全州国際映画祭2014 受賞結果  『東京家族』!『60万回のトライ』!

 第15回全州国際映画祭(5月1日-10日)の各賞が発表されました。

 【全州国際映画祭】

 全州国際映画祭といえば、「三人三色」というプロジェクトで有名ですが、映画祭としては、有名な監督の作品や、既に高い評価を得ている作品を揃えるのではなく、無名でも野心的な若い映画作家の作品を積極的に紹介しようとしている映画祭、ということになるでしょうか。

 コンペティション部門は3つあり、そのうちのインターナショナル・コンペティションでは、過去に諏訪敦彦監督の『M/other』やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『真昼の不思議な物体』などがWoosuk Award(大賞)を受賞しています。
 正直なところ、(韓国映画以外は)そんなにプレミア度は高くありませんが(『M/other』の受賞もカンヌでの受賞から約1年後でした)、『M/other』や『真昼の不思議な物体』がグランプリを受賞しているということで、この映画祭が志向する方向はぼんやりと覗えるように思います。

 以前は、デジタルで作品を制作することやデジタルで制作された作品を上映することに力を入れていて、それを映画祭の1つの特色として打ち出していましたが、大半の作品がデジタルで撮影されるようになった現在、「デジタル」を前面に出すことはなくなったようです。

 15年目を迎えた今回は、プログラムと運営にいくつかの変更があり、観客が映画に集中しやすいようにと、クロージング・セレモニーの代わりに会期中7日目に授賞式が催されることになりました。

 本年度の受賞結果は、以下の通り。

 なお、セウォル号の事故に弔意を示す意味で、今回の野外イベントは取りやめになったそうです。

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 【インターナショナル・コンペティション】

 ・“Coast of Death”(西) 監督:Lois Patiño [アジア・プレミア]
 ・“The Virgin Arguments”(インド) 監督:Ram Ramesh Sharma [インターナショナル・プレミア]
 ・“The Blue Wave”(トルコ) 監督:Zeynep Dadak、Merve Kayan [アジア・プレミア]
 ・『ショートホープ』“Short Hope”(日) 監督:堀口正樹 [ワールド・プレミア]
 ・“She's Lost Control”(米) 監督:Anja Marquardt [アジア・プレミア]
 ・“The Well”(メキシコ) 監督:Michael Rowe [アジア・プレミア]
 ・“Hotel Nueva Isla”(キューバ・西) 監督:Irene Gutiérrez、Javier Labrador [アジア・プレミア]
 ・“Casa Grande”(ブラジル) 監督:Fellipe Barbosa [アジア・プレミア]
 ・“History of Fear”(アルゼンチン・仏・独・ウルグアイ・カタール) 監督:Benjamin Naishtat [アジア・プレミア]
 ・“Difret”(エチオピア) 監督:Zeresenay Berhane Mehari [アジア・プレミア]

 ※審査員:チョン・ジヨン、李相日、ニコラス・ペレダ(メキシコの監督)、Paolo Bertolin(映画祭プログラマー/映画批評家)、Yeh Jiwon(韓国の女優)

 ◆グランプリ(Grand Prize)
 ◎“History of Fear”(アルゼンチン・仏・独・ウルグアイ・カタール) 監督:Benjamin Naishtat

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 “History of Fear(Historia del miedo)”(アルゼンチン・仏・独・ウルグアイ・カタール) 監督:Benjamin Naishtat
 出演:Jonathan Da Rosa、Claudia Cantero、ミレージャ・パスクアル(Mirella Pascual)、Cesar Bordon、Tatiana Gimenez
 物語:中心的な登場人物はおらず、明確な物語もない。ある地域で働いていたり、住んでいたりして、ゆるやかに結びついている人々の暮らしがピックアップされる。カミーロは、芸術家/ジャーナリストで、対立的な質問をして、その答えを記録し、後世に伝えようとしている。彼は、ディナーの席で、「あなたは将来どうなりたいか」と「あなたは何がほしいか」という質問をする。ある人は単純に答えるのを拒否するが、それ自体が答えになっている。また別の人は、他人に聞こえがいいような答えをする。メイドの息子のポラは、あるファーストフード店で、奇妙な動きを始めた、ある男性の脚を押えてくれと頼まれる。料金所で、裸の男が車の前に立ちふさがり、まるで自爆テロにでも遭ったかのようなリアクションが起こる。ブエノスアイレス郊外の富裕地区を囲んでいるフェンスが破られて、住人たちは、その隙間から脅威が入り込んだように感じる。事実、個々の住人の間にパラノイアが広がる……。
 ベルリン国際映画祭2014 コンペティション部門出品。
 サンフランシスコ国際映画祭2014 ニュー・ディレクターズ・コンペティション部門出品。グランプリ(ニュー・ディレクターズ賞)受賞。

