ようやく観られた! 映画『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』

 ようやく観ることができました映画『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』。

 本当は原作者(岩井志麻子)さんのトークが予定されていた先週の土曜に観に行ったのですが、上映3時間前であるのにも拘らず、既に立ち見が5人いると言われ、すごすごと退散したのでした(できれば快適な状態で観たかったので)。
 やっぱり最初から平日に観に行くことにすればよかったと思いましたが、それでも私が観た平日の回で、上映40分前で整理券番号31番でした(最終的には90%くらいの入りでした)。
 3分の1くらいが女性で、サラリーマンらしいスーツ姿の人もちらほら。全体的にはちょっとオタクっぽい感じの客層でした。

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 本編上映前の予告編は、『猫目小僧』『MEAT BALL MACHINE』『アルティメット』『蟻の兵隊』『ドッグ・デイズ』という全く脈絡のないラインナップ(最初はホラー映画である本作に合わせた予告編なのかとも思いましたが、そういうことでもなさそうで『猫目小僧』以外はここシアター イメージフォーラムでの上映予定&上映中の作品でした)。トークショーがあった日は、トークショーの前に予告編の上映があったのか、岩井志麻子さんが『猫目小僧』と楳図かずお作品に関して話すということもあったようです。

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 【オープニング】

 白地に血が滴っていって、画面いっぱいが真っ赤に染まる。その上に、“MASTERS OF HORROR”が出たあと、各作品の一部をつないだと思われる一続きのオープニング・タイトル(ニヤリと笑う人形、狼、丘の上に十字架のシルエット、振り下ろされる斧のシルエット等)が続く。

 続いて、本編。
 夜の川面に靄が立ち込めている。その上をゆっくりと1艘の小舟が島に渡る男たちを乗せて進んでくる。その中に1人だけ外国人クリストファー(ビリー・ドラゴ)がいる。
舟は流れてきた土座衛門に進行を止められる。船頭は、慣れたことのようにそれを櫂で脇に押しやるが、それは、妊婦の土座衛門なのだった……。

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 アメリカ資本だけれど、監督も出演者もスタッフも日本人だから、てっきり日本語作品だと思っていたら、台詞は全編英語で、日本語字幕が出ます。あれ~、そういうことなのかあと、まず意表をつかれました。
 制作の条件に「台詞は英語」ということがあったようで、原作にはないクリストファーという人物が追加されていて、物語は、彼の目を通して描かれます。
 フィルムかデジタルかどちらなんだろうと思っていましたが、テレビ作品なのでやっぱりデジタルでスタンダード・サイズ。でも、“赤”の発色が非常に印象的な作品になっていました。最近のデジタルはこれくらいは普通なのか、それともスタッフ(撮影は栗田豊通)の力によるものなのでしょうか。

 ここでスタッフ&キャストをおさらいしておきます。

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 【スタッフ】

 日本一忙しい映画監督を支えるのは、気心の知れた“三池組”と呼ばれる常連スタッフで、本作でも、これまでたくさんの三池作品に参加したスタッフが関わっています。

 ■監督 三池崇史
 本人には、“マスターズ・オブ・ホラー”であるという認識はないらしいが、海外における『オーディション』(00)や『殺し屋1』(01)の反響&受け入れられ方が、そういう印象を強め、今回“マスターズ・オブ・ホラー”の1人に選ばれることになったらしい。
 ホラー系の作品には、他に『美しい夜、残酷な朝』(04)、『着信アリ』(04)など。

