全州国際映画祭2018 受賞結果

 第19回全州国際映画祭(5月3日-12日)の受賞結果です。

 【全州国際映画祭】

 全州国際映画祭といえば、「三人三色」というプロジェクトで有名ですが、映画祭としては、有名な監督の作品や、既に高い評価を得ている作品を揃えるのではなく、無名でも野心的な若い映画作家の作品を積極的に紹介しようとしている映画祭、ということになるでしょうか。

 コンペティション部門は3つあり、そのうちのインターナショナル・コンペティションでは、過去に諏訪敦彦監督の『M/other』やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『真昼の不思議な物体』などがWoosuk Award(大賞)を受賞しています。
 正直なところ、(韓国映画以外は)そんなにプレミア度は高くありませんが(『M/other』の受賞もカンヌでの受賞から約1年後でした)、『M/other』や『真昼の不思議な物体』がグランプリを受賞しているということで、この映画祭が志向する方向はぼんやりと覗えるように思います。

 以前は、デジタルで作品を制作することやデジタルで制作された作品を上映することに力を入れていて、それを映画祭の1つの特色として打ち出していましたが、大半の作品がデジタルで撮影されるようになった現在、「デジタル」を前面に出すことはなくなったようです。

 本年度の受賞結果は、以下の通り。

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 【インターナショナル・コンペティション部門】(International Competition)

 ・“DRIFT”(独) 監督:Helena Wittmann [アジア・プレミア]
 ・“Lemonade”(ルーマニア・カナダ・独・スウェーデン) 監督:Ioana Uricaru [アジア・プレミア]
 ・“The Return”(デンマーク・韓) 監督:Malene Choi Jensen [アジア・プレミア]
 ・“Distant Constellation”(米・トルコ・オランダ) 監督:Shevaun Mizrahi [アジア・プレミア]
 ・“The Reports on Sarah and Saleem”(パレスチナ・オランダ・独) 監督:Muayad Alayan [アジア・プレミア]
 ・『マタンギ/マヤ/M.I.A』“MATANGI / MAYA / M.I.A.”(米・英・スリランカ) 監督:スティーヴ・ラヴリッジ(Steve Loveridge) [アジア・プレミア]
 ・『サイモン&タダタカシ』“Saimon & Tada Takashi”(日) 監督:小田学 [インターナショナル・プレミア]
 ・“Notes on an Appearance”(米/60min) 監督:Ricky D‘Ambrose [アジア・プレミア]
 ・“The Heiresses”(パラグアイ) 監督:Marcelo Martinessi [アジア・プレミア]
 ・“Baronesa”(ブラジル) 監督:Juliana Antunes [アジア・プレミア]

 ※審査員:Davide Oberto(イタリアのキュレーター/Doclisboaの共同ディレクター)、サラ・アドラー(イスラエルの女優)、パン・ウンジン(韓国の女優/映画監督)、クォン・ヘヒョ(韓国の男優)

 ◆グランプリ(Grand Prize)
 ◎“The Heiresses(Las herederas)”(パラグアイ) 監督:Marcelo Martinessi
 出演:Ana Brun、Margarita Irún、Ana Ivanova
 物語:ChelaとChiquitaは、裕福な家の出身で、30年以上にわたってアスンシオンで一緒に暮らしてきた。ところが経済状況が悪化し、彼らは受け継いだ財産を手放していく。借金のせいで、Chiquitaは刑務所に入れられることになり、Chelaは新しい現実を受け止めなくてはならなくなる。彼女は、何年かぶりに車の運転をし、裕福な高齢の女性グループのために地元でタクシーのサービスを始める。新しい生活にも慣れ始めた頃、年下のAngyと出会い、フレッシュで元気づけられる関係を築いていく。Chelaはついに自分の殻を抜け出し、世界と関わり、自分自身のパーソナルで親しみのある革命に乗り出していく。
 初監督長編。
 ベルリン国際映画祭2018 コンペティション部門出品。女優賞(銀熊賞:Ana Brun)、アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)、テディー賞読者賞受賞。
 カルタヘナ映画祭2018 監督賞、国際批評家連盟賞受賞。
 トランシルヴァニア国際映画祭2018 コンペティション部門出品。グランプリ受賞。
 リマ・ラテンアメリカ映画祭2018出品。女優賞(Ana Brun)、第1回作品賞受賞。
 Molodist国際映画祭2018出品。最優秀LGBTQ映画賞受賞。
 シアトル国際映画祭2018 審査員大賞スペシャル・メンション受賞。
 シドニー映画祭2018出品。作品賞受賞。
 エジンバラ国際映画祭2018出品。
 ゴールウェイ映画祭2018出品。
 ワールド・シネマ・アムステルダム2018出品。
 グラマド映画祭(ブラジル)2018ラテン映画コンペティション部門出品。作品賞、監督賞、女優賞(Ana Brun、Margarita Irun、Ana Ivanova)、脚本賞、観客賞、Kikito Critics Prize受賞。
 サンセバスチャン国際映画祭2018ホライズンズ・ラティーノ部門出品。


