全州国際映画祭2013 受賞結果!

 第14回全州国際映画祭(4月25日-5月3日)の受賞結果です。

 全州国際映画祭といえば、「三人三色」というプロジェクトで知られる映画祭ですが、ポジション的には、ヨーロッパにおけるロッテルダム国際映画祭やロカルノ国際映画祭のポジションに近い感じ(有名な監督の作品や、既に高い評価を得ている作品を揃えるのではなく、無名でも野心的な若い映画作家の作品を積極的に紹介する映画祭)でしょうか。

 コンペティション部門は3つあり、そのうちのインターナショナル・コンペティションでは、過去に諏訪敦彦監督の『M/other』やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『真昼の不思議な物体』などがWoosuk Award(グランプリ)を受賞しています。
 正直なところ、(韓国映画以外は)そんなにプレミア度は高くありませんが(『M/other』の受賞もカンヌでの受賞から約1年後でした)、『M/other』や『真昼の不思議な物体』がグランプリを受賞しているということで、この映画祭が志向する方向はぼんやりと覗えるように思います。

 以前は、デジタルで作品を制作することやデジタルで制作された作品を上映することに力を入れていて、それを映画祭の1つの特色として打ち出していましたが、大半の作品がデジタルで撮影されるようになった現在、「デジタル」を前面に出すことはなくなったようです。

 本年度の受賞結果は、以下の通りです。

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【インターナショナル・フィルム・コンペティション】

 ※2本目までの監督の作品が対象。今回は、10本中、1本がドキュメンタリー。
 ほぼすべての作品がHDまたはDCP。“Lost Paradise”のみ35mm。90分未満の作品が多い。

 ・“Lost Paradise”(仏) 監督:Eve Deboise [アジア・プレミア]
 ・“Five Years”(独) 監督:Stefan Schaller [アジア・プレミア]
 ・“Practical Guide To Belgrade With Singing And Crying”(セルビア) 監督:Bojan Vuletić [アジア・プレミア]
 ・“Ships”(トルコ) 監督:Elif Refiğ [アジア・プレミア]
 ・“Karaoke Girl”(タイ) 監督:Visra Vichit Vadakan [アジア・プレミア]
 ・“Mamay Umeng”(フィリピン) 監督:Dwein Baltazar [インターナショナル・プレミア]
 ・“Mothers”(中) 監督:Xu Hui Jing [インターナショナル・プレミア]
 ・『風切羽~かざきりば~』“Remiges”(日) 監督:小澤雅人 [ワールド・プレミア]
 ・“See You Next Tuesday”(米) 監督:Drew Tobia [インターナショナル・プレミア]
 ・“Inertia”(メキシコ) 監督:Isabel Muñoz Cota [インターナショナル・プレミア]

 ※審査員:ダルジャン・オミルバエフ、Don Fredericksen(コーネル大学教授(演劇・映画・ダンス))、リュ・スンワン、チョン・ウソン

 ◎グランプリ(Grand Prize /Chondae Award):“Lost Paradise”(仏) 監督:Eve Deboise [アジア・プレミア]

 “Lost Paradise(Paradis Perdu)”(仏) 監督:Eve Deboise
 出演:ポーリン・エチエンヌ(Pauline Etienne)、フローレンス・トマソン(Florence Thomassin)、Cédric Vieira
 物語:母親が突然いなくなって、17歳のルーシーは父親ユーゴと南フランスで暮らすことになる。パーティー三昧だった母との暮らしに対し、ここは自然が豊富で、父と娘の関係性も深まる。だが、唐突に母親が姿を現わし、2人の仲を見て、嫉妬に狂い、コントロールできない怒りをユーゴにぶつける。
 Eve Deboiseは、FEMISで脚本を学び、卒業後、いくつかの脚本を書いた後、本作で長編監督デビューした。

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 ◎最優秀作品賞(Best Picture Prize /Woosuk Prize):『風切羽~かざきりば~』“Remiges”(日) 監督:小澤雅人

