『少年の見た夢』 ハンガリアン・フォークテイルズ

 引き続き<ハンガリアン・フォークテイルズ>から『少年の見た夢』をご紹介します。

 この動画は、台詞がハンガリー語(マジャール語)で、日本語字幕はついていないので、観てみるのにちょっと抵抗があるかもしれませんが、たった7分の作品ですし、下記に書き出した物語を参考にすれば、けっこう作品を楽しむことはできるのではないかと思います。とにかく色使いが鮮やかで、美しい作品です。



 【物語】
 昔々あるところに、母親と2人で暮らしている少年がいました。家は貧しく、少年は家計を助けるために町に働きに出ることになります。彼は、一所懸命働いて、毎月母親にお給金を手渡します。
 そんなある日、少年は不思議な夢を見ました。彼は、そのことを母に話しますが、しかし、母親がどんな夢を見たのかと聞いても、彼は「今は話すことはできないんだ」と言います。
 職場の親方も彼にどんな夢を見たのかと聞きますが、「今は話すことはできないんだ」と彼。親方は怒って、ムチを持って、彼を追いかけまわします。
 そこを王様の馬車が通り、事情を聞いた王様は、少年の話に興味を持ち、彼を助けて、お城に連れて帰ります。
 王様は、少年をもてなした後、「それで、どんな夢を見たのか?」と聞きますが、王様が聞いても少年の答えは同じ。「今は話すことはできません」。
 そんなやりとりが何年も続き、少年は成長して、立派な青年になりますが、答えは変わりません。王様はとうとう我慢できなくなり、彼を牢屋に閉じ込めてしまいます。
 一方、王様の娘、つまりお姫様は、彼のことが気になって、王様に黙って、彼に面会に行くようになり、彼と恋に落ちます。
 ある日、王様のもとに、トルコのスルタンから使いがやってきて、王様に難題をふきかけます。しかも、「これができなければ、姫はもらう」とスルタン。
 問題:1年目、2年目、3年目のロバがいるが、姿かたちは全く同じ。さて、これを見分けるのにはどうすればいいか。
 王様は、国の賢人たちに相談しますが、満足な答えは得られません。
 お姫様は、この話を牢屋の青年にします。
 「1年目の麦、2年目の麦、3年目の麦を用意して、ロバに与えればいい」
 お姫様は彼から聞いたアイデアを王様に伝えます。これを実行に移すと、ロバは1年目のロバは1年目の麦、2年目のロバは2年目の麦、3年目のロバは3年目の麦を食べ始め、見事に正解を出すことができました。
 悔しがるスルタンは王様に次の問題を出します。
 問題:1本の茎がある。左右どちらの端が厚いか見分けるにはどうすればいいか。
 お姫さまは、青年に相談します。
 「茎の真ん中を紐でしばってつるし、下に下がった方が厚い」
 お姫様は、これも王様に伝え、正解を出すことができました。
 スルタンの次の問題はこうです。
 問題:ナイフが3本ある。1つは農民のもの、1つは兵士のもの、もう1つは料理人のもの。これを見分けるのにはそうしたらいいか。
 少年は少し考えて答えました。
 「3本を暖炉の暖かい灰の中に差せばいい。すると料理人のナイフからはおいしそうないい匂いがし、農民のナイフからは作物が焼ける匂いがする。残りの1本が兵士のナイフだ」
 スルタンは、自分が出した難題が次々と解かれてしまい、とうとうお姫様をもらうことを断念してしまいました。
 王様はお姫様に改めてどうして問題を解くことができたのかと聞きます。
 お姫様が事情を話すと、王様は、彼を許し、牢屋から出すことにしました。
 やがてお姫さまと青年は結婚。王様は引退して、彼に国を譲ることにします。
 「ところで、お前が見た夢というのはどんな夢だったんだ?」と王様。
 すると、青年はにっこりと微笑むとこう答えます。
 「それはこうなるということを予言した夢だったのですよ」

画像

 【コメント】
 貧しくても、賢い者が、知恵を使って、難題を解き、幸せになるというのは、おとぎ話や民話によくあるパターンですが、ハンガリーの場合、王様は基本的には「善」で、「お金はあるが、庶民を苦しめることはなく、正しく国を統治する人である」、と認知されているらしいことが、この物語からも見て取れます。そういうお国柄(伝統)なんですね。

 この作品は、作家主義的な作品ではないので、この作品を通して監督の個性や作家性を読み取ることは難しいのですが、マリア・ホルヴァットが、この物語を語り、見せるのに特に工夫したと思われるところは――
 ・少年がお城で何年も暮らしたということを瞬時に示すところ
 ・少年が牢に入れられたことを示すシーン
 ・お姫さまと青年の壁ごしの逢瀬、そしてそこで愛を育んだことを示すシーン
 ・3本のナイフから立ち上る香り
 などでしょうか。

 ◆作品データ
 2002年/ハンガリー/7分7秒
 ハンガリー台詞あり/日本語字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、2007年12月に<ハンガリアン・フォークテイルズ>と題した特集でユーロスペースにて上映されました(Aプログラム)。

