日本からは2作品受賞! アヌシー国際アニメーションフェスティバル2012 結果発表!

 第52回アヌシー国際アニメーションフェスティバルの各賞が発表になりました。

 ◆短編コンペティション部門

 ◎グランプリ(The Annecy Cristal):“Tram”(仏) 監督:ミカエラ・パヴラートヴァ
 物語:路面電車の女性運転手が、運転中に空想し、現実がシュールリアリスティックに変貌し、性的な妄想(phallic delirium-)が展開する。

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 ◎審査員特別賞:『エドモンドとロバ』“Edmond Était Un Âne”(仏・カナダ) 監督:Franck Dion
 物語:「エドモンドは、背も低く物静か。ただ他の人とは"ちょっとだけ"違う。今の仕事をそつなくこなすエドモンドを、陰で支える妻。全てが順風満帆に見えるのだが、同僚のいたずらがきっかけで彼の本性があらわになる。」
 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2012にて上映。

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 ◎第1回作品賞/Jean-Luc Xiberras Award:『動じない』“The People Who Never Stop”(仏・日) 監督:Florian Piento
 物語:群衆は立ち止まらない。よい方に向かっているのか、悪い方に向かっているのかも知らずに。
 日本人をモチーフにしたアニメーション作品。
 Florian Piento監督は、かつて日本のCGアニメスタジオ、カナバングラフィックスの正社員として、『ウサビッチ』のレイアウト・アニメーション・コンポジティングなどを手がけていたことがあるそうです。監督の公式サイト(http://www.florianpiento.com/films.html)は日本語でも読めるようになっています。

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 ◎スペシャル・メンション(Special Distinction):“Seven Minutes In The Warsaw Ghetto”(デンマーク) 監督:Johan Oettinger
 物語:第二次世界大戦中に、家族とワルシャワのゲットーで暮らしていた8歳のユダヤ人少年サメックの物語。実際に起こった出来事に基づく。モーション・キャプチャーとフェイシャル・キャプチャーを使った人形アニメーション。
 *参考サイト:http://wiredfly.blogspot.jp/

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 ◎オリジナル音楽賞/Sacem Award:『MODERN No. 2』“Modern No. 2”(日) 監督:水江未来
 「軽快かつ力強い音楽にあわせて、方眼紙上で直方体がダンスする。日本の抽象アニメーション新世代の旗手によるエンターテインメント作品。」
 ベネチア国際映画祭2011 Orizzoti部門出品。

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 ◎ヤング審査員賞:“História D'este”(西) 監督:Pascual Pérez
 物語:古い劇場で普通の男がコーヒーからブランデー、ビールと飲んで、日常の憂さを紛らわせる。

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 ◎観客賞:“Second Hand”(カナダ) 監督:Isaac King
 物語:“Second Hand”とは、時計の秒針のことであり、リサイクル品のことでもある。あなたなら時間の方を大切にするだろうか、それとも物を大切にするだろうか? 現代人の強迫観念が生み出す不均衡と浪費を描く。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 児童映画コンペティション部門出品。最優秀作品賞受賞。

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 ◎国際批評家連盟賞:“Tram”(仏) 監督:ミカエラ・パヴラートヴァ

 ◎CANAL+creative aid Award:“Una Furtiva Lagrima”(ルクセンブルグ) 監督:Carlo Vogele
 物語:魚市場からフライパンの上へ。魚は、まるでレクイエムを歌うようにして自らの最後の旅を終える。
 Carlo Vogeleは、“For Sock's Sake”でアヌシー国際アニメーションフェスティバル2009学生作品賞を受賞しています。

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 ◆長編コンペティション部門

 ◎グランプリ(The Cristal):『クルリク』“Crulic – The Path To Beyond(Crulic - drumul spre dincolo)”(ポーランド・ルーマニア) 監督:アンカ・ダミアン(Anca Damian)
 不当な裁判に抗議して、ポーランドの刑務所でハンガー・ストライキを起こして、死んだルーマニア人、ダニエル・クラウディウ・クルリクの実話に基づく物語。
 ロカルノ国際映画祭2011 ドン・キホーテ賞スペシャル・メンション受賞。
 ワルシャワ国際映画祭2011 インターナショナル・コンペティション部門 スペシャル・メンション受賞。
 EUフィルムデーズ2012にて上映。

