カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2012 コンペティション部門ラインナップ&受賞結果!

 第47回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(6月29日-7月7日)の各賞が発表になりました。

 【カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭】

 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、1946年創設という世界でも最も歴史のある国際映画祭の1つです。
 1946年創設なのに、今年で47回目というのは、計算が合いませんが、これは、共産党政権のコントロールを受けていた時代のうち約40年間は、モスクワ国際映画祭と隔年で開催されていたためです。
 映画祭の歴史としては、1989年のビロード革命により民主化が進行し、1990年にはこれまで上映禁止になっていた作品が上映されたりもしましたが、逆に、映画祭自体は経済的危機にさらされ、連邦が解体した翌年の1994年の第29回大会からチェコ文化省やカルロヴィ・ヴァリ市等の運営によって再スタートしています。(1998年以降はFilm Servis Festival Karlovy Varyという合資会社の運営に移行。)

 映画祭に長い歴史があり、開催時期や開催場所の地域性も新作上映にちょうどよくて、現在、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、ワールド・プレミア作品が数多く上映されて、カンヌやベルリン、ベネチアの各国際映画祭に準じる重要な国際映画祭となっています。

 コンペ作品は、ほぼ無名の監督の知られざる作品ばかりですが、これまでに、『ケス』(ケン・ローチ)、『芙蓉鎮』(謝晋)、『コーカサスの虜』(セルゲイ・ボドロフ)、『ぼくのバラ色の人生』(アラン・ベルリネール)、『アメリ』、『向かいの窓』(フェルザン・オズペテク)、『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』といった作品をグランプリに選出しています。

 東欧で開催される映画祭ということもあってか、日本からの出品作は、あまり多くありませんが(1994年から2011年までに106本出品)、1958年に家城巳代治監督の『異母兄弟』がグランプリを受賞したほか、2002年に池谷薫監督の『延安の娘』が最優秀ドキュメンタリー賞、同年、辻仁成監督の『フィラメント』がエキュメニック審査員賞スペシャル・メンションを受賞、2004年に園子温監督の『紀子の食卓』がスペシャル・メンション&ドン・キホーテ賞を受賞しています。

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 【コンペティション部門】

 ・“La lapidation de Saint Etienne”(西・仏) 監督:Pere Vilà i Barceló
 ・“Hay Road(Estrada de Palha)”(ポルトガル・フィンランド) 監督:Rodrigo Areias
 ・“Piazza Fontana :The Italian Conspiracy(Romanzo di una strage)”(伊) 監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)
 ・“Your Beauty Is Worth Nothing...(Deine Schönheit ist nichts wert...)”(オーストリア) 監督:Hüseyin Tabak
 ・“To Kill a Beaver(Zabić bobra)”(ポーランド) 監督:Jan Jakub Kolski
 ・“Polski film”(チェコ・ポーランド) 監督:Marek Najbrt
 ・“Boy Eating the Bird's Food(To agori troi to fagito tou pouliou)”(ギリシャ) 監督:Ektoras Lygizos
 ・“The Almost Man(Mer eller mindre mann)”(ノルウェー) 監督:Martin Lund
 ・“The Last Step(Peleh akhar)”(イラン) 監督:Ali Mosaffa
 ・『カミハテ商店』“Kamihate Store”(日) 監督:山本起也
 ・“Camion”(カナダ) 監督:Rafaël Ouellet
 ・“Nos Vemos Papa(Nos vemos, papá)”(メキシコ) 監督:Lucía Carreras


 ◆グランプリ(Grand Prix - Crystal Globe)
 ◎“The Almost Man(Mer eller mindre mann)”(ノルウェー) 監督:Martin Lund
 出演:Henrik Rafaelsen、Janne Heltberg Haarseth、Tov Sletta、Per Kjaerstad、Tore Sagen、Kim Eidhagen、Anne Ma Usterud
 物語:ヘンリックは35歳で、何年もの間トーネと同棲している。彼は、最近になって新しい仕事に就いたことと、トーネが妊娠したことで、強いストレスを抱えている。トーネがやるべきことをし、いち早く出産に備えようとするのに対し、ヘンリックはまだ父親になる覚悟がなく、トーネともケンカをする。まだまだ遊びたい気まんまんのトーネは、自分の中の不安に気づきつつも、年下の仲間たちとどんちゃん騒ぎをして、現実から目をそむけようとする……。


