詳細! 米国アカデミー賞2014 短編映画賞ショートリスト10作品!

 第86回米国アカデミー賞 短編映画賞 ショートリストが発表になりました。(11月22日)

 本年度は有資格作品が120本あり、その中から10作品が選ばれています。

 本年度のショートリスト10作品は、以下の通りです。

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 ・“The Voorman Problem”(2011/英) 監督:Mark Gill
 出演:マーティン・フリーマン、トム・ホランダー
 物語:ウィリアムズ医師は、ミステリアスなヴーアマンの診察のために刑務所に呼ばれる。ヴールマンは、囚人で、自分が神だと信じている。正気なのか、それとも狂人なのか? 正気でないことがわかれば、施設に送ればいい。彼は、ヴーアマンにいくつかの質問をする。神であるならば、なぜ拘束衣を着せられて、刑務所に入っているのか? 判断は、ウィリアムズ医師に委ねられる。
 『クラウド・アトラス』で知られる小説家デイヴィッド・ミッチェルの小説『ナンバー9ドリーム』からの映画化。
 セントルイス国際映画祭2012 最優秀短編賞受賞。
 BAFTA英国アカデミー賞2013 短編映画賞ノミネート。
 サラエボ映画祭2013 BAFTAプレンゼンツ部門出品。

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 ・“Aquel No Era Yo (That Wasn’t Me)”(2012/西) 監督:Esteban Crespo
 物語:兵士になることは難しいことではない。人を殺すことに慣れるか、自分が殺されるかだ。最も大変なのは、再び元の生活に戻って、自分がやったことを記憶にとどめたまま、人生を過ごすことだ。
 マラガ・スペイン映画祭2012 短編コンペティション部門出品。最優秀短編賞、監督賞、男優賞受賞。
 24fps国際短編映画祭2012 ブロンズ賞、監督賞、審査員特別賞(Red Citation Humanitarian Award)受賞。
 ゴヤ賞2013 短編映画賞受賞。
 アリゾナ国際映画祭2013出品。
 Tolfa短編映画祭(イタリア)2013 最優秀インターナショナル作品賞、批評家賞受賞。
 パームスプリングス国際短編映画祭2013 2013 HP’s Bridging the Borders Award受賞。
 BFIロンドン映画祭2013 THRILL部門出品。

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 ・『全てを失う前に』“Avant que de tout perdre”(2013/仏) 監督:グザヴィエ・ルグラン(Xavier Legrand)
 物語:「学校をさぼって橋の下に隠れている少年。恋人との別れを惜しみ、バス停で涙にくれている少年の姉。彼らを順番に車に乗せていく母親。3人はスーパーマーケットの駐車場に到着し、急いで店内に入っていく。夫の暴力から逃げるため、子供をつれて他の土地へ逃げることを決めた彼女は、勤務先に給料の精算を頼みに来たのだ。ようやく未払い分の一部を手にしたものの、店内や周辺で彼女を待ち伏せる夫を避けて店から出ていかなくてはならないが・・・。」
 プロデューサーは、コスタ=ガヴラスの息子アレクサンドラ・ガヴラス。
 クレモンフェラン国際短編映画祭2013 ナショナル・コンペティション部門出品。グランプリ、ヤング審査員賞、テレラマ・プレス賞、観客賞受賞。
 フランス映画祭2013出品。
 セザール賞2014 短編映画賞ショートリスト。

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 ・“Tiger Boy”(2012/伊) 監督:Gabriele Mainetti
 物語:タイガーは、ローマ郊外出身のレスラーで、9歳の少年マッテオのヒーローだ。彼は、タイガーと同じマスクを作るが、一度かぶると、なかなか脱ごうとしない。家族や友だちはそれを彼の気まぐれと思うだけで、マッテオの内面を理解しようとはしない。ある日、マッテオは、タイガーがリングで戦って勝つのを観て、自分も敵と対面する覚悟を決める。
 ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞2012 短編映画賞ノミネート。
 イタリア・ゴールデン・グローブ賞2012 短編映画賞ノミネート。
 ブレスト・ヨーロッパ短編映画蔡2012 グランプリ受賞。
 フリッカーフェスト国際短編映画祭2013 最優秀インターナショナル短編賞受賞。
 レッチェ・ヨーロッパ映画祭2013 Emidio Greco Award受賞。
 ナストロ・ダルジェント賞2013 短編映画賞受賞。

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 ・“Dva(Two)”(2012/独・クロアチア) 監督:Mickey Nedimovic
 物語:1993年、クロアチア紛争最中のクロアチア。荒涼とした田舎を無目的にさまよっていたクロアチア人のRobertとセルビア人のStojanがばったりと出くわす。彼らは、ともに狙撃手であったが、彼らがそれぞれの銃の引き金に手をかけるよりも早く、彼らの足元でカチッという音がする。彼らは、偶然にも2人同時に地雷を踏んでしまったことに気づく。一方の死は、他方の死につながる。彼らは、兵士としての連帯と生きるためのスキルが試される……。
 Mickey Nedimovicは、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2011で『ストーーーップ!』“Noooooo”(2010)が上映されています。

