ニューヨーク映画批評家協会賞2012 発表!!

 第78回ニューヨーク映画批評家協会賞が発表されました。(12月3日)

 【ニューヨーク映画批評家協会賞】
 ニューヨーク映画批評家協会賞は、映画批評家が選ぶ映画賞としては最も古い映画賞で1935年に設立されています。
 多数決で決められるような映画賞には得てして“多数決によるブレ”があったりするものですが、ニューヨーク映画批評家協会賞にはそれが少なくて、作品賞であればその時々の意欲作、野心作、映画作家の成熟を示す作品、男優賞・女優賞であれば俳優としての転機となるような作品を確実に選んできています。
 たとえば、作品賞として、『ディパーテッド』ではなく『ユナイテッド93』を選ぶとか、『グラディエーター』ではなく『トラフィック』を選ぶとか、『タイタニック』ではなく『LAコンフィデンシャル』を選ぶとか、主演男優賞であれば、『ブロークバック・マウンテン』でヒース・レジャーを選ぶとか(同年のアカデミー賞は『カポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマン)、『サイドウェイ』でポール・ジアマッティを選ぶとか(同年のアカデミー賞は『Ray/レイ』のジェイミー・フォックス)、『ロスト・イン・トランスレーション』でビル・マーレーを選ぶとか(同年のアカデミー賞は『ミスティック・リバー』のショーン・ペン)……。
 まあ、ある意味、アカデミー賞よりもわかりやすい映画賞だと言ってもいいかもしれません。

 昨年度のアカデミー賞との一致度はと言うと、昨年度は、12部門(のうちアカデミー賞と重なる部門は10部門)で、作品賞、監督賞、主演女優賞、外国語映画賞と、結果が同じになった部門は4つしかありませんでした。

 しかし、ニューヨーク映画批評家協会賞発表以前は、『アーティスト』は、モノクロで台詞もほとんどなく、決してアカデミー賞の本命にはなりえないと言われていたのが、ここでのダブル受賞で、一躍、本命視されるようになりました。
 また、下馬評には挙がっていても、最終的にアカデミー賞までほとんど受賞することのなかったメリル・ストリープの主演女優賞を、いち早く言い当てていたのもニューヨーク映画批評家協会賞でした。
 前者では、全米映画賞レースに大きな影響を与え、後者では、さほど影響を与えなかった、ということになりますが、いずれにせよ、その結果には一目置かざるを得ないということになります。

 今年の受賞結果は以下の通りです。

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 ◆作品賞
 ◎『ゼロ・ダーク・サーティ』 監督:キャスリン・ビグロー

 ◆監督賞
 ◎キャスリン・ビグロー 『ゼロ・ダーク・サーティ』

 『ゼロ・ダーク・サーティ』は、マスコミ向けのお披露目以降、確実に評価を上げ、映画賞レースの上位争いに加わってきました。
 キャスロン・ビグローは、『ハートロッカー』に続き、作品賞と監督賞のダブル受賞となりました。

 ◆主演男優賞
 ◎ダニエル・デイ=ルイス 『リンカーン』

 本命! BAFTA LA ブリタニア・アワードに続き、2冠目です。
 ダニエル・デイ=ルイスは、5度目のニューヨーク映画批評家協会賞受賞です。
 これまで、『マイ・ビューティフル・ランドレット』『マイ・レフト・フット』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』とすべて異なる監督の作品で受賞しています。(すべて原題のカタカナ表記が邦題になった作品ばかりです。)

 ◆主演女優賞
 ◎レイチェル・ワイズ “The Deep Blue Sea”(米・英)(監督:テレンス・デイヴィス)

 “The Deep Blue Sea”は、イギリスの映画賞では昨年度の対象作品で、ノミネートはされるものの、ほとんど賞らしい賞は受賞してきておらず、レイチェル・ワイズも(たぶん)無冠に終わっているはずで、他の候補を押しのけてここで受賞するというのは、かなり意外です。アメリカでの公開は、今年の3月らしいですが、なぜ今になってこらが、という気がしないでもありません。

 ◆助演男優賞
 ◎マシュー・マコノヒー “Bernie”(監督:リチャード・リンクレイター)、“Magic Mike”(監督:スティーヴン・ソダーバーグ)

 ニューヨーク映画批評家協会賞は、よく「まとめわざ」を使いますが、今年は「まとめわざ」でマシュー・マコノヒーが助演男優賞を受賞しました。
 マシュー・マコノヒーは、インディペンデント・スピリット・アワードでも2部門にノミネートされていましたが、本年度の男優賞部門をひっかきまわしてくれる存在になるかもしれません。
 アカデミー賞はわかりませんが、ゴールデン・グローブ賞あたりは受賞するかもしれないですね。

 ◆助演女優賞
 ◎サリー・フィールド 『リンカーン』

 サリー・フィールドは、1979年の『ノーマ・レイ』以来のニューヨーク映画批評家協会賞受賞です。

 ◆脚本賞
 ◎トニー・クシュナー 『リンカーン』

 『リンカーン』は脚色賞部門で最有力なので、いたって順当な結果です。
 トニー・クシュナー作品でこれまで最も評価の高かった作品は、エリック・ロスと共同で書いた『ミュンヘン』ですが、それでもほとんど受賞を逃しています。(『ミュンヘン』以来の映画脚本となった)『リンカーン』は、これまでのキャリアで最高の映画作品になるのは、間違いなさそうです。

