ラックス賞2019 受賞結果

 第13回Lux賞の受賞結果が発表になりました。(11月27日)

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 【ラックス賞】

 ラックス賞というのは、欧州議会(European Parliament)によって贈られる映画賞で、ヨーロッパの現状(拡大と交流)を示すような題材の映画を通して公衆に議論を呼び起こすことと、EU加盟国での映画の普及とを目的として、2007年からスタートしたものです。

 内容から言うと、①ローカルで、ドメスティックな内容のものではなく、いろんな出自(出身国や民族)のバックグラウンドを持つ登場人物が出てくる現代劇で、しかもそのことが物語の根幹に関わってくるような作品、あるいは、②物語が複数のヨーロッパ諸国にまたがっていて、物語の展開に従って、それぞれの国の実情(現状)が映画の中に映し出されていくような作品、といったインターナショナル、トランスナショナルなヨーロッパ映画がピックアップされるという印象だったのですが、最近では、ヨーロッパ各国固有の事情を描いていても、それがそのまま「ヨーロッパのいま」と見なされ、共通の問題意識をもって受け止められるようになってきたようで、よりシンプルに、③ヨーロッパの現状を示していると思われるような、優れた現代ヨーロッパ映画、がピックアップされるようになってきたようです。

 投票資格があるのは、欧州議会の議員約750名のみ(2019年7月現在は751名)で、議員には、ノミネート発表後、作品の無料の上映会が行なわれることになっています。(そのために、24の言語による字幕が用意され、ヨーロッパ28ヵ国で3ヶ月にわたって上映会が実施されます。)

 選考は、前年の5月30日から当年の4月15日までに劇場公開された作品の中から、欧州議会の文化教育委員会が選出したメンバー21名(プロデューサー、配給者、映画興行者、映画祭ディレクター、映画批評家らから選ばれた「ラックス賞セレクション・パネル」。毎年1/3が改選される)がセレクションを行なって、まずオフィシャル・セレクションとして10本を選び(発表し)、そこからノミネート作品3本に絞り込み、さらに上映会による上映&投票を経て、年間最優秀作品(ラックス賞)を決定するというプロセスが取られています。

 本年度のオフィシャル・セレクションは、6月30日にカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で発表され、ノミネーションは、7月末のベネチア国際映画祭ベネチア・デイズのラインナップ発表会で発表されました。

 過去12回のノミネート&受賞作品は以下の通りです。

 ◆2007年
 ◎『そして、私たちは愛に帰る』(独・トルコ) 監督:ファティ・アキン
 ・『4ヶ月、3週と2日』(ルーマニア) 監督:クリスティアン・ムンジウ
 ・『夜顔』(西・仏) 監督:マノエル・デ・オリヴェイラ

 ◆2008年
 ・『デルタ』(ハンガリー・独) 監督:コーネル・ムンドルッツォ
 ◎『ロルナの祈り』(ベルギー・仏・伊) 監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
 ・“Občan Havel”(チェコ) 監督:Miroslav Janek、Pavel Koutecký

 ◆2009年
 ・『ソフィアの夜明け』(映画祭上映題:『イースタン・プレイ』)(ブルガリア) 監督:カメン・カレフ
 ・“Sturm”(独・デンマーク・オランダ) 監督:ハンス=クリスチャン・シュミット
 ◎『君を想って海をゆく』(仏) 監督:フィリップ・リオレ

 ◆2010年
 ・“Plato's Academy(Akadimia Platonos)”(ギリシャ・独) 監督:Filippos Tsitos
 ◎“When We Leave (Die Fremde)”(独) 監督:フェオ・アラダグ(Feo Aladag)
 ・『イリーガル』“Illégal”(仏・ベルギー・ルクセンブルク) 監督:オリヴィエ・マッセ=ドパス(Olivier Masset-Depasse)

