タイ映画、コム・チャット・ルック映画賞2011!

 タイの日刊紙コム・チャット・ルック紙の発表する映画賞、コム・チャット・ルック映画賞(The Kom Chad Luek Awards)が発表になりました。(1月13日)

 タイの主な映画賞には、このコム・チャット・ルック映画賞と、タイの映画雑誌が発表するスターピクス・アワード、それからバンコク映画批評家協会賞、タイ・アカデミー賞であるSuphanahongse Awardがあり、The Kom Chad Luek Awardsが新年最初に発表されるタイの映画賞ということになります。(The Kom Chad Luek Awardsは今年で8回目になります。)

 これからこの4映画賞のノミネーションと受賞結果を順に書き出してくことにしますが、この4映画賞の違いは――

 コム・チャット・ルック映画賞(The Kom Chad Luek Awards):日刊紙「コム・チャット・ルック」紙(2001年創刊)が発表する映画賞で、作品賞と監督賞と脚本賞とキャスト4部門しかなく、新聞が発表する賞だけあって、ノミネーションと受賞結果は比較的スタンダード。
 「コム・チャット・ルック」紙の公式サイト(タイ語):http://www.komchadluek.com/

 スターピクス・アワード:映画雑誌「Starpics」が発表する映画賞で、部門数は11。たぶんスター志向の強い雑誌ではなくて、シネフィルな雑誌で、インディペンデント系の作品やドキュメンタリーもピックアップしています。
 「スターピクス」誌公式サイト(タイ語/英語):http://www.starpics.co.th/

 バンコク映画批評家協会賞:メンバーは約20名。インディペンデント系の作品やドキュメンタリー作品、映画作家の作品も取り上げるものの、シネフィル度はそんなには高くなく、どちらかといえば、優れたドラマ作品を高く評価する傾向が強いようです。部門数は11。
 バンコク映画批評家協会賞に関するWikipedia(タイ語):http://th.wikipedia.org/wiki/%E0%B8%A3%E0%B8%B2%E0%B8%87%E0%B8%A7%E0%B8%B1%E0%B8%A5%E0%B8%A0%E0%B8%B2%E0%B8%9E%E0%B8%A2%E0%B8%99%E0%B8%95%E0%B8%A3%E0%B9%8C%E0%B9%84%E0%B8%97%E0%B8%A2_%E0%B8%8A%E0%B8%A1%E0%B8%A3%E0%B8%A1%E0%B8%A7%E0%B8%B4%E0%B8%88%E0%B8%B2%E0%B8%A3%E0%B8%93%E0%B9%8C%E0%B8%9A%E0%B8%B1%E0%B8%99%E0%B9%80%E0%B8%97%E0%B8%B4%E0%B8%87

 タイ・アカデミー賞(Suphanahongse Award) :国立タイ映画協会(The Federation of National Film Associations of Thailand)が運営する賞。部門数が16あり、タイの映画賞の中ではもっとも部門数が多い。アクション映画、アニメーション、ホラー、ドキュメンタリー、娯楽作品、作家主義的な作品等、取り上げる作品のジャンルも幅広く、映画賞としてもっともバラエティーに富んでいます。
 公式サイト(タイ語):http://www.thainationalfilm.com/site/

 2010年は、対象期間にズレがあるThe Kom Chad Luek Awardsの作品賞は“Citizen Juling”でしたが、それ以外の3映画賞は、すべて作品賞に『10月のソナタ』を選んでいます。

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 ◆作品賞
 ◎“Chua Fah Din Salai (Eternity)” 監督:ML Bhandevanop Devakula
 ・『ブンミおじさんの森』“Lung Boonmee Raleuk Chat (Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives)” 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
 ・“Rao Song Sam Khon(That Sounds Good)” 監督:Kittikorn Liawsirikul
 ・『稲作ユートピア』“Sawan Baan Na (Agrarian Utopia)” 監督:Uruphong Raksasad
 ・“Insee Daeng (The Red Eagle)” 監督:ウィシット・サーサナティヤン

 ◆監督賞
 ◎ML Bhandevanop Devakula “Chua Fah Din Salai (Eternity)”
 ・アピチャッポン・ウィーラセタクン 『ブンミおじさんの森』
 ・"Leo" Kittikorn Liawsirikul “Rao Song Sam Kon (That Sounds Good)”
 ・Uruphong Raksasad 『稲作ユートピア』“Sawan Baan Na (Agrarian Utopia)”
 ・ウィシット・サーサナティヤン(Wisit Sasanatieng) “Insee Dang (The Red Eagle)”

