カトリーヌ・ドヌーヴ リュミエール賞授賞式/リュミエール映画祭2016 ラインナップ

 カトリーヌ・ドヌーヴが、第8回リュミエール賞(Prix Lumière)を受賞しました。(10月14日)

 同じ名前で、春先に発表されるフランスの映画賞があるのでまぎらわしいですが、こちらはフランスのリヨンで毎年10月に開催されるリュミエール映画祭(今年は10月8日-16日)の中で設けられているもので、年ごとに、国際的な業績を残した映画人をひとり選んで、贈られるものです。

 リュミエール映画祭(Le Festival Lumière, également appelé Grand Lyon Film Festival)は、リュミエール兄弟にちなんで2009年からスタートした映画祭で、映画遺産にオマージュを捧げることを基本のコンセプトとしていて、プログラムも、修復作品の上映と、トリビュート、レトロスペクティヴが中心になって組まれています。プレジデントはベルトラン・タヴェルニエ、補佐をティエリー・フレモーが務めています。
 リュミエール映画祭も非常に興味深い映画祭で、今年のラインナップもとてもユニークなものになっていますが、ここでは、リュミエール賞を中心に記事にすることにします。

 まず、これまでの受賞者には以下のような人がいます。

 2009年:クリント・イーストウッド
 2010年:ミロシュ・フォアマン
 2011年:ジェラール・ドパルデュー
 2012年:ケン・ローチ
 2013年:クエンティン・タランティーノ
 2014年:ペドロ・アルモドバル
 2015年:マーティン・スコセッシ

 ドヌーヴは、リュミエール賞が始まって初めての女性の受賞者になります。

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 【授賞式】

 ドヌーヴの紹介役は、ヴァンサン・ランドン。

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 ドヌーヴは、娘のキアラ・マストロヤンニとともに登場。
 賞のプレゼンターは、ロマン・ポランスキー。

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 3000人の観客を前に、ベルトラン・タヴェルニエ、コスタ=ガヴラス、レジス・ヴァルニエ、ジャン=ポール・ラプノー、ランベール・ウィルソン、パスカル・トマ、マルタン・プロヴォスト、クリストフ・オノレ、エマニュエル・ベルコ、ミシェル・アザナヴィシウス、イッポリト・ジラルド、ブノワ・マジメル、メルヴィル・プポー、ルディヴィーヌ・サニエ、ロッド・パラド、クエンティン・タランティーノ、パク・チャヌク、マリサ・パレデスら、多数のゲストがドヌーヴを祝福。

 授賞式に出席できなかったアルノー・デプレシャンやアンドレ・テシネは、メッセージを送り、パリで舞台の真っ最中のダニエル・オートゥイユはビデオレターを送った。

 ヴァンサン・ランドンは、ジェラール・ドパルデューのメッセージを代読した。“Catherine, c'est l'homme que j'aurais voulu être.Si je meurs, je veux que tu prononces mon éloge.”(カトリーヌ、ぼくは君のようになりたかった。ぼくが死んだら、君に弔辞を読んでもらいたいな。)

 ヴェルトラン・タヴェルニエは、日本の俳句を詠んだ。“Puissance du vent dans les saules, poussière dorée dans le crépuscule, l'éclat des fleurs de cerisiers.”(柳に風、たそがれに塵埃、桜花きらめく)

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 タランティーノが、1994年に『パルプ・フィクション』でパルムドールを受賞した時、審査員長はイーストウッドで、ドヌーヴは審査員だった。タランティーノは、授賞式の後、ドヌーヴに会って、感謝の言葉を述べたかったけれど、何も言えなかったと告白。

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 ポランスキーの祝辞:“À l'époque de Répulsion, on était jeune, on était beau, on était surtout heureux. Je ne pensais pas qu'on tiendrait si longtemps. Je t'aime, Catherine.” 「『反撥』の頃、われわれは若く、美しく、何より幸せだった。こんなにも長く続けられるとは思っていなかった。愛してるよ、カトリーヌ。」

 スタンディング・オベーション。

 特にスピーチは用意してこなかったらしいドヌーヴのスピーチ:“Voir tous ses amis, tous extraits de film, c'est assez bouleversant. Dans les films que j'ai choisi de montrer à Lyon, il y a un film qui s'appelle Profil Paysans. Je dédie ce prix à tous les agriculteurs de France.”(友人のみなさんと会い、クリップ集を見て、私はちょっと動揺しています。リヨンで上映するために私が選んだ映画があります。それは“Profils paysans”という映画です。私は、この賞をフランスの農家の方に捧げたいと思います。 )