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 ◎スペシャル・メンション(Special Distinction):“Wrinkles(Arrugas/Rides)”(西) 監督:イグナシオ・フェレラス(Ignacio Ferreras)
 物語:エミリオは、息子によって老人ホームに送られ、そこでミゲルらと知り合いになる。家族たちは滅多に面会には来ない。ある日、エミリオにアルツハイマーの兆候が現れる。アルツハイマーとわかると今の階にはいられず、自由のない管理病棟送りにされてしまうため、ミゲルはそれを隠そうとする。これはちょっとしたチャレンジだったが、時の流れは過酷で、彼らにも容赦ないのだった……。
 サンセバスチャン国際映画祭2011 New Directors コンペティション部門出品。
 ゴヤ賞2012長編アニメーション賞受賞。
 イグナシオ・フェレラスは、『東京オンリーピック』(2008)の監督の1人。TV作品“How to Cope with Death”(2002)でアヌシー国際アニメーションフェスティバル2003第1回作品賞を受賞。長編の劇場公開作品はこれが初めて。

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 ◎観客賞:“Approved For Adoption(Couleur de peau : Miel)”(仏・ベルギー・韓) 監督:Laurent Boileau、Jung Henin
 物語:朝鮮戦争の末期に20万人もの子どもたちが養子に出され、世界中に散らばった。チョン(Jung)もその1人である。
 1965年にソウルに生まれるも、1971年にベルギーに養子に出されたJung Henin(Jung Sik-Jun)の自伝的コミック“Couleur de peau : Miel”を自ら監督した作品。

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 ◎ユニセフ賞:“Approved For Adoption(Couleur de peau : Miel)”(仏・ベルギー・韓) 監督:Laurent Boileau、Jung Henin

 ◆TVシリーズ部門

 ◎グランプリ(The Cristal):“Secret Mountain Fort Awesome”-‘Nightmare Sauce’(米) 監督:Pete Browngardt
 物語:グウィーロックは、フェストロのために、悪夢を見なくて済むような薬を作り出す。しかし、フェストロは薬を飲みすぎてしまい、悪夢が逆流し始める。

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 ◎特別賞(Special Award):“Stella And Sam”-‘Voyage Sur La Lune’(カナダ) 監督:Dave Merritt、レイモンド・ジェフェリス(Ray Jafelice)
 物語:裏庭でのキャンプが、月世界の男に会いに行く宇宙旅行に変わる。
 レイモンド・ジェフェリスは『ぞうのババール』などを手がける監督。

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 ◆TVスペシャル部門

 ◎最優秀作品:“The Gruffalo's Child”(英) 監督:ヨハネス・ヴァイランド(Johannes Weiland)、ウーヴェ・ハイドシュッター(Uwe Heidschötter)
 物語:ある吹雪の日。グラッファローの子どもが、父親に注意されていたのにも拘らず、「悪いオオネズミ」を捕まえるために、雪の野へと出て行く。
 ヨハネス・ヴァイランドとウーヴェ・ハイドシュッターは『坊やと野獣』の監督コンビ。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 児童映画コンペティション部門出品。

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 ◆教育・科学・産業映画部門(Educational、Scientific Or Industrial Films)

 ◎最優秀作品:“Le Droit De Suite”(仏) 監督:Pierre-Emmanuel Lyet
 物語:アート市場は活況を呈している。しかし、アーティストの再販権は脅威にさらされている。アーティストの再販権はどうあるべきなのだろうか。

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 ◆広告作品部門(Advertising Films)

 ◎最優秀作品:Red Cross:“Stuff”(米) 監督:Andrew Hall
 クリスマスであれやこれやと忙しくなるシーズン。赤十字を通して必要なものを必要な相手に届けようというキャンペーンの動画。

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 ◆ミュージック・ビデオ部門

 ◎最優秀作品:We Cut Corners “Pirate's Life”(ポーランド) 監督:Przemyslaw Adamski、Katarzyna Kijek
 歌っているシンガー前を、水面が様々に変化しつつ、上下動を繰り返す。
 1850枚のドローイングを使って、2ヶ月かけて作られた作品。

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 ◆卒業制作部門(Graduation Films)

 ◎最優秀作品:“The Making Of Longbird”(英) 監督:Will Anderson(エジンバラ芸術学校)
 物語:作り手であるアニメーターが自分の作り出した登場人物と格闘しているのを「背景」が眺めている。
 シュツットガルト国際アニメーションフェスティバル2012 ヤング・アニメーション賞受賞。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 学生作品コンペティション部門出品。審査員スペシャル・メンション受賞。

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 ◎審査員特別賞:“Kyrielle”(仏) 監督:Boris Labbe
 たくさんの小さな変化が繰り広げられる人間界のミクロコスモス。
 全編は10分13秒。↓はその一部(1分2秒)