 ◆審査員特別賞(Special Jury Prize)
 ◎“Piazza Fontana :The Italian Conspiracy(Romanzo di una strage)”(伊) 監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)
 出演:ヴァレリオ・マスタンドレア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ファブリツィオ・ジフーニ、ラウラ・キアッティ(Laura Chiatti)、ルイジ・ロ・カーショ、ミケーラ・チェスコン、ジョルジョ・コランジェリ(Giorgio Colangeli)、ジョルジョ・ティラバッシ(Giorgio Tirabassi)
 物語:1969年12月12日、ミラノのフォンターナ広場に面した全国農業銀行が爆破され(フォンターナ広場爆破事件)、17人の死者と88人の負傷者が出る。この事件は、無能な政府に対して、民衆を暴動に導こうとして、右翼団体が仕かけたものだと報じられるが、真相は現在に至るまで明らかになっていない。警察は、無政府主義者のピネッリ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)を犯人として逮捕するが、ピネッリは4階から飛び降りて死ぬ。警察は「自殺」と発表するが、無政府主義者は「他殺」と考え、赤い旅団は、ミラノ警察分署長のルイジ・キャラブレシ(ヴァレリオ・マスタンドレア)を殺す。時代は、武装テロが頻発する70年代「鉛の時代」へと突入する……。以後、30年以上におよぶクロニクル。
 Paolo Cucchiarelli が、長い時間をかけて調べて、著した“Il segreto di Piazza Fontana”を自由に翻案して、映画化した作品。
 ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞2012 助演男優賞(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)&助演女優賞(ミケーラ・チェスコン)受賞。
 ナストロ・ダルジェント賞2012 助演女優賞(ミケーラ・チェスコン)&脚本賞受賞。



 ◆監督賞
 ◎Rafaël Ouellet “Camion”(カナダ)


 “Camion”(カナダ) 監督:Rafaël Ouellet
 出演:Julien Poulin、Patrice Dubois、Stéphane Breton、Noémie Godin-Vigneau
 物語:男やもめのゲルマンは、ベテランのトラック運転手をしている。ところが、自動車事故を起こして、見知らぬ女性を死なせてしまう。ショックを受けた彼は、仕事に戻る気力もなくし、すっかり落ち込んでしまう。息子のサミュエルは、離れて暮らしている兄を捜し、2人で父を元気づけて、立ち直らせようとする。


 ◆最優秀男優賞
 ◎Henrik Rafaelsen “The Almost Man(Mer eller mindre mann)”(ノルウェー)

 ◎Eryk Lubos “To Kill a Beaver(Zabić bobra)”(ポーランド)


 “To Kill a Beaver(Zabić bobra)”(ポーランド) 監督:Jan Jakub Kolski
 出演:Eryk Lubos、Agnieszka Pawelkiewicz
 物語:エリックは、40代で、パラノイアにとりつかれた元兵士だ。彼は、秘密の仕事をするために棄てられた農場にやってくる。仕事の指示を待つ間、彼は、目障りなビーバーを殺したりして、準備を整える。そんな彼の世界に、虐待を受けている10代の娘Beziが入り込んできて、激しく愛し合うようになる。ふと彼は古い記憶を甦らせるが、それが何を意味するのかまでは思い出せないのだった……。


 ◆最優秀男優賞スペシャル・メンション
 ◎Pavel Liška “Polski film”(チェコ・ポーランド)
 ◎Tomáš Matonoha “Polski film”(チェコ・ポーランド)
 ◎Marek Daniel “Polski film”(チェコ・ポーランド)
 ◎Josef Polášek “Polski film”(チェコ・ポーランド)

 “Polski film”(チェコ・ポーランド) 監督:Marek Najbrt
 出演:Pavel Liska、Tomas Matonoha、Marek Daniel、Josef Polasek、Jan Budar、Jana Plodkova、Katarzyna Zawadzka
 物語:Pavel Liska、Tomas Matonoha、Marek Daniel、Josef Polasekという学生時代の仲間で、今はともにチェコで名の知られた俳優となった4人が、昔からの夢を実現すべく、一緒に映画を作ろうとする。彼らは、ポーランド人に投資を募り、条件として、自分たちの共演者としてポーランド人女優を起用することになる。しかし、制作が進むにつれ、問題が多発する。まず、チェコ人のユーモアがポーランド人には通じないのだ。Pavelは、ポーランド語は大丈夫だが、チェコ語を話そうとすると、言語障害を起こすし、Tomasは製作費に大きな穴を開けそうになる。加えて、キャストどうしのロマンスが撮影をカオスに陥れる。そして物語が進むにつれ、フィクションと現実の境が曖昧になっていく。


