モスクワ国際映画祭2013 コンペティション部門 ラインナップ!

 第35回モスクワ国際映画祭(6月20日-29日)のラインナップです。

 【コンペティション部門】

 ※審査員:モフセン・マフマルバフ、ウルスラ・メイヤー、セルゲイ・ガルマッシュ(Serguey Garmash)(ウクライナ出身の男優)、ズラブ・キプシーゼ(Zurab Kipshidze)(グルジア出身の男優)、キム・ドンホ

 ・“Delight”(英) 監督:ガレス・ジョーンズ(Gareth Jones)
 出演:ジャンヌ・バリバール、Gavin Fowler、ティム・ダットン(Tim Dutton)、Eiry Thomas、スー・ジョーンズ・デイヴィース(Sue Jones Davies)、Iestyn Jones、Naomi Everson、Pandora Jones、Raphael Jones、Rupert Allan
 物語:Echoは、元戦場カメラマンで、かつての戦友であり、一時は恋人でもあった男性を捜して、ウェールズの田舎をさまよう。彼とは、彼女が彼の息子と関係を持ったことで破綻したという事情があり、自分の子供たちには秘密にしてきていた。このことで、彼女は過去の亡霊と出会い、自分の家族をバラバラにするリスクを負う。
 “Desire”(2009)、“Delight”、“Denial”と続くD-トリロジーの第2弾。

画像

 ・“Los Chicos Del Puerto”(西) 監督:Alberto Morais
 物語:ミゲルは、生活に縛りつけられていて、果たせなかった祖父の夢を、自分が祖父になり代わって、果たそうとする。夢と言っても難しいことではない。祖父の親友の墓に軍服を備えてくるだけのことだ。ミゲルは、ローラとギレルモと一緒に、彼らの住んでいる島を出て、ヴァレンシア周辺をさまよい、墓を探して、さびれた町にたどりつく。
 デビュー作“Las Olas”モスクワ国際映画祭2011 グランプリ&国際批評家連盟賞を受賞しているAlberto Moraisの第2作。

画像

 ・“L'autre Vie De Richard Kemp(Back in Crime)”(仏) 監督:Germinal Alvarez
 出演:ジャン=ユーグ・アングラード、メラニー・ティエリー、Philippe Berodot、ジャン=アンリ・コルペール、Pierre Moure
 物語:リシャール・ケンプは、殺人事件を調べていて、彼が警察官になりたての頃に担当して迷宮入りになった連続殺人事件「ピアス事件」(Pierced Ear)と類似点が多いことに気づく。奇妙なことが連続して起こり、彼は、最初の「ピアス事件」が起こった1989年5月のことを思い出す。なんとしても次の殺人が起こるのは食い止めなければならない。彼より20歳も若い刑事が捜査をかき乱す。といっても、彼は、ケンプを除けば、最も優秀なな刑事であり、野心家なのだ。目撃者は、エレーヌ・バティステリだけだ。彼女が事件の鍵を握っている。
 監督のGerminal Alvarezは、短編やアニメーションのシリーズなどを手がけたことがあるが、長編作品はこれが初めて。

画像

 ・“Matterhorn”(オランダ) 監督:Diederik Ebbinge
 物語:フレッドは、54歳で、妻と死別してから独りで暮らしている。息子は随分前に彼の人生から去っている。彼は、ローカルのバスに乗り、教会に通い、毎日6時ちょうどに緑豆とポテトと肉の食事をとる。そんな彼の前に放浪者テオが現れる。フレッドも、最初は、彼に対し猜疑心を抱いていたが、やがて家へと招き入れることになる。フレッドは、テオの中にある才能を見出し、それが彼をこれまでのルーティーンの生活から抜け出させることになる。
 ロッテルダム国際映画祭2013 観客賞受賞。初監督長編。

画像

 ・“Spaghetti Story”(伊) 監督:Ciro de Caro
 物語:現代のイタリア。ヴァレリオとコーキーは、成功を望んでいるが、まだ自立できていない。ジョヴァンナとセレナは、大人のフリをしているが、まだ現実に立ち向かう勇気が持てずにいる。そんな彼らは、中国人の娼婦メイメイと出会うことによって、自分たち自身を見つめ直すことになる。自由を獲得するためには、何より自分の内面を変えなければならないのだ。
 初監督長編。