 ジャン=ポール・ラプノーによる、ドヌーヴとモンタンのエピソードの紹介。

 授賞式の後は、ジャン=ポール・ラプノーの『うず潮』(1975)の上映。

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 ◆今回のリュミエール賞のために作られたカトリーヌ・ドヌーヴのためのクリップ。



 ◆HPで紹介されている監督たちの言葉

 アルノー・デプレシャン:“Elle voulait changer le cinéma et sa douce intransigeance a tout bouleversé. Elle a inventé une façon nouvelle de regarder un film et de l’aimer.”(彼女は映画を変えたがっていた。その優しい非妥協がすべてを変えた。彼女は映画と愛について新しい方法を編み出したんだ。)

 レジス・ヴァルニエ:“Son visage est comme un écran qui révèle et qui cache.”(彼女の顔はスクリーンのようだ。見えている部分と隠されている部分がある。)

 ロマン・ポランスキー:“Travailler avec elle est comme danser le tango avec une cavalière farouche.”(彼女と仕事をすることは、気の荒いカウガールとダンスをするようなものだ。)

 アンドレ・テシネ:“J’ai appris à voir le monde à la clarté d’une fin d’après-midi d’été, quand les choses prennent leur vraie valeur. Elle est l’émanation de la lumière du soir, de l’étendue et du silence.”(私は、晩夏の午後の光の中で世界を見ることを学んだ。その時、物事の真の価値が現れるのだ。彼女は、夕方の光を体現している。広がりや静けさを。)

 フランソワ・トリュフォー:“D’une apparence romantique et fragile et d’un visage sublime qui suggère une deuxième existence pleine de pensées secrètes, elle crée du rêve et invente du mystère.”(彼女のようなロマンチックで繊細な姿と崇高なルックスに出会うと、秘密の多い第二の人生を考えてみたくなる。そうして彼女は夢を生み、謎を作り出すのだ。)

 ◆今回の映画祭のカタログ

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 ◆プレス・カンファレンス

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 ◆ゲストによるサイン

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 ◆ゲスト
 ・アリス・イザズ

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 ・イッポリト・ジラルド

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 ・エリック・ラルティゴ、エマニュエル・ベルコ、ミシェル・アザナヴィシウス

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 ・カメリア・ジョルダナ

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 ・コスタ=ガヴラス

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 ・サンドリーヌ・キベルラン

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 ・ジェリー・シャッツバーグ

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 ・ジュリー・ドパルデュー

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 ・スタニスラス・メラール、ギュスタヴ・ケルヴェン

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 ・ナタリー・ドセイ

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 ・パク・チャヌク

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 ・ブノワ・マジメル

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 ・マリサ・パレデス

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 ・ランベール・ウィルソン

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 ・ロール・マルサック

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 ・ロッド・パラド、アデル・バンシェリフ

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 上記のような式典だけでも、ひとりの女優のキャリアを祝うのには、十分かもしれません。しかし、リュミエール映画祭は、これだけではなく、ドヌーヴの出演作品13本と、ドヌーヴが選んだ作品8本に、ドヌーヴによるマスタークラスまで用意されています。

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 ・『反撥』“Répulsion”(1965, 1h45) 監督:ロマン・ポランスキー
 ・『別離』“La Chamade”(1968, 1h43) 監督:アラン・カヴァリエ
 ・『暗くなるまでこの恋を』“La Sirène du Mississipi”(1969, 2h03) 監督:フランソワ・トリュフォー
 ・『ロバと王女』“Peau d'âne”(1970, 1h29) 監督:ジャック・ドゥミ
 ・『哀しみのトリスターナ』“Tristana”(1970, 1h40) 監督:ルイス・ブニュエル
 ・『ハッスル』“La Cité des dangers(Hustle)”(1975, 1h58) 監督:ロバート・アルドリッチ
 ・『うず潮』“Le Sauvage”(1975, 1h43) 監督:ジャン=ポール・ラプノー
 ・『海辺のホテルにて』“Hôtel des Amériques”(1981, 1h33) 監督:アンドレ・テシネ
 ・『ハンガー』“Les Prédateurs(The Hunger)”(1983, 1h36) 監督:トニー・スコット
 ・『夜のめぐり逢い』“Drôle d'endroit pour une rencontre”(1988, 1h40) 監督:フランソワ・デュペイロン
 ・『夜の子供たち』“Les Voleurs”(1996, 1h57) 監督:アンドレ・テシネ
 ・『ヴァンドーム広場』“Place Vendôme”(1998, 1h57) 監督:ニコール・ガルシア
 ・『夜風の匂い』“Le Vent de la nuit”(1999, 1h35) 監督:フィリップ・ガレル

