詳細解説! 米国アカデミー賞2011 短編アニメーション賞候補 10作品!

 米国アカデミー賞2011 短編アニメーション賞候補のショートリストが発表されました。(11月30日)

 ・“The Gruffalo”(英) 監督:Jakob Schuh、Max Lang
 ・『マダガスカルのトラベルノート』“Madagascar, Carnet de Voyage (Madagascar, a Journey Diary)”(仏) 監督:Bastien Dubois
 ・“The Silence beneath the Bark(Le silence sous l'écorce)”(仏) 監督:Joanna Lurie
 ・“Urs”(独) 監督:Moritz Mayerhofer
 ・“The Lost Thing”(オーストラリア・英) 監督:Shaun Tan、Andrew Ruhemann
 ・“Sensology”(カナダ) 監督:Michel Gagne
 ・“The Cow Who Wanted to Be a Hamburger”(米) 監督:ビル・プリントン
 ・『ルーニー・テューンズ ロード・ランナーとワイリー・コヨーテ “Coyote Falls”』“Coyote Falls”(米) 監督:マシュー・オキャラハン(Matthew O’Callaghan)
 ・『デイ&ナイト』“Day & Night”(米) 監督:テディ・ニュートン
 ・“Let’s Pollute”(米) 監督:Geefwee Boedoe

 ひょっとしたら、この部門に日本からエントリーされる作品があるかなとも思ったのですが、残念ながら、今年は、日本の作品でここまで到達するものは1本もありませんでした。

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 ・“The Gruffalo”(英/26分54秒) 監督:Jakob Schuh、Max Lang
 物語:ネズミが森を歩いていて、彼を食べようとする3つの生き物、キツメ、フクロウ、ヘビに出会う。ネズミは、機転を利かせて、それぞれをやり過ごして、生き延びていく。
 声の出演:ヘレナ・ボナム・カーター、James Corden、トム・ウィルキンソン、ジョン・ハート、ロビー・コルトレーン
 BAFTA2010 短編アニメーション賞ノミネート。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 TVスペシャル部門出品。最優秀作品賞受賞。
 オタワ国際アニメーションフェスティバル2010最優秀作品キッズ・コンペティション TV作品部門(Kids Competition - TV) 最優秀作品賞(The 2010 Best Television Animation Made for Children)受賞。

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 ・『マダガスカルのトラベルノート』“Madagascar, Carnet de Voyage (Madagascar, a Journey Diary)”(仏/12分) 監督:Bastien Dubois
 物語:ヨーロッパ人旅行者がマダガスカルを旅して、様々な文化の違いに戸惑う。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 アウト・オブ・コンペティション部門出品。CANAL+クリエイティヴ・エイド賞("CANAL+ creative aid" Award for a short film)受賞。
 オタワ国際アニメーションフェスティバル2009 大人向けTV作品部門(TV for Adults)出品。最優秀作品、Grand Prize for Best Commissioned Animation、NFB賞(The National Film Board of Canada PUBLIC PRIZE)受賞。
 ズリーン国際映画祭2010 短編アニメーション・コンペティション部門出品。
 シネフィルイマジカにて放映。

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 ・“The Silence beneath the Bark(Le silence sous l'écorce)”(仏/11分) 監督:Joanna Lurie
 物語:冬の夜。アメリカアカ杉の生えるの森の地中から、2つの小さな生き物(木の妖精らしい)が這い出てきて、雪の舞う夜の森に遊ぶ。
 クレモンフェラン国際短編映画祭2010出品。
 ズリーン国際映画祭2010 短編アニメーション・コンペティション部門出品。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。
 トロント世界短編映画祭2010 グランプリ受賞。
 シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭2010 短編アニメーション部門出品。

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 ・“Urs”(独/10分) 監督:Moritz Mayerhofer
 物語:Ursは、長年、年老いた母の面倒を看ていた。よりよい環境を求めて、山の上へ行こうするが、その旅は危険が伴い、母はなかなか家を出ようとしない。
 監督は、Filmakademie Baden-Württemberg出身で、パリのゴブランで交換留学生として学んだ経験も持つ。
 メルボルン国際アニメーションフェスティバル2009 Best of Sesssion受賞。
 サンタバーバラ国際映画祭2010 短編アニメーション賞(Bruce Corwin Award for Best Animation Short Film)受賞。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 学生作品コンペティション部門出品。