 
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 ◆監督について
 マリア・ホルヴァット(マリア・ホルヴァシュ) Horváth Maria
 アニメーション作家、イラストレーター。
 1952年西部のペーチェ生まれ。ペーチェの美術高校で彫金を学んだ後、1971年のカチカメート・アニメーション・スタジオの創立に参加する。「詩とアニメーションの融合」を目指した短編アート・アニメーション作品を発表。平行して民話をモチーフとした<ハンガリアン・フォークテイルズ>のシリーズの監督も務めている。
 <ハンガリアン・フォークテイルズ>は、カチカメート・アニメーション・スタジオが手がけるアニメーションの人気シリーズで、1977年から現在まで続いている。監督には、マリア・ホルバットのほか、Jankovics MarcellやNagy Lajosがいる。
 マリア・ホルバットには、2人の娘と1人の孫がいる。

 2003年に彼女が一連の<ハンガリアン・フォークテイルズ>を出品した飛騨国際メルヘンアニメ映像祭(http://www.hida-anime.jp/top.html)における、審査員・片渕須直(アニメーション監督)の講評は以下の通り。
 「マリア・ホロバット氏は今回一連の作品群を連ねて応募してきたが、その中の代表的な一作を取り上げて審査委員団から特別賞を進呈することとなった。
 アニメーションに「メルヘン」を冠しての作品募集は実は難しい。定義に幅があること以上に、アニメーションの若いつくり手たちはそこに多くの自負心を見つけることに熱中し、結果として例えばメルヘンの意味を逆手に取った「怪談」として仕上げるとか、民話的な題材に仮託して卑近な人生の機微を物語ろうなどとしがちになってしまう。
 ホロバット氏の今回の応募作は、すべて民話的なモチーフによって構成されたものだったが、それらはすべて屈託のない素朴な喜びを表現するためのものだった。必ず最後には王子さまとお姫さまが、男の子と女の子が、生き別れになっていた双子の兄弟が抱きいだきあい、「めでたし、めでたし」となる筋立てこそ、実は『メルヘンアニメ映像祭』と名打ったコンテストが、内心もっとも望んでいたものだったのではなかったか、という気にすらさせられてしまう。  この受賞作はひとつのレファランスとして今後のこのコンテストへの応募者たちに示されるだけの価値がある。」

 ◆フィルモグラフィー
 ・1982年 『夜の奇跡』“Az éjszaka csodál(Miracles of the Night)”
 オタワ国際アニメーションフェスティバル 第1回監督部門2位
 ・1983年 『ドアNo.8』“Atjó 8”
 1984年カンヌ国際映画祭短編部門コンペティション出品、クラクフ映画祭スペシャルメンション
 ・1983年 『ドアNo.9』“Atjó 9”
 ・1985年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ1)
 ・1987年 『ドアNo.2』“Atjó 2”
 ・1987年 『ドアNo.3』“Atjó 3”
 ・1988年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ2)
 ・1992年 『グリーンツリーストリート66番地』“Zõldfa u 66”
 1992年 Espinhoフェスティバル カテゴリー第1位、1993年カチカメート映画祭審査員特別賞受賞
 ・1993年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ3)
 ・1996年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ4)
 ・1997年 “Kis emberek dalai(Small Folks’ Songs)”
 1998年 ハンガリー レティナ国際映画祭(RETINA98’) 最優秀アニメーション賞受賞
 ・1997年 “Széles ember meséi”
 ・1998年 “Kecskemét Katona József Theater is 100 years old”
 ・1999年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ5)
 ・2000年 『静寂(ある日の風景画)』“Allokepek “Rajzok egy élet tájairól”(Stills(Drawing about a Landscape of a life))”
 2000年(ハンガリー)国際フィルム&ビデオフェスティバル Sellye市賞受賞
 ・2004年 “Mesél a kõ(The Telling Stone)”
 2004年 CICDAF 審査員特別賞受賞

 <ハンガリアン・フォークテイルズ>“Magyar Népmesék Ⅳ sorozat”
 ・1980年“Egyszemű, kétszemű, háromszemű”(1つ目、2つ目、3つ目)(Jankovics Marcellと共同監督)
 ・2002年『魔法の南京錠』“A bűbájos lakat”
 ・2002年『妬みの報い』“A kerek kő”(丸い石)
 ・2002年『少年の見た夢』“A kékfestő inas”
 ・2002年『天使の羊』“Angyalbárányok”
 ・2002年『貧者と利口な馬』“A szegény ember meg a lova”
 ・2002年『金の毛の子羊』“Az aranyszőrű bárány”(Nagy Lajosと共同監督)
 ・2002年『ツェルセルーシュカ』“Cerceruska”
 ・2002年『貧乏な男と悪魔たち』“Hetet egy csapásra”(1打で7倒)
 ・2004年? 『双子の王子の冒険』“A kővé vált királyfi ( The Prince Who Turned into Stone)”
 2004年 飛騨国際メルヘンアニメ映像祭 第2回メルヘンアニメ・コンテスト審査員特別賞受賞
 ・2005年“Gyöngyvirág Palkó”(真珠の花 Palkó)

 *参考サイト
 ・アニドウのHP:http://www.anido.com/html-j/yurospace.html
 ・カチカメート・フィルム Kecskemétfilm:http://www.kecskemetfilm.hu/kfilm.html
 ・Pannonia film studio  History 50 Years in the Forefront of Animation:http://www.mediaguide.hu/pannoniafilm/story.html
 ・ハンガリアン・フォークテイルズに関するWikipedia(ハンガリー語):http://hu.wikipedia.org/wiki/Magyar_n%C3%A9pmes%C3%A9k_(sorozat)
 ・Directory of Hungarian Links:http://www.wideweb.hu/hungary/business-investments/entertainment-film-industry
 ・ハンガリー語翻訳サイト InterTran:http://www.tranexp.com:2000/Translate/result.shtml

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