♪さあ、歩き出そう! アキ・カウリスマキ 『俺(おい)らのペンギン・ブーツ』

 この作品も、レニングラード・カウボーイズのPVの1つですが、アキ・カウリスマキのフィルモグラフィーにもちゃんと載っていて、彼の短編として広く知られている1本です。



 【物語】
 LENINGRAD COWBOYS HISTORY OF FINLAND 1952-1969
 父親と母親が看護婦に連れられて乳幼児室に入ってくる。父親はあごひげをつんと前に伸ばし、母親は髪を前に突き出させている。2人の赤ん坊も、ゆりかごの中で、先のとがった靴を履き、髪を前に突き出させて、両親に愛敬を振りまいている。
 2人は、赤ん坊をつれてトラックで家に帰るが、それをレニングラード・カウボーイズのメンバーたちが病院の入り口の階段に腰掛けて黙って見送っている。
 赤ん坊時代~一家は父、母、兄(車椅子生活をしてる?)、赤ん坊の4人。次男である彼も骨付き肉をもらって、うれしそうにそれにかじりついている。
 小学校時代~彼は教室でウォッカを飲んでいるのが見つかり、先生につまみ出されてしまう。
 少年時代~自分でサウナを沸かしてはその中でウォッカをあおったり、湖に飛び込んで泳いだり。
 青年時代~酒場で働く娘をナンパ。店の出入口で強引にくどき落とす。
 結婚~ウェディング・パレードはトラクターに乗って。
 親の死~大好きだった親が死に、棺が車に乗せられて運ばれていく。悲しみでいっぱいの彼は車を追いかけて行きそうになる。
 故郷よさらば~荷物を出し、家の窓を板で打ちつけるなどして、家を出る。車椅子の兄、妻、そして自分。牛に引かれて、故郷を後にするのだった。

 例によって、ゆる~い感じで作られ、それがレニングラード・カウボーイズのキャラクターと相俟って、ユニークな持ち味ともなっているPV。

 最初に“1952-1969”とありますから、ラストで、彼は、17歳で、それからレニングラード・カウボーイズに加わり、現在に至る……とも考えられますが、そうすると、レニングラード・カウボーイズの活動期間とかみ合わなくなるようにも思われる(?)ので、これは、ある“典型的な”田舎の青年の前半生と、現在都会暮らしをしている人々だったら誰しも思い当たるような上京物語を重ね合わせたもの、ということになるのでしょう。

 “1952-1969”に、フィンランド史に関わるような、何か象徴的な意味合いがあるのかもしれませんが、ネット上では調べられませんでした。

 主役を演じている彼は、レニングラード・カウボーイズでボーカルを務めるマト・ヴァルトネン(1955- )で、1975年で同バンドの前身であるスリーピー・スリーパーズでデビュー、1989年以降レニングラード・カウボーイズとして活躍。彼は、レニングラード・カウボーイズとして、アキおよびミカの作品に出演しているほか、俳優として『愛しのタチアナ』(主演の1人)、『浮き雲』などにも出演しています。レニングラード・カウボーイズのメンバーの出入りは激しく、マト・ヴァルトネンも現在はバンドを離れているようです。

 ちなみに、本作で唄われている楽曲はLee Hazlewoodの“These Boots Are Made for Walking”(ナンシー・シナトラのヒット曲『にくい貴方』として有名)

 You keep saying you got something for me
 Something you call love but confess
 You've been a-messin' where you shouldn't a-been a-messin'
 And now someone else is getting all your best

 (以下、繰り返し部分)
 Well, these boots are made for walking
 And that's just what they'll do
 One of these days these boots
 Are gonna walk all over you

 You keep lying when you oughta be truthin'
 You keep losing when you oughta not bet
 You keep same-ing when you oughta be a-changin'
 What's right is right but you ain't been right yet

 (繰り返し)

 You keep playing where you shouldn't be playing
 And you keep thinking that you'll never get burned
 I've just found me a brand new box of matches
 And what he knows you ain't had time to learn

 (繰り返し)

 Are you ready, boots?
 Start walkin'