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 ・“The Lost Thing”(オーストラリア・英/15分) 監督:Shaun Tan、Andrew Ruhemann
 物語:少年が、海辺で、奇妙な赤い生きものをみつける。それはこの世にはもう存在しないと思われていたようなものだった……。
 オーストラリアの絵本作家/イラストレーターのショーン・タンの原作絵本の映画化。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。グランプリ受賞。
 SIGGRAPH 2010 アニメーションフェスティバル短編&中編(Shorts & Long Shorts)部門出品。
 シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭2010短編アニメーション部門(Anima’t Short Films)出品。
 オタワ国際アニメーションフェスティバル2010 キッズ・コンペティション 短編部門(Kids Competition- Short Films)部門出品。
 オーストラリア映画協会賞2010 短編アニメーション賞(AFI Award For Best Short Animation)ノミネート。
 オーストラリア第12回Kodak Inside Film Awards(IF賞) 短編アニメーション賞(The AUTODESK IF Award For Best Short Animation)受賞。

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 ・“Sensology”(カナダ/6分) 監督:Michel Gagne
 1995年11月9日に、カナダの前衛的ジャズ演奏家のPaul Plimley (ピアノ)とBarry Guy(ベース)がバンクーバーで行なった即興セッションを、白と黒(とグレー)のみによる抽象的/幾何学的イメージでヴィジュアライズ化したマクラレン的な作品。
 公式サイト(http://www.gagneint.com/Final%20site/Animation/Sensology/Sensology.html)で全編を観ることができます。
 監督は、これまでに3度アニー賞のOutstanding Individual Achievement for Effects Animationにノミネートされています。(そのうちの1回は『アイアン・ジャイアント』)

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 ・“The Cow Who Wanted to Be a Hamburger”(米/5分43秒) 監督:ビル・プリントン
 物語:子牛が、ウソの広告にだまされて、ハンバーガーになることこそ自分の幸せであると思い込み、そのための努力をするが、それは、生易しいものではなかった。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。
 シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭2010短編アニメーション部門(Anima’t Short Films)出品。
 ビル・プリンプトンは、これまでに“Your Face”(1987)と“Guard Dog”(2004)で米国アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされています。

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 ・『ルーニー・テューンズ ロード・ランナーとワイリー・コヨーテ “Coyote Falls”』“Coyote Falls”(米/3分) 監督:マシュー・オキャラハン(Matthew O’Callaghan)
 物語:岩山の切り通しの間を上と下に交差するように道路が走っている。ワイリー・コヨーテは、上の道路からバンジージャンプして、下の道路にいるロード・ランナーをつかまえようとするが、例のごとく、成功はしない。
 ワーナー・ブラザースが誇るルーニー・テューンズの人気キャラクター、ワイリー・コヨーテとロード・ランナーが登場するシリーズの2010年版最新作。
 『キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争』の併映作品。

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 ・『デイ&ナイト』“Day & Night”(米/5分47秒) 監督:テディ・ニュートン
 物語:昼と夜のキャラクターが、黒をバックに登場する。それぞれ、体が透けて見えて、昼のキャラクターは昼の風景を、夜のキャラクターは夜の風景を、体を通して映し出す。「昼」がチョウチョを見せれば、「夜」は蛍を見せ、「昼」が虹を見せれば、「夜」は花火を見せるというように相手に対抗心を出し、自分の方がいいと張り合う。しかし、やがて、互いに相手のよさを認め、朝焼けと夕焼けの瞬間に2人は同体になる。そして、「夜」は「昼」へ、「昼」は「夜」へと入れ替わる。
 『トイ・ストーリー3』併映作品。
 テディ・ニュートンは、『Mr.インクレディブル』でアニー賞キャラクター・デザイン賞にノミネートされたことがあります。

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 ・“Let’s Pollute”(米/6分30秒) 監督:Geefwee Boedoe
 50年代~60年代にかけて作られたような教育向けのアニメーションのタッチで、「よりよい明日のために、さあ、今日も汚染しましょう」と、公害や汚染と密接に結びついている現代生活を皮肉る。みんな自分勝手にゴミを撒き散らすので、地面を掘っても、ゴミばかり出てくる。燃料からは有毒ガスが出るし、食べ物も汚染されている。商品は過剰包装されて、出るのはゴミばかりだし、ナチュラルな食べ物などもうほとんど手に入らない。森に動物たちの居場所はなく、海も汚れ放題で、油が浮いている……。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。

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 公式サイトで全編観られる作品もあれば、無許可でアップロードされたと思われるものがYou Tube等で全編観られる作品もあり、また、予告編もしくは本編の一部については、すべての作品で視聴可能になっているようです。

