BFIロンドン映画祭2016 受賞結果

 第60回BFIロンドン映画祭(10月5日-16日)の各賞が発表されました。

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 【オフィシャル・コンペティション部門】(The Official Competition)

 ※審査員:アティナ・レイチェル・ツァンガリ(審査員長)、アンソニー・チェン、Radu Jude、ググ・ンバータ=ロー、アビ・モーガン

 ◆最優秀作品賞
 ◎“Certain Women”(米) 監督:ケリー・ライヒャルト
 出演:クリステン・スチュワート、ミシェル・ウィリアムズ、ローラ・ダーン、ジャレッド・ハリス、ジェームズ・レグロス、リリー・グラッドストーン(Lily Gladstone)、ルネ・オーベルジョノワ
 物語:モンタナ州の小さな町。3つの物語が展開する。
 ローラ・ウェルズ(ローラ・ダーン)は、弁護士をしていて、8か月もの間、しつこくフラー(ジャレッド・ハリス)にからまれている。フラーは、建設作業員で、仕事現場で作業の後にケガをし、障害を負った。会社からは既に補償金をもらっているが、彼は自分が騙されていると思っている。ローラは、別の弁護士を紹介するが、彼は納得せず、何度も彼女の事務所に押しかけてくる。
 ジーナ(ミシェル・ウィリアムズ)とライアン(ジェームズ・レグロス)は、夫婦で、ガスリーというティーンの娘がいる。ジーナは、ライアンの行動にいつもイラつかされ、傷つけられていると感じている。2人は、新しい家を建てようとしているが、まっさらな地面から建てるのには、土台が弱いと考える。彼らは、アルバート(ルネ・オーベルジョノワ)の所有している砂岩に目をつけ、譲ってくれないかと交渉に行く。ジーナが話すが、アルバートが話に割って入り、ライアンにしか興味はないというような素振りを見せる。最終的に砂岩を譲ってもらえることになるが、ジーナは別れの予兆を感じ、会話をこっそり録音する。
 ジェイミー(リリー・グラッドストーン)は、牧場で働いている。冬の間は特に孤独を感じる。ある晩、彼女は町にでかけて、学校に入っていく車を見かける。それは、若い弁護士ベス(クリステン・スチュワート)で、大人の生徒に教育法を教えている。ジェイミーは、教育法などに興味はなかったが、ベスを目当てに授業を取る。彼女は、ベスが、リヴィングストンに住んでいて、往復に1日4時間もかけていることを知る。ある日突然、ベスが教師を辞めて、学校に来なくなる。ジェイミーは、ベスを捜して、リヴィングストンに向かう。
 3つの物語は、登場人物によって結びつけられる。
 マイリー・メロイの3つの短編“Tome”、“Native Sandstone”、“Travis B”の映画化。
 トッド・ヘインズが製作総指揮を手がけている。
 サンダンス映画祭2016 Premieres部門出品。
 シドニー映画祭2016出品。
 エルサレム映画祭2016 インターナショナル・コンペティション部門出品。
 ニュージーランド国際映画祭2016出品。
 トラヴァース・シティー映画祭2016出品。
 モトヴン映画祭2016 メイン・プログラム出品。
 メルボルン国際映画祭2016出品。
 ドーヴィル・アメリカン映画祭2016 コンペティション部門出品。
 トロント国際映画祭2016 MASTERS部門出品。
 ヘルシンキ国際映画祭2016出品。
 チューリヒ映画祭2016出品。
 ニューヨーク映画祭2016出品。
 リオ・デ・ジャネイロ国際映画祭2016出品。
 ミル・ヴァレー映画祭2016出品。
 CPH:PIX2016出品。

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 【第1回作品コンペティション部門】(First feature competition)

 ※審査員:サラ・ガヴロン、George Amponsah(イギリスの監督、プロデューサー)、Guy Lodge(映画批評家)、マシュー・マクファディン(Matthew MacFadyen:男優)、デイヴィッド・ニコルズ(David Nicholls:イギリスの小説家、脚本家)、ニラ・パーク(Nira Park:イギリスのプロデューサー)

