米国アカデミー Governorsアワード2018 発表

 米国アカデミー賞の第10回Governorsアワードの受賞者が発表されました。(9月4日夜)

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 ◎アカデミー賞名誉賞:Marvin Levy(パブリシスト)
 Marvin Levyは、アカデミー賞名誉賞を贈られた初めてのパブリシスト。
 Marvin Levyは、MGMでパブリシティーのキャリアをスタートさせ、1977年の『未知との遭遇』以来、40年にわたってスティーヴン・スピルバーグの作品を手がけている。スピルバーグ以外の作品には、『ザ・ディープ』『クレイマー、クレイマー』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ロジャー・ラビット』『アメリカン・ビューティー』『グラディエーター』などがある。

 ◎アカデミー賞名誉賞:ラロ・シフリン(Lalo Schifrin:作曲家)
 アルゼンチン出身の作曲家。米国アカデミー賞オリジナル作曲賞に5回(『暴力脱獄』『女狐』『さすらいの航海』『悪魔の棲む家』『スティング2』)、オリジナル歌曲賞に1回(『コンペティション』)ノミネートされているが、受賞はしていない。『さすらいの航海』『悪魔の棲む家』『コンペティション』ではゴールデン・グローブ賞オリジナル作曲賞ノミネート。
 最新の仕事は『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のテーマ曲の作曲者としてクレジットされている。86歳。

 ◎アカデミー賞名誉賞:シシリー・タイソン(Cicely Tyson:女優)
 ハーレムで生まれ、モデルやブロードウェイ、オフ・ブロードウェイの舞台でキャリアを重ねる。1973年に『サウンダー』で米国アカデミー賞主演女優賞ノミネート(ゴールデン・グローブ賞もノミネート)。
 近年でも『殺人を無罪にする方法』『ハウス・オブ・カード 野望の階段』『30年後の同窓会』などコンスタントにテレビ・ドラマや映画に出演している。
 93歳。
 アカデミー賞名誉賞を受賞した黒人としては、シドニー・ポワチエ(2001)、ジェームズ・アール・ジョーンズ(2011)、スパイク・リー(2015)、チャールズ・バーネット(2017)に続いて5人目。黒人女優としては初めて。

 ◎アーヴィング・G・タルバーグ賞(The Irving G. Thalberg Memorial Award):キャスリーン・ケネディー(プロデューサー)
 『ET』『カラー・パープル』『シックス・センス』『シービスケット』『ミュンヘン』『ベンジェミン・バトン 数奇な人生』『戦火の馬』『リンカーン』と8回米国アカデミー賞作品賞にノミネート。BAFTA英国アカデミー賞にも5回ノミネートされているが、1回も受賞していない。スティーヴン・スピルバーグとは『ET』から『リンカーン』(『BFT:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』)までパートナーを組んでいるが、パートナーを組んだ作品では受賞できていない。(スピルバーグは、『シンドラーのリスト』で作品賞、監督を受賞する以前に、1987年にアーヴィング・G・タルバーグ賞を受賞している。)
 今回、同時受賞となったフランク・マーシャルは夫。
 アーヴィング・G・タルバーグ賞を受賞した女性は、キャスリーン・ケネディーが初めて。
 65歳。
 アーヴィング・G・タルバーグ賞は、2010年にフランシス・フォード・コッポラが受賞して以来8年ぶりの授与。

 2013年に“The Film Experience”という映画サイトが、「次にアカデミー賞名誉賞を獲るべき10人の女たち」(http://umikarahajimaru.at.webry.info/201307/article_7.html)というリストを発表していますが、そこから2013年にアンジェラ・ランズベリー、2014年にモーリン・オハラ、2015年にジーナ・ローランズが受賞し、1年休んで、2017年にアニエス・ヴァルダが受賞。そして、今回名誉賞ではありませんでしたが、キャスリーン・ケネディーが受賞し、6年間で10人中5人が受賞(1人故人)というなかなか高い的中率になっています。