 ■原作 岩井志麻子
 64年岡山県生まれ。
 原作小説の映画化は、原田眞人監督の『自由戀愛』(04)に次いで2作品目。
 中村ウサギに関するドキュメンタリー『UTAKATA ウタカタ』(04)には本人として出演。
 パパイヤ鈴木、千葉雅子、及川奈央、恵俊彰、伊原剛志、津田寛治が監督したテレビ・ドラマ『ファンタズマ ~呪いの館~』(04)では、企画監修という立場で参加。
 本作にも印象的な役で出演しているほか、『シベリア超特急3』(02)にも役者として出演している。
 本作の原作である『ぼっけえ、きょうてえ』(角川ホラー文庫に収録)は、日本ホラー小説大賞を受賞し、その結果、映画化が約束されていたはずなのにも拘らず、映画化不可能とみなされて映像化されていなかったようなのですが、今回、こうして映画化され、版元の関係会社となった角川ヘラルド映画によって配給されることになりました。

 ■脚本 天願大介
59年東京生まれ。『妹と油揚』(91)で、ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード90の審査員特別賞、最優秀男優賞を受賞。『アジアン・ビート アイ・ラブ・ニッポン』(91)や『無敵のハンディキャップ』(93)を監督するが、『AIKI』(02)を最後に監督作品は発表していない。脚本家として、父・今村昌平監督の『うなぎ』(97)、『カンゾー先生』(98)、『赤い橋の下のぬるい水』(01)、林海象監督の『我が人生最悪の時』(94)などの作品を担当。三池とは、『オーディション』(00)以来のコンビとなる。
 本作と『オーディション』(私は、以前レンタルしたけれど、結局観られないまま返却してしまい、今のところ未見)は、ある“痛いシーン”を通して、相通じ合うものがあるらしい。
 『妹と油揚』の妹とイズナの関係もちょっと『ぼっけえ、きょうてえ』を思わせなくもない。

 ■撮影 栗田豊通
 50年生まれ。アラン・ルドルフ監督の『トラブル・イン・マインド』(86)、『モダーンズ』(88)、ロバート・アルトマン監督の『クッキー・フォーチュン』(99)等で知られる国際的な撮影監督だが、これまではホラーもそれに類する作品も手がけたことがない。
 日本人の監督と組むのは、相米慎二監督の『お引っ越し』(93)、大島渚監督の『御法度』(99)などに続いて久しぶり。

 ■衣装 北村道子
 49年、石川県生まれ。元々はスタイリスト。映画の衣装を手がけることになったのは森田芳光監督の『それから』(85)から。是枝裕和監督の『幻の光』(95)、竹中直人監督の『東京日和』(97)、黒沢清監督の『アカルイミライ』(03)、犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』(05)など、“一般映画”の衣装も手がけるが、むしろ、紀里谷和明監督の『CASSHERN』(04)、塚本晋也監督の『双生児』(99)ほか、『東京ゾンビ』(05 クレジットはスタイリスト)、『乱歩地獄』(05)など“特殊な作品”に、自由な発想でユニークな衣装を供することで評判が高い。三池監督とは『殺し屋1』(01)、『妖怪大戦争』(05)、『46億年の恋』(05)で組む。
 最新作は『笑う大天使(ミカエル)』(05)。

 ■美術 佐々木尚
67年、千葉県生まれ。多摩美術大学デザイン科出身。
主な作品に、『双生児』(99)、『I.K.U.』(01)、『ケイゾク』(01)、『Laundry ランドリー』(01)、『Soundtrack』(01)、『玩具修理者』(01)、『贅沢な骨』(01)、『凶器の桜』(02)、『キューティーハニー』(03)、『恋愛寫真』(03)、『約三十の嘘』(04)、『下弦の月 ラスト・クオーター』(05)、『陽気なギャングが地球を回す』(06)。三池監督とは『殺し屋1』(01)、『妖怪大戦争』(05)、『46億年の恋』(05)で組む。クエンティン・タランティーノ作品『KILL BILL』(03)にも参加する。
 スタイリッシュな美術は、師である木村威夫譲り。