画像

 ・“Rosie”(スイス) 監督:Marsel Gisler
 出演:Fabian Krüger、Sibylle Brunner、ジュディトゥ・ホフマン(Judith Hofmann)、Sebastian Ledesma
 物語:Lorenz Meranは、40歳のゲイで、小説家として成功していたが、突如として書けなくなってしまう。彼は、年老いた母のことが気になってもいたので、地方に住む母を訪ねる。楽しいことが好きな母は、他人に面倒を見てもらうことも、養護施設に入ることも拒む。あれこれ言われたくない彼女は、始終Lorenzと口論になり、母としての威厳を危うくする。また、ひょんなことから、これまでLorenzが隠してきた秘密が明らかになってしまう……。
 スイス映画賞2013 主演女優賞受賞(Sibylle Brunner)。

画像

 ・“Drogówka(Traffic Department)”(ポーランド) 監督:ヴォイテク・ スマルゾフスキ(Wojtek Smarzowski)
 物語:7人の警察官がいて、彼らは、仕事仲間であると同時に、友人でもあり、パーティーやスポーツカーや仕事に関する好みを分かち合っている。しかし、ミステリアスな状況下で、殺人が起こり、7人のうちの1人、Ryszard Królis巡査部長が殺人罪で告発される。彼は、自分の無実を証明しようとして、政府高官の犯罪にたどりつく。
 『ダークハウス/暗い家』(2009)のヴォイテク・ スマルゾフスキ監督の最新作。

画像

 ・“Mamaroš”(セルビア・独・仏・ハンガリー) 監督:Momčilo Moma Mrdaković
 物語:ペラは、中年のシネフィルで、母とともにベオグラードに住み、映写技師の仕事をしている。1999年にNATOの空爆が始まって、2人は難民になり、最終的にニューヨークにたどりつく。ニューヨークでは、彼が愛した仕事はもうない。映写はデジタルの時代になっていて、2人は生きるのに精一杯だ。彼は、捨てられた映写機とめぐり合い、自分の使命は、本物の映画の魔術を世界の人に見せることだと気づく。そう、本物の映画の魔術とは、セルロイドのフィルムで、メカニカルな映写機を使い、チカチカするライトで、銀幕に映像を映し出すことなのだ。
 初監督作品。

画像

 ・“Rol’(The Role)”(ロシア) 監督:コンスタンティン・ロプシャンスキー(Konstantin Lopushansky)
 物語:1919年のシベリア。ニコラス・イェヴラコフは、俳優で、妻ナタリーとともに、列車を乗り換えようとしていた。そこには、赤軍からの避難民やパルチザンもいて、ローデンベルグ将軍の乗った列車を押さえようとして、赤軍がやってくる。赤軍の指揮官のプロトニコフとスピリドノフは、一般人と白軍の兵士を分け、白軍の兵士は皆殺しにしようとしていた。プロトニコフは、人々を並ばせ、選別を行なう。この時、ニコラスは、ひげを生やし、女もののスカーフをしていたが、プロトニコフの容姿が自分と似ていることに気づく。続いて、起こった戦闘で、プロトニコフは戦死し、ニコラスは生き延びる。プロトニコフがやられたことを見ていた人は多かったが、彼の遺体が発見されたわけではない。ニコラスは、赤軍の英雄プロトニコフになりすますことを思いつき、プロトニコフに関する情報を集める。妻のナタリーは、そんな夫のことを病的と思い、医者に相談するが、妄想にとりつかれた夫を止めるには至らない。そして、ニコラスの一世一代の演技が始まる……。
 実話に基づく物語。
 『死者からの手紙』などで知られるコンスタンティン・ロプシャンスキー監督の最新作。

画像

 ・“Skolzheniye(Slide)”(ロシア) 監督:Anton Rozenberg
 物語:Skolzheniye(Slide)は、警察官でありながら、違法活動をしている者たちのグループだ。しかし、彼らの計画は失敗し始める。誰か裏切り者がいて、直接FSB(ロシア連邦保安庁)に密告しているらしい。ペペルは、自分の人生が脅威にさらされて、初めて自分の存在について考える。もう昔の自分には戻れない。チームメイトは彼が裏切り者なのではないかと疑っている。昔の仲間は、敵にするととても恐ろしい……。
 監督のAnton Rozenbergは、CM出身で、これが初監督長編。