 【カトリーヌ・ドヌーヴ・プレゼンツ】(Catherine Deneuve présente)
 ・『ザ・ウィメン』“Femmes(The Women)”(1939, 2h13) 監督:ジョージ・キューカー
 ・『河』“Le Fleuve(The River)”(1951, 1h39) 監督:ジャン・ルノワール
 ・『ホフマン物語』“Les Contes d'Hoffmann(The Tales of Hoffmann)”(1951, 2h13) 監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
 ・『荒れ狂う河』“Le Fleuve sauvage(Wild River)”(1960, 1h50) 監督:エリア・カザン
 ・『カジノ』“Casino”(1995, 2h58) 監督:マーティン・スコセッシ
 ・“Profils paysans : l'approche”(2001, 1h30) 監督:レイモン・ドゥパルドン
 ・“Profils paysans : le quotidien”(2005, 1h21) 監督:レイモン・ドゥパルドン
 ・『モダン・ライフ』“La Vie moderne”(2008, 1h28) 監督:レイモン・ドゥパルドン

 【マスタークラス】
 “Je ne me considère pas comme un auteur. Ce n'est qu'après coup, en voyant une rétrospective de mes films, que je vois ma filmographie. Je suis plutôt «là» et «devant» que «derrière». Le plus difficile est de choisir un rôle, il n'y a aucune certitude quant au résultat. Ma grande chance a été de tourner avec de grands metteurs en s.....”
 「私は、語り手になることは考えたことがない。別の言い方をするなら、私のレトロスペクティヴを観てもらえばいいし、フィルムグラフィーを見てもらってもいい。私は、そこや、その背後のどこかにいるはずだから。最も難しいのは役を選ぶこと。どういう結果になるかは、わからないから。私にとって、最も幸運だったのは、優れた監督たちに巡り合えたこと……」
 などと話したと伝えられています。
 進行は、ティエリー・フレモーとベルトラン・タヴェルニエを交えて行なわれ、会場には、パスカル・ボニゼールやフィリップ・ル・ゲイ、メルヴィル・プポー、エチエンヌ・シコ、マリサ・パレデス、Pierre Lescureらも顔を見せたようです。

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 【第8回リュミエール映画祭の主なプログラム】

 ・マルセル・カルネ特集:13本

 ・ハリウッド、女の都(Hollywood, la cité des femmes)
 15作品(シルヴィア・シドニー、ミリアム・ホプキンス、マーナ・ロイ、キャロル・ロンバート、ノーマ・シアラー、ジョーン・クロフォード、ロザリンド・ラッセル、ルシル・ボール、モーリーン・オハラ、キャサリン・ヘップバーン、ジョーン・フォンテイン、マレーネ・ディートリッヒ、ジーン・アーサー、リンダ・ダーネル、ジーン・クレイン、オリヴィア・デ・ハヴィランド、アン・バクスター、ベティ・デイヴィス、マリリン・モンロー、ラナ・ターナーの出演作を上映。必ずしも1人1作品ではない。)

 ・バスター・キートン特集:11本

 ・ユニバーサル・モンスターズ:6本
 トッド・ブラウニングの『ドラキュラ』から『大アマゾンの半魚人 2D&3D』まで。

 ・アントニオ・ピエトランジェリ特集3本(L'inconnu italien : Antonio Pietrangeli)

 ・ドロシー・アルズナー特集7本(Histoire permanente des femmes cinéastes : Dorothy Arzner)

 ・ベルトラン・タヴェルニエ・プレゼンツ(Bertrand Tavernier présente)
 “Voyage à travers le cinéma français”(2016, 3h12) 監督:ベルトラン・タヴェルニエ
 さらばエディ・コンスタンティーヌ(Revoir Eddie Constantine):4本
 エドワード・L・カーン3本

 ・コン・リー特集5本+マスタークラス

 ・ウォルター・ヒル特集5本+ドキュメンタリー+マスタークラス

 ・パク・チャヌク特集5本+マスタークラス

 ・ジャン=ルー・ダバディ特集3本+マスタークラス

 ・ギャスパー・ノエ特集5本+マスタークラス

 ・Grandes projections:8本(『アラビアのロレンズ』『サウンド・オブ・ミュージック』など)