 ■プロデューサー 井上文雄
 『湘南爆走族』(87)『800 TWO LAP RUNNERS』(94)『うなぎ』(97)『たどんとちくわ』(98)『竜馬の妻とその夫と愛人』(02)で助監督、『天と地と』(90)で監督助手。
『きけ、わだつみの声』(95)で製作プロデューサー、『アンドロメディア』(98)で制作プロデューサー、『汝殺すなかれ』(96)『ISOLA 多重人格少女』(00)『死者の学園祭』(00)『狗神』(01)『ピンポン』(02)でプロデューサー。『福耳』(03)でライン・プロデューサー、『ジョゼと虎と魚たち』(03)で共同プロデューサー。
 三池監督と組むのは、『着信アリ』(04)『妖怪大戦争』(05)に続いて3度目(プロデューサーとして)。

 ジェニー・ルー・トゥジェンド
 『フリー・ウィリー』シリーズ、『この胸のときめき』(00)などの製作を手がける。

 ローレン・ワイスマン
 『失踪』(93)で製作総指揮、『ダンス・ウィズ・ミー』(98)で製作を担当。

 ■共同プロデューサー 中村陽介

 ■ライン・プロデューサー 山本章
 『式日』(00)で制作担当、『ほとけ』(01)『フィラメント』(01)でライン・プロデューサー、『着信アリ Final』(06)でプロデューサーを務める。

 ■音楽 コージー・エンドウ Jr.(遠藤浩二)
 64年生まれ。三池監督と組むことが極めて多い作曲家。
 『極道黒社会』(97)『FULL MENTAL 極道』(97 OV)『中国の鳥人』(98)『岸和田少年愚連隊 望郷』(98)『日本黒社会』(99)『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99)『天然少女萬』(99 TV) 『オーディション』(00)『漂流街』(00)『ビジターQ』(01)『荒ぶる魂たち』(01)『カタクリ家の幸福』(01)『DEAD OR ALIVE FINAL』(01)『SABU さぶ』(02)『新・仁義の墓場』(02)『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(02)『許されざる者』(03)『極道恐怖大劇場 牛頭』(03 OV)『着信アリ』(03)『ゼブラーマン』(04)『美しい夜、残酷な朝』(04)『IZO』(04)『妖怪大戦争』(05)。
 三池作品以外では、望月六郎監督と組むことも多い。『藪の中』(96)『外道』(98 OV)『通貨と金髪』(99)『不貞の季節』(00)『獅子の血脈』(01)『Jam Films』(02)『マッスルヒート』(02)『イズ・エー』(03)『かまち』(04)『怪談新耳袋 劇場版』(04)『援助交際撲滅運動 地獄変』(04)『さよならミドリちゃん』(05)『鳶がクルリと』(05)『ナイチンゲーロ』(06)など。

 ■照明 金沢正夫
 三池監督と組むのは今回が初めて。
 主な担当作品は、『降霊』(99 TVM)『sWinG maN スイングマン』(00)『みずゞ』(01)『狗神』(01)『ぷりてぃ・ウーマン』(02)『黄泉がえり』(02)『UNloved』(02)『クイール』(03)『HAZAN』(03)『苺の破片(かけら)』(04)『不良少年(ヤンキー)の夢』(05)。

 ■録音 鶴巻仁
 三池監督とは、『極道恐怖大劇場 牛頭』(03 OV)『IZO』(04)『WARU』(06)で組む。
 その他の作品に、『金融腐蝕列島 〔呪縛〕』(99)『SUMMER NUDE サマーヌード』(02) 『カクト』(02)『ラヴァーズ・キス』(02)『村の写真集』(03) 『零 ゼロ』(03) 『アイノカラダ』(03)『八月のかりゆし』(03)『偶然にも最悪な少年』(03)『蛇イチゴ』(03)『いま、会いにゆきます』(04)『風音(ふうおん)』(04) 『ローレライ』(05)『ALWAYS 三丁目の夕日』(05) 『水に棲む花』(06 美術も)など。