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 『風切羽~かざきりば~』“Remiges”(日) 監督:小澤雅人
 出演:秋月三佳、戸塚純貴、川上麻衣子、重松 収、寺田有希、石田信之、五大路子
 物語:「実の母や姉から激しい虐待を受けていたため児童養護施設に措置されているサヤコは、現在高校3年生。規定により、高校を卒業したら施設を出て行かなければならない。小さい頃バレエを習っていたサヤコは、高校を出たらダンスの専門学校に通おうと思っているが、親の援助や奨学金は期待できず、自分で学費を稼ぐ必要があった。サヤコは様々な方法でお金を貯め、それを少しでも学費への足しにしようと思っていたが、施設では児童のお金の管理も職員が行なっているため、自由にできない。また施設に入居している他の子ども達ともうまく折り合いがつかず、孤立してしまう。
そんな施設の窮屈な暮らしに嫌気がさしたサヤコは、面会に来ていた父の車に飛び乗って施設を逃げ出すが、結局一人ぼっちになってしまう。その足で姉のアパートを訪れるも、やはりうまくいかない。
そしてサヤコは藁をもつかむ思いで、久しぶりに母と暮らしていたアパートを訪れる。だが若い男と一緒にいた母はサヤコを拒み、家の中に入れてくれない。今更施設に帰るわけにもいかない。でも他に行く場所がない・・・。居場所をなくしたサヤコは、行く宛もなく夜道を彷徨う。その道すがらサヤコはケンタという不思議な青年に出会う。彼は自転車で街を徘徊し、道行く人々に「僕の事、知りませんか?」と訪ね続けていた。
ひょんなことからケンタの自分探しの旅に付き合うことになったサヤコ。自分=アイデンティティを失った二人は、ネオン瞬く眠らない街を自転車で駆け抜ける。
道中、ケンタは会う人会う人に自分のことを知らないか聞いていくが、誰もケンタのことは知らない。ただサヤコのことは知っていて、声を掛ける人は多かった。しかしサヤコは自分の正体がバレると、決まってケンタに自転車を出すように促した。サヤコの過去には何が・・・。
そして、暗闇を切り分けるように進む二人の旅路は、紆余曲折を経て、ある事件を引き起こすのだった。」(公式サイトより)
 6月22日より池袋シネマ・ロサにて公開。

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 ◎最優秀作品賞(Best Picture Prize /Woosuk Prize):“Mamay Umeng”(フィリピン) 監督:Dwein Baltazar

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 “Mamay Umeng”(フィリピン) 監督:Dwein Baltazar
 物語:Mamayは、84歳で、フィリピンの人里離れた村で暮らしている。彼は、長らく、この人生という旅の終着点、すなわち、死を待ち続けている。ある日、彼は覚悟を決め、自ら「死」を探しにでかける。

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 ◎審査員特別賞(Special Jury Prize /JBBank Prize):“Practical Guide To Belgrade With Singing And Crying”(セルビア) 監督:Bojan Vuletić

 “Practical Guide To Belgrade With Singing And Crying”(セルビア) 監督:Bojan Vuletić
 物語:厳しい内戦を経験したベオグラードも、今では再び世界に対して門戸を開こうとしている。仕事や旅行などで、世界中からたくさんの人がベオグラードにやってくる。本作は、国籍も異なる4組のカップルについての物語で、フランス人歌手ステファン、若い運転手、アメリカ人外交官、女帝Melita、ドイツ人ビジネスマン、ホテルのメイドJagoda、クロアチア人警察官Mate、女性警察官Đurđa、それぞれが自分の理想を目指して、現代のベオグラードを生き抜こうとしている。
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2012 イースト・オブ・ウェスト コンペティション部門出品。
 プーラ国際映画祭2012出品。ヨーロッパ地中海映画批評家連盟賞受賞。
 ワルシャワ国際映画祭2012 フリー・スピリット コンペティション部門出品。

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 【韓国映画コンペティション】

 ※学生作品から人気監督の作品までエントリー自由で、フィクションもドキュメンタリーもOK、ということになっていますが、実質は、新人監督クラスの作品が多いようです。今回は102本の応募があり、そのうちの10本を選出。うち6本がフィクション。
 基本的にはワールド・プレミア作品中心のチョイスで、すべての作品がHDまたはHDVまたはDCP。90分未満の作品が多い。

 ・“51+”(韓) 監督:Jung Yong-Taek [ワールド・プレミア]
 ・“Cheer Up Mr. Lee”(韓) 監督:イ・ビョンホン(Lee Byeong-Hun)
 ・“Dancing Woman”(韓) 監督:Park Sun-Il、Park Jun-Hee、Ryu Jae-Mi、Jo Chi-Young、チュ・ギョンヨプ(Choo Kyeong-Yeob) [ワールド・プレミア]
 ・“Dear Dolphin(幻想の中の君)”(韓) 監督:Kang Ji-Na [ワールド・プレミア]
 ・“December”(韓) 監督:Park Jeong-Hoon [ワールド・プレミア]
 ・“Echo Of Dragon”(韓) 監督:Lee Hyun-Jung [ワールド・プレミア]
 ・“Grandma-Cement Garden”(韓) 監督:Kim Ji-Gon
 ・“Groggy Summer”(韓) 監督:Yun Su-Ik [ワールド・プレミア]
 ・“Lebanon Emotion”(韓) 監督:Jung Young-Heon [ワールド・プレミア]
 ・“My Place”(韓) 監督:Park Moon-Chil