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 ・“Helium”(2013/デンマーク) 監督:Anders Walter
 物語:アルフレッド少年は死にかけている。しかし、彼は、病院の玄関番のEnzoからファンタジックなEnzoの物語を聞いて、楽しさと生きている幸せを取り戻す。
 Anders Waltherは、ニューヨークのヴィジュアル・アートの学校で学んだ35歳の監督。前回も“9meter”でショートリストに選ばれています。
 製作会社のM & M Productions A/Sは、1999年の“Election Night(Valgaften)”、2010年の“The New Tenants”で2度の米国アカデミー賞短編映画賞を獲得しています。2009年にも“The Pig”でノミネーションまで進み、2013年にもAnders Walter 監督の“9meter”でショートリストまで進んでいます。

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 ・『結婚式の朝』“Pitääkö Mun Kaikki Hoitaa?(Do I Have To Take Care Of Everything?)”(2011/フィンランド) 監督:セルマ・ヴィルフネン(Selma Vilhunen)
 物語:「家族全員寝坊して、結婚式に間に合わないと母が大パニック!急いで支度するよう夫と娘たちを急かすのだが、思うように支度が進まない。」
ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013にて上映。

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 ・“Kush”(2013/インド) 監督:Shubhashish Bhutiani
 物語:実話に基づく物語。1984年、インドの首相インディラ・ガンディーが、2人のシーク教徒の警護警官に殺され、インド中に反シーク教徒の暴動が起こる。1人の教師が、10歳の生徒たちのクラスを連れて遠足にでかけていたが、唯一のシーク教徒の少年Kushの周辺で暴力沙汰が激しくなり、彼を必死で守らなければならなくなる。
 ベネチア国際映画祭2013 Orizzonti部門出品。最優秀短編映画賞、UK-Italy Creative Industries Award - Best Innovative Budget受賞。
 ハンプトンズ国際映画祭2013 審査員特別賞受賞。

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 ・“Throat Song”(2011/カナダ) 監督:ミランダ・ドゥ・ペンシエ (Miranda de Pencier)
 物語:雪深く、神秘的な雰囲気を持つ北極圏の町イカルイト。Ippikは、イカルイトで暮らしている若い女性で、アル中の夫からの虐待に苦しめられている。彼女は、司法省で仕事を得、犯罪の犠牲者たちのための裁判の準備をしていて、彼女と同じような虐待を受けている人々と知り合いになる。彼女たちの話を聞いて、Ippikは夫の元を離れる決心をし、自分の言葉にもまだパワーがあることを知る。
 ミランダ・ドゥ・ペンシエは、元々はTVシリーズ『赤毛のアン』などに出演している女優で、『人生はビギナーズ』などを手がけるプロデューサーでもあり、これが初監督作品。
 カナダ・スクリーン・アワード2013 短編映画賞受賞。

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 ・“Record/Play”(2012/米) 監督:Jesse Atlas
 物語:たくさんのカセットテープ。ラベルには、録音された場所と年月が書かれている。どうやらそれは恋人である女性ジャーナリストが世界各地の取材先から彼に送った声のメッセージらしい。彼は、「ボスニア 2/10/93」と書かれたテープをウォークマンに入れる。彼女の声が聞こえてくる。懐かしい彼女の声。涙。テープは突然途切れる。ウォークマンが故障したらしく、修理しようとする。代替部品がなく、他の機械からパーツを外して修理する。再びテープを再生する。彼は、なぜかボスニアにいる。テープにメッセージを吹き込んでいる彼女の声が直接聞こえてくる。彼女と目と目が合う。驚く彼女。彼も驚いてウォークマンを落とし、そこで現実に引き戻される。カセットテープは壊れていて、彼は修理して、テープを再生し直す。再びボスニア。彼女との再会を喜んでいる間もなく、そこにライフルを手にした男性が入ってくる。この後、殺されることがわかっている彼は、慌てて、テープを止める。再び現実世界に引き戻された彼は、まるで自身がウォークマンにでもなったかのように、口からテープを吐き出す。テープを巻きなおして、再生。三たび、ボスニアへ。ライフルを手にした男性が彼女のいる部屋に入ろうとしている。彼は、レンガでその男性を殴り倒すが、別の男性に撃たれてしまう。急いでテープを止める。現実世界に戻った彼の体には銃痕があり、そこからテープが出てくる。直したテープをカセットの中に入れる。レコーダーのボタンを押す彼の指が震える。彼は、録音ボタンを押し、彼女に向かって、語りかける……。
 ニューヨーク短編映画蔡2012 観客賞受賞。
 サンダンス映画祭2013出品。

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 スペイン、イタリア、カナダをそれぞれ代表する短編、および、ベネチア国際映画祭の最優秀短編と、セザール賞2014候補が揃って、ラインナップとしては、悪くありません。