 ◎Yannis Papadopoulos “Boy Eating the Bird's Food(To agori troi to fagito tou pouliou)”(ギリシャ)


 “Boy Eating the Bird's Food(To agori troi to fagito tou pouliou)”(ギリシャ) 監督:Ektoras Lygizos
 出演:Yannis Papadopoulos、Lila Baklesi、Kleopatra Perraki、Vangelis Kommatosa
 物語:主人公は、現代のアテネに暮らす若者ヨルゴス。彼は、教育も受け、教養もあるが、家族や友人とも疎遠で、おんぼろアパートで餓死寸前の暮らしをしている。ペットのカナリアのエサにまで手をつけることはしないが、年輩の隣人から盗みを働いたり、街を徘徊しては、ビンに残った飲み残しを集めてまわったりしている。それだけ切羽詰ってしまえば、もう死者から盗みを働くことに何の呵責も覚えない……。
 ブレッソンやカミュ、ドストエフスキーを彷彿とさせると言われる作品で、Ektoras Lygizosの監督デビュー作にして、ギリシャ・ニューウェーブに付け加えられる1本。


 ◆最優秀女優賞
 ◎レイラ・ハタミ “The Last Step(Peleh akhar)”(イラン)


 “The Last Step(Peleh akhar)”(イラン) 監督:Ali Mosaffa
 出演:レイラ・ハタミ、Ali Mosaffa、Alireza Aghakhani
 物語:レイリは女優で、夫のKoshrowは、トラブルを抱える建築家。夫婦関係はいま危機状態にあり、さらにKoshrowは健康にも問題があって、結果的にそれで死ぬことになる。この物語の語り手自体、既に死んでいるKoshrowであり、彼の冷笑的な視点を通して物語りが語られていく(『アメリカン・ビューティー』のケヴィン・スペイシーのように)。
 トルストイの『イワン・イリイチの死』やジェームズ・ジョイスの「死者たち」を下敷きにしつつ、歌や詩、文学など、語り伝えられてきた古典的ペルシャ文化をタペスリーのように豊かに織り込んだ作品。
 Ali Mosaffaが、妻であるレイラ・ハタミをヒロインとして撮った監督作品で、映画の中でも夫婦を演じている。


 ◆国際批評家連盟賞
 ◎“The Last Step(Peleh akhar)”(イラン) 監督:Ali Mosaffa

 ◆エキュメニカル審査員賞
 ◎“Camion”(カナダ) 監督:Rafaël Ouellet


 ◆スペシャル・メンション
 ◎“Hay Road(Estrada de Palha)”(ポルトガル・フィンランド) 監督:Rodrigo Areias
 出演:Vitor Correia、Ines Mariana Moitas、Nuno Melo、Angelo Torres
 物語:アルベルトは友人たちと別れて、人里離れた小屋に住み、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの作品をポルトガル語に翻訳している。しかし、羊飼いをしている兄が強盗に殺され、羊も殺されたと聞いて、兄の復讐を果たし、羊を取り戻すために小屋を離れる。まず兄の家を訪れて、兄嫁に会い、兄の服を手に入れて、それを身に着ける。兄の敵の一味である役人と出会うが、彼は、払う必要のない通行料を払わせようとする。地元のギャングとトラブったりした後、彼は盗まれた羊を見つけるが、それを取り戻そうとして、逆に捕らえられ、刑務所に入れられてしまう。彼は、言葉も通じない受刑者と力を合わせて、刑務所を脱獄する……。
 現代のポルトガルを舞台としたウエスタン。


 ◆Europa Cinemas Label Award
 ◎“Piazza Fontana :The Italian Conspiracy(Romanzo di una strage)”(伊) 監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)

 【イースト・オブ・ウェスト コンペティション部門】(East Of The West - Films In Competition)