画像

 ◆作品データ
 1992年/フィンランド/4分34秒
 英語(歌詞)/字幕なし
 実写作品

 *この作品は、1994年の『トータル・バラライカ・ショー』日本公開時に併映作品として上映されたような記憶があるのですが、確認はとれませんでした。

 *この作品は、DVD『トータル カウリスマキ DVD-BOX』に収録されています。

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 ◆監督について
 アキ・カウリスマキ

 1957年 フィンランドのオリマッティラ村で4人兄妹の次男として生まれる。兄は映画監督のミカ・カウリスマキ。フィンランドを代表する映画監督&プロデューサーで、自らの配給会社や映画館も持つ。フィンランドの映画産業の5分の1はカウリスマキ兄弟によって牛耳られているとも言われる(アキの現在の活動拠点はブラジルだが)。

 16歳の時に、シネマクラブで上映されていた、ブニュエルの『黄金時代』とフラハティの『極北の怪異』を観て、「映画」に目覚める。シネマクラブなどで手当たり次第に映画を観るようになり、映画雑誌にも多くの映画批評を投稿する。
 1977年に兄に伴われてロンドンで観た小津安二郎の『東京物語』に触発されて、映画を撮る決心をする。
 兄ミカはミュンヘンの映画大学に進んだが、アキは大学で映画を学ぶことはかなわず、タンペレ大学で、文学とコミュニケーション論を専攻。しかし、中退。
 様々な職を転々とするなかで、“Valehtelija(The Liar)”の脚本を書き、それがのちにミカの卒業制作の脚本となる。“Valehtelija(The Liar)”がきっかけとなって、アキも映画界することになる。監督として最初にクレジットされているのは、兄との共同監督作品で、音楽ドキュメンタリー“Saimaa-ilmiö(The Saimaa Gesture)”(1981年)。

 兄弟で、映画製作会社ヴィッレ・アルファを設立(1981年)。センソ・フィルムズという配給会社も立ち上げ、ヘルシンキにはシネマ・アンドラという映画館(http://www.andorra.fi/en/index.html)も作った。

 単独での最初の監督作品はドストエフスキーの同名小説を原作とする『罪と罰』。この作品が国内で評価されたことで、映画制作を続けていくことが可能になった。

 1986年より ソダンキュラでミッドナイトサン・フィルムフェスティバル(http://www.msfilmfestival.fi/fpage.php?lang=1)を開催。

 1987年 自身の製作会社スプートニクを設立。

 1988年の『真夜中の虹』、1990年の『マッチ工場の少女』あたりから、国際的にも注目が高まり、1990年の『コントラクト・キラー』以降、国際的なプロジェクトが多くなる。

 日本でアキ・カウリスマキ作品が初紹介されたのは、1990年で、『マッチ工場の少女』がシネマスクエアとうきゅうで、『コントラクト・キラー』がシャンテ シネで、『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』がパルコ SPACE PART3で、『真夜中の虹』が銀座テアトル西友で、それぞれ公開され、一躍注目の映画作家となった。それ以降、新作はコンスタントに劇場公開され、ほとんどの旧作も公開された。

 初期には、『罪と罰』、『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』といった古典文学の翻案作品もあったが、アキ・カウリスマキらしい作品として、一般にイメージされるのは、「幸福とは縁遠い人々を主人公とした、時に物悲しく、時にしみじみとさせる一連の作品」と、レニングラード・カウボーイズを主人公としたコメディー・タッチの作品。ロード・ムービーも多い。