 ◆2011年
 ・“Attenberg”(ギリシャ) 監督:アティーナ・レイチェル・トサンガリ(Athina Rachel Tsangari)
 ◎『キリマンジャロの雪』“Les neiges du Kilimanjaro (The Snows Of Kilimanjaro)”(仏) 監督:ロベール・ゲディギャン
 ・『プレイ』“Play”(スウェーデン・仏・デンマーク) 監督:リューベン・オストルンド

 ◆2012年
 ・『熱波』(ポルトガル・独・仏・ブラジル) 監督:ミゲル・ゴメス(Miguel Gomes)
 ◎『ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-』“Io sono Li (Shun Li and the Poet)”(伊・仏) 監督:アンドレア・セグレ
 ・“Csak a szél (Just the Wind)”(ハンガリー・独・仏) 監督:Bence Fliegauf

 ◆2013年
 ・“The Selfish Giant”(英) 監督:クリオ・バーナード(Clio Barnard)
 ◎『オーバー・ザ・ブルースカイ』(オランダ・ベルギー) 監督:フェリックス・ファン・ヒュルーニンゲン
 ・『ミエーレ』“Miele (Honey)”(伊・仏) 監督:ヴァレリア・ゴリーノ

 ◆2014年

 ◎『イーダ』(ポーランド・デンマーク) 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
 ・“Bande De Files(Girlhood)”(仏) 監督:セリーヌ・シアマ
 ・“Class Enemy (Razredni Sovražnik)”(スロヴェニア) 監督:Rok Biček

 ◆2015年
 ◎『裸足の季節』(仏・独・トルコ) 監督:デニズ・ガムゼ・エルギュベン
 ・『地中海』“Mediterranea”(伊・仏・米・独・カタール) 監督:ジョナス・カルピニャーノ(Jonas Carpignano)
 ・『ザ・レッスン/授業の代償』“Urok (The Lesson)”(ブルガリア・ギリシャ) 監督:クリスティナ・グロゼヴァ(Kristina Grozeva)、ペタル・ヴァルチャノフ(Petar Valchanov)

 ◆2016年
 ◎『ありがとう、トニ・エルドマン』(独・オーストリア) 監督:マーレン・アデ
 ・『ぼくの名前はズッキーニ』(スイス・仏) 監督: クロード・バラス
 ・“À Peine J’ouvre les Yeux (As I Open My Eyes)”(仏・チュニジア・ベルギー・UAE) 監督: Leyla Bouzid

 ◆2017年
 ・『BPM ビート・パー・ミニット』(仏) 監督:ロバン・カンピヨ
 ・『ウェスタン』“Western”(独・ブルガリア・オーストリア) 監督:ヴァレスカ・グリーゼバッハ(Valeska Grisebach)
 ◎『サーミの血』(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー) 監督:アマンダ・シェーネル(Amanda Kernell)

 ◆2018年
 ◎ 『たちあがる女』“Woman at War(Kona fer í stríð)”(アイスランド・仏・ウクライナ) 監督:ベネディクト・エルリングソン
 ・“Styx”(独・オーストリア) 監督:Wolfgang Fischer
 ・“The Other Side of Everything (Druga strana svega)”(セルビア・仏・カタール) 監督:Mila Turajlić

 【第13回Lux賞】

 ・“The Realm(El reino)”(西・仏) 監督:ロドリゴ・ソロゴジェン(Rodrigo Sorogoyen)