 ◎アーヴィング・G・タルバーグ賞(The Irving G. Thalberg Memorial Award):フランク・マーシャル(プロデューサー)
 『レイダース 失われた聖櫃』『カラー・パープル』『シックス・センス』『シービスケット』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』で5回米国アカデミー賞作品賞にノミネート。BAFTA英国アカデミー賞作品賞には3回ノミネート、児童賞(BAFTA Children's Award)には1回ノミネート。
 スピルバーグ、後に妻となるキャスリーン・ケネディーと1981年にアンブリン・エンタテインメントを設立し、キャスリーン・ケネディーとは1987年に結婚。1991年にケネディー/マーシャル・カンパニーを設立している。
 71歳。

 授賞式は、11月18日に行なわれます。

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 【アカデミー賞名誉賞】

 アカデミー賞名誉賞(Academy Honorary Awards)というのは、現行のアカデミー賞ではカバーできない「映画における功績」を讃えるために設けられた賞で、元々は「特別賞」(Special Award)だったものが1948年にアカデミー賞名誉賞となり、現在まで続いています。

 ポイントは、いくつかあって―
 ・授与対象は、作品や団体であってもよく、作品にアカデミー賞名誉賞が贈られた一番最後は1955年には稲垣浩監督の『宮本武蔵』で、団体にアカデミー賞名誉賞が贈られた一番最後は1988年のイーストマン・コダックとカナダのNFB、となっています。

 ・「現行のアカデミー賞ではカバーできない」ということに関しては、カテゴリー的に、その後、アカデミー賞の正式な部門に昇格したものもあり、『宮本武蔵』までアカデミー賞名誉賞が贈られた8つの「作品」は、「外国語映画賞」というカテゴリーがなかった頃の「外国語映画賞」に当たり、『宮本武蔵』受賞の翌年に外国語映画賞が設けられ、それ以前の8作品も今では「外国語映画賞」受賞作という風に扱われています。
 1964年にはウィリアム・J・タトルに、1968年にはジョン・チェンバースに「アカデミー賞名誉賞」が贈られていますが、これは「メイキャップ賞」(現・メイキャップ&スタイリング賞)に当たるもので、その後、「メイキャップ賞」は1981年度からアカデミー賞の正式な部門に昇格しています。
 また、正式な部門に昇格しなかった「アカデミー賞名誉賞」もあり、1944年~46年には「子役賞」(child actor/actress)に当たる賞として「アカデミー賞名誉賞」が授与されています。(1934、38、39、48、49、54、60年には、それぞれJuvenile Performanceに「アカデミー賞名誉賞」が贈られています。)

 ・「アカデミー賞名誉賞」の授与対象者は、基本的にはこれまでアカデミー賞の正式な部門の賞を受賞したことがない者に贈られる傾向があります。 ※追記

 ・アカデミー賞名誉賞には、1930-40年代の「子役賞」や、1989年の黒澤明から1999年のアンジェイ・ワイダまでの一連の外国人監督など、時代により流行があります。

 【参考】

 1.2017年度までで、アカデミー賞名誉賞を受賞した個人または団体は、160組あまりいますが、アカデミー賞の正式な部門で過去に受賞したことがあって、その後、アカデミー賞名誉賞を贈られた個人は22人います。

 アン・V・コーツ、ジャン=クロード・カリエール、宮崎駿、ディック・スミス、ロバート・レッドフォード、シドニー・ポワチエ、ジャック・カーディフ、エリア・カザン、チャック・ジョーンズ、ソフィア・ローレン、ジェームズ・スチュアート、ハル・ローチ、アレック・ギネス、ローレンス・オリヴィエ、メアリー・ピックフォード、オーソン・ウェルズ、アーサー・フリード、ゲイリー・クーパー、チャールズ・ブラケット、Pete Smith、ウィリアム・キャメロン・メンジース、マック・セネット

 これらの受賞者は、単に1つのジャンルにとどまらない幅広い活動をして、映画界に多大な貢献をしたと認められた映画人がほとんどであるようです。

 過去には―
 チャールズ・ブラケットは、脚本賞を受賞してから3年後にアカデミー賞名誉賞を受賞
 アーサー・フリードは、作品賞を受賞してから8年後にアカデミー賞名誉賞を受賞
 ウォルト・ディズニーは、正式の部門賞を受賞した前後あるいは同じ年にアカデミー賞名誉賞を受賞