 2013年を代表する短編としては、胡佛(Hu Wei)監督の“Butter lamp(酥油燈/La lampe au beurre de yak)”(中・仏)や、Guðmundur Arnar Guðmundsson監督の“Whale Valley”(アイスランド・デンマーク)がありましたが、これらは、米国アカデミー賞にエントリーしたのか、しなかったのかはわかりませんが、少なくともショートリストには選ばれませんでした。

 『ゼロ・グラビティ』のスピン・オフ作品“Aningaaq”が短編映画賞を受賞すれば面白いんじゃないかという声もあったようですが、“Aningaaq”もこの段階で落選しています。

 学生作品や学生アカデミー賞受賞作品も入ってきませんでした。

 近年は、子供が主人公の作品が多かったり、老人が主人公の作品が多かったりしましたが、本年度はそういう偏りは見られませんでした。

 今回のショートリスト作品の監督の中に米国アカデミー賞ノミネートまたは受賞経験者はいませんが、デンマーク作品“Helium”の製作会社およびプロデューサーは受賞経験者です。

 本年度は、「転機」や「ジレンマ」を描いた作品が多いようです。

 日本作品や日本がらみの作品は、1本もありませんでした。

 【米国アカデミー賞短編映画賞の傾向】

 ・古くはクロード・ベリから、テイラー・ハックフォード、“In the Loop”のピーター・キャパルディ、『プラダを着た悪魔』のデイヴィッド・フランケル、“John Rabe”のフロリアン・ガレンバーガー、『フィッシュタンク』のアンドレア・アーノルド、『セブン・サイコパス』のマーティン・マクドナーなど、結果的に、のちに長編監督として名をなしていくことになる監督が短編時代に作った作品が選ばれている。

 ・生や死、老いを見つめた作品は選ばれやすい。

 ・子供との関係性を扱った作品はよいが、児童映画は選ばれにくい。

 ・「和解」を扱った作品は選ばれやすい。

 ・物語性の強い作品が好まれる。

 ・実験映画は敬遠される。

 ・政治的な作品も敬遠されがち。

 ・シリアスなものでなくてもよいが、コメディーは選ばれにくい。

 ・非英語作品は選ばれにくい。

 一番わかりやすいのは、「非英語作品は選ばれにくい」で、1993年以降の受賞作品では、
 フランス、ドイツ、英語作品×4年、デンマーク、英語作品、メキシコ、英語作品、デンマーク、英語作品×4年、フランス、ドイツ、デンマーク、英語作品×3年
 という受賞結果になっています。
 「英語作品」といっても、アメリカ、イギリス、アイルランドといろいろですが、英語作品が有利なことは明白であり、また、そのほかの外国映画も明らかに偏っています。(1992年以前は英語作品ばかりです。)
 現在、3年連続で英語作品が受賞中で、そろそろ非英語作品が受賞しそうな雰囲気もありますが、どうでしょうか。(本年度は英米の2作品とカナダ作品が英語作品です。)

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 【受賞予想】

 ノミネーションは、3~5作品ですが、ざっと見渡して、以下のような作品が有力のように感じられます。

 ・“Aquel No Era Yo (That Wasn’t Me)”(2012/西)
 ・“Dva(Two)”(2012/独・クロアチア)
 ・“Kush”(2013/インド)
 ・“Throat Song”(2011/カナダ)
 ・“Record/Play”(2012/米)

 個人的には“Record/Play”がお気に入りですが、アカデミー会員が好むような作品ではないかもしれません。
 とすると、最有力作品は、“Kush”か“Throat Song”あたりでしょか。

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 *当ブログ記事

 ・米国アカデミー賞2013 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201211/article_29.html
 ・米国アカデミー賞2012 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201112/article_39.html
 ・米国アカデミー賞2011 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201012/article_17.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_8.html

 ・米国アカデミー賞2014 短編アニメーション賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201311/article_13.html

 ・米国アカデミー賞2014 長編アニメーション賞エントリー作品19作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201311/article_9.html

 ・米国アカデミー賞2014 長編ドキュメンタリー賞候補 151作品一覧:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201311/article_1.html

 ・米国アカデミー賞2014 短編ドキュメンタリー賞ショートリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_23.html

 ・米国アカデミー賞2014 外国語映画賞 各国代表リスト その1(~クロアチア):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_8.html
 ・米国アカデミー賞2014 外国語映画賞 各国代表リスト その2(コロンビア~フィンランド):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_24.html
 ・米国アカデミー賞2014 外国語映画賞 各国代表リスト その3(ブラジル~):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_42.html
 ・『舟を編む』、または、米国アカデミー賞 外国語映画賞 日本代表作品 データ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_10.html
 ・完全ガイド! 米国アカデミー賞2014 外国語映画賞 各国代表作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_3.html

 ・ヨーロッパ映画賞2013 短編映画賞ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201309/article_40.html

 ・セザール賞2014 短編賞ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201310/article_29.html

 ・学生アカデミー賞2013 発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_37.html
 ・学生アカデミー賞2013 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201306/article_9.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2013年5月~12月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_9.html

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