短編アニメーション『アブラカダブラ』 フレデリック・バックを偲んで

 フレデリック・バック(1924年4月8日~2013年12月14日)を偲んで、当ブログで以前アップした記事を見直し、動画でリンクが切れているものを貼り直したりしていて、フレデリック・バックの未見の動画を見つけたので、ここにアップすることにしました。

 作品は、フレデリック・バックの初監督短編『アブラカダブラ』です。



 【物語】
 光り輝く太陽。
 お花畑の中で少女が遊んでいる。
 そこへ黒い傘を持った怪しい男が現れる。
 男は、黒い傘を使って、空の太陽をつかんで持ち去る。
 後には男の黒い傘が残される。
 少女がその傘を手にすると、傘の色はブルーに変わる。
 少女は、男が入っていった小屋を鍵穴から覗く。
 男は、魔法の本を使って、なにやら魔法をかける。
 すると、大爆発が起こる。
 お花畑の花は枯れ、空から光が失われる。
 少女は、人々に太陽のことを尋ねるが誰にもわからない。
 少女が、傘を広げると空を飛ぶことができる。
 飛行マシンで空を飛ぶ冒険家に太陽のことを聞くが、彼も知らない。
 大鷲に聞いても知らない。
 動物たちに聞いても知らない。
 少女がしょんぼりしていると、インディアンの少年がやってくる。
 少年も太陽のことは知らなかったが、2人で探すことにする。
 2人で空を飛んで、着いた先はアフリカ。
 アフリカの女の子に太陽のことを聞くが、わからない。
 そこにハンターがやってくる。ハンターは、魔法のポケットの中に太陽がないか探してくれるが、見つからない。最後は、ハンター自身がポケットの中に消える。
 3人で太陽を探す。
 火山を見つけ、その火口に太陽があるのかと思って、調べるが、噴火で吹き飛ばされる。
 海で真っ黒になった体を洗っていると、船がやってくる。
 傘を小舟にして近づいていくと、船には中国人が乗っている。
 中国人も太陽のことは知らない。
 雷が近づいていくる。
 船に乗った4人は、謎の島にたどりつく。
 そこに洞窟には魔法使いがいて、呪文を唱えている。
 4人で魔法使いをやっつけると、魔法使いは裸で逃げていく。
 魔法使いが残した魔法の本を使うと、魔法の箱が現れる。
 箱の中には太陽が入っていて、世界に太陽が戻ってくる。
 世界が明るくなり、花も咲いて、人々の顔に笑顔が戻ってくる。

画像

 ◆データ
 1970年/カナダ/9分20秒
 アニメーション
 台詞なし/字幕なし
 制作期間:6ヶ月(1969年11月~1970年4月)
 技法:アクリル・ペイント オン セル

 *参考サイト:http://www.fredericback.com/cineaste/filmographie/abracadabra/generique.en.shtml

 ◆解説
 グラフィック・アーティストとしてカナダ国営放送(Radio Canada)の教育番組や科学番組の作画や視覚効果を担当していたフレデリック・バックがアニメーション部門に移って、最初に手がけた短編アニメーション。

 製作も、アニメーション部門のプロデューサーHubert Tisonで、大きなアニメーション・スタジオで伝統的なテクニックを身につけていたGraeme Rossが共同監督として参加している。
 しかし、テレビでは実験的手法にチャレンジしていたフレデリック・バックにとって、このやり方はいささか窮屈だと感じられたらしい。

 作品の完成を急ぐために、カナダ国営放送(Radio Canada)から6人のバックグラウンド・アーティストが派遣され、カラーリングを担当したが、それでも完成までに6ヶ月を要した。

 技法は、アクリル・ペイント オン セルで、その後、フレデリック・バックの特徴となる色鉛筆やフェルトペンによる手描きのアニメーションはまだ採用されていない。

 音楽は、Pierre F. Brault。

 ◆コメント

 物語の筋自体は、1つの目的を共有して、仲間が集っていき、旅をして目的に到達するというもので、ある種のジュヴナイルや昔話(『西遊記』や『オズの魔法使い』、『指輪物語』など)のパターンを踏襲しています。

 物語の中には、空や海の旅、魔法や魔法使い、インディアンやアフリカ、中国人など、(ステレオタイプながら)子供たちがミステリアスだと感じ、好奇心をそそられるようなものがちりばめられています。

 主人公を若い男女にして、「愛」をからめれば、ディズニー・アニメーションの得意とする物語(「愛と冒険とファンタジー」)にもなります。

 最初にこの作品を見始めた時に、私が抱いたイメージは、「太陽を盗んだ男」→「核兵器」というものでした。
 その後の展開で、大爆発が起こり、花は枯れ、世界に光が失われるにいたって、やはりそういう物語なのかとも思ってしまいました。
 これが、案外、「誤読」や「うがった見方」ではないかもしれないと思われるのは、この作品が作られた1969年当時は、米国内で核実験も行われ、ちょうど「核の恐怖」が世界中に広がっていた時期だったからで、当時はまだ「反核」という考え方はなかったにせよ、「核」を奪い合えば、大変なことが起こり、世界に闇が訪れる、という考えが、この作品の背後にもなかったとは言い切れないように思います。

 とすると、この物語は、「ナウシカ」的な世界観にもつながることになります。

 この作品の中に、黒い傘を少女が持つと、ブルーに変わるというシーンがありますが、これは、どんな便利な道具も、使う人によって、善にも悪にもなるというようなメッセージにも思えます。

 この後、フレデリック・バックは、作品のタッチもモチーフも変わっていきますが、「美しい自然を描き、人と自然環境をテーマに作品を作」る端緒となるようなものがこの作品にも感じ取ることができるように思います。

 なお、この作品はDVD『フレデリック・バック作品コレクション』に収録されています。

 ◆監督について

 フレデリック・バック
 1924年 ドイツのザールブリュッケン(当時はフランス領)生まれ。父親は音楽家。
 1938-1939 年 パリのEcole Estienneで学ぶ。
 1939-1945年 レンヌの美術学校で画家マテラン・メウに学ぶ。
 1948年 文通で知り合ったカナダ人女性に会うために、カナダに向かう。
 1949年 結婚。以後、モントリオールを活動拠点とする。
 1952年 カナダ国営放送(Radio Canada)にグラフィック・アーティストとして参加し、教育番組や科学番組の作画や視覚効果を担当する。
 1967年 モントリオールのPlace-des-Arts Metro station にL'histoire de la musique à Montréal ("history of music in Montreal") という題のステンドグラスを制作。
 1968年 Hubert Tisonによって開設されたアニメ部門に移る。最初はタイトル・ロゴなどを担当していたが、70年以降、子ども番組を制作するようになる。
 1989年 ケベック州からナイトの称号を受ける(National Order of Quebec)。
 2004年 Planet in Focus film festivalでEco-Hero Media Award を受賞。
 色鉛筆とフェルペンによる作画で、1作品1作品、時間をかけて制作。作品の中に、ケベック州の美しい自然を描き、人と自然環境をテーマに作品を作り続けている、と評される。

 【フィルモグラフィー】

 1970年 『アブラカダブラ』“Abracadabra”
 1971年 『神様イノンと火の物語』“Inon Ou LaConquet De Feu”
 1973年 『鳥の誕生』“The miracle of spring”
 1974年 『イリュージョン』
 1977年 『タラタタ』
 1978年 『トゥ・リエン』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
 1981年 『クラック!』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1987年 『木を植えた男』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1993年 『大いなる河の流れ』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート

 公式HP:http://www.fredericback.com/

 参考サイト:http://www.animationarchive.org/bio/2005/12/back-frederic.html

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