画像

 ・“Iuda(Judas)”(ロシア) 監督:Andrey Bogatyryov
 物語:熟練の泥棒、ユダは、市場の広場で、キリストがサーモンを配り、使徒たちが施し物を集めているところに遭遇する。ユダは、彼らの後についていき、彼らのお金を盗み、現行犯でつかまる。それでも、キリストは、彼を許して、仲間に入れ、さらにグループの会計の仕事につけてくれる。ユダは、それに驚くが、結局、使徒たちに加わることに決める。徐々に彼は、キリストのメッセージを理解するようになるが、一方で、使徒たちは盲目的にキリストについていっているだけではないかという疑念を抱くようになる。彼は、使徒たちと議論し、神の真実が本当かどうか見定めることがあってもいいのではないかと主張する。しかし、彼の言っていることに理解は得られず、キリストの教えは、人類の役に立たずに、無に帰しているにはないかと思うようになる。彼が出した結論は、キリストを裏切ることだった。
 初監督作品“BUGgY”で、モスクワ国際映画祭2011パースペクティヴズ・コンペティション部門審査員特別賞を受賞したAndrey Bogatyryovの最新作。

画像

 ・“Koma(Disorder)”(グルジア) 監督:Archil Kavtaradze
 物語:交通事故で、1人の若者が逮捕され、刑務所に送られる。一方、犠牲になった2人は、病院で昏睡状態に陥っている……。
 監督自身が体験したことを基に、人は不当な仕打ちにどこまで耐えられるのかをテーマに、グルジアのある一面を描く。
 Archil Kavtaradze監督の第二監督長編。

画像

 ・“Zerre(Particle)”(トルコ) 監督:Erdem Tepegöz
 物語:イスタンブールにあるタルラバシ地区。ここでは多くの人が生きるためにもがいている。Zeynepもその1人で、織物工場をクビになった彼女は、仕事を求めて、家と町をさまよう。
 CMでいくつも賞を受賞しているErdem Tepegözの初監督長編。

画像

 ・“Lebanon Emotion”(韓) 監督:Young-heun Jung
 物語:男が女の後を追う。都会から田舎へ。女は別の男に会う。荒涼とした風景。沈黙と余白。「言葉では説明できない感情を表現したかった」と監督。
 全州国際映画祭2013 韓国映画コンペティション部門出品。CGV MovieCollage Prize 次点。初監督長編。

画像

 ・『さよなら渓谷』“The Ravine Of Goodbye”(日) 監督:大森立嗣
 出演:真木よう子、大西信満、鈴木杏、井浦新、新井浩文
 物語:「尾崎俊介と妻のかなこは、都会から離れた緑豊かな渓谷で暮らしていた。そんな長閑な町で起こった幼児殺害事件は、その実母が実行犯として逮捕されるというショッキングな結末で収束に向かっていた。しかし、事件は一つの通報により新たな展開を見せる。」

画像

 ・“A Memória Que Me Contam(Memories they told me)”(ブラジル) 監督:Lúcia Murat
 物語:かつて軍事独裁に対して一緒に抗議運動をしていた仲間たちがいる。そのうちのひとりが死に瀕していて、彼らとその子供たちは、彼らが目指したものと現在の生活を比べて、心に葛藤を感じる。
 監督のLúcia Muratは、1949年生まれで、ブラジル左翼‘guerrilha’に属し、ブラジルの軍事独裁時代には、抗議活動を行なって、逮捕投獄されたという経歴を持つ監督で、リオ・デ・ジャネイロ国際映画祭監督賞、マル・デル・プラタ国際映画祭作品賞など、数々の受賞歴を誇る。

