているようで、その結果としてお正月を迎えずして打ち切りになる作品もあったり、公開規模が縮小されている作品もあったりして、ちょっと切ないですね。

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この記事へのコメント

あん
2005年12月23日 20:30
コーラスの大人版みたいでしたね。ガブリエラの歌声がまだ耳に残っています。素敵でした!
2005年12月24日 01:46
はじめまして。コメント&TB失礼します。僕も先日、平日に鑑賞したのですが、その混みように驚きました。既に勝ち組でしょうか。レナは艶やかでしたね。ぱっと見以上の魅力を感じました。
2005年12月24日 17:07
こんにちは!TBありがとうございました。
こちらからはどうも出来ないようです。コメントだけで失礼しますね。
北欧を始めヨーロッパの国々は教会との結びつきが強く、コーラス隊は人々の生活にかなり密着しています。音楽に対しても凄く身近なもので、それが題材になればほとんどの方が聞いたり見たりするのでしょうね。
キャストたちの素敵な笑顔と心温まる歌声に私もたくさんの癒しをいただきました。泣きましたわ~

fr
2006年01月12日 16:55
はじめまして!トラックバックしました。
よろしくお願いします。

記事に英題のことが出てましたが、英題はスウェーデン語タイトルの直訳だと思いますよ。

来週、見に行こうと思ってます。チケット買えるといいなぁ…。
KB
2006年01月12日 20:11
Frさま
コメントありがとうございます。
スウェーデン民謡である「天の星のように」の原題が“Som stjärnan uppa himmelen så klar”ですから、たぶん‘himmelen’の意味は「天」または「空」で、したがって本作の英題(“As in Heaven”もしくは“As It Is in Heaven”)が原題(“Så som i himmelen”)の翻訳ではないか、というご指摘は正しいと思います。といっても、上の私の解釈が変わってきたりはしないのですが……。
これからも何か気づいた点がありましたら遠慮なく書き込んでください。よろしくお願いします。
あ、それから本作は、土日での鑑賞は早い時間に全日分全席埋まってしまうそうなので、ご注意ください。
2006年01月18日 14:26
こんにちは、TBさせて下さい。
アメイジング・グレース、涙がでそうになりました。
昨日のレイトショーでは観客6人だけなんて勿体無い~
2006年02月07日 23:35
ようやく見てきました…。

KBさまのご指摘の通り、早い時間に全席埋まってしまったようで、映画館までは行ったものの、見れずじまいでした…。

TBがうまくできなかったみたいなので、こちらでもういちど…。

som stjärnan uppa himmelen så klarは、直訳だと、「天国の星がこんなにキレイなように」みたいな感じだと思います(多分)。himmelenは天国ですよん♪

だからこそ、スウェーデン語にしろ、英題にしろ、こういうタイトルをつけたんだと思います。KBさんの解釈を見るまで、私は恥ずかしながら、タイトルの意味が分からなかったです…。

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