 ざっと観た印象では――

 “The Gruffalo”は、よくも悪くもTV向けの作品で、そういう作品に短編アニメーション賞をあげるだろうかという感じがします。

 『マダガスカルのトラベルノート』は、全編観れているわけではありませんが、エキゾチックなマダガスカルの風景や人物が描れた水彩による(?)画が素敵で、その水彩画もちょっと面白い動き方をしていて、とても魅力的です。

 “The Silence beneath the Bark(Le silence sous l'écorce)”は、冬の夜の森に雪が舞う風景が美しく、フェアリーテールとしても悪くないのですが、アカデミー賞という感じでもないかなと思ったりもします。

 “Urs”は、画のタッチは、個人的にはあんまり好きじゃないんですが、ストーリーで感動させてくれる可能性もあり、全編観てみないと、いいのかどうかちょっと判断がつきません。

 “The Lost Thing”は、ちらっと観ただけでも、メルヘンチックでよさそうです。

 “Sensology”は、今年唯一の抽象作品で、たぶんこういうタイプの作品が選ばれるのは久しぶりのはずです。とっても美しいけれど、でも、やっぱりアカデミー賞受賞という感じでもないかな~という印象です。

 “The Cow Who Wanted to Be a Hamburger”。ビル・プリントンは個人的に大好きで、この作品もすっとぼけた感じで面白そうだけど、アカデミー会員が、今、あえてこれを選んだりするだろうかと思いますね。

 『ルーニー・テューンズ ロード・ランナーとワイリー・コヨーテ “Coyote Falls”』。お決まりのパターンで、観ていて楽しいし、昔ながらのシリーズを3Dで再生させたということが評価されたりするんでしょうけど、単にそれだけだとアカデミー賞を贈るほどでもないかも?と思います。

 『デイ&ナイト』。メインのアイデアは面白いし、風景の擬人化も面白い。悪くはないんだけど、悪くはないというレベルにとどまっているかもしれません。

 “Let’s Pollute”。昔なつかしいアニメーションの感じとかは面白いけれど、アニメーションとしての新しさはなく、現代文明を皮肉るやり方も古臭くて、予定調和的な感じがします。

 ――というようなことから考えると、ノミネートされそうなのは、まずは、『マダガスカルのトラベルノート』と“The Lost Thing”そして、『デイ&ナイト』というところでしょうか。
 なので、予想としては、本命が“The Lost Thing”で、『マダガスカルのトラベルノート』と『デイ&ナイト』を対抗としたいと思います。

 あとは、“The Cow Who Wanted to Be a Hamburger”と判断保留の“Urs”が有力候補としてあり、ノミネーションだけだったら、“The Silence beneath the Bark(Le silence sous l'écorce)”や“Sensology”あたりも考えられそうです。

 米国アカデミー賞短編アニメーション賞は、一時期、CGアニメーションとどうつきあうかがテーマだった時期があり、その時期には多くのピクサー作品が受賞しましたが、今は、3Dアニメーションとどうつきあうかがテーマとなりつつあります。ただし、それに応えるだけの3D短編アニメーション(単に目新しいだけではなく、3Dによって短編アニメーションに新たな地平を開くような作品)はまだ登場していないようです。

 近年、米国アカデミー賞短編アニメーション賞は、『ハーヴィー・クランペット』、『ライアン』、“The Moon and the Son: An Imagined Conversation”、『デンマークの詩人』、『ピーターと狼』、『つみきのいえ』、『ロゴラマ』と、毎年スタイルの違う作品を受賞作に選んでいます。

 どうも、毎年、新鮮な驚きのある作品を積極的に選んでいるんじゃないか、と思われる節がありますが、そうすると、今年の受賞は、ウェルメイドだけれど、アニメーションとしてはオーソドックスな“The Lost Thing”や、「よくできている」『デイ&ナイト』などではなく、見た目にユニークで新鮮さのある『マダガスカルのトラベルノート』が有望、ということになるでしょうか。

 ちなみに、『デイ&ナイト』が受賞すれば、ピクサー作品としては、2002年の『フォー・ザ・バーズ』以来、9年ぶりの受賞となります。

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 *当ブログ記事

 ・米国アカデミー賞2010 短編アニメーション賞候補 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_34.html

 ・米国アカデミー賞2011 長編ドキュメンタリー賞候補 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_29.html
 ・米国アカデミー賞2011 長編アニメーション賞候補 ロングリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_24.html
 ・米国アカデミー賞2011短編ドキュメンタリー候補ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201010/article_25.html
 ・米国アカデミー賞2011 外国語映画賞各国代表65作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201010/article_22.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

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