 ・“Dear Betrayed Friends(Drága besúgott barátaim)”(ハンガリー・独) 監督:Sára Cserhalmi
 ・“The Exam(A vizsga)”(ハンガリー) 監督:Péter Bergendy
 ・“Shameless(Bez wstydu)”(ポーランド) 監督:Filip Marczewski
 ・“Yuma”(ポーランド・チェコ) 監督:Piotr Mularuk
 ・“Flower Buds(Poupata)”(チェコ) 監督:Zdeněk Jiráský
 ・“Made in Ash(Až do mesta Aš)”(スロヴァキア・チェコ) 監督:Iveta Grófová
 ・“Practical Guide to Belgrade with Singing and Crying(Praktičan vodič kroz Beograd sa pevanjem i plakanjem)”(セルビア・独・仏・ハンガリー・クロアチア) 監督:Bojan Vuletić
 ・“Somewhere in Palilula(Undeva la Palilula)”(ルーマニア) 監督:Silviu Purcărete
 ・“Mushrooming(Seenelkäik)”(エストニア) 監督:Toomas Hussar
 ・“People Out There(Ljudi tam)”(ラトヴィア) 監督:Aik Karapetian
 ・“Vanishing Waves(Aurora)”(リトアニア・仏・ベルギー) 監督:Kristina Buožytė、Bruno Samper
 ・“House with a Turret(Dom s bashenkoy)”(ウクライナ) 監督:Eva Neymann

 ◆イースト・オブ・ウェスト賞(East of the West Award)
 ◎“House with a Turret(Dom s bashenkoy)”(ウクライナ) 監督:Eva Neymann
 慢性的に食べ物が不足し、永遠に終わりそうにない戦争が続いた戦時中の様子を、少年の目を通して描く。
 ウクライナの作家Friedrich Gorensteinの小説の映画化。
 ウクライナの新鋭Eva Neymannの第2作。
 上海国際映画祭2012 金爵奨コンペティション出品。

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 ◆スペシャル・メンション
 ◎“Vanishing Waves(Aurora)”(リトアニア・仏・ベルギー) 監督:Kristina Buožytė、Bruno Samper
 物語:ルーカスは若き科学者で、ある実験の実験台になる。それは、神経の転送を通して、他人の心を覗くというもので、彼は、昏睡状態にある女性の心の中に入り込む。彼は、次第にその女性の心の中の深い部分に入り込むことになるが、それは現実世界の彼をも変えることになるのだった……。



 ◆FEDEORA Award
 ◎“Flower Buds(Poupata)”(チェコ) 監督:Zdeněk Jiráský
 出演:Vladimír Javorský、Malgorzata Pikus、Marika Soposká、Miroslav Pánek、Natalie Rehorova、Aneta Krejcíková
 物語:小さな町で暮らす家族がゆるやかに崩壊していく様を描く。父親のJardaは、鉄道の操車係だが、スロットマシンにお金をつぎ込んで、家族を省みようとしない。妻は望みない現実に気づきつつも、すべてうまくいっているかのようなふりをしている。娘のAgataは家から出て行きたいと思いながら、期待を裏切られるのが怖くて尻込みしている。やがてJardaも家族が絶望的な状況に陥っていることに気づくが、もう既に手遅れなのだった……。
 チェコ・ライオン(チェコ・アカデミー賞)2012 作品賞・監督賞・主演男優賞・撮影賞受賞。



 【ドキュメンタリー・コンペティション部門】(Documentary Films In Competition)

 ・“The Little Team(L’ equip petit)”(西) 監督:Roger Gómez, Dani Resines [短編]
 ・“A Story for the Modlins”(西) 監督:Sergio Oksman [短編]
 ・“Our Days, Absolutely, Have to Be Enlightened(Nos jours, absolument, doivent être illumines)”(仏) 監督:Jean-Gabriel Périot [短編]
 ・“Hard to Be God(Dur d'être dieu)”(スイス・ロシア) 監督:Antoine Cattin、Pavel Kostomarov
 ・“This Ain't California”(独) 監督:Marten Persiel
 ・“Trains of Thoughts”(オーストリア) 監督:Timo Novotny
 ・“Private Universe(Soukromý vesmír)”(チェコ) 監督:Helena Třeštíková
 ・“Kichot”(ポーランド) 監督:Jagoda Szelc [短編]
 ・“Sofia’s Last Ambulance(Poslednata lineika na Sofia)”(ブルガリア・クロアチア・独) 監督:Ilian Metev
 ・“Polish Illusions”(デンマーク・仏・独・ポーランド) 監督:Jacob Dammas, Helge Renner
 ・“For You Naked(För dig naken)”(スウェーデン) 監督:Sara Broos
 ・“I'm Leaving on Wednesday”(スウェーデン・ノルウェー) 監督:Clara Bodén [短編]
 ・“The Queen of Versailles”(米) 監督:Lauren Greenfield
 ・“Barbers(Barbeiros)”(ブラジル) 監督:Luiz Ferraz、Guilherme Aguilar [短編]
 ・“The Bella Vista”(ウルグアイ・独) 監督:Alicia Cano