 ということもありましたが、現在では、20年以上のインターバルが置かれることが普通で、

 ディック・スミスは、1985年にメイキャップ賞を受賞して、26年後の2011年にアカデミー賞名誉賞を受賞
 ロバート・レッドフォードは、1981年に監督賞を受賞して、20年後の2001年にアカデミー賞名誉賞を受賞
 アレック・ギネスは、1958年に主演男優賞を受賞して、21年後の1979年にアカデミー賞名誉賞を受賞

 という風になっています。

 2.アカデミー賞名誉賞は、それまでにアカデミー賞と縁がなかった人に贈られる傾向がありますが、アカデミー賞名誉賞を贈られた後で、アカデミー賞受賞を果たしている人も9人います。

 ポール・ニューマン、ヘンリー・フォンダ、チャールズ・チャップリン、ジェローム・ロビンス、セシル・B・デミル、ハロルド・ラッセル、ネイサン・レヴィンソン、ウォルト・ディズニー、W・ハワード・グリーン

 このうち、ジェローム・ロビンスとハロルド・ラッセルとウォルト・ディズニーは、同一年度にアカデミー賞名誉賞とアカデミー賞を受賞していて、ポール・ニューマンとヘンリー・フォンダとチャールズ・チャップリンは、アカデミー賞名誉賞を受賞した翌年にアカデミー賞を受賞しています。

 アカデミー賞名誉賞を受賞した後で、正式部門でノミネーションを受けた人はもっとたくさんいます。

 3.これまでにアカデミー賞名誉賞を2度以上受賞した人は8人います。

 ミッキー・ルーニー、ローレンス・オリヴィエ、チャールズ・チャップリン、ボブ・ホープ、ジーン・ハーショルト、ウォルター・ウェンジャー、ウォルト・ディズニー、W・ハワード・グリーン

 このうちで、アカデミー賞名誉賞最多受賞はボブ・ホープの4回で、複数回受賞した最後の受賞者は1982年のミッキー・ルーニーです。

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 本年度の受賞者は、ややニュース性に欠けるかなという印象も受けますが、

 2016年:Lynn Stalmasterが、キャスティング・デイレクターとして初めて名誉賞受賞。
 フレデリック・ワイズマンが、ドキュメンタリー監督として初めて名誉賞受賞。
 ジャッキー・チェンが、香港映画人として初めて名誉賞受賞。

 2017年:チャールズ・バーネットが、黒人監督として2人目の名誉賞受賞。
 「米国アカデミー賞に一度もノミネートされたことがない俳優40人」からドナルド・サザーランドが受賞。

 2018年:Marvin Levyが、パブリシストとして初めて名誉賞受賞。
 「次にアカデミー賞名誉賞を獲るべき10人の女たち」からキャスリーン・ケネディーが5人目の受賞。

 というように、なかなか受賞を果たせない映画人やジャンルがあって、順番待ちの長い列ができているらしいことがあり、AMPASも小刻みながらそうした期待に応えていっていることがわかります。

 アニエス・ヴァルダは名誉賞を受賞しなければ、長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたんじゃないかということもありますが、タイミングの問題もあって、ゴードン・ウィリスやローレン・バコール、モーリン・オハラ、デビー・レイノルズ(ヒューマニタリアン賞/ジーン・ハーショルト博愛賞)は間に合ってよかったですよね。

 本年度は、2015年に名誉賞を受賞したスパイク・リーが初めて米国アカデミー賞監督賞ノミネートされるなんてこともありそうです。(ライアン・クーグラーとともに黒人監督が2人監督賞にノミネートされる可能性は低そうだから、現時点でスパイク・リーが監督賞にノミネートされる可能性は50%以下かなあ。)

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 *当ブログ記事

 ・米国アカデミー Governorsアワード2017 発表:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201709/article_16.html  ・米国アカデミー Governorsアワード2017 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201711/article_20.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2016 発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201609/article_4.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2016 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201611/article_21.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2015 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201511/article_16.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2014 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201411/article_6.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2013 発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_12.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2013 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201311/article_27.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2012 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201212/article_7.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2011 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201112/article_4.html
 ・米国アカデミー Governorsアワード2010 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_22.html

 ・次にアカデミー名誉賞を贈るべき10人の女たち2013:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201307/article_7.html

 ・米国アカデミー賞に一度もノミネートされたことがない俳優40人:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201312/article_76.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2018年3月~9月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201803/article_33.html


 追記:
 ・米国アカデミー Governorsアワード2018 受賞結果:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201811/article_29.html

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