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 ◆最優秀作品賞(Best Picture Award)
 ◎“Coast of Death”(西) 監督:Lois Patiño

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 “Coast of Death(Costa da Morte)”(西) 監督:Lois Patiño.
 Costa Da Morteは、スペイン北西部にあるガリシア州の、そのまた北西部にある地域で、ローマ時代には、世界の果てと考えられていた。ここにこうした名前がつけられたのは、歴史的に、この地域で、岩と霧と嵐により数多くの難破事故が起きているからだ。本作では、この広い地域をまわり、漁師や職人を観察し、彼らとこの土地との愛憎半ばする関係を探り、この土地の謎と歴史と伝説にアプローチする。
 ロカルノ国際映画祭2013 フィルムメーカーズ・オブ・ザ・プレゼント コンペティション部門出品。監督賞受賞。
 セビリヤ・ヨーロッパ映画祭2013 NEW WAVES ノンフィクション部門 最優秀作品賞受賞。
 ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭2014アヴァンギャルド&ジャンル・コンペティション部門出品。
 サンフランシスコ国際映画祭2014 長編ドキュメンタリー・コンペティション部門出品。

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 ◆審査員特別賞(Special Jury Award)
 ◎“Hotel Nueva Isla”(キューバ・西) 監督:Irene Gutiérrez、Javier Labrador

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 “Hotel Nueva Isla”(キューバ・西) 監督:Irene Gutiérrez、Javier Labrador
 物語:ホルヘは、同じような境遇のホームレスたちとともに、今は使われていないキューバのホテルの中に、ボンヤリした記憶を抱えて生きている。かつてこのホテルは、お客さんにあふれ、生命力に満ちた、壮麗な建物だった。ところが、今では、ところどころ天井がはげ落ち、壁も湿気でやられて、荒れ果てていた。それでも、ホルヘや、彼に忠実な犬、そして仲間のホームレスたちの住処として永らえている。ホルヘは、かつてはキューバの役人で、厳格に、そして母国の要となって働いてきたが、今では、記憶を突っついて、瓦礫の下を掘り返すような日々を過ごしている。仲間たちは、それでも現実的な見通しを持っていて、ひとりひとりそこから去っている。ホルヘは、建物のメンテをしたり、仲間に話しかけたり、女性とのロマンティックな関係を得て、やさしく語りかけたり、音楽にあわせてダンスしたりしつつ、永遠に続くと思っていた過去を回想している。
 ロッテルダム国際映画祭2014 Bright Future部門出品。

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 【韓国映画コンペティション】

 ・“A Dream Of Iron”(韓・米) 監督:Kelvin Kyungkun Park [アジア・プレミア]
 ・“A Fresh Start”(韓) 監督:Jang Woojin [ワールド・プレミア]
 ・“Highway Stars”(韓) 監督:Kim Jigon [ワールド・プレミア]
 ・“Miss The Train”(韓) 監督:Lee Kyungsub [ワールド・プレミア]
 ・“Monkeys”(韓) 監督:Jung Byeongsik [ワールド・プレミア]
 ・『60万回のトライ』“One For All, All For One”(韓・日) 監督:パク・サユ(Park Sayu)、ラク・トンサ(Park Donsa)
 ・“Pohang Harbor”(韓) 監督:Mo Hyunshin [ワールド・プレミア]
 ・“Sookhee”(韓) 監督:Yang Jieun [ワールド・プレミア]
 ・“The Wicked”(韓) 監督:Yoo Youngseon [ワールド・プレミア]
 ・“The Youth”(韓) 監督:Kim Jinmoo、Park Gahee、Ju Seongsu、Jung Wonsik [ワールド・プレミア]
 ・“You Are My Vampire”(韓) 監督:Lee Wonhoi [ワールド・プレミア]

 ※審査員:Adriano Aprà(イタリアの映画批評家・出版人・映画祭ディレクター・イタリア映画史家)、Yoon Jong-chan(監督)、Mark Peranson(ライター・編集者・プログラマー・フィルムメーカー)

 ◆グランプリ(Grand Prize)
 ◎“A Fresh Start”(韓) 監督:Jang Woojin

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 “A Fresh Start”(韓) 監督:Jang Woojin
 物語:ジヒョンは、兵役を終えて大学に戻る。彼は、難しい家族問題と、自分が属している学部が廃部になるという噂に直面する。文学クラブのミーティングに出席して、顔見知りだったヘリンと会い、衝動的にセックスをする。しばらくして、2人は再び顔を合わせるが、それはヘリンが妊娠したからだった。彼らは堕胎することに決め、よその町にでかけていく。しかし、医者に堕胎を断られて、計画をあきらめ、近くの浜辺へと向かう。