 ◎“God Exists, Her Name Is Petrunya(Gospod postoi, imeto i' e Petrunija)”(北マケドニア・ベルギー・スロヴェニア・クロアチア・仏) 監督:Teona Strugar Mitevska
 出演:Zorica Nusheva、ラビナ・ミテフスカ(Labina Mitevska)、Stefan Vujisic、Suad Begovski、Simeon Moni Damevski、Violeta Sapkovska、Petar Mircevski、Andrijana Kolevska、Nikola Kumev、Bajrush Mjaku
 物語:1月19日。マケドニアでは毎年公現祭が行なわれる。これはマケドニア独特の儀式で、大祭司が川に十字架を投げ込み、それを手に入れた者が1年間幸運に恵まれるというもので、見つけた者は地元のヒーローになれる。Petrunijaは、31歳の歴史家だが、失業中で、両親と一緒に暮らしている。彼女は、ブラック企業での面接からの帰りに、儀式に出 くわし、川に飛び込んで十字架を獲得する。しかし、ひとりの男性が、彼女には参加する権利がないと言って、彼女から十字架を奪おうとする。騒ぎが続き、混乱が激しくなって、Petrunijaは十字架を持って逃げる。しかし、結局は警察署に連行されることになる。彼女は自分が勝者であると主張し、十字架に渡すことを拒む。警官、検査官、司祭が彼女にあきらめるよう説得しようとするが失敗する。
 ベルリン国際映画祭2019コンペティション部門出品。エキュメニカル審査員賞、Guild Film Prize受賞。
 トランシルヴァニア国際映画祭2019出品。
 シドニー映画祭2019出品。
 エジンバラ国際映画祭2019出品。
 Transatlantyk映画祭2019出品。
 オデッサ国際映画祭2019出品。
 ゴールデン・アプリコット・エレヴァン国際映画祭2019出品。
 トゥー・リバーサイズ・フィルム&アート・フェスティバル2019出品。
 モトヴン映画祭2019出品。国際批評家連盟賞受賞。
 スロヴェニア映画祭2019出品。Best Minority Coproductions受賞。
 ベルゲン国際映画祭2019出品。
 ライデン国際映画祭2019出品。
 FilmBathフェスティバル2019出品。
 セビリヤ・ヨーロッパ映画祭2019出品。女優賞(Zorica Nusheva)受賞。
 Cinemateca Portuguesa 2019出品。

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 ・“Cold Case Hammarskjöld”(デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・ベルギー) 監督:マッツ・ブリュガー(Mads Brügger)

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 受賞結果が、ヨーロッパ映画賞や米国アカデミー賞国際映画賞(外国語映画賞)につながったりもするラックス賞ですが、今年はノミネーション/エントリー段階で既に落選しているので、ほぼここまでの結果となりました。

 ちなみに、本年度の、(ヨーロッパを中心とした)主な映画賞の結果は、

 ベルリン国際映画祭 金熊賞:『シノニムズ』(仏・イスラエル・独) 監督:ナダヴ・ラピド
 カンヌ国際映画祭 パルムドール:『パラサイト 半地下の家族』(韓) ポン・ジュノ
 ベネチア国際映画祭 金熊賞:『ジョーカー』(米) 監督:トッド・フィリップス
 サンダンス映画祭 グランプリ:“Clemency”(米) 監督:Chinonye Chukwu
 ロッテルダム国際映画祭 タイガー・アワード:“Present.Perfect.(局外人/The Stranger)”(米・香港) 監督:Zhu Shengze(楊正帆)
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 クリスタル・グローブ:“The Father(Bashtata)”(ブルガリア・ギリシャ) 監督:クリスティナ・グロゼヴァ(Kristina Grozeva)、ペタル・ヴァルチャノフ(Petar Valchanov)
 ロカルノ国際映画祭 金豹賞:“Vitaina Varela”(ポルトガル) 監督:ペドロ・コスタ
 トロント国際映画祭 ピープルズ・チョイス賞:『ジョジョ・ラビット』(米) 監督:タイカ・ワイティティ
 サンセバスチャン国際映画祭 ゴールデン・シェル:“Pacified(Pacificado)”(ブラジル) 監督:Paxton Winters
 国際批評家連盟賞 年間グランプリ:『ROMA/ローマ』(メキシコ・米) 監督:アルフォンソ・キュアロン
 ノルディック映画賞:“A White, White Day(Hvítur, Hvítur Dagur)”(アイスランド・デンマーク・スウェーデン) 監督:フリーヌル・パルマソン
 アジア太平洋スクリーン・アワード 作品賞:『パラサイト 半地下の家族』(韓) ポン・ジュノ

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