詳細! 米国アカデミー賞2013 短編映画賞 ショートリスト発表!

 米国アカデミー賞2013 短編映画賞のショートリストが発表になりました。(11月29日)

 本年度はエントリーの審査を通過した作品が125本あり、その中から、以下の11作品が選ばれました。
 例年だと10本のはずが、11本になっているのは、同率タイがあったからだそうです。

 ・“Death of a Shadow (Dood van een Schaduw)”(ベルギー・仏) 監督:Tom Van Avermaet
 物語:Nathan Rijckxは、死んだ兵士で、いまはまだ生の国と死の国の間にいる。彼は、もう一度生まれ変わるチャンスを得ようと、死にそうな人々の影を追っている。彼は、死ぬ前に会った少女が忘れられず、亡霊となって、現世にいる少女に会いに行く。しかし、少女は別の男性を好きになっている。彼は、嫉妬に狂い、どういう結果を招くかを考えたら決してできないようなある苦い決断をする。
 バリャドリッド国際映画祭2012短編コンペティション部門出品。ヨーロッパ映画賞短編映画賞 バリャドリッド代表。

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 ・“The Night Shift Belongs to the Stars(Il turno di notte lo fanno le stelle)”(伊) 監督:Edoardo Ponti
 出演:ナスターシャ・キンスキー、エンリコ・ロ・ヴェルソ、ジュリアン・サンズ
 物語:ソニアとマッテオが、ドロミテの登頂に挑んでいる。2人は、ともに人生を変えるような手術を待っていて知り合った。ソニアは、僧帽弁の手術を、マッテオは心臓の移植手術を受けた。2人は、快方に向かうの時を同じくして、親しくなっていった。2人は、山を愛していたことでも共通点があり、今回の登山は手術の成功を試す意味合いもあった。一方、ソニアは、既婚で、夫のマークは、妻の体調とともに、2人の関係も心配していた。2人は登頂に成功して、第二に人生への道を切り開くことができるのだろうか。
 イタリアの小説家Erri De Lucaの同名の小説の映画化。
 監督のEdoardo Pontiは、ソフィア・ローレンとカルロ・ポンティの息子。
 ローマ国際映画祭2012 プロスペクティヴ・イタリア 短編コンペティション部門出品。

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 ・“9meter”(デンマーク) 監督:Anders Walther
 物語:主人公は、15-6歳の少年で、ジャンプするのが得意だ。彼の母親は昏睡状態にあり、彼はなんとかして母を目覚めさせようとするが、成功はしない。自分のせいだと思い込んだ彼は、何かしなければならないと思い、これまでに飛んだことのないような距離のジャンプに挑む。
 Anders Waltherは、ニューヨークのヴィジュアル・アートの学校で学んだ34歳の監督。
 製作会社のM & M Productions A/Sは、1999年の“Election Night(Valgaften)”、2010年の“The New Tenants”で2度の米国アカデミー賞短編映画賞を獲得している。2009年にも“The Pig”でノミネーションまで進んでいる。

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 ・“Kiruna-Kigali”(スウェーデン・ルワンダ) 監督:Goran Kapetanovic
 物語:1人の女性が、吹雪の中、スウェーデン北部にあるキルナの病院に向けて、車を走らせている。一方、灼熱の太陽が照りつけるルワンダのキガリでは、1人の女性が担架に乗せられて、病院に運ばれようとしている。距離は離れているが、2人の女性には1つの共通点がある。それは、時を同じくして、2人とも赤ん坊を産もうとしていることだ。
 釜山国際映画祭2012 短編ショーケース部門出品。

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 ・“Buzkashi Boys”(アフガニスタン・米) 監督:Sam French
 物語:現代のアフガニスタン。タイトルのBuzkashiというのは、ボールの代わりに、死んだヤギを使うポロのような競技のこと。主人公は、ストリートの暴れん坊と、負けず嫌いの鍛冶屋の息子という2人の少年で、彼らは、困難に抗いつつも、自分たちの夢に向かってつき進んでいく。
 モントリオール世界映画祭2012 フォーカス・オン・ワールドシネマ短編部門出品。
 レインダンス映画祭2012 インターナショナル短編コンペティション部門出品。最優秀作品賞受賞。