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 ◆CGVムービーコラージュ 配給支援賞(CGV MovieCOLLAGE Award : Distribution Support)
 ◎『60万回のトライ』“One For All, All For One”(韓・日) 監督:パク・サユ(Park Sayu)、パク・トンサ(Park Donsa)

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 『60万回のトライ』“One For All, All For One”(韓・日) 監督:パク・サユ(Park Sayu)、パク・トンサ(Park Donsa)
 「大阪朝鮮高級学校のラグビー部の奮闘を追ったドキュメンタリー。大阪朝高のラグビー部は2010年、創部以来初めての全国大会準決勝まで進出し、主将の戦線離脱などのも危機も乗り越えながら、悲願の日本一を目指して進んでいく。ごく普通の高校生としての素顔や、民族教育の中で自らのルーツを真剣に探す姿もとらえ、高校無償化からの除外や補助金の凍結など、朝鮮学校を取り巻く厳しい社会情勢の中でも、ラグビーに青春をかける在日朝鮮人の高校生たちにカメラが寄り添った。監督はソウル出身のパク・サユと、在日朝鮮人3世のパク・トンサ。音楽を「あまちゃん」の大友良英が担当。」

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 ◆CGVムービーコラージュ 次回作支援賞(CGV MovieCOLLAGE Award : Upcoming Project Support)
 ◎“The Wicked”(韓) 監督:Yoo Youngseon

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 “The Wicked”(韓) 監督:Yoo Youngseon
 物語:セヨンは、新しい従業員で、リーダーのイスンと衝突してばかりいる。イスンは、彼女の行動に驚くが、やがてセヨンに関する不気味な話を聞くようになる。彼女は、セヨンを恐怖の源と見なすようになり、セヨンのストーカーめいた行動の前に、逃げ出してしまう。

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 【韓国短編映画コンペティション】

 ◆グランプリ(Grand Prize)
 ◎“How Long Has That Door Been Open?”(韓) 監督:Kim Yuri

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 ◆監督賞
 ◎Jang Jaehyun “12th Assistant Deacon”(韓)

 ◆審査員特別賞
 ◎“Hosanna”(韓) 監督:Na Youngkil.

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 【その他の賞】

 ◆The Korea Cinemascape部門 観客賞
 ◎“Glory For Everyone”(韓) 監督:Lim Yucheol

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 “Glory For Everyone”(韓) 監督:Lim Yucheol
 児童サッカー・チームに関するドキュメンタリー。チームは、慶尚南道の児童福祉機関の支援によって運営されていて、メンバーは、技術はつたないものの、サッカーに対する情熱は誰にも負けないという自信を持っている。そこに、待ち望んでいたコーチがやってくる。コーチのモットーは不屈の精神だ。メンバーは、試合に勝つことは、ゲームを楽しむこととは違うということを叩き込まれる。

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 【特別賞・名誉賞】

 ◆NETPAC賞
 ◎『東京家族』(日) 監督:山田洋次

 【第6回全州プロジェクト・マーケット】

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 ◆グランプリ
 ◎“Baby Rose” Park Jong-keun

 ◆観客賞
 ◎“Perfect Neighbors” Jude Jung

 ◆The TV5Monde Award
 ◎“Perfect Neighbors” Jude Jung

 ◆グランプリ ドキュメンタリー部門
 ◎“A Big Day” Lee Dong-han

 ◆観客賞 ドキュメンタリー部門
 ◎“Leaving Homeland” Jero Yun

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 今回の全州国際映画祭は、会期がサンフランシスコ国際映画祭と丸かぶりでしたが、そのせいなのか、インターナショナル・コンペティションの最高賞受賞作品が、どちらもアルゼンチン映画の“History of Fear”になりました。

 インターナショナル・コンペティション部門では、あとは“The Blue Wave”が重なっているだけですが、ラインナップからヨーロッパ映画がごっそり抜けて、南米とアフリカの映画が全体の半数を占めているということも、二つの映画祭は同じになっています。
 これは、ひょっとすると、新しい映画の作り手が南米とアフリカから出てきているということを示す1つの徴なのかもしれません。

 内容的には、今回のインターナショナル・コンペティション部門は、社会不安や先行きの不透明さがベースとなっていると思われる作品が多く、世界のフィルムメーカーたちが漠然と感じているものがラインナップにも現われている、ということになるかもしれません。その代表が、グランプリを受賞した“History of Fear”ということになるでしょうか。

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 *当ブログ記事

 ・全州国際映画祭2013 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_23.html
 ・全州国際映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_11.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2014年3月~11月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201403/article_4.html

この記事へのコメント

SARU
2014年05月11日 10:32
社会不安や先行きの不透明さ、という点では、韓国長編コンペ、短編コンペで「60万回のトライ」を除くすべてが、そのような色彩を濃厚に帯びた作品でした。
umikarahajimaru
2014年05月11日 23:31
SARUさま
お疲れさまでした!

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