画像

 【ドキュメンタリー・コンペティション】

 ・“The Dark Matter Of Love”(英) 監督:Sarah McCarthy
 ・“The Condemned”(英・ロシア) 監督:Nick Read 共同監督:Mark Franchetti
 ・“And Who Taught You To Drive”(独) 監督:Andrea Thiele
 ・“Ojciec I Syn(Father And Son)”(ポーランド) 監督:Paweł Łoziński
 ・“Belleville Baby”(スウェーデン) 監督:Mia Engberg
 ・“Holocaust - Is It A Wallpaper Paste?”(ロシア) 監督:Mumin Shakirov
 ・“The Genius Of Marian”(米) 監督:Banker White 共同監督:Anna Fritch
 ・“The Crash Reel”(米) 監督:ルーシー・ウォーカー

--------------------------------

 メイン・コンペティション部門ラインナップは6月3日に、ドキュメンタリー・コンペティション部門のラインナップは6月10日に発表になったのですが、映画祭開催10日前になっても、まだ全プログラムが発表されていません。(ベルナルド・ベルトルッチとコスタ=ガヴラスのレトロスペクティヴ、および、オランダ映画の特集が行なわれることは発表されていますが、ラインナップは未発表です。)

 それなりの知名度と歴史と伝統を持つ国際映画祭としては、進行が遅すぎるのではないかと思いますが、それはそれとして、おやっと思ったのは、どうやら、前回まであった「パースペクティヴズ・コンペティション部門」がなくなったらしい、ということです。

 正式なアナウンスはないみたいですが、現時点で「パースペクティヴズ・コンペティション部門」のラインナップの発表がないこと、および、「メイン・コンペティション部門」のラインナップが新人監督の作品ばかりなことを考えると、新人監督を対象としていた「パースペクティヴズ・コンペティション部門」は廃止されたと考えてよさそうです。

 昨年の「メイン・コンペティション部門」のラインナップが、あまりにもお粗末だったので、それを反省して、思い切って、プログラム編成の見直しを図り、ドラマ作品のコンペティションを1本に絞ったということなのでしょうか。

 現在、新人監督作品のコンペティションを別立てにしている国際映画祭は、あまり多くはないし、より一般的な形になったと言えばそうなのですが、作品集めに苦労していることを白状したことにほかならず、歴史ある国際映画祭としては非常に苦しい決断ですね。それでコンペティション部門のレベルが飛躍的に上がれば問題はないのですが……。

 そうして選ばれたメイン・コンペティション部門16作品のうち、初監督長編が、実に7本もあります。そのほかも若い監督ばかりで、コンスタンティン・ロプシャンスキー(1947年生まれ)。Lúcia Murat(1949年生まれ)、ガレス・ジョーンズ(1951年生まれ)ら3人のベテランがすっかり浮いてしまっています。

 新生になったコンペティション部門として、そして、審査員の顔ぶれからして、映画の地平を新たに切り開くような新しさを感じさせるような作品が受賞を勝ち取るのはほぼ間違いないように思われます。

 受賞予想は、かなりゆるめに選んで―

 ・作品賞:“Mamaroš”、“Zerre(Particle)”、“A Memória Que Me Contam(Memories they told me)”
 ・監督賞:“Los Chicos Del Puerto”、“Matterhorn”、“Mamaroš”、“Koma(Disorder)”、“Zerre(Particle)”、“Lebanon Emotion”、“A Memória Que Me Contam(Memories they told me)”
 ・男優賞:“Matterhorn”、“Rol’(The Role)”、“Iuda(Judas)”
 ・女優賞:“Rosie”、“Zerre(Particle)”

 といったところでしょうか。

 *この記事が参考になった!と思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 
 ↑ ↑ ↑ ↑
 クリックしてね!

 *当ブログ記事

 ・モスクワ国際映画祭2012 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201207/article_12.html
 ・モスクワ国際映画祭2010 ラインナップその1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201006/article_20.html
 ・モスクワ国際映画祭2010 ラインナップその2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201006/article_21.html
 ・モスクワ国際映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201006/article_27.html
 ・モスクワ国際映画祭2009 ラインナップその1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_18.html
 ・モスクワ国際映画祭2009 ラインナップその2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_19.html
 ・モスクワ国際映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_30.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2013年5月~12月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_9.html

 追記:
 ・モスクワ国際映画祭2013 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201306/article_31.html

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック