その扉の向こうに…… 『ドア No.8』 マリア・ホルヴァット

 これも<ハンガリアン・フォークテイルズ> Aプログラムの中で上映された作品で、前回当ブログでご紹介した『貧者と利口な馬』と同じ監督マリア・ホルヴァット監督による『ドアNo.8』です。



 【物語】
 自分の部屋でロッキングチェアに座ってくつろいでいる老人。
 何かに驚いたのか、黒猫がギャッと叫んで、飛び出していき、それと同時に部屋に衝撃も走る。
 何事かと思った老人は、ドアを開けて、部屋の外を覗く。
 すると、そこには……宇宙空間が広がっていたのだった。
 宇宙のカオスは、まとまって、やがてボトルの形に。
 そのボトルには、“Liquid Televison”というラベルが貼られているのだった……。

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 【解説】
 “Liquid Televison”というのは、MTVが製作した、インディペンデント系のアニメーション作家のためのショーケースで、1991~1994年まで3シーズン作られています。
 簡単に言うと、雑誌形式(あるいはバラエティー番組形式)のアニメーションのプログラムで、日本の「Grasshoppa!」がこれに似た(というかマネした?)企画だったと言えるかもしれません。
 ここからはアニメ版『イーオン・フラックス』など有名な作品がいくつか誕生しているほか、当ブログでもご紹介したポール・ドリエセンの『卵殺人』が発表されたりもしています。

 マリア・ホルヴァットの作品は、ドアを開くとそこには異世界が広がっているかもしれないというわりとよくある発想の短編ですが(例えば、ドラえもんの“どこでもドア”はもちろん、『ザスーラ』、『ハウルの動く城』、『ブレイブ ストーリー』、寺山修司『迷宮譚』、『24時間40万回の奇跡』、『キシュ島の物語』の中のモフセン・マフマルバフ編『ドア』、三池崇史『46億年の恋』、ポール・ドリエセン『卵殺人』、厳密にはドアではありませんが『ナルニア国物語』などなど)、制作年から考えると、これは、最初から“Liquid Televison”のオープニング・タイトルとして制作されたものではなく、新しいアニメーションの扉を開くのにこの短編がふさわしいと判断されて、のちに“Liquid Televison”のオープニング・タイトルとして採用されたということのようです。

 監督のマリア・ホルヴァット自身、「ドア」と「ドアの向こう側にある世界」にとてもイマジネーションがそそられるらしく、「ドア」と題した短編を連作として発表しています。
 今回の特集上映(<ハンガリアン・フォークテイルズ>)では、この『ドアNo.8』以外に、『ドアNo.9』も上映されました。

 *参考
 “Liquid Televison”に関するWikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Liquid_Television

 ◆作品データ
 1983年/ハンガリー/1分2秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、1984年カンヌ国際映画祭短編部門コンペティションに出品され、クラクフ映画祭ではスペシャルメンションを受けています。

 *この作品は、2007年12月に<ハンガリアン・フォークテイルズ>と題した特集でユーロスペースにて上映されました(Aプログラム)。

 
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 ◆監督について
 マリア・ホルヴァット(マリア・ホルヴァシュ) Horváth Maria
 アニメーション作家、イラストレーター。
 1952年西部のペーチェ生まれ。ペーチェの美術高校で彫金を学んだ後、1971年のカチカメート・アニメーション・スタジオの創立に参加する。「詩とアニメーションの融合」を目指した短編アート・アニメーション作品を発表。平行して民話をモチーフとした<ハンガリアン・フォークテイルズ>のシリーズの監督も務めている。
 <ハンガリアン・フォークテイルズ>は、カチカメート・アニメーション・スタジオが手がけるアニメーションの人気シリーズで、1977年から現在まで続いている。監督には、マリア・ホルバットのほか、Jankovics MarcellやNagy Lajosがいる。
 マリア・ホルバットには、2人の娘と1人の孫がいる。

 2003年に彼女が一連の<ハンガリアン・フォークテイルズ>を出品した飛騨国際メルヘンアニメ映像祭(http://www.hida-anime.jp/top.html)における、審査員・片渕須直(アニメーション監督)の講評は以下の通り。
 「マリア・ホロバット氏は今回一連の作品群を連ねて応募してきたが、その中の代表的な一作を取り上げて審査委員団から特別賞を進呈することとなった。
 アニメーションに「メルヘン」を冠しての作品募集は実は難しい。定義に幅があること以上に、アニメーションの若いつくり手たちはそこに多くの自負心を見つけることに熱中し、結果として例えばメルヘンの意味を逆手に取った「怪談」として仕上げるとか、民話的な題材に仮託して卑近な人生の機微を物語ろうなどとしがちになってしまう。
 ホロバット氏の今回の応募作は、すべて民話的なモチーフによって構成されたものだったが、それらはすべて屈託のない素朴な喜びを表現するためのものだった。必ず最後には王子さまとお姫さまが、男の子と女の子が、生き別れになっていた双子の兄弟が抱きいだきあい、「めでたし、めでたし」となる筋立てこそ、実は『メルヘンアニメ映像祭』と名打ったコンテストが、内心もっとも望んでいたものだったのではなかったか、という気にすらさせられてしまう。  この受賞作はひとつのレファランスとして今後のこのコンテストへの応募者たちに示されるだけの価値がある。」

 ◆フィルモグラフィー
 ・1982年 『夜の奇跡』“Az éjszaka csodál(Miracles of the Night)”
 オタワ国際アニメーションフェスティバル 第1回監督部門2位
 ・1983年 『ドアNo.8』“Atjó 8”
 1984年カンヌ国際映画祭短編部門コンペティション出品、クラクフ映画祭スペシャルメンション
 ・1983年 『ドアNo.9』“Atjó 9”
 ・1985年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ1)
 ・1987年 『ドアNo.2』“Atjó 2”
 ・1987年 『ドアNo.3』“Atjó 3”
 ・1988年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ2)
 ・1992年 『グリーンツリーストリート66番地』“Zõldfa u 66”
 1992年 Espinhoフェスティバル カテゴリー第1位、1993年カチカメート映画祭審査員特別賞受賞
 ・1993年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ3)
 ・1996年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ4)
 ・1997年 “Kis emberek dalai(Small Folks’ Songs)”
 1998年 ハンガリー レティナ国際映画祭(RETINA98’) 最優秀アニメーション賞受賞
 ・1997年 “Széles ember meséi”
 ・1998年 “Kecskemét Katona József Theater is 100 years old”
 ・1999年 “Filmszemle szignál”(カチカメート映画祭ロゴ5)
 ・2000年 『静寂(ある日の風景画)』“Allokepek “Rajzok egy élet tájairól”(Stills(Drawing about a Landscape of a life))”
 2000年(ハンガリー)国際フィルム&ビデオフェスティバル Sellye市賞受賞
 ・2004年 “Mesél a kõ(The Telling Stone)”
 2004年 CICDAF 審査員特別賞受賞

 <ハンガリアン・フォークテイルズ>“Magyar Népmesék Ⅳ sorozat”
 ・1980年“Egyszemű, kétszemű, háromszemű”(1つ目、2つ目、3つ目)(Jankovics Marcellと共同監督)
 ・2002年『魔法の南京錠』“A bűbájos lakat”
 ・2002年『妬みの報い』“A kerek kő”(丸い石)
 ・2002年『少年の見た夢』“A kékfestő inas”
 ・2002年『天使の羊』“Angyalbárányok”
 ・2002年『貧者と利口な馬』“A szegény ember meg a lova”
 ・2002年『金の毛の子羊』“Az aranyszőrű bárány”(Nagy Lajosと共同監督)
 ・2002年『ツェルセルーシュカ』“Cerceruska”
 ・2002年『貧乏な男と悪魔たち』“Hetet egy csapásra”(1打で7倒)
 ・2004年? 『双子の王子の冒険』“A kővé vált királyfi ( The Prince Who Turned into Stone)”
 2004年 飛騨国際メルヘンアニメ映像祭 第2回メルヘンアニメ・コンテスト審査員特別賞受賞
 ・2005年“Gyöngyvirág Palkó”(真珠の花 Palkó)

 *参考サイト
 ・アニドウのHP:http://www.anido.com/html-j/yurospace.html
 ・カチカメート・フィルム Kecskemétfilm:http://www.kecskemetfilm.hu/kfilm.html
 ・Pannonia film studio  History 50 Years in the Forefront of Animation:http://www.mediaguide.hu/pannoniafilm/story.html
 ・ハンガリアン・フォークテイルズに関するWikipedia(ハンガリー語):http://hu.wikipedia.org/wiki/Magyar_n%C3%A9pmes%C3%A9k_(sorozat)
 ・Directory of Hungarian Links:http://www.wideweb.hu/hungary/business-investments/entertainment-film-industry
 ・ハンガリー語翻訳サイト InterTran:http://www.tranexp.com:2000/Translate/result.shtml

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