 ■音響効果 柴崎憲治
 三池作品では『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(02)『新・仁義の墓場』(02)『着信アリ』(04)『妖怪大戦争』(05)の音響効果を担当。
 『リング2』(99)『仄暗い水の底から』(01)『呪怨2』(03)『予言』(04)『輪廻』(05)などホラーのサウンドエフェクトを担当することも多い。
 その他の音響効果作品に、『Shall We ダンス?』(96)『BULLET BALLET バレット・バレエ』(99)『六月の蛇』(02)『AIKI』(02)『スカイハイ 劇場版』(03)『ドラゴンヘッド』(03)『自由戀愛』(04)『戦国自衛隊1549』(05)『狼少女』(05)『TAKESHIS’』(05)『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)『東京ゾンビ』(05)『小さき勇者たち ~GAMERA~』(06)『LIMIT OF LOVE 海猿』(06)『テニスの王子さま』(06)『夜のピクニック』(06)など多数。

 ■編集 島村泰司
 ほとんど三池監督専属のような編集マン。
 『極道戦国志 不動』(96)『極道黒社会』(97)『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』(97)『中国の鳥人』(98)『岸和田少年愚連隊 望郷』(98)『アンドロメディア』(98)『日本黒社会』(99)『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99)『DEAD OR ALIVE2 逃亡者』(99)『オーディション』(00)『漂流街』(00)『ビジターQ』(01)『荒ぶる魂たち』(01)『天国から来た男たち』(01)『SABU さぶ』(02)『新・仁義の墓場』(02)『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(02)『許されざる者』(03)『極道恐怖大劇場 牛頭』(03 OV)『着信アリ』(03)『ゼブラーマン』(04)『IZO』(04)『妖怪大戦争』(05)など。
 その他の作品に、『皆月』(99)『火星のカノン』(01)『東京ゾンビ』(05)など。

 ■特殊メイク 松井祐一
 『リング』(98)『らせん』(99)で特殊メイク。『極道恐怖大劇場 牛頭』(03 OV)『レイクサイド マーダーケース』(04)『感染』(04)『輪廻』(05)で特殊造形を担当。『妖怪大戦争』(05)で特殊メイク&造形を担当。
 “マスターズ・オブ・ホラー”13作品のうちでSpecial Effectsとしてクレジットされているのは彼だけ。

 ■CGIプロデューサー 坂美佐子
 三池作品では『荒ぶる魂たち』(01)『天国から来た男たち』(01)『極道恐怖大劇場 牛頭』(03 OV)『着信アリ』(03)『ゼブラーマン』(04)『IZO』(04)『妖怪大戦争』(05)を担当。
 その他の作品に『レイクサイド マーダーケース』(04)『佐賀のがばいばあちゃん』(06)『着信アリ Final』(06)。

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 【キャスト】

 ビリー・ドラゴ(クリストファー) 『ペイルライダー』(85)『アンタッチャブル』(87)などで知られる俳優だが、『漂流教室』(95 OV)『トーキョウ・ドール』(97)など日米合作映画へも積極的に出演している。

 工藤夕貴(女郎) 『ミステリー・トレイン』(89)『ピクチャーブライド』(94)『ヘヴンズ・バーニング』(97)『ヒマラヤ杉に降る雪』(99)『SAYURI』(05)など、海外の作品への出演も多い。本作ではわざと日本語訛りの英語をしゃべったとか。

 美知枝(女郎・小桃) 公式サイト(http://www.scenemichie.com/)もあるけれど、ほとんど情報はなく、プロフィールなど詳細は不詳。

 根岸季衣(遊郭の内儀) 三池作品では『オーディション』(00)『妖怪大戦争』(05)に出演。英語作品はおそらく初めて。

 マメ山田?(遊郭の客引き) たぶんマメ山田さんだと思うんですが、間違ってたらゴメンナサイ。

 木下ほうか(工藤夕貴の父役) 出演作は数多いが、三池作品はおそらく『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(02)に次いで2本目。と思ったら、『殺し屋1』(01)にも出演していました(shitoさま、貴重な情報ありがとうございました)。