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 ◆脚本賞
 ◎“Chua Fah Din Salai (Eternity)” ML Bhandevanop Devakula
 ・『10月のソナタ』“Rak Tee Ror Koi (October Sonata)”(監督:ソムキアット・ウィットゥラニット(Somkiet Vituranich)) ソムキアット・ウィットゥラニット(Somkiet Vituranich)
 ・『ブンミおじさんの森』 アピチャッポン・ウィーラセタクン
 ・“Insee Dang (The Red Eagle)” ウィシット・サーサナティヤン(Wisit Sasanatieng)
 ・『ありふれた話』“Jok Nok Krajok (Mundane History)”(監督:A・スィッチャーゴーンポン(Anocha Suwichakornpong)) A・スィッチャーゴーンポン(Anocha Suwichakornpong)

 ウィシット・サーサナティヤンは、『ナンナーク』の脚本家で、『快盗ブラック・タイガー』や『シチズン・ドッグ』の監督です。

 ◆主演男優賞
 ◎アナンダ・エヴァリンハム(Ananda Everingham) “Chua Fah Din Salai (Eternity)”
 ・Somchai Kemklad “Nak Prok (Shadow of the Naga)”(監督:Nasorn Panungkasiri)
 ・Chawin Likitjareonpong “Baan Chan ... Talok Wai Gon (Por Son Wai) (The Little Comedian)”(監督:ウィッタヤー・トーンユーヨン(Wittaya Tongyuyong)、Mes Tharathorn)
 ・Thongpoom Siriphiphat “Yaak Dai Yin Wah Rak Kan (Best Supporting Actor)”(監督:Alongod Uabhaibool)
 ・アナンダ・エヴァリンハム(Ananda Everingham) “Insee Dang (The Red Eagle)”

 アナンダ・エヴァリンハムは、『心霊写真』『ミー・マイセルフ』などに出演している男優。

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 ◆主演女優賞
 ◎プローイ・チャーマーン・ブーンヤサック("Ploy" Chermarn Boonyasak) “Chua Fah Din Salai (Eternity)”
 ・Rattanrat Eertaweekul “Rao Song Sam Khon (That Sounds Good)”
 ・Lakkana Wattanawongsiri “Namtan Daeng (Brown Sugar)”(監督:Panumat Deesatta、Zart Tancharoen、Kittiyaporn Klangsurin)
 ・ヌンティダー・ソーポン(Neungtida Sophon) 『アンニョン!君の名は』“Guan Muen Ho (Hello Stranger)”(監督:バンジョン・ピサンタナグーン(Banjong Pisanthanakun))
 ・Pimchanok Luevisetpaibool “Sing Lek Lek Thee Riak Wa … Ruk (First Love)”(監督:Putthiphong Promsakha、Wasin Pokpong)

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 ◆助演男優賞
 ◎Sa-ad Piampongsan “Nak Prok (Shadow of the Naga)”
 ・Pitsanu Nimsakul 『10月のソナタ』“Rak Tee Ror Koi (October Sonata)”
 ・レイ・マクドナルド(Ray MacDonald) “Nak Prok (Shadow of the Naga)”
 ・Teerapong Leowrakwong “Chua Fah Din Salai (Eternity)”
 ・Sakkaraj Rerkthamrong “Chua Fah Din Salai (Eternity)”

 レイ・マクドナルドは、『the Eye 3』『O-Negative~恋はデザインできない』などに出演しているスコットランド系タイ人俳優。

 ◆助演女優賞
 ◎インティラー チャルーンプラ(Inthira Charoenpura) “Nak Prok (Shadow of the Naga)”
 ・カンヤー・ラッターナーペット(Kanya Rattapetch) “Krai ... Nai Hong (Who R U)”(監督:Pakpoom Wongjinda)
 ・ラミター・マハープルックポン(Ramita Mahapreukpong) “Rao Song Sam Khon (That Sounds Good)”
 ・Nichapat Jaruratnawaree “Baan Chan ... Talok Wai Gon (Por Son Wai) (The Little Comedian)”
 ・Daraneenuch Pothipithi “Chua Fah Din Salai (Eternity)”