 1998年に発表した『白い花びら』はモノクロのサイレント映画だったが、元々どの作品も台詞は少なめで、サイレント映画を思わせる作品が多い。

 上映時間の短い作品が多く、最も長い作品で『ラヴィ・ド・ボエーム』の100分。70分台の作品が多い。

 マッティ・ペロンパー、カティ・オウティネン、カリ・ヴァーネン、サカリ・クオスマネン、オウティ・マエンパーら、常連の俳優を使うことが多い。

 Aki Kaurismäki という表記が、Akira Kurosawaと似ていることが自慢、らしい。

 大の酒好きで、マスコミの取材も飲みながらということがしばしばで、あげくに急性アルコール中毒でつぶれてしまったこともある(笑)。

 ・1981年 “Valehtelija(The Liar)”[共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1981年 “Saimaa-ilmiö(The Saimaa Gesture)”
 ・1982年 “Jackpot 2” [共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1982年 “Arvottomat(The Worthless)” [共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1983年 『罪と罰』
 ・1984年 “Klaani - tarina Sammakoitten suvusta(The Clan Tale of the Frogs)” [脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1985年 『カラマリ・ユニオン』
 ・1985年 “Rosso” [共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1986年 『ロッキーⅥ』 [短編]
 ・1986年 『パラダイスの夕暮れ』
 ・1987年 『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』
 ・1987年 『スルー・ザ・ワイヤー(ワイヤーを通して)』
 ・1987年 “L.A.Woman” [短編] ・1987年 “Rich Little Bitch” [短編]
 ・1988年 『真夜中の虹』 *モスクワ国際映画祭 国際批評家連盟賞受賞
 ・1989年 『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
 ・1989年 “Likaiset kädet” [TV作品]
 ・1990年 『マッチ工場の少女』 *ベルリン国際映画祭Forum of New Cinema部門で、Interfilm AwardとOCIC Award - Honorable Mentionを受賞
 ・1990年 『コントラクト・キラー』
 ・1991年 『悲しき天使』 [短編]
 ・1991年 “Aki Kaurismäki” [ドキュメンタリー/出演](監督:Andy Harries)
 ・1992年 『ラヴィ・ド・ボエーム』 *ベルリン国際映画祭Forum of New Cinema部門で国際批評家連盟賞受賞
 ・1992年 『俺(おい)らのペンギン・ブーツ』 [短編]
 ・1992年 「株式会社日本触媒 吸油性樹脂 写真篇」 [CM]
 ・1993年 『小津と語る Talking With OZU』 [出演/ドキュメンタリー](監督:田中康義)
 ・1994年 『アイアン・カウボーイズ ミーツ・ゴーストライダー』[製作・出演]
 ・1994年 『レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う』
 ・1994年 『トータル・バラライカ・ショー』
 ・1994年 『愛しのタチアナ』
 ・1996年 “Välittäjä(Employment Agent)” [短編]
 ・1996年 『浮き雲』 *カンヌ国際映画祭エキュメニカル特別賞受賞
 ・1998年 『白い花びら』 *ベルリン国際映画祭 C.I.C.A.E. Award - Honorable Mention受賞
 ・2001年 “Cinéma, de notre temps” [ドキュメンタリー/出演](監督:ギー・ジラール)
 *フランスのTVシリーズ「現代の映画」の1編
 ・2002年 「野郎どもに地獄はない」“Dogs Have No Hell”(『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』) [オムニバス映画]
 ・2002年 『過去のない男』 *カンヌ国際映画祭グランプリ&エキュメニカル賞受賞、セザール賞ベストEU作品賞ノミネート、ヨーロッパ映画賞 作品賞・監督賞・脚本賞ノミネート、フランドル国際映画祭グランプリ受賞
 ・2004年 “Visions of Europe” [オムニバス映画]
 *EU加盟国25カ国から選出された監督が、それぞれの国の今(もしくは未来)を伝える短篇を作り、1本の映画にまとめたもの。参加している監督は、ファティ・アキン、バーバラ・アルベルティ、トニー・ガトリフ、ピーター・グリーナウェイら。
 ・2006年 『街のあかり』 *カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
 ・2007年 『鋳造所』(『それぞれのシネマ』) [オムニバス映画]

 *そのほかに多数のプロデュース作品があります。
 *監督作品以外は、[ ]で特記しました。

 *参考書籍
 『アキ・カウリスマキ』(エスクァイア マガジン ジャパン)

 *参考サイト
 ・Wikipedia(英語):http://de.wikipedia.org/wiki/Aki_Kaurism%C3%A4ki
 ・ファン・サイト Siunattu teknologia!:http://www.sci.fi/~solaris/kauris/

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