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 ・“Henry”(カナダ) 監督:Yan England
 物語:ヘンリーは、コンサート・ピアニストで、愛するマリアが謎の失踪を遂げて、混乱に陥っている。やがて彼は人生にある審判が下されたことを悟る。
 俳優として活躍するYan Englandの監督第2作。
 クリーヴランド国際映画祭2012出品。
 ローマ・インディペンデント国際映画祭2012出品。

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 ・『リッチーとの一日』“Curfew”(米) 監督:Shawn Christensen
 物語:麻薬常習者のリッチーは自殺しようとしていて、姉から、数時間、娘の面倒を見てくれないかという電話を受ける。彼は、風変わりな9歳の娘を預かって、彼女と関係を育み、友だちになる。
 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2012 観客賞受賞。
 クラクフ映画祭2012出品。
 ストックホルム国際映画祭2012 最優秀短編賞受賞。

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 “when you find me”(米) 監督:ブライス・ダグラス・ハワード
 物語:リジーが妊娠していて、息子が、「弟ができたら、ぼくは弟のことを好きになるかな」と訊く。さらに彼は、「お母さんには兄弟はいないの?」とも訊いてくる。リジーにはオーロラという名の姉がいて、子供時代、母親が死にかけていた時に、2人のリアクションが全く違っていたことを思い出す。オーロラが怒っていたのに対し、リジーは全くもって無邪気だった。息子の問いかけをきっかけとして、リジーはオーロラに話をしに行くことにする。
 ロン・ハワードの娘にして、『アポロ13』『ヴィレッジ』『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』『50/50 フィフティ・フィフティ』などで知られる女優ブライス・ダグラス・ハワードの第二監督短編。
 セントラル・フロリダ映画祭2012出品。ドラマ部門 最優秀短編賞受賞。

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 ・“Salar”(米・英・ボリビア) 監督:Nicholas Greene
 物語:マークは欲求不満気味のアメリカ人医師で、カルロスは、気性の荒い塩採掘の鉱夫だ。2人は、ボリビアの、塩原の端にある村で暮らしている。マークは、そろそろここを引き上げようかと考え、一方、カルロスはそんな時になって手にけがをする。
 クレモンフェラン国際短編映画祭2011出品。
 パームスプリングス国際短編映画祭2011出品。
 BFIロンドン映画祭2011出品。
 オースティン映画祭2011出品。最優秀ナラティヴ・ショート受賞。

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 ・“A Fábrica (The Factory)”(ブラジル) 監督:Aly Muritiba
 物語:Lindalvaはキッチンで調理をし、できあがったものを弁当箱に詰め、家を出る。一方、息子のMetrutiは、刑務所に入っていて、シャワーを浴びて、母を待つ。今日は、久しぶりの面会日だ。Metrutiにとって、母が差し入れてくれるお弁当は、厳しい現実をつかの間忘れさせてくれる大切なものとなっている。
 クラクフ映画祭2012出品。

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 ・“Asad”(南ア・米) 監督:Bryan Buckley
 物語:戦争の被害を受けたソマリアの村。1人の少年が、海賊になるか、それとも正直な漁師になるかという選択肢の間で、道徳的なジレンマに陥っている。
 トライベッカ映画祭2012 最優秀ナラティヴ・ショート。
 ロサンゼルス国際映画祭2012 短編部門観客賞受賞。
 モントリオール世界映画祭2012 フォーカス・オン・ワールドシネマ短編部門出品。

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 昨年度は、老いを見つめる作品が多かったのですが、本年度は、一昨年と同じく、子供を主人公とする作品が多いようです。