 岩井志麻子(小桃を折檻する先輩女郎) 原作の映画化に条件はつけなかったが、出演を希望したらしい。

 塩田時敏(「ボネペティ」と言う男) 映画評論家にして三池映画出演の常連。『46億年の恋』完成披露試写会でのティーチ・イン、および、本作の2度のトークショーでは司会を務めた。

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 【本当に問題作なのか?】

 本作がアメリカでの放映が認められず(事前に台本のチェックは済んでいたのに)、日本でも映倫の審査をパスできなかったのは、どうやら小桃の折檻シーンが原因のようです。
 それほど凄まじいかと言えば、確かに“痛々しく”はあるのですが、直接描写はないし、これを越える“痛い”シーン、えげつないシーンがこれまで映画になかったかというと必ずしもそんなことはないと思います。石井輝男とか松井良彦とか『闇の中の魑魅魍魎』とか……。最近でも、全くそんな映画じゃないはずの韓国映画『もし、あなたなら ~6つの視線』(03)に、うげげげげっとさすがに私も目を伏せたくなってしまうシーンがありました(しかもこっちはマジです)。
 日本でもアメリカでも、社会が保守化し、コードが厳しくなってきているということでしょうか。
放送禁止、上映禁止は配給サイドの宣伝戦略によるもので、本当は全然そんなことはなかったんじゃないのかということも私の頭をよぎりましたが、公開初日には失神して救急車で運ばれる人も出たそうです(これもちょっと宣伝戦略っぽいな~)。

 【原作との相違】

 ①人物設定&言語 女郎(工藤夕貴)の話の聞き手を外国人とし、彼が懇ろになった女郎を探しているという設定にし、全編英語にしたところ。
岡山弁が、原作世界の土着性、忌まわしさ、地方で闇から闇に葬られるはずの因習譚・因縁話をリアルで、魅力的なものにしているのに、英語にしたことで、それが一切そげ落とされてしまったのが、残念です。「台詞は英語」が制作の条件であったとすれば、まあ仕方がないことなのですが。
 外国人記者が怪談を聞くという設定は、ラフカディオ・ハーンを思い出させたりもします。
 ちなみに、字幕翻訳は村田恵、監修はクリスチャン・ストームズ(彼は『サウスパーク 無修正映画版』『TAMALA2010』『8mile』でも監修を担当しています)。

 ②折檻シーン 原作では「つるして、火のついた松葉でいぶる」といった短い描写しかないのですが、本作では火のついた線香を脇の下に押し付け、串を爪の間と、唇と歯茎の間に突き刺す、などという“映画的な描写”に変えられています。

 ③状況設定 原作では、女郎による一夜の寝物語を聞き手が聞くだけなのですが、映画では、主人公(外国人記者)が、隔絶された小島に人を探しに行くという設定になっていて、ロジャー・コーマン作品をはじめ、クラシックなホラー作品(“館もの”など、の典型的な設定&導入部で、主人公はある一定の時間そこから逃げ出すことができない)を連想させます。

 ④伏線 原作では、結末に関わる伏線が冒頭で示されているのですが、それがカットされているのが残念。

 ⑤結末 聞き手を物語に関わる人物としたことで、最後は主人公を再び物語に関わらせています。恐ろしくなった聞き手が語り手である女郎を銃で撃ってしまうということですが、この時、殺される女に一瞬小桃の姿をオーバーラップさせています。本当は話をしていたのは、小桃本人ではないかと観客に思わせる仕掛けで、そういう風にも見られるように作ってあるということでしょう(エドガー・アラン・ポー『大鴉』あたりからの発想?)。
 本当にそうだったかはともかく、女郎が語る物語の中の小桃は赤髪で、女郎(工藤)は青髪、語り手の女郎(工藤)は黒髪になっています。
 最後にクリストファーは獄中で廃人のようになっていますが、これもアジアやアフリカの土着の文化、暗黒の文化に深入りした欧米人の頭がおかしくなってしまうといった物語の典型的なパターンだと思われます(ダン・シモンズ『カーリーの歌』「バンコクに死す」とか、ピーター・ストラウブ『ココ』とか、『地獄の黙示録』をはじめとする一連のベトナム戦争ものとか)。