 ◆最優秀ドキュメンタリー賞 30分以上部門(Best Documentary Film over 30 minutes long)
 ◎“Sofia’s Last Ambulance(Poslednata lineika na Sofia)”(ブルガリア・クロアチア・独) 監督:Ilian Metev
 200万人の人口に対し13台の救急車しかないブルガリアの首都ソフィア。そんな現状の下で働く救急隊員たち。チェーン・スモーカーで、いつもユーモアを絶やさずにいながら、懸命に病人やケガ人を助け続ける。およそヒーローらしくないヒーローたち。3人の救急隊員の活動を追ったドキュメンタリー。
 カンヌ国際映画祭2012 批評家週間出品。Visionary Prize受賞。


 ◆最優秀ドキュメンタリー賞 30分未満部門(Best Documentary Film under 30 minutes long)
 ◎“A Story for the Modlins(Una Historia Para Los Modlin)”(西/26分) 監督:Sergio Oksman
 物語:俳優エルマー・モデリン(Elmer Modlin)は、『ローズマリーの赤ちゃん』に出演した後、しばらくして妻のマーガレットと息子のネルソンを連れて、マドリッドに去る。彼らは暗いアパートに閉じこもり、マーガレットは、夫と息子をモデルとして、来るべき世紀末を描くことに人生を捧げる。そして30年後。彼らが亡くなり、彼らが遺した膨大な写真や絵や記録が発見される。それらは、ジグソー・パズルのピースとなって、知られざるモデリン家の人々の物語を語り始める……。


 ◆スペシャル・メンション
 ◎“Private Universe(Soukromý vesmír)”(チェコ) 監督:Helena Třeštíková
 物語:1974年、監督のHelena Třeštíkováは、第1子が生まれようとしている夫婦JanaとPetr Kettnerovaにカメラを向け、彼らに関するドキュメンタリーを撮る。以来37年、Helenaは彼らの様子をフィルムに収めてきた。彼らの歴史は、チェコの歴史そのものだ。第1子のHonzaは、やがてアナーキストになり、落伍者になり、マリファナ中毒者になった(この順番で)。時代の影響を受けながら、夫妻は楽しく安定した家庭を築いた。フィルム映像やビデオ、写真、Petrによって書かれた綿密な日記が、彼らの37年間を映し出す。
 チェコのドキュメンタリー作家Helena Třeštíkováの集大成的な作品。


 【フォーラム・オブ・インディペンデント部門】(Forum Of Independents)

 ・“Noor”(仏・パキスタン) 監督:Çağla Zencirci、Guillaume Giovanetti
 ・“Inside(Vast)”(オランダ) 監督:Rolf van Eijk
 ・“Vacuum”(伊) 監督:Giorgio Cugno
 ・“Oh Boy”(独) 監督:Jan Ole Gerster
 ・“Noseland”(オーストリア) 監督:Aleksey Igudesman
 ・“In a Bedroom(W sypialni)”(ポーランド) 監督:Tomasz Wasilewski
 ・“Death of a Man in Balkans(Smrt čoveka na Balkanu)”(セルビア) 監督:Miroslav Momčilović
 ・“The Miscreants(Les Mécréants)”(モロッコ・スイス) 監督:Mohcine Besri
 ・“Wherever You Go(Lean She'at Nosa'at)”(イスラエル) 監督:Rony Sasson Angel
 ・“Love Me Not”(香港) 監督:Gilitte Pik Chi Leung
 ・“Fair Sex(Les manèges humains)”(カナダ) 監督:Martin Laroche
 ・“Leave Me Like You Found Me”(米) 監督:Adele Romanski

 ◆インディペンデント・カメラ賞(Independent Camera Award)
 ◎“Death of a Man in Balkans(Smrt čoveka na Balkanu)”(セルビア) 監督:Miroslav Momčilović
 物語:孤独な作曲家が自殺しようとする。彼は、アパートの中に三脚を据え、その一部始終をウェブカメラに撮影する。映像は、アパートの部屋の中を同時中継で映し出し、その後、実際に何が起こったのかを見せていく。