 短編ドキュメンタリー賞ショートシストがアメリカ作品ばかりだったのに対し、こちらは、純粋なアメリカ作品は2本にとどまりました。(まあ、毎年、こんなものですが。

 また、例年だと学生作品や学生アカデミー賞受賞作品がいくつか入るのですが、本年度は1本も入りませんでした。

 日本映画や日本がらみの作品は1本もなく、アジア作品も、アフガニスタンとアメリカの合作が1本あるだけでした。

 本年度は、「転機」や「チャレンジ」といったテーマを扱った作品が多いように思います。

 アカデミー賞にノミネートされたことのある監督は1人もいませんが、デンマークの“9meter”の製作会社であるM & M Productions A/Sはこれまで3度のノミネートを受け、2度受賞しています。

 監督には、映画人の2世が2人いて、その2人を含め、3人の俳優出身の監督がいます。

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 短編映画部門は、文字通り短編映画ばかりなので、単に観ればわかるというか、短い時間に凝縮された物語の持つインパクトや、短い時間でどれだけ人の心を動かせるか、ということがポイントとなるはずで、短編映画としてのさまざまのバリエーションや方法論の中で、特に受賞作品の傾向性のようなものはないようです。

 ただし、これまでの受賞結果をみると、古くはクロード・ベリから、“In the Loop”のピーター・キャパルディ、『プラダを着た悪魔』のデイヴィッド・フランケル、“John Rabe”のフロリアン・ガレンバーガー、『フィッシュタンク〜ミア、15歳の物語 / Fish Tank』のアンドレア・アーノルド、『ザ・ガード』のマーティン・マクドナーなど、結果的に、のちに長編監督として名をなしていくことになる監督が短編時代に作った作品が選ばれている、ということがわかります。

 とすると、一発芸的なショートショートよりは、作家性の萌芽のようなものが感じられる作品、あるいは、短い中にも映画作家としての手腕が垣間見られる作品、が選ばれるのではないか、と考えられます。

 ノミネーションは、3~5本ですが、受賞歴などから判断して、残ると思われるのは、“The Night Shift Belongs to the Stars”、“9meter”、“Buzkashi Boys”、『リッチーとの一日』、“when you find me”、“Asad”の6本。
 この中から1本落とすとすれば、“The Night Shift Belongs to the Stars”、でしょうか。
 さらに3本まで絞り込むとしたら―、どうしても気になるのは、“9meter”と『リッチーとの一日』と“when you find me”ですが、果たしてこの3本が3枠に残るかどうかまでは確信が持てません。作品のバランスを考えて、よりシリアスなブックグラウンドを持つ“Buzkashi Boys”や“Asad”を入れておこうということになるかもしれませんから。

 受賞予想としては、授賞式的に受賞したら盛り上げるのは“when you find me”ですが、果たしてどんな仕上がりになっているのでしょうか。やっぱり“9meter”が気になって仕方ありませんが、“9meter”が受賞したら、同じプロデューサー・同じ製作会社にオスカーをあげすぎということになるから、ちょっと敬遠されるかもしれませんね。

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 *当ブログ記事

 ・米国アカデミー賞2012 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201112/article_39.html
 ・米国アカデミー賞2011 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201012/article_17.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編映画賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_8.html

 ・米国アカデミー賞2013 外国語映画賞 各国代表 リスト その1(アイスランド~スロヴァキア):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201209/article_9.html
 ・米国アカデミー賞2013 外国語映画賞 各国代表 リスト その2(スロヴェニア~南アフリカ):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201209/article_26.html
 ・米国アカデミー賞2013 外国語映画賞 各国代表リスト! その3(メキシコ~ロシア):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201209/article_38.html
 ・米国アカデミー賞2013 外国語映画賞 完全ガイド:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201210/article_1.html

 ・米国アカデミー賞2013 短編ドキュメンタリー賞ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201210/article_18.html

 ・米国アカデミー賞2013 長編アニメーション賞 エントリー作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201211/article_1.html

 ・米国アカデミー賞2013 短編アニメーション賞ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201211/article_9.html

 ・米国アカデミー賞2013 視覚効果賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201211/article_28.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2012年6月~2013年1月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_9.html

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