 ⑥クリーチャー 『バスケット・ケース』『ワンダーアーム・ストーリー』『広告業界で成功する方法』などを連想させます。

 【感想をもう少しだけ】

 ・貧しい村・家に生まれた女が売られて女郎になるという物語をアメリカ資本で映画化というとどうしても『SAYURI』を思い出させます。工藤夕貴が出ているから尚更ですが、『SAYURI』の陰画が『インプリント』ということなのでしょう。

 ・原作もホラーと言えばホラーですが、土着性、因習性、忌まわしさがかなり強い作品になっています。つまり単なる“恐がらせるだけの作品”にはなっていないということで、胎児を“間引き”しなければならないほどの貧農たちの住む貧村があり、そうした貧農たちにも蔑まれるような一家を作り出してしまうような社会性、社会構造が存在した、というところまで書き込まれたので傑作になったのですが、映画の方はさすがにそこまでのレベルには行けていません。最終的に印象に残ってしまうのが、“折檻”と“クリーチャー”だったりします。それはもったいないですね。そこまで行けたら放映禁止、上映禁止にはならなかったと思うのですが……。

 ・ホラー映画の常道として、わざとまわりを暗くしたり、フィルターをかけて古色蒼然たる雰囲気を出したりするものですが、本作には、そういう“ごまかし”がなく、好印象を持ちました。
映画の中に、「本物の血で描いた地獄絵図」というのが出てきますが、本作自体にも「赤」を効果的に使われていて、「血で描いた映画」を意図したのではないかと思われました。

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 ・まあ、かなり酷いものじゃないのかという予想していたのですが、全然大丈夫でした。三池作品として、最高ランクに位置する作品ではないにしても、ある種の水準は余裕でクリアしているし、話題性もあり、「読みどころ」もある作品なので、観てよかったと思いましたね~。

 ・岩井作品はこれからも続々映像化されることになるでしょうが、私としては、『楽園 ラック・ヴィエン』『夜啼きの森』の映画化を期待したいと思います。前者は、トラン・アン・ユン監督で、主演をトラン・ヌン・イエン・ケー(ただし日本語の台詞はしゃべらせない。モノローグや字幕で処理する)でやってみれば面白いと思うのですが、どうでしょうか。ただし、『楽園 ラック・ヴィエン』は、竹中直人が映画化権を取得したと聞いた覚えもあります。

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 【リンク集】

 ・三池崇史インタビュー TOKYO HEADLINE web:http://www.tokyoheadline.com/vol257/inter02.html

 ・三池崇史の連載エッセイ 「三池崇史のシネコラマ」:http://www.asahi-mullion.com/mullion/column/miike/#back
 第26回、第28回、第29回あたりが本作の関連記事になります。

 ・ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での上映レポート:http://www.yubarifanta.com/rep_read.php?number=409

 ・TBSラジオ 古田新太の「ふるチン」に三池監督がゲスト出演した時(第8回)の模様の再録:http://tbsradio.cocolog-nifty.com/furuchin/

 ・公開初日 トークショーの再録 公式HP:http://www.moh13.jp/report/index.html

 ・公開初日に関する記事 CINEMA TOPICS ONLINE:http://www.cinematopics.com/cinema/c_report/index3.php?number=2009

 ・岩井志麻子さんのトークショー付き上映にいらした方のレポート
 「レザボアCATs」さんのブログ:http://blog.livedoor.jp/beyonceyou/archives/50319599.html
 「嗚呼、テレ日トシネマ~雑記~」さんのブログ:http://d.hatena.ne.jp/eichi44/20060604/p1

 ・ここにもこんな記事が「YUKI’sあ~とわ~くす」:http://yukicreate.jugem.jp/?eid=207

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 本作のDVDは、8月25日にレンタル開始されるそうなので、劇場でもスカパーでも観られない方はそちらでどうぞ!

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