 【その他の賞】

 ◆NETPAC賞
 ◎“Tepenin Ardi(Beyond the Hill)”(トルコ・ギリシャ) 監督:Emin Alper [Horizons部門]
 物語:晩夏。Nusretは、息子のCanerとZaferを連れて、田舎で暮らしている元林務官の父Faikの家を訪れる。Faikは、地元の遊牧民との間にトラブルを抱えていて、いつも警戒が必要だった。一方、孫のZaferは、兵役以来、メンタル的な問題を抱えていた。やがて残りの家族も集まり、一家が勢ぞろいする。それぞれ気質も違い、社会階級も違うが、衝突することはなかった。脅威なのは、見えざる敵の遊牧民たちだった。夏の終わりにしては、辺りはやけに静かだった……。
 ベルリン国際映画祭2012 フォーラム部門出品。スペシャル・メンション&カリガリ賞受賞。


 ◆観客賞
 ◎“Come As You Are(Hasta la vista)”(ベルギー) 監督:Geoffrey Enthoven [Variety´s Ten Euro Directors to Watch部門]
 物語:20代の3人の男性が、ワインを求めてスペインに旅をする。彼らは無類のワイン好きだったが、いまだに女性経験がなかった。その旅の目的は、表向きはワインだったが、実は旅行中に童貞を卒業したいとも考えていた。しかし、3人のうちの1人は、目が不自由で、もう1人は車椅子で、残る1人は麻痺患者であった。
 パームスプリングス国際映画祭2012 ナラティヴ部門観客賞次点。
 トランシルヴァニア国際映画祭2012 Unirii Square部門出品。


 ◆ワールド・シネマへの貢献賞(Crystal Globe for Outstanding Artistic Contribution to World Cinema)
 ◎ヘレン・ミレン


 ◎スーザン・サランドン


 ◆映画祭プレジデント賞(Festival President´s Award)
 ◎Josef Somr
 Josef Somrは、60年代から活躍するチェコの男優。


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 受賞作品しか、チェックできていませんが、実に面白そうな作品が顔を揃えています。

 フィクションからドキュメンタリーまで、タイプも様々で、昨今の映画の流行(のようなもの)を反映したバラエティーに富んだラインナップになっているのも面白いですね。

 「家族の再生」をテーマにした作品は相変わらず評価が高いですが、そのほか、フィクションとドキュメンタリーの境界で作られた映画制作に関する映画“Polski film”とか、デジタル&インターネット時代を象徴するような“Death of a Man in Balkans”などもあり、しかも後者のような作品がセルビアで作られているというのも興味深いですね。

 個人的に特に観たいと思うのは、ギリシャ映画の“Boy Eating the Bird's Food”やSFの“Vanishing Waves(Aurora)”、そして短編ドキュメンタリーの“A Story for the Modlins”でしょうか。

 話題のギリシャ・ニューウェーブは、日本ではようやく『籠の中の乙女』が公開されますが、これがある程度の成功を収めれば、次に続く公開作品も出てくるでしょうか。できればギリシャ映画祭が企画されて、ギリシャ・ニューウェーブがまとめて観られればいいのですが……。

 “Vanishing Waves(Aurora)”は、リトアニア映画というのがネックでもあり(監督もキャストも知らない人ばかりだし、日本とのつながりもほぼゼロに近い)、逆にそれがセールス・ポイントになるかもしれません。ファンタ系の映画祭での上映が似合いそうな作品ですが、ひょっとしたら日本でもDVDリリースくらいあるかもしれません。

 “A Story for the Modlins”は、面白そうな匂いがプンプンしますが、短編というのが紹介の障害になっています。30分未満では、これだけで映画館で上映というあけにはいかないし、何でもいいから他の作品と組み合わせて上映というわけにもいかないし、難しいですね。

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 なお、日本からは、コンペティション部門に山本起也監督の『カミハテ商店』、AnotherView部門にアミール・ナデリ監督の『CUT』、Horizons部門に原田眞人監督の『わが母の記』が出品されました。

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 *当ブログ記事

 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_28.html
 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200907/article_11.html
 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2010 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201007/article_10.html
 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2010 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201007/article_12.html

 ・映画賞&映画祭カレンダー 2012年6月~2013年1月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_9.html

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