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 ◆第1回作品賞/サザーランド賞(The Sutherland Award) プレゼンター:ロモーラ・ガライ
 ◎“Raw”(仏・ベルギー) 監督:Julia Ducournau
 出演:Garance Marillier、Ella Rumpf、ラバ・ナイト・ウフェラ(Rabah Naït Oufella)、ローラン・リュカ、ジョアンナ・プレイス
 物語:ジャスティンの一家は、みんな獣医で、ベジタリアンである。彼女は、才能に恵まれ、16歳で、姉も学んでいる獣医学校に入学する。彼女は、準備する間もなく、いじめを受け、人生で初めて生肉を食べさせられる。すると彼女の真の自我が現れ始め、思ってもみなかった結果が出来する。
 カンヌ国際映画祭2016 国際批評家週間出品。国際批評家連盟賞受賞。
 トロント国際映画祭2016 MIDNIGHT MADNESS部門出品。ピープルズ・チョイス賞 MIDNIGHT MADNESS部門 次点2位。
 リオ・デ・ジャネイロ国際映画祭2016出品。
 ハイファ国際映画祭2016出品。
 シカゴ国際映画祭2016出品。
 CPH:PIX2016出品。

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 ◆特別コメンデーション(A Special Commendation)
 ・“Divines”(仏・カタール) 監督:Houda Benyamina
 Oulaya Amamraの卓越した演技と、その大いなるエネルギーと信憑性に対して(for its standout female performance from Oulaya Amamra and for its great energy and veracity)。
 出演:Déborah Lukumuena、Jisca Kalvanda、Kévin Mischel、Majdouline Idrissi、Oulaya Amamra、Yasin Houicha
 物語:15歳のDouniaは、母と一緒にピラミッド・エステートに住んでいる。そこで彼女は“bâtarde”(私生児)というあだ名で呼ばれていた。Douniaは、親友であるMaimounaの後押しもあって、大物のドラッグ・ディーラーRebeccaの仲間になる決心をする。それから若いダンサーDjiguiと出会い、彼女の人生は大きく変わる。
 カンヌ国際映画祭2016 監督週間出品。カメラドール、SACD賞 スペシャル・メンション受賞。
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2016 アナザー・ビュー部門出品。
 ミュンヘン映画祭2016 CineVision Award受賞。
 トロント国際映画祭2016 DISCOVERY部門出品。
 ハンプトンズ国際映画祭2016出品。

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 【ドキュメンタリー・コンペティション部門】(Documentary competition)

 ※審査員:ルイーズ・オズモンド(審査員長)、エドマンド・クルサード(Edmund Coulthard:監督、プロデューサー)、David Dehaney(イギリスのプロデューサー、監督)、ショーン・マカリスター、Sanjay Singhal(グリアソン・トラストの副会長)

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 ◆最優秀ドキュメンタリー賞 プレゼンター:デイヴィッド・テナント
 ◎“Starless Dreams(Royahaye Dame Sobh)”(イラン) 監督:メェーダッド・オスコウイ(Mehrdad Oskouei)
 イランにある女性用矯正&リハビリ・センター。激しい雪が降る中、重装備の守衛がパトロールしている。中では、少女たちがフード・カウンターで食事を待っている。彼らの中には、低年齢で母親になった者や結婚している者もいる。彼らは、皆、麻薬取引や暴行、殺人などの犯罪を犯してここに入ることになった。残酷な犯罪とは対照的に、彼らは、フレンドリーで温かく、笑い、歌い、一緒に泣く。彼らは、過去に犯したトラブルで、結びつけられている。彼らの中には、彼らがかつて生活していた世界に戻ることを恐れる者もいる。カメラは、親密だが、敬意を持って、彼らの姿をとらえる。
 ベルリン国際映画祭2016 ジェネレーション14plus部門出品。アムネスティ・インターナショナル賞受賞。
 True/False映画祭2016出品。True Vision Award受賞。
 フル・フレーム・ドキュメンタリー映画祭2016出品。最優秀ドキュメンタリー賞(Inspiration Award)、Reva and David Logan Grand Jury Award受賞。
 HotDocsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭2016出品。
 メルボルン国際映画祭2016出品。
 カムデン国際映画祭2016出品。
 チューリヒ映画祭2016出品。
 シカゴ国際映画祭2016出品。