 ・Trésors des archives:9本

 ・Nouvelles restaurations:11本

 ・追悼プログラム
 ジム・ハリソン:出演作2本+ドキュメンタリー2本
 マイケル・チミノ:『天国の門』
 アッバス・キアロスタミ:『クローズ・アップ』
 シャンタル・アケルマン:『東から』“D'Est”

 ・映画にまつわるドキュメンタリー8本
 ・“Midnight Return: The Story of Billy Hayes and Turkey”(2015, 1h39) 監督:Sally Sussman
 ・“Charles Pathé et Léon Gaumont - premiers géants du cinéma”(2016, 1h26) 監督: Emmanuelle Nobécourt、Gaelle Royer
 ・“Dragon Girls, les amazones pop asiatiques”(2016, 53min) 監督:イヴ・マンユール(Yves Montmayeur)
 ・“Et la femme créa Hollywood”(2016, 52min) 監督:クララ&ジュリア・クーペルベルグ(Clara & Julia Kuperberg)
 ・“Jerry Lewis, clown rebelle”(2016, 1h) 監督:Gregory Monro
 ・“Sciuscià 70”(2016, 59min) 監督:Mimmo Verdesca
 ・“Tod Browning : le jeu des illusions”(2016, 1h) 監督:Alain Mazars
 ・“Versus: the life and films of Ken Loach”(2016, 1h33) 監督:ルイーズ・オズモンド(Louise Osmond)

 ・「クエンティン・タランティーノ:1970」(Quentin Tarantino : 1970)
 タランティーノは、3年前にリュミエール賞を受賞して以来、この映画祭に企画を提案しているようです。今回、それが実現し、タランティーノは映画祭のオープニングからずっと上映に立ち会っています。
 1970年製作の作品を集め、2本立てプログラムが4つとその他の作品という構成にしていますが、2本立てプログラムにはそれぞれ何らかの意図があると思われます。

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 2本立てその1(Double programme 1)
 『ある愛の詩』“Love Story”(1970, 1h39) 監督:アーサー・ヒラー
 『早春』“Deep End”(1970, 1h40) 監督:イエジー・スコリモフスキ

 2本立てその2(Double programme 2)
 『歓びの毒牙』“L'Oiseau au plumage de cristal(L'Uccello dalle piume di cristallo)” 監督:ダリオ・アルジェントde Dario Argento (1970, 1h32)
 『殺意の週末』“La Dame dans l'auto avec des lunettes et un fusil(The Lady in the Car with Glasses and a Gun)”(1970, 1h45) 監督:アナトール・リトヴァク

 2本立てその3(Double programme 3)
 『クレールの膝』“Le Genou de Claire”(1970, 1h45) 監督:エリック・ロメール
 『肉屋』“Le Boucher”(1970, 1h33) 監督:クロード・シャブロル

 2本立てその4(Double programme 4)
 『クレムリンレター』“La Lettre du Kremlin(The Kremlin Letter)(1970, 1h40) 監督:ジョン・ヒューストン
 『シャーロック・ホームズの冒険』“La Vie privée de Sherlock Holmes(The Private Life of Sherlock Holmes)”(1970, 2h05) 監督:ビリー・ワイルダー

 その他のタイトル(Autres titre)
 『ファイブ・イージー・ピーセス』“Cinq pièces faciles de Bob Rafelson (Five Easy Pieces)”(1970, 1h38) 監督:ボブ・ラフェルソン
 『ワイルド・パーティー』“Hollywood Vixens(Beyond the Valley of the Dolls)”(1970, 1h49) 監督:ラス・メイヤー
 『M★A★S★H マッシュ』“M*A*S*H”(1970, 1h56) 監督:ロバート・アルトマン
 『L・B・ジョーンズの解放』“On n'achète pas le silence(The Liberation of L.B. Jones)”(1970, 1h42) 監督:ウィアム・ワイラー
 “Vas-y, fonce(Drive, he said)”(1970, 1h35) 監督:ジャック・ニコルソン
 『砂丘』“Zabriskie Point”(1970, 1h40) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ

 などなど

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 *参考
 ・Le Figaro:http://www.lefigaro.fr/cinema/2016/10/15/03002-20161015ARTFIG00084-catherine-deneuve-prix-lumiere-et-du-merite-agricole.php
 ・ajudu:http://www.ajudu.com/it/read//Catherine-Deneuve-le-film-de-sa-vie-au-Festival-Lumire-de-Lyon

 *当ブログ記事

 ・祝福とオマージュが凄い! リュミエール賞2015 for マーティン・スコセッシ!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201510/article_22.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2016年6月~11月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201606/article_2.html

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