 ※審査員:ローラン・カンテ、Carlo Chatrian(映画批評家/2002年よりロカルノ国際映画祭に加わり、2012年より同映画祭芸術監督)、Kim Young-ha(韓国の小説家)

 ◎グランプリ(Grand Prize /Jj-St★R Prize):“December”(韓) 監督:Park Jeong-Hoon

 “December”(韓) 監督:Park Jeong-Hoon
 物語:「1月」と字幕が出て、1組の男女が早朝の町を歩いている様子が映し出される。無意味で、とるに足らない言葉遊びをしながら、彼らは歩く、「2月」「3月」と字幕が出て、時間の流れが逆転し、関係性がねじくれて、観客を混乱に陥れる。

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 ◎CGV MovieCollage Prize:“Dear Dolphin(幻想の中の君)”(韓) 監督:Kang Ji-Na

 “Dear Dolphin(幻想の中の君)”(韓) 監督:Kang Ji-Na
 出演:イ・ヒジュン、イ・ヨンジン、ハン・イェリ
 物語:主人公は、ガールフレンドの死から立ち直れていない。彼女の親友が会いに来てくれるが、彼は死んだガールフレンドが生き返ったのかと思い、苦しむ。次第に現実と妄想の区別がつかなくなった彼は、わけがわからなくなり、ついに限界に達する……。
 ※タイ映画の“I Miss U”(監督:モントン・アラヤンクン)に設定が似ているようです。雰囲気は違うみたいですが。

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 ◎CGV MovieCollage Prize 次点:“Lebanon Emotion”(韓) 監督:Jung Young-Heon

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 “Lebanon Emotion”(韓) 監督:Jung Young-Heon
 物語:男が女の後を追う。都会から田舎へ。女は別の男に会う。荒涼とした風景。沈黙と余白。「言葉では説明できない感情を表現したかった」と監督。

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 ◎観客賞(Audience Critics’ Prize):“My Place”(韓) 監督:Park Moon-Chil

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 “My Place”(韓) 監督:Park Moon-Chil
 物語:シングルマザーの妹がひとりで赤ん坊を育てている。母親は、彼女を支えようとするが、父親は不機嫌だ。母と娘は移民先のカナダに戻る。やがて彼らの暮らしぶりを通して、その家族の過去が少しずつ明らかになるが、それは韓国の家父長制の弊害と韓国現代史の傷跡をさらけ出させるものであった。彼らは、現在と対峙し、新しい人生に向かってたくましく生きていこうとする。

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 【韓国短編映画コンペティション】

 ※今回は589本の応募があり、その中から、2人の映画批評家と1人の映画ジャーナリストにより、20本を選出。前回は、ジャンルごとに分けたが、今回は1つにまとめた。20本の内訳は、12本がフィクション、6本が実験映画、2本がアニメーション。大半がワールド・プレミア。

 ※審査員:Giusy Pisano(フランスの大学教授)、シン・ヨンシク(男優・監督)、キム・コッビ(女優)

 ◎グランプリ(Grand Prize):“Sweet Temptation”(韓) 監督:Jeong Han-jin)

 ◎監督賞(Best Director Prize):“Mask And Mirror”(韓) 監督:Min Boung-hun

 ◎審査員特別賞(Special Jury Prize):“Two Gentlemen”(韓) 監督:Park Jae-ok)

 【最優秀アジア映画】

 ◎NETPAC賞:『フラッシュバックメモリーズ 3D』(日) 監督:松江哲明

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 日本では、全く報道されていないようですが、日本映画が2本も受賞しています。ベルリン、カンヌ、ベネチア、モントリオール、あとモスクワぐらいでないと、ちょっとニュースにはなりにくいというところなのでしょうか。

 ま、それはともかく―
 個人的に気になる作品は、韓国映画コンペティションの“December”や“Lebanon Emotion”あたりです。
 Daumで調べてみたいもしましたが、シノプシスだけでは、どんな映画なのか、よくわかりません。
 ロッテルダムや全州の受賞作品には、見続けるのがつらい作品もけっこうあったりしますが、今回はどうでしょうか。
 例年の傾向として、劇場公開は無理でも、1本か2本は何らかの形で日本でも上映されたりするので、そうした機会があれば確かめられるかもしれません。

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 *当ブログ記事

 ・全州国際映画祭2010:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_11.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2012年12月~2013年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201212/article_50.html
 ・映画賞&映画祭カレンダー 2013年5月~12月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201305/article_9.html

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