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 【短編映画賞プログラム】(Short Film Award)

 ※審査員:Mat Kirkby(審査員長:監督、脚本家)、Bola Agbaje(劇作家、脚本家)、Oli Hyatt(Blue Zoo Animation Studio)、Sara Ishaq(監督、脚本家)、John Maclean(監督、脚本家)、Nico Marzano(ICAプログラム・マネージャー)

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 ◆最優秀短編映画賞 プレゼンター:アンナ・フリエル
 ◎“9 Days–From My Window In Aleppo”(オランダ) 監督:Issa Touma、Thomas Vroege、Floor Van Der Meulen
 政府軍と反政府軍の対立に端を発したシリア内戦(2011年~)は、2012年7月にアレッポ市内へと拡大する。本作では、アレッポ市内に住むシリアの有名な写真家Issa Toumaが、自分の家の窓から見た同年8月のアレッポ蜂起の刻々と変わる様子を、その最初から9日間にわたって記録している。(戦闘はその後3年以上にわたって続いている。)
 DOKライプチヒ2015 インターナショナル・プログラム出品。
 ロッテルダム国際映画祭2016 Voices部門出品。
 クレモンフェラン国際短編映画祭2016 インターナショナル・コンペティション部門出品。
 タンペレ国際映画祭2016 インターナショナル・コンペティション部門出品。Special Merit for Documentary & Honorable Mention 受賞。
 Kinodot 国際ミニマリスト短編映画祭(サンクトペテルスブルク)2016 オブザーバー・ドキュメンタリー・コンペティション部門出品。観客賞受賞。
 ウエスカ国際映画祭2016(西) インターナショナル短編ドキュメンタリー・コンペティション部門出品。最優秀短編ドキュメンタリー賞受賞。
 ヨーロッパ映画賞2016 短編映画賞ブリストル代表。

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 ◆BFI Fellowship プレゼンター:マイケル・ファスベンダー
 ◎スティーヴ・マックイーン

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 “Certain Women”は、本年度の映画賞レースの下馬評にも挙がっている作品です(たぶんこの作品にとって今回が初めての受賞のはずです)。シノプシスを読んだだけでは、どこがいいのかよくわかりませんでしたが、予告編を見ると、なかなかよさそうです。
 日常生活の中のちょっとした心の移ろいや、自分でもどうしようもできない感情や、微妙な感情のひだをとらえたような作品というか。
 3つの物語は、他人どうし、夫婦、女性どうしというバリエーションなのかもしれません。
 レイモンド・カーヴァーを想起したりもしますが、原作者のマイリー・メロイは、日本では村上春樹が翻訳していて、この作品自体も『ショート・カッツ』が引き合いに出されたりしています。
 映画賞レースのメインストリームに入ってくるかどうかはわからないし、米国アカデミー賞のどこかにノミネートされるかどうかもわからないけれど、賞レースのどこかには確実に絡んでくるんじゃないでしょうか。

 短編部門の“9 Days–From My Window In Aleppo”も有望な作品です。既にヨーロッパ映画賞の短編映画賞にノミネートされていますが、ひょっとすると米国アカデミー賞短編ドキュメンタリーのショートリストあたりに入ってくるかもしれません。現時点で、シリアは、世界が(映画も)最も高い関心を寄せているホットスポットになっていますから。
 でもアラビア語作品だから、アカデミー会員には抵抗があるかもしれません。

 ※授賞式に出席した新海誠監督。

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 4つのコンペティション部門すべてにアニメーション作品がエントリーされたのは、ロンドン映画祭史上初めてのことだそうです。これに関して、映画祭サイドは、2016年を「アニメーションのゴールデン・イヤー」と記しています。

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 *当ブログ記事

 ・BFIロンドン映画祭2016 ラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201610/article_25.html
 ・BFIロンドン映画祭2016 ラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201610/article_26.html

 ・BFIロンドン映画祭2013 ラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_5.html
 ・BFIロンドン映画祭2013 ラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_6.html
 ・BFIロンドン映画祭2013 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_31.html

 ・BFIロンドン映画祭2012 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201210/article_28.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2016年6月~11月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201606/article_2.html

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