 ◆作品賞(Best Picture Prize)
 ◎“Distant Constellation”(米・トルコ・オランダ) 監督:Shevaun Mizrahi
 イスタンブールの老人ホーム。建物の外では、クレーンが右往左往し、開発区が様変わりしていくのに対し、建物の中では、時間が止まり、居住者たちは、回想に耽っている。ひとりの女性が、家族がアメリカ人のジェノサイドの犠牲になったことを話す。ひとりの老人男性は、過去の性的な出会いを思い出し、『ロリータ』を読む。癌にかかって失明した写真家は、今では撮られる側にまわる。
 初監督作品。
 True/False映画祭2017出品。
 ロカルノ国際映画祭2017 フィルムメイカーズ・オブ・ザ・プレゼント コンペティション部門出品。スペシャル・メンション受賞。
 レイキャビク国際映画祭2017出品。
 BFIロンドン映画祭2017 ドキュメンタリー・コンペティション部門出品。
 ウィーン国際映画祭2017出品。国際批評家連盟賞受賞。
 セビリヤ・ヨーロッパ映画祭2017出品。最優秀ノンフィクション賞受賞。
 フィルムズ・フロム・ザ・サウス映画祭2017出品。
 Scanorama映画祭ヴィリニュス2017出品。
 アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭2017出品。
 ドックポイント・ヘルシンキ2018出品。
 ヨーテボリ国際映画祭2018出品。
 イスタンブール・インディペンデント映画祭2018出品。
 インディペンデント・スピリット・アワード2018 Truer Than Fiction Awardノミネート。
 ワン・ワールド・ルーマニア2018出品。
 ロカルノ・フェスティバル in ロサンゼルス2018出品。
 サラソータ映画祭2018出品。
 DOKフェスト国際ドキュメンタリー映画祭2018ミュンヘン出品。
 DOXAドキュメンタリー映画祭(カナダ)2018出品。長編ドキュメンタリー賞オナラブル・メンション受賞。
 EDOC, Encuentros del Otro Cine(エクアドル)2018出品。
 BELDOCS国際ドキュメンタリー映画祭(セルビア)2018出品。
 DocAvivテルアビブ国際ドキュメンタリー映画祭2018出品。
 リマ・インディペンデント国際映画祭2018出品。
 ゴールデン・アプリコット国際映画祭2018ドキュメンタリー・コンペティション部門出品。ゴールデン・アプリコット賞受賞。
 オデッサ国際映画祭2018出品。
 西寧FIRST国際映画祭2018出品。
 メルボルン国際映画祭2018出品。
 ドキュフェスト国際ドキュメンタリー&短編映画祭2018出品。


 ◆審査員特別賞(Special Jury Prize)
 ◎“The Return”(デンマーク・韓) 監督:Malene Choi Jensen
 物語:韓国で生まれ、すぐ養女に出されてデンマークにやってきた30代のKarolineは、自分が生まれた国を知りたいのは、自分ひとりだけではないことに気づく。彼女は、自分と境遇が似ているヨーロッパとアメリカの養子仲間の助けを借りて、自分の子ども時代のブラックホールを埋めようとする。これは、ある者にとっては苦痛であり、他の者にとっては、フラストレーションであるが、Karolineの場合は後者だった。彼女は、生まれた国を知り、出生時の名前を知る。だが、もっと必要なことは、実の母親を見つけることだった。
 監督Malene Choi Jensen自身の経験に基づく物語。
 初監督長編。
 ロッテルダム国際映画祭2018 Bright Futureコンペティション部門出品。Bright Future賞スペシャル・メンション受賞。
 ヨーテボリ国際映画祭2018出品。国際批評家連盟賞スペシャル・メンション受賞。
 CPH:DOX 2018出品。
 ヴィリニュス国際映画祭2018 ニュー・ヨーロッパ ニュー・ネーム コンペティション部門出品。
 シアトル国際映画祭2018出品。
 エジンバラ国際映画祭2018出品。
 ニュー・ホライズンズ映画祭2018出品。


 【韓国映画コンペティション部門】(Korean Competition)

 ※審査員:Julietta Sichel(元カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のプログラマー/プロデューサー)、チョン・ジウ(映画監督)、キム・サンギョン(韓国の男優)

 ◆グランプリ(Grand Prize)
 ◎“The Land of Seonghye(확대하기 성혜의 나라)”(韓) 監督:チョン・ヒョンソク(Jung Hyungsuk) [ワールド・プレミア]
 物語:Seonghyeは、29歳の女性で、大学を卒業した後、大会社に見習いとして働いていたが、セクハラへの抗議が無視されたため、それを人権委員会に報告し、会社を辞めた。彼女はすぐにはほかの仕事先を見つけることができず、パートタイムの仕事で生活する。父親は病院で働いていて、食堂で働いている母親は家にお金を入れるよう求めてくる。公務員試験の準備をしているボーイフレンドは、無能で、気が利かない。Seonghyeは、厳しい状況で働くことに黙って耐え、ドラマになるような特技もないのにも拘わらず深い感銘を与える。この映画は、ドラマチックな出来事を盛り上げる代わりに、普通に日常生活を送っている人々の感情に焦点を当てている。
 第2監督長編。したまちコメディ映画祭2017で『ヨスの夜の海』が上映されているチョン・ヒョンソク監督の最新作。