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 主な作品のノミネート&受賞状況は以下の通りです。

 ・“Chua Fah Din Salai (Eternity)”(5/7):作品・監督:脚本・主演男優・主演女優・助演男優・助演男優・助演女優
 ・“Nak Prok (Shadow of the Naga)”(2/4):主演男優・助演男優・助演男優・助演女優
 ・“Rao Song Sam Kon (That Sounds Good)”(0/4):作品・監督・主演女優・助演女優
 ・“Insee Dang (The Red Eagle)”(0/4):作品・監督・脚本・主演男優
 ・『ブンミおじさんの森』(0/3):作品・監督・脚本
 ・『10月のソナタ』“Rak Tee Ror Koi (October Sonata)”(2/2):脚本・助演男優
 ・“Baan Chan ... Talok Wai Gon (Por Son Wai) (The Little Comedian)”(0/2):主演男優・助演女優
 ・『稲作ユートピア』(0/1):作品

 “Chua Fah Din Salai (Eternity)”は、冒頭に紹介した4つの映画賞すべてで最多ノミネートになっていて、主演男優賞や主演女優賞、美術賞、作曲賞などを制して、コム・チャット・ルック映画賞とバンコク映画批評家協会賞では最多受賞作品になっています。
 国際的には(そしてインディペンデント系の作品としては)、『ブンミおじさんの森』が2010年のタイ映画を代表する作品でしたが、国内的にはこの“Chua Fah Din Salai (Eternity)”が2010年のタイ映画の顔と言ってよさそうです。

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 以下に、主なノミネート&受賞作品について、簡単に紹介しておきます。

 最も評判のいい“Chua Fah Din Salai (Eternity)”にも興味はありますが、個人的に観たいと思うのは、“Rao Song Sam Kon (That Sounds Good)”とか“Baan Chan ... Talok Wai Gon (Por Son Wai) (The Little Comedian)”とかですかね。

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 ・“Chua Fah Din Salai (Eternity)”(タイ) 監督:M.L. Pundhevanop Dhewakul
 出演:アナンダ・エヴァリンハム、プローイ・チャーマーン・ブーンヤサック、Teerapong Leowrakwong、Sakkaraj Rerkthamrong、Daraneenuch Pothipithi
 物語:1930年代初期のビルマの農場が舞台。パボは一帯の土地を所有する地主で、地域では王のように君臨していた。彼の甥サンモンは、高い教育を受けた思索的な青年であった。パボの若い妻ユパディーは、文化的素養があり、社交界で活躍していた。物語はこの3人の三角関係を軸として進み、サンモンとユペディーの秘められた関係はやがてパボの知るところとなる……。
 1943年にMalai Choopinitが書いた小説の映画化。
 オリジナル版のレイティングは15+で、ヌード&セックス・シーンが多いディレクターズ・カット版は、18+だそうです。
 釜山国際映画祭2010 ニュー・カレント部門出品(ワールド・プレミア)。

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 ・“Nak Prok (Shadow of the Naga)”(タイ) 監督:Nasorn Panungkasiri
 出演:Somchai Kemklad、Sa-ad Piampongsan、レイ・マクドナルド、インティラー チャルーンプラ、Pitisak Yaowanon
 物語:主人公は、残忍な泥棒三人組で、彼らは僧の振りをして泥棒し、戦利品を寺の中に隠していた。しかし、やがて、様々な登場人物を巻き込んで、のっぴきならない状況に追い込まれていく……。
 『マルタの鷹』などを思わせるフィルム・ノワール風の作品で、題材的に物議を醸すと思われたことから、2007年に完成していながら、2010年までずっとお蔵入りになっていたそうです。

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 ・“Rao Song Sam Kon (That Sounds Good)”(タイ) 監督:キッティコーン・リアシクン("Leo" Kittikorn Liawsirikul)
 出演:"Jay" Montonn Jira、Rattanrat Eertaweekul、ラミター・マハープルックポン
 物語:ソムチューは、誠実な青年で、インドネシアの中央高地で4WDを運転していた。彼は、途中で、2人の女性を拾う。1人は、ハリー・ポッター風のメガネをかけたテアで、もう1人は彼女の友だちで、耳に障害を持つスーントリであった。最初、スキー帽をかぶっていたスーントリが、それを脱いだ時、ソムチューは、一目で彼女に恋してしまう。彼女の方も彼のことが好きになるが、彼女が聴覚障害を持っていることもあって、ともにお互いの気持ちをうまく伝えることができない……。
 主演の"Jay" Montonn Jiraはミュージシャンだそうです。