 ◆撮影賞(Best Cinematography)
 ◎グレッグ・フレイザー 『ゼロ・ダーク・サーティ』

 グレッグ・フレイザーは、『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』で注目されたオーストラリア出身の撮影監督で、今年、『スノーホワイト』や“Killing Them Softly”と注目作を3本も手がけています。「あわせわざ」が有効だとしたら、グレッグ・フレイザーがこの部門の本命になる可能性は十分にあります。

 ◆ドキュメンタリー賞(Best Nonfiction Film)
 ◎“The Central Park Five” 監督:Ken Burns、Sarah Burns、David McMahon

 長編ドキュメンタリー賞候補作品としては“The Central Park Five”は最有力候補ですが、アカデミー賞というには、ちょっとドメスティックすぎる気もします。
 “The Central Park Five”は、米・製作者組合賞(PGA)では既に選外になっています。

 ◆アニメーション賞
 ◎『フランケンウィニー』 監督:ティム・バートン

 アニメーション賞はなくなってしまったのかと思ったら、昨年は「該当作なし」だったようです。
 ピクサー作品でも、ディズニーの生え抜きの監督の作品でもなく、CalArts出身のティム・バートンがアニメーション賞を獲るというのもなかなか面白いめぐり合わせです。
 果たして、この作品で、ティム・バートン初のオスカー受賞となるのでしょうか。

 ◆外国語映画賞
 ◎『愛、アムール』(オーストリア・仏・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ

 もう既にかなりの受賞歴を重ねてきていて、米国アカデミー賞2013外国語映画賞もほぼ当確です。(当確一番乗り!)
 それは、作品賞と外国語映画賞の両方にノミネートされた外国映画は、100%外国語映画賞を獲るというデータがあり、『愛、アムール』が作品賞にノミネートされることはほぼ確実視されているからです。

 ◆第1回作品賞(Best First Film)
 ◎“How To Survive a Plague” 監督:David France

 “How To Survive a Plague”は、ゴッサム・アワード2012で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、インディペンデント・スピリット・アワードでもドキュメンタリー賞にノミネートされています。

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 事前の予想では、作品賞は“Beasts of the Southern Wild”だろうとか、『ゼロ・ダーク・サーティ』じゃないかとか、いろんな予想が出ていましたが、上記のような結果になりました。

 『ザ・マスター』も『アルゴ』も“Silver Linings Playbook”も“Beasts of the Southern Wild”も『レ・ミゼラブル』も無冠に終わりました。

 3部門を制した『リンカーン』は、11月に入ってから、それまで作品賞の本命であった『アルゴ』や“Silver Linings Playbook”を押さえて、下馬評のトップに立っていますが、それがこの受賞結果にも現れています。
 これがニューヨーク映画批評家協会賞だけの評価なのか、メインストリーム的なものなのかはわかりませんが、『リンカーン』がこのままの勢いを保ち続けるなら、スピルバーグは、1993年の『シンドラーのリスト』や1998年の『プライベート・ライアン』以来、作品賞と監督賞を狙える絶好の位置につけることになります。
 スピルバーグ本人は、これまで一度もニューヨーク映画批評家協会賞を受賞したことがありません。(『シンドラーのリスト』と『プライベート・ライアン』で作品賞は受賞しています。)

 同じく3部門を制した『ゼロ・ダーク・サーティ』は、上にも書いたように、お披露目以降、映画賞レース上位に食い込んできた作品です。

 とすると、今回の受賞結果は、ほとんど直前になって決まったものばかりということになります。
 これが妥当なものかどうかは、今後の映画賞レースで明らかになってくると思われます。

 具体的にそれぞれ作品がどういう風なメッセージを発信しているのかはわかりませんが、本年度の全米映画賞レースは、『リンカーン』にしろ、『ゼロ・ダーク・サーティ』にしろ、「オバマのアメリカ」を照射するような作品が上位争いを繰り広げているような気がしますね。

 授賞式は、2013年1月7日に行なわれます。

 
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 *当ブログ記事
 ・ニューヨーク映画批評家協会賞2011 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201111/article_27.html
 ・ニューヨーク映画批評家協会賞2010 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201012/article_23.html
 ・ニューヨーク映画批評家協会賞2009 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_23.html
 ・ニューヨーク映画批評家協会賞2008 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200812/article_18.html

 ・ゴッサム・アワード2012 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201210/article_27.html
 ・ゴッサム・アワード2012 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201211/article_25.html

 ・インディペント・スピリット・アワード2013 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201211/article_26.html

 ・全米の映画批評家協会系映画賞について調べてみました:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201101/article_2.html

 ・全米の映画賞について調べてみました:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201001/article_45.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2012年6月~2013年1月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_9.html

 追記:
 ・ニューヨーク映画批評家協会賞2012 授賞式:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201301/article_17.html

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