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 ◆CGV Arthouse Distribution Support Prize
 ◎“Dreamer”(韓) 監督:Cho Sungbin [ワールド・プレミア]
 物語:Geunsuは、北朝鮮からの脱北者で、弟と別れ、韓国で暮らしている。彼は、弟と離れたことで苦しみ、韓国での奇妙な現実にもなじめず、不安定な日々を過ごしている。Geunsuの生活は、窃盗の前科を持ち、今は中華料理店で配達の仕事をしているJihyukと出会ってさらに危険なものになる。彼は、Jihyukからドラッグを略奪し、運び屋をやらないかという誘いを受けて、より苦しむことになる。
 近年の脱北者を扱った韓国映画の中でも最も暗く悲惨な物語を題材にしている。犯罪映画の制約に捉われず、ドキュメンタリーのようなありのままの素材を使いながら、避けがたくデッド・エンドに向かう人々の絶望を見つめている。

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 ◆CGV Arthouse Upcoming Project Prize
 ◎“Back From the Beat”(韓/66min) 監督:Choi Changhwan [ワールド・プレミア]
 物語:Minkyuは、DJを夢見ている。彼は、親しい友人のJihongが経営するクラブで、初めてのDJをすることになっている。ガールフレンドのSee-eunは、彼がクラブで公平に扱われていないと感じて、不満に思っている。一方、彼女もまた、友人の営む美術アカデミーで美大の入学試験の準備をする生徒たちの指導をしていて、四苦八苦している。

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 ◆Union Award
 ◎“Graduation”(韓) 監督:Hui Jiye [ワールド・プレミア]
 物語:Haerangは、大学で映画のプロダクション・デザインを専攻する学生で、卒業を間近に控えている。ある日、彼女が卒業アルバムの撮影から帰ると、母親は娘とは離れて暮らすことに決めたと宣言する。Haerangは、準備も不十分なままひとり暮らしを始める。家族も友人もそばにいないひとりの生活は、自然だが、状況に対応すべく努力をしなければならない。

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 【韓国短編コンペティション部門】(Korean Short Film Competition)

 ◆グランプリ(Grand Prize)
 ◎“Dong-a”(韓/40min) 監督:Kwon Yeji

 ◆監督賞(Best Director Prize)
 ◎“Refund”(韓/25min) 監督:Song Yejin

 ◆審査員特別賞(Special Jury Prize)
 ◎“Apocalypse Runner”(韓/39min) 監督:Cho Hyunmin

 【その他の賞】

 ◆ドキュメンタリー賞(Documentary Award – Jin Motors Award)
 ◎“Land of Sorrow(확대하기 서산개척단)”(韓) 監督:Lee Johoon [ワールド・プレミア][Korea Cinemascape部門]
 “Blackdeal ”(2014)では、ネオリベラリズムの多くの国で公営企業の民営化が、なぜ政治とビジネスの良好な関係の間で、壊滅的な状況を導いたのかを詳細に分析したLee Johoonは、本作では、国家の暴力を明らかにしている。1961年にSeosanの埋め立てプロジェクトが始まった時、人々は強制的にそこに送られ、囚人のように働かされた。彼らは自分たちの意思に拘わらず結婚まで強いられ、そこに定住した。しかし、政府は、埋め立て地を与えるとしていた約束を守らなかった。Seosanの埋め立て労働者に関する歴史的状況は、信じられないほどショッキングなものであり、朴正熙政権の暴力と腐敗を余すことなく示している。これは、出来事に関わった人々へのインタビューやフッテージ、再現VTRなど、様々な素材を含むジャーナリズム・ドキュメンタリーである。

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 ◆NETPAC賞
 ◎“Adulthood”(韓) 監督:Kim Inseon [ワールド・プレミア] [Korea Cinemascape部門]
 物語:14歳のKyungunは、父親の葬儀で初めて叔父Jaeminと出会う。Jaeminは、見誤ることがないほどの詐欺師で、Kyungunは自分に残されていた保険金をすべて盗られてしまう。Kyungunは、お金を取り戻すために、地元の薬剤師をターゲットにした次の詐欺に加わり、彼の娘になりすます。ところが、一連の喜劇的な状況の中で、詐欺は砕け散って、子どものような大人と大人のような子どもは、互いに頼り合うようになっていく。

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 *当ブログ記事

 ・全州国際映画祭2017 受賞結果:https://umikarahajimaru.at.webry.info/201705/article_9.html
 ・全州国際映画祭2016 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201605/article_13.html
 ・全州国際映画祭2014 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201405/article_19.html
 ・全州国際映画祭2013 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_23.html
 ・全州国際映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_11.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2018年3月~9月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201803/article_33.html

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