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 ・“Insee Dang (The Red Eagle)”(タイ) 監督:ウィジット・サンサーナティアン(Wisit Sasanatieng)
 物語:主人公は凄腕のスナイパー。今日も彼は、ビルの会議室からターゲットを狙い、見事に仕留める。しかし、そんな彼にも1つだけ弱点があった。それは彼が性的不能者だということだった。彼は、稼いだ金で、漢方にかかったり、アフリカの呪術師の世話になったり、インドのグルに会いに行ったりする……。
 釜山国際映画祭2010 アジアの窓部門出品。

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 ・『10月のソナタ』“October Sonata”(タイ/2009) 監督:ソムキアット・ウィットゥラニット(Somkiat Vituranich)
 出演:ラチャウィン・ウォンウィリア、Pitsanu Nimsakul
 サンチャンは、工場で働く娘で、ラウィーという男性と出会って恋に落ちるが、彼は、留学に行くことが決まっている。彼は、毎年、10月8日には必ず帰ってくると約束する。そんなサンチャンの前に、リムという男性が現れて、彼女のことが好きになる。サンチャンは、ラウィーへの愛と信頼を試されることになる。
 スターピクス・アワード2010 作品賞・脚本賞・美術賞・作曲賞受賞。
 バンコク映画批評家協会賞2010作品賞・監督賞・助演男優賞・脚本賞・美術賞・作曲賞受賞。
 タイ・アカデミー賞2010 作品賞・助演男優賞・脚本賞・衣裳賞受賞。
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2010にて上映。


 ・“Baan Chan ... Talok Wai Gon (Por Son Wai) (The Little Comedian)”(タイ) 監督:ウィッタヤー・トーンユーヨン(Wittaya Tongyuyong)、Mes Tharathorn
 出演:Chawin likitjareonpong、Paula Taylor、Jaturong Mokjok、Nichapat Jaruratnawaree
 物語:トックの父親は、コメディアンで、おじいちゃんもまたコメディアンで、彼の一家はみんなどこか可笑しかった。トックは、ある日、にきびだらけのクラスメートにくっついて皮膚科医に行くが、そこの女医に恋してしまう。彼は、6歳の妹にもらったおこずかいをも足しにして、皮膚科医に通い続け、一所懸命に、その女医を笑わせようとする……。
 ウィッタヤー・トーンユーヨンは、『フェーンチャン~ぼくの恋人』の監督の1人。

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 ・『ありふれた話』“Jao Nok Krajok (Mundane History)”(タイ/2009) 監督:A.スィッチャーゴーンポン(Anocha Suwichakornpong)
 物語:役立たずの息子と、つかみどころのない父親と、車椅子の患者の面倒を看る看護士という3人の家族が織り成す物語。
 釜山国際映画祭2009 ニュー・カレント部門出品。
 ロッテルダム国際映画祭2010コンペティション部門出品。タイガー・アワード受賞。
 シンガポール国際映画祭2010 コンペティション部門出品。
 トランシルヴァニア国際映画祭2010 コンペティション部門出品。グランプリ受賞。
 パリ映画祭2010 コンペティション部門出品。
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2010にて上映。

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 ・『アンニョン!君の名は』“Guan Muen Ho (Hello Stranger)”(タイ) 監督:バンジョン・ピサンタナグーン(Banjong Pisanthanakun)
 出演:チャンタウィット・タナセーウィー、ヌンティダー・ソーポン
 物語:「日本と同じく韓流に沸くタイ。ペ・ヨンジュンに憧れる女と、なりゆきで韓国行きの飛行機に乗ってしまった男が、旅先の韓国で偶然出会い、お互いの名前も知らないまま恋に落ちる。」
 大阪アジアン映画祭2011で上映。

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 ・『稲作ユートピア』“Sawan Baan Na (Agrarian Utopia)”(タイ) 監督:Uruphong Raksasad
 タイでも機械化された米作りが主流になっていて、機械を使わない米作りが忘れられつつあるが、それを嘆いた監督が、「機械を使わない昔ながらの米作り」を将来に残すべく、フィクションとドキュメンタリーを融合させて作った作品。
 Uruphong Raksasad監督は、アプチャッポン・ウィーラセタクン監督と同じスクール・オブ・アート・インスティテュート・シカゴで修士をおさめた監督。
 ロッテルダム国際映画祭2009 スペシャル・メンション受賞。
 『稲作ユートピア』というタイトルで山形国際ドキュメンタリー映画祭2009で上映。アース・ビジョン 第19回地球環境映画祭(2011年3月)でも上映。

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 *当ブログ記事
 ・第1回タイ映画監督協会賞 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201103/article_4.html

 ・コム・チャット・ルック映画賞2010:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_35.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年12月~2011年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201012/article_48.html

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