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 ◎スペシャル・メンション(Special Distinction):“Le Jardin Enchanté”(仏) 監督:Viviane Karpp(EMCA - École Des Métiers Du Cinéma D'animation, Loïc Le Guen-Geffroy)
 物語:融通の利かない環境保護論者のアランが、動物や植物と一緒に引越しする。近くにはミスターXが暮らしている。

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 ◎ヤング審査員賞:“Friendsheep”(西) 監督:Jaime Maestro(Primer Frame - Escuela De Animacion)
 物語:狼が、おいしそうな羊がいっぱい働いているオフィスの仕事を得る。

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 長編部門に関してみれば、『ペルセポリス』や『戦場でワルツを』などの流れを汲む、大人向けの、社会派で、ドキュメンタリー・タッチの作品がいくつもエントリーされていて、果たしてそうした作品がアヌシーで評価されるのかどうかというところが注目だったわけですが、結果は、まさにそういう作品を評価する方向で動いて、『クルリク』と“Approved For Adoption(Couleur de peau : Miel)”が受賞を果たしました。

 アニメーションを手段として使って、大人の観客に、自分のやり方で伝えたいものを伝える。

 コミック(劇画)ではいままでなかったタイプの作品ではありませんが、そうした作品をアニメーションにしてまで見たいかというのがこれまでアニメーション化へのネックになっていたのが、観客のアニメーションとのつきあい方や意識、作り手のアニメーションの作り方が変わり、作られるアニメーションのタイプも変わってきた、ということになるでしょうか。

 近年、フェルナンド・トルエバやジョージ・ミラー、スピルバーグ、パトリス・ルコント、ファン・ホセ・カンパネラ(そして、実現しなかったけどエドワード・ヤン)と、実写映画を撮り続けてきた映画監督がこぞって長編アニメーションを撮るようになってきているのも、こうしたアニメーションの新しい流れがもたらした必然であるように思えます。

 大きな映画賞で、実写映画を押しのけてアニメーションが大賞を受賞すること、そしてそれが常態化すること、もそう遠くないことなのではないでしょうか。(ひょっとすると、アニメーションの方が手間がかかるし、長いものだとそう簡単に作ることはできないので、実写作品より、アニメーションの方が高級(格上扱い)ということになり、「この程度のものだったらさっさと実写で済まそう」という時代もくるかもしれません。)

 グランプリを受賞した『クルリク』は、EUフィルムデーズ2012でいちはやく日本にも紹介されましたが(ただし英語字幕で)、劇場公開もあり得るかもしれません。

 短編部門は、実に様々なタイプの作品が受賞しています。ザグレブやシュツゥットガルトと重なるエントリー作品も多かったのですが、受賞作品で重なったものはそう多くはなくて、審査員によってこれだけチョイスが変わるんだということを示しているように思います。
 ミカエラ・パヴラートヴァは、個人的に大好きな作家の1人なので、観るのが楽しみです。2度目の米国アカデミー賞ノミネーションも期待したいところですが、性的な内容も含んでいるらしいので、ちょっと難しいでしょうか。

 今回、ノミネーションの記事を書く時点で動画をチェックしていて一番興味深かったのは、ミュージック・ビデオ部門で、受賞作も面白かったのですが、他にも面白い作品がたくさんありました。また、その過程でwhite-screen.jpというサイトと出会えたものよかったですね。さすが、プロは目をつけるのが早いし、かゆいところに手が届く解説が素晴らしいし、ありがたいと思いました。

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 *当ブログ記事
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2012 ラインナップその1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_1.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2012 ラインナップその2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_2.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2012 ラインナップその3:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_3.html

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2011 オフィシャル・セレクション ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201106/article_5.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2011 オフィシャル・セレクション以外のラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201106/article_6.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2011 オフィシャル・セレクション以外のラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201106/article_7.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2011 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201106/article_13.html

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 オフィシャル・セレクションのラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_24.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 オフィシャル・セレクション以外のラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_26.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 オフィシャル・セレクション以外のラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_27.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201006/article_13.html

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 ラインナップ完全版!その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_11.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 ラインナップ完全版!その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_12.html
 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_15.html

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2008 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200806/article_20.html

 ・アヌシー国際アニメーションフェスティバル グランプリ リスト(~2007年):http://umikarahajimaru.at.webry.info/200703/article_22.html

 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 ラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201205/article_25.html
 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 ラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201205/article_26.html
 ・ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2012 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201206/article_6.html

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