『妬みの報い』 ハンガリアン・フォークテイルズ

 <ハンガリアン・フォークテイル>から『妬みの報い』。
 邦題は『妬みの報い』ですが、ハンガリー語(マジャール語)の原題は『丸い石』です。



 【物語】
 貧しい漁師がいました。
 漁をするための網は綻びだらけですが、家は子だくさんなので、新しい網を買うこともできません。
 ある日、漁師が漁をしていると、網に大きな丸い石がかかります。
 漁師は、子どもたちが遊ぶのにいいだろうと思って、それを家に持ち帰ります。ところが、子どもたちがそれで遊んでいるうちに、その石は輝き出します。奥さんはそれを見て、何か特別な石に違いないと思い、お城に持っていくことにしました。
 王様は、それがダイヤモンドであることがわかったので、彼女にそれを譲ってくれと頼みます。
 彼女は、軽く咳をしてどう答えればいいのか考え込んでいたのですが、王様は、それを条件が悪いのだと勘違いし、どんどん取引額を上げていきます。彼女がようやくうなづいた時には、すでに大金になっていました。
 奥さんはそのお金を家に持ち帰ります。しかし、あまりにも大金なのでいくらあるのかもわかりません。そこで子どもに頼んで、おじさんに秤を借りに行かせました。
 おじさんは、秤を何に使うのかと尋ねますが、子どもがお金を量るのに使うと言っても、そんなことはないだろうと、信用しません。そこで、彼は子どもと一緒に猟師の家まで訪ねていくことにしました。
 子どもの言ったことが本当だと知ったおじさんは、どうしてこんな大金が手に入ったのかと漁師に聞きます。
 漁師は、ちょっと思案して、こんな話をすることにしました。
 「お城にネズミが大発生したので、ネコをつかまえて持っていたら褒美をくださったんだよ」
 その話を聞いたおじさんは、自分も分け前に与ろうと、お金を出して、町中からネコを買い集め、お城に持っていくことにしました。
 しかし、お城ではもちろんネコなど必要としていないわけで、男が持っていたネコでお城は大騒ぎになってしまいます。
 おじさんは騒ぎを起こした罪で牢屋に入れられてしまいました。
 彼が生きていれば、今でも牢屋の中にいるでしょう。
 おしまい。

画像

 【コメント】
 『妬みの報い』は、正直者が得をし、欲張り者が損をする話で、日本で言うと『こぶとりじいさん』によく似たタイプの話ということになります。
 漁師にウソを教えられたおじさんは、最初の方で漁師が訪ねていって門前払いを食らわせるというシーンがありますが、ひょっとすると高利貸しか何かだったかもしれません。漁師が痩せているのに対して、おじさんが丸々と太っていることから、少なくとも裕福であることは間違いなさそうです。

 <ハンガリアン・フォークテイルズ>には、教訓話めいたものは少ないようですが、この『妬みの報い』には、欲をかいてはいけない、困った人は助けなければならない、情けは人のためならず、といった教訓が含まれているようです。

 ラストの「今でも……でしょう」という終わり方は、この<ハンガリアン・フォークテイルズ>の決め台詞の1つとなっているようです。

 ◆作品データ
 2002年/ハンガリー/7分22秒
 ハンガリー台詞あり/日本語字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、2007年12月に<ハンガリアン・フォークテイルズ>と題した特集でユーロスペースにて上映されました(Aプログラム)。

 
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 ◆監督について
 マリア・ホルヴァット(マリア・ホルヴァシュ) Horváth Maria
 アニメーション作家、イラストレーター。
 1952年西部のペーチェ生まれ。ペーチェの美術高校で彫金を学んだ後、1971年のカチカメート・アニメーション・スタジオの創立に参加する。「詩とアニメーションの融合」を目指した短編アート・アニメーション作品を発表。平行して民話をモチーフとした<ハンガリアン・フォークテイルズ>のシリーズの監督も務めている。
 <ハンガリアン・フォークテイルズ>は、カチカメート・アニメーション・スタジオが手がけるアニメーションの人気シリーズで、1977年から現在まで続いている。監督には、マリア・ホルバットのほか、Jankovics MarcellやNagy Lajosがいる。
 マリア・ホルバットには、2人の娘と1人の孫がいる。

 2003年に彼女が一連の<ハンガリアン・フォークテイルズ>を出品した飛騨国際メルヘンアニメ映像祭(http://www.hida-anime.jp/top.html)における、審査員・片渕須直(アニメーション監督)の講評は以下の通り。
 「マリア・ホロバット氏は今回一連の作品群を連ねて応募してきたが、その中の代表的な一作を取り上げて審査委員団から特別賞を進呈することとなった。
 アニメーションに「メルヘン」を冠しての作品募集は実は難しい。定義に幅があること以上に、アニメーションの若いつくり手たちはそこに多くの自負心を見つけることに熱中し、結果として例えばメルヘンの意味を逆手に取った「怪談」として仕上げるとか、民話的な題材に仮託して卑近な人生の機微を物語ろうなどとしがちになってしまう。
 ホロバット氏の今回の応募作は、すべて民話的なモチーフによって構成されたものだったが、それらはすべて屈託のない素朴な喜びを表現するためのものだった。必ず最後には王子さまとお姫さまが、男の子と女の子が、生き別れになっていた双子の兄弟が抱きいだきあい、「めでたし、めでたし」となる筋立てこそ、実は『メルヘンアニメ映像祭』と名打ったコンテストが、内心もっとも望んでいたものだったのではなかったか、という気にすらさせられてしまう。  この受賞作はひとつのレファランスとして今後のこのコンテストへの応募者たちに示されるだけの価値がある。」

 ◆フィルモグラフィー
 ・1982年 『夜の奇跡』“Az éjszaka csodál(Miracles of the Night)”
 オタワ国際アニメーションフェスティバル 第1回監督部門2位
 ・1983年 『ドアNo.8』“Atjó 8”
 1984年カンヌ国際映画祭短編部門コンペティション出品、クラクフ映画祭スペシャルメンション
 ・1983年 『ドアNo.9』“Atjó 9”
 ・1985年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ1)
 ・1987年 『ドアNo.2』“Atjó 2”
 ・1987年 『ドアNo.3』“Atjó 3”
 ・1988年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ2)
 ・1992年 『グリーンツリーストリート66番地』“Zõldfa u 66”
 1992年 Espinhoフェスティバル カテゴリー第1位、1993年カチカメート映画祭審査員特別賞受賞
 ・1993年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ3)
 ・1996年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ4)
 ・1997年 “Kis emberek dalai(Small Folks’ Songs)”
 1998年 ハンガリー レティナ国際映画祭(RETINA98’) 最優秀アニメーション賞受賞
 ・1997年 “Széles ember meséi”
 ・1998年 “Kecskemét Katona József Theater is 100 years old”
 ・1999年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ5)
 ・2000年 『静寂(ある日の風景画)』“Allokepek “Rajzok egy élet tájairól”(Stills(Drawing about a Landscape of a life))”
 2000年(ハンガリー)国際フィルム&ビデオフェスティバル Sellye市賞受賞
 ・2004年 “Mesél a kõ(The Telling Stone)”
 2004年 CICDAF 審査員特別賞受賞

 <ハンガリアン・フォークテイルズ>“Magyar Népmesék Ⅳ sorozat”
 ・1980年“Egyszemű, kétszemű, háromszemű”(1つ目、2つ目、3つ目)(Jankovics Marcellと共同監督)
 ・2002年『魔法の南京錠』“A bűbájos lakat”
 ・2002年『妬みの報い』“A kerek kő”(丸い石)
 ・2002年『少年の見た夢』“A kékfestő inas”
 ・2002年『天使の羊』“Angyalbárányok”
 ・2002年『貧者と利口な馬』“A szegény ember meg a lova”
 ・2002年『金の毛の子羊』“Az aranyszőrű bárány”(Nagy Lajosと共同監督)
 ・2002年『ツェルセルーシュカ』“Cerceruska”
 ・2002年『貧乏な男と悪魔たち』“Hetet egy csapásra”(1打で7倒)
 ・2004年? 『双子の王子の冒険』“A kővé vált királyfi ( The Prince Who Turned into Stone)”
 2004年 飛騨国際メルヘンアニメ映像祭 第2回メルヘンアニメ・コンテスト審査員特別賞受賞
 ・2005年“Gyöngyvirág Palkó”(真珠の花 Palkó)

 *参考サイト
 ・アニドウのHP:http://www.anido.com/html-j/yurospace.html
 ・カチカメート・フィルム Kecskemétfilm:http://www.kecskemetfilm.hu/kfilm.html
 ・Pannonia film studio  History 50 Years in the Forefront of Animation:http://www.mediaguide.hu/pannoniafilm/story.html
 ・ハンガリアン・フォークテイルズに関するWikipedia(ハンガリー語):http://hu.wikipedia.org/wiki/Magyar_n%C3%A9pmes%C3%A9k_(sorozat)
 ・Directory of Hungarian Links:http://www.wideweb.hu/hungary/business-investments/entertainment-film-industry
 ・ハンガリー語翻訳サイト InterTran:http://www.tranexp.